川口先生のペットコラム
旭化成ホームズ株式会社
Profile
ゾウの先生 川口 幸男

1940年東京都伊豆大島に生まれる。上野動物園飼育課を定年退職後、エレファント・トークを主宰。講演や執筆をしている。講演依頼は、メール またはFax 048-781-2309にお願いします。
NHKラジオ番組夏休みこども科学電話相談の先生でもあり、本編では長年の経験を踏まえて幅広く様々な話題を紹介します。
わんにゃんドクター 川口明子

日本獣医畜産大学卒業、同大学外科学研究生として学び、上野動物園で飼育実習後、埼玉県上尾市にかわぐちペットクリニックを開業する。娘夫婦もそろって獣医師で開業しており、一家そろって動物と仲良くつきあっている。
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おもしろ哺乳動物大百科35(霊長目 オマキザル科) 2010.6.28

サキ属
サキ属は、(1)シロガオサキ(2)キイロサキ(3)クロヒゲサキ(4)モンクサキの4種に分けられています。いずれの種も異様な容貌をしていることから悪魔ザルという異名を持っています。しかし、サルの仲間にはこのように私たちから見ると、異形と感じるサルも少なくないのです。それは昼行性の霊長類は視力に優れ、顔や体色が保護色となり、また繁殖期のサインや外敵に対する威嚇などのときに重要な意味を持っているからでしょう。

35)シロガオサキ
サキ属はアマゾン河流域からギアナ、コロンビア、エクアドル、ボリビアまで広く分布しています。シロガオサキはアマゾン川北部のネグロ川とオリノコ川東部に生息しています。熱帯多雨林からサバンナ林、山地、マングローブ林、川辺林や海岸の潅木林の森林で、おもに樹層の中間部から下部で生活し、地上に降りることは少なく、雨期に浸水する場所は好みません。行動は敏捷で、移動は通常は四足歩行ですが、後肢が強く、跳ねるように木から木へと10m近くも飛び移り、ときには木の枝の上を2足歩行します。昼行性で、夜間眠るときはネコのように丸くなって眠ります。群れの構成は雌雄のペアとその子どもの3〜5頭で、単独個体も多く見られます。テリトリーがあり、他の群れに対し、うなるような声から高い声まで警戒音を発します。のどには皮脂腺があり、尿と共に匂いつけ行動がみられます。乳頭は胸部に1対あります。

からだの特徴
オマキザル科のなかでは中型ですが、サキの仲間ではもっとも小型で、オスの体重は2kg前後です。体色は、オスは鼻から口にかけて及び全体的に黒です。そして鼻から口の周りがのどにかけて、白か淡黄色で、一見すると白い仮面をつけているような特異の顔をしています。メスは全体に茶色又は茶褐色で、鼻口部には八の字状に白、又はうすい赤褐色のすじがあります。尾は毛深くて長く、走るときや休息しているときは背側にあげています。子どものうちは尾を人間の手や母親の体に巻きつけることができますが、成長するとこの能力は失われます。広鼻猿の名前のとおり、サキの鼻は鼻孔が外側に向って開き、前方からは見ることができません。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪で、手で物をつかむときは第2指と第3指の間に挟みます。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。歯の特徴は、犬歯が外側に反り、門歯との間が空いているところです。下顎の門歯は前方に傾いて原猿類の櫛歯(くしば)と似ていますが、原猿類のように毛づくろいに使わず、果実などを食べるときに使います。頬袋はなく、乳頭は胸部に1対あります。

  サキの仲間は、風貌に特徴のある種が多いのですが、 シロガオサキの白いお面をつけたような顔もまたすてきでしょう。写真家 大高成元氏撮影
サキの仲間は、風貌に特徴のある種が多いのですが、 シロガオサキの白いお面をつけたような顔もまたすてきでしょう。
写真家 大高成元氏撮影
   

えさ
食性は雑食性ですが、種子と果実が主食で、その他、花、茎、葉も食べます。ときには小鳥やシロアリ、ネズミ、コウモリも食べるという報告もあります。動物園では、リンゴ、バナナ、ミカン、卵、ドッグフード、ミールワーム、コオロギ、バッタなどを与えています。

繁殖
交尾期ははっきりしませんが、発情周期は18日間で12〜36時間続きます。妊娠期間は約170日(140〜147日・163〜176日の報告があります)、通常一産一子です。飼育下の繁殖は1年中見られますが、野生の出産期は11月から12月です。赤ちゃんは、オス、メスともに初めはほとんど黒く、顔には毛が生えておらず明るい色で良く目立ちます。生後1ヵ月齢ころにメスの成獣と似た体色に変わります。オスの子どもでは約2ヶ月齢になると、顔に特徴ある白い毛が生えてきます。母親は赤ちゃんを最初の約2週間は抱き単独で面倒をみて離しません。初めて母親の背中に乗ったのは生後10日から24日齢、28日齢などのほか、3週齢で初めて姉が抱き上げた報告があります。上野動物園における繁殖例でも、赤ちゃんは生後約2ヶ月齢まで母親から離れませんでした。固形物は3ヶ月齢から食べはじめ、授乳は約4ヶ月間です。生後5ヶ月齢で母親から離れて群れのメンバーと遊び、6カ月齢で独立しますが、まだ家族と一緒の生活を続け、1年で家族の群れから出ます。性成熟は、メスは2歳、オスは3歳です。長寿記録としてはピッツバーク動物園で1995年12月に死亡した個体の推定36歳があります。

天敵
人間が食料にするための狩猟やワシ、タカ、フクロウなどの猛禽類、ヘビ、ネコ科動物がいます。

シロガオサキ
分類   霊長目 オマキザル科
分布   南アメリカ
大きさ   体長 33〜38cm、尾長 33〜45cm、体重 オス1.9〜2.1kg メス 1.5〜1.9kg
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
Welker,C. and Schaefer-Witt,C.   New World Monkeys. In ( Parker, S.P. editor) Grizimek's Encyclopedia of Mammals Volume 2, : McGrow-Hill Publishing Company 1990
Nowak , R.M.   Walker's Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press , Baltimore 1999
渡辺 芳   シロガオサキの繁殖 どうぶつと動物園 (財)東京動物園協会1985

おもしろ哺乳動物大百科34(霊長目 オマキザル科) 2010.6.17

リスザル属
リスザル属は、(1)コモンリスザルのほかに、(2)ボリビアリスザル(3)セアカリスザル(4)クロリスザルの4種に分けられています。リスザルが世界中の人々に広く知れ渡ったのは、1958年にアメリカが打ち上げた人工衛星に乗せ、最初に宇宙にいったサルとして名を馳せたからです。さて、南米の広い地域に分布している本種は、小型で人に馴れやすいため、ペットとして飼育されてきました。

34)コモンリスザル
リスザル属は中米と南米北部からボリビア、ブラジル中央部にかけての湿潤なジャングルに広く分布し、本種はコロンビアからアマゾン盆地にかけて生息しています。原生林や山地、マングローブ林、川辺林が生活の場で、果実や昆虫が豊富に手に入る場所を好みます。昼行性で早朝や午後から夜の涼しい時間帯に活動します。主に樹木の中間部を利用しますが、樹冠や地上にも降ります。移動は跳んだり、跳ねたりせずに四足歩行でします。新世界に住むサルの仲間で最大の群れをつくり、それぞれの群れは15〜130haと広い遊動域を持っています。群れの構成は、成熟オスが2〜4頭、成熟メスが5〜10頭とその家族で数10頭から50頭ですが、ときにはこれらの群れがいくつか集まり更に大きく数100頭になります。群れ同士は比較的争わず、単独個体は少ないようです。交尾期以外は、オスの集団、母親と幼児、子どもの集団の3つのグループに別れて生息しています。尿を手の掌につけて更に足の裏にこすりつける尿あらい行動で匂い付けを行いますが、この行動には群内の他のメンバーに自分の痕跡を残すこと、優位性の誇示、繁殖に関係するホルモンの伝達、枝をしっかり握る時のすべり止めなどの働きがあると考えられています。コミュニケーションの手段として鳴き声も使われ、外敵を見つけると警戒音を発します。

からだの特徴
オマキザル科のなかで体重は最小の約700gです。体毛は短く、背中と4肢は黄色か黄緑色、腹部は白かうすい黄色、目の周りは白く、鼻から口にかけ黒いマスクをかけたような部位があります。また、前頭部には黒くとんがった切れ込みの部位があります。尾は長く、すばやく動くときにバランスをとるのに役立っていますが、物に巻きつけることはなく、先端の色は黒くなっています。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪で、後肢で枝をつかむことができます。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。第三大臼歯が小型になっているため顔が短くなっています。犬歯は性的二型でオスは鋭く大きくなっています。頬袋はありません。乳頭は胸部に1対あります。

  背中にかわいい赤ちゃんがしがみついています。写真家 大高成元氏撮影
背中にかわいい赤ちゃんがしがみついています。
写真家 大高成元氏撮影
   

えさ
食性は雑食性で、果実や昆虫を主食としていますが、その他に花、葉、蜜、クモ、なども食べます。動物園では、リンゴ、バナナ、ミカン、卵、ドッグフード、ミールワーム、コオロギ、バッタなどを与えています。

繁殖
これまで紹介してきたオマキザルの仲間であるタマリンやヨザルは、父親は育児の手伝いをしていましたが、本種は育児の手伝いはしません。そして、父親は交尾期以外、オスの集団で母親と別に生活しています。交尾期は乾季の8月から10月初旬の約2ヶ月間で、出産期は雨期となる2月から4月上旬です。群れによって、発情と出産期が同調する傾向があります。発情周期は7〜14日間で12〜36時間続きます。妊娠期間は152〜172日、通常一産一子ですが、まれに双子もあります。赤ちゃんは体重が70〜150g、生まれた日にお母さんの背中に乗ることができます。生後5〜6週間齢で少しずつ母親から離れ、周囲のものに興味を示します。5〜10週齢で固形物も食べ始めます。4ヶ月齢になると子供同士の遊びが増えてきます。生後1歳で母親からほぼ独立し、子どもは雌雄で遊びます。2歳になるとメスは成熟メスのグループを探しはじめ、この時期に性成熟に達します。オスの性成熟はもっと遅4歳〜6歳頃となります。長寿記録は飼育下ではアメリカのパームビーチ動物園で1971年7月から2001年10月まで30年3ヶ月の飼育記録があります。

天敵
ワシ、タカ、フクロウなどの猛禽類、ヘビ、ネコ科動物がいます。

コモンリスザル
分類   霊長目 オマキザル科
分布   南アメリカ
大きさ   体長 27〜37cm、尾長 35〜45cm、体重 オス750〜950g メス 600〜790g
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
Welker,C. and Schaefer-Witt,C.   New World Monkeys. In ( Parker, S.P. editor) Grizimek’s Encyclopedia of Mammals Volume 2, : McGrow-Hill Publishing Company 1990
Cawthon Lang KA   Primate Factsheets: Owl monkey(Aotus), Taxonomy, Morphology, Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center(University of Wisconsin) 2005
Nowak , R.M.   Walker’s Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press , Baltimore 1999

おもしろ哺乳動物大百科33(霊長目 オマキザル科) 2010.6.10

ヨザル属
ヨザル属は、かつてヨザルとアザールヨザルの2種に分けていました。しかし、最近の分類では細分化する傾向にあり、これまで亜種にしていたものを種として認め8〜11種に分けています。今回は、ヨザルを中心に一般的な事柄を紹介しましょう。
ヨザルは名前のとおり真猿類(オマキザル、オナガザル、類人猿の仲間)の中で唯一の夜行性動物です。

33)ヨザル
ヨザル属は中米からブラジル中央部、ボリビア、パラグアイと広域に分布していますが、本種はコロンビア東部から南ベネズエラ、ブラジル北部に生息しています。熱帯降雨林、2次林、林縁部の樹上で、樹冠から林床まで縦軸をくまなく利用しています。夜行性で夕方から朝まで餌を求めて遊動と休息を繰り返しながら過ごします。日中は樹の洞やツタの繁茂したところで寝ています。両親とその子どもで2〜5頭の家族型の群れをつくり、採食のときに群れがいくつか集まって数十頭になることもあります。ペアは生涯にわたり続くという報告があります。群れの間では、餌を巡ってなわばり争いがあります。なわばりの主張は、尾の基部にある分泌腺を樹にこすりつけ、また、尿を手の掌につけて更に足の裏にこすりつける尿あらい行動で臭いをつけて行います。コミュニケーションの手段として鳴き声も使われます。ネコ科動物のようなうなり声は、のどにある共鳴袋を使い発せられ、1km先まで届くといわれますが、なわばりの主張には使いません。

からだの特徴
体重は約1kgで真猿類の中では小型のサルです。本種は雌雄で体の大きさがあまり変わらないのも特徴の一つです。からだの色は背中、後頭部、4肢が灰色帯びた茶色です。大きな目の上に三角形の白い毛の部分と両眼の間とその外側の3本の黒か栗色の線が頭頂部で一つになっています。これら体毛や毛色の特徴や地理的分布、染色体数の違いなどから分類を細分化するようになりました。尾は毛が生えていて、巻きつけることはありません。体型はスローロリスに似ていますが、本種はすばやく動き、そのとき尾がバランスをとるのに役立っています。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪で、後肢で枝をつかむことができます。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。頬袋はありません。乳頭は胸部に1対あります。

  大きな丸い目でよく見えそうですね。写真家 大高成元氏撮影
大きな丸い目でよく見えそうですね。
写真家 大高成元氏撮影
   

えさ
食性は雑食性で、果実、花、葉、蜜、昆虫、クモ、などですが、動物園では、リンゴ、バナナ、ふかし芋、卵、ドッグフード、ミールワーム、バッタなどを与えています。

繁殖
飼育下の観察によれば、1年中繁殖可能ですが、出産は10月から1月に多く見られます。発情周期は約16日、妊娠期間は133〜141日、通常一産一子ですが、双子の例も時々あります。出産間隔は飼育下においては8ヶ月間隔で出産可能ですが、野生では約1年と報告されています。性成熟は雌雄共に約3歳、初産年齢は4〜5歳です。赤ちゃんの体重は約100g、生後1週間は母親と過ごす時間は授乳のときの約20%で、あとの約80%を父親が面倒をみます。父親は移動するときに赤ちゃんを抱き、授乳させるとき母親に渡します。

上野動物園の繁殖例では、うまれた日から父親に抱かれ、生後10日齢までは、授乳以外の時間を父親のお腹や背中をいったり来たりしていました。3週間齢になると背中におんぶして運ばれました。しかし、1例は父母共に育児放棄したため人工哺育しました。このときの赤ちゃんの体重は56g、生後4週齢で100g、130日齢で300gと増加していきました。その後哺乳を続けながら、固形物の餌として、生後38日齢で初めてバナナの薄切りを与え、65日齢から自分で採食させ、リンゴを食べました。127日齢で哺乳を中止し、ミルクを容器で飲ませ、180日齢で完全に離乳しました。

父親が育児に参加するのは、母親の体重がおよそ700gしかないのに、母親の体重に比べ60〜100gもある大きな赤ちゃんを出産直後から抱いて移動するのは体力的に負担が大きいためと推測されています。長寿記録は飼育下ではチェコのプラハ動物園で1974年11月から飼育されて2005年1月現在も飼育中という報告があります(飼育期間30年1ヶ月)。

天敵
フクロウなどの猛禽類、ヘビ、ネコ科動物がいます。

ヨザル
分類   霊長目 オマキザル科
分布   南アメリカ
大きさ   体長 30〜45cm、尾長 25〜45cm、体重 750〜1,100g
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
神門英夫   ヨザルの人工哺育 どうぶつと動物園 (財)東京動物園協会1982
Cawthon Lang KA  

Primate Factsheets: Owl monkey(Aotus), Taxonomy, Morphology, Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center(University of Wisconsin) 2005

Nowak , R.M.  

Walker’s Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press , Baltimore 1999

おもしろ哺乳動物大百科32(霊長目 オマキザル科) 2010.5.11

オマキザル科は、マーモセット科と共に、中央及び南アメリカに生息し、新世界ザルと呼ばれ、また、鼻の穴が外側に向いて開いていることから別名を広鼻猿類として区分することもあります。オマキザル科について今泉吉典博士は以下の11属に分類しています。 (1)オマキザル属(2)ヨザル属(3)ティティ属(4)リスザル属(5)サキ属(6)ウアカリ属(7)ヒゲサキ属(8)ホエザル属(9)クモザル属(10)ウーリークモザル属(11)ウーリーモンキー属。
この中からみなさんになじみ深いと思われるサルや、特徴のあるサルを8種類選んで紹介しましょう。

オマキザル属
オマキザル属は、(1)フサオマキザル(2)シロガオオマキザル(3)ノドジロオマキザル(4)ナキガオオマキザルの4種類がいます。新世界にすむサルの中でもとりわけ知能が高いと評価され、人の介護をするサルとして訓練し、活躍している個体もいます。知能が高いと称される理由の一つは、道具を使うことで、木の実を割るのに石を使って割ることや、動物園では棒を使って餌を手元に引き寄せることなどから推測しています。かつて子どもの頃から飼って馴らし、その器用さを利用し曲芸を教えて人々を楽しませていました。

32)フサオマキザル
オマキザルの中でノドジロオマキザルは中米にしかいませんが、フサオマキザルは他のオマキザルと分布域を重複させ、コロンビア、ブラジル大西洋岸、ブラジル南部と、最も広い地域に生息しています。熱帯、亜熱帯の常緑林、海岸林、二次林、川辺林などさまざまな樹林の中層部から下層部が生活空間で、地上に降りるときもあります。昼行性で夜間は外敵からの攻撃を避け高い樹上で個別に眠ります。
群れは成獣の雌雄がそれぞれ3〜6頭とその家族で構成されています。群内の優位個体は成獣オスで次に優位メスが続き、オスの中には優位のメスより劣位な個体もいます。群れ同士の間にはなわばりがあり、お互いに敵対していますが、主な原因は食べ物を巡るもので、大きな群れの方が有利となります。なわばりの主張は、胸部や生殖器の皮脂腺を使った匂いつけのほかに、尿を手の掌につけて更に足の裏にこすりつける尿あらいと呼ばれる方法で、通った跡に臭いをつける行動もあります。また、さまざまな鳴き声は、外敵の侵入を知らせ、あるいは群れの中のコミュニケーションに使われています。

  とても器用なサルとして有名で、頭の房はいろいろな形があります。写真家 大高成元氏撮影
とても器用なサルとして有名で、頭の房はいろいろな形があります。
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
体重は3〜4kgで真猿類の中では中くらいのサルです。からだの色は褐色か黒褐色、4肢は黒く、毛が粗く、色は淡褐色から黒褐色で腹部は薄くなっています。本種は頭部に毛の房があることに由来して命名されましたが、房のかたちは、三角形の山が2つあり角のような形をしたものや、逆三角形のように生えている個体など変化に富んでいます。尾は先端まで毛が生えており、把握力がありますが、クモザルのような力はなく、器用に使うこともできません。また手ほど器用ではありませんが足で物をつかむことができます。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪です。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。犬歯と小臼歯は大きく、第三大臼歯は小さいです。頬袋はありません。

えさ
野生では、ヤシの実をおよそ1kgもある石を使って割って中身を食べることが知られています。しかし、食性は雑食性で、昆虫、小鳥、卵、トカゲ、カエル、木の芽、花、水場があればカニと多種類のものを餌にしています。食物が少量で群れの中で取り合うときは、優位なオスとそばにいるのを許可された個体が確保する回数が増える、との報告があります。

繁殖
はっきりした繁殖期はなく、発情や出産時期は生息地や雨期の状況、餌の多少、日照時間などによって変わってきます。月経周期は15〜20日、発情は1〜8日間ですが多くは5日間くらいで、この間発情中のメスは優位のオスにたえずつき添い交尾し、その前後には他の劣位のオスとも交尾します。妊娠期間は150〜160日(180日の記載もあります)、1産1子で隔年に生まれます。メスの性成熟はおよそ4歳、オスは8歳で成獣の体格になります。赤ちゃんの体重は約200g〜250gで、生まれると自分でしっかり母親の背中にしがみついき、授乳されるときだけ胸に抱かれてお乳を飲みます。生後1ヶ月齢までの移動は母親が面倒をみますが、その後母親が餌を食べる間や移動のときなど仲間が協力して面倒を見ます。そして生後3ヶ月齢を過ぎる頃には一人で優位なオスの近くで過ごすのが増えてきます。授乳期間は野生で生後14〜15ヶ月齢、飼育下13〜14ヶ月齢までと推定されています。長寿記録は飼育下では、1934年5月から1979年7月まで45年2ヶ月飼育された報告があります。

天敵
人間以外では、フクロウ、タカなどの猛禽類、ジャガー、ピューマ、ジャガランディ、コヨーテ、タイラ、ヘビなどがいます。

フサオマキザル
分類   霊長目 オマキザル科
分布   南アメリカ北中部(コロンビアからブラジル大西洋岸、ブラジル南部まで)
大きさ   体長 32〜55cm 尾長 35〜50cm 体重 2.5〜4.0kg (オスはメスより約1kg重い)
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
Gron, K.J. (Reviewed by Linn, G.)   Primate Factsheets:Tufted capuchin (Cebus appella )
Taxonomy,Morphology,Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2009
Parker. S. P. (Editor)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2
McGraw-Hill Publishing Company, New York 1990
Nowak , R.M.   Walker’s Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press , Baltimore 1999
おもしろ哺乳動物大百科31(霊長目 マーモセット科) 2010.4.26

タマリン属
今泉吉典博士は本属を10種に分類していますが、最近の学者は更に細分化する傾向にあり、次のように11種あるいはそれ以上細かく分類するのが一般的となっています。
(1)フタイロタマリン(2)セマダラタマリン(3)エンペラータマリン(4)ダスキータマリン(5)シロクチタマリン(6)シロテタマリン(7)ブラックタマリン(8)クチヒゲタマリン(9)クロクビタマリン(10)ジェフロイタマリン(11)ワタボウシタマリン。
ジェフロイタマリンを除いてはそれぞれの種類は和名がその体の特長を表しています。今回紹介するワタボウシタマリンは、頭部にふんわりした冠毛があり、それが綿帽子を連想させる姿から命名されました。

31)ワタボウシタマリン
生息地は南米のコロンビア北西部の限られた地域です。森林に住んでいますが、湿潤な地域より乾燥した二次林や熱帯林の蔓(つる)植物の絡まった場所を好みます。小型のサルにとって蔓の繁茂している場所は、日中や夜間の休息場所として、また猛禽類のワシやフクロウなどの外敵から身を隠すために都合が良いのでしょう。
8〜10haもある広い行動域を遊動しなら採食するところは、他のマーモセットの仲間と同じです。タマリンの仲間は、生息域が重複しますが採食場所を樹層の高さを変えることでお互いに競合しません。本種は、樹層の下部0〜10mの低い空間を利用し、地面に降りることもあります。樹上では強力な4肢と鉤爪を利用してすばやく動き、餌の昆虫や地面の小型のトカゲなどを捕まえることができます。群れは通常2〜7頭の範囲で、構成メンバーの多くは成熟した雌雄が2〜3頭とその子どもです。なわばり内に侵入してきた群れに対しては排他的で敵対しますが、群内では攻撃的な行動がなく仲良く暮しています。なわばりの主張は、胸部、肛門、生殖器の分泌腺を木にこすりつけて行います。

  アップにすると、ワタボウシの命名がうなずけますね。写真家 大高成元氏撮影
アップにすると、ワタボウシの命名がうなずけますね。
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
毛が生えていない顔に頭から真っ白な綿帽子のような毛が肩辺りまで垂れ下がっているので、際立って白が美しく感じます。背中は黒く、腹部と4肢は白か白黄色、尾は赤茶色から先端にいくにしたがって黒くなっています。4肢には5本の指があり、前後肢共に親指は人間のように対向せず、他の指と同様な向きとなり、肢の親指のみ平爪で他は全て鉤爪です。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯2/2で左右上下合わせて32本です。下顎の犬歯は門歯にくらべて長く、牙のようになっています。

えさ
野生では、果実、昆虫、クモ、カエル、小鳥、卵、トカゲ、カタツムリ、キノコ、樹液、樹脂、などを食べる雑食性です。動物園では、いろいろな果物のほかに、鶏のササミ(煮たもの)、ゆで卵、ミールワーム、コオロギなどを与えています。

繁殖
野生及び飼育下共に、一つの群れでは、1頭の成獣メスが繁殖します。もし上位の繁殖メスが群れを離れた場合は、年長のメスか、順位の高い娘が代わって繁殖します。初発情年齢は生後15〜18ヶ月齢で、このころまでには、性成熟に達していると考えられます。発情周期は外見上わかりませんが、血中ホルモンと尿中ホルモンの分析結果から15日〜23日と推測され、この間発情のピーク時に交尾します。妊娠期間は約6ヶ月間で、野生の場合、1産1子が多く、飼育下では、1〜2頭、まれに3頭うまれます。繁殖回数は、野生の場合は通常、1年に1回、4月から6月ですが、この時期は果物が豊富に実り、昆虫も多い時期にあたります。飼育下では、7ヶ月ごとに出産したとの報告があります。赤ちゃんの体重は母親の15〜20%で、約40gです。2頭の赤ちゃんが生まれた場合は、メンバーの援助が必要で、父親や兄姉たちが赤ちゃんを背に乗せて移動し、授乳のときに母親のもとに連れて行きます。生き残るためには群れが協力して育児を手伝い、外敵から守っているのです。赤ちゃんは生後3.5月齢になると自分で移動します。乳頭数は胸部に1対です。飼育下での平均寿命は約13年、長寿記録では、1978年10月に生まれて、2005年1月現在26年2ヶ月飼育されてなお生存中という個体がいます。

天敵
減少の最大の原因は、人々が農地の開墾のために森林を伐採したことで生息域が激減したことです。また、かつてはペットと実験動物にするため密猟で捕獲され続けて生存が危ぶまれています。人間以外では、フクロウ、タカなどの猛禽類、ネコ科のマーゲイやヘビなどに狙われます。

ワタボウシタマリン
分類   霊長目 マーモセット科
分布   コロンビア北西部
大きさ   頭胴長 20〜30cm 尾長 30〜40cm 体重 350〜450g
絶滅の危機の程度   野生での生息数はわずかに1,000頭以下、その他に飼育されている個体は約1,800頭にすぎないと考えられています。このため国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、絶滅寸前の状態にある種として絶滅寸前種(CR)に指定し、保護されています。
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス1996
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986
Cawthon Lang KA   Factsheets: Cotton-top tamarin( Saguinus Oedipus) Taxonomy,
Morphology,Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2005
Parker. S. P. (Editor )   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals Volume 2, 
McGraw-Hill Publishing Company 1990
Nowak , R.M.   Walker’s Mammals of the world Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press 1999
おもしろ哺乳動物大百科30(霊長目 マーモセット科) 2010.4.12

ライオンタマリン属
本属は、ゴールデンライオンタマリン、ドウグロライオンタマリン(キンクロライオンタマリン)、キンゴシライオンタマリンの3種に分類されていますが、学者によってはこれらを亜種に分類する場合もあります。
3種は毛の色で区別できます。ドウグロライオンタマリン(キンクロライオンタマリン)は、たてがみと前腕、そして臀部が金色で他の部位は黒色です。キンゴシライオンタマリンは、臀部と大腿部が金色で他は黒色です。そして、ゴールデンライオンタマリンはその名が象徴するように、全身が金色で、たてがみをもったミニチュアサイズのライオンのような姿をした美しいサルです。マーモセット科の中では一番大型の種類ですが、それでも体重は600〜800gほどです。

30)ゴールデンライオンタマリン
生息地はブラジル南東部のリオ・デ・ジャネイロ州の大西洋沿いの一部に生息し、他のタマリンと生息域は重複しません。昼行性ですが、日中の暑い時間帯は休息し、早朝や夕方に活動します。3〜10mの樹上を生活空間にして、鉤爪を上手に使って枝から枝へ跳び移り、あるいは走りまわります。着生植物の繁茂している場所を好み、夜間はその茂みや樹の洞に隠れて眠ります。テリトリーはおよそ40ha以上とマーモセットの仲間では一番広い範囲を遊動しています。群れは2〜11頭の範囲ですが通常は3〜5頭です。群れの構成メンバーは繁殖ペアーとその子どもたち、及び成熟オスで、雌雄共に群れのメンバーはときどき入れ替わります。コミュニケーションに使う鳴き声は、超音波を含むさまざまな声を発し情報交換を行っています。なわばりの主張は、生後32〜40週齢から胸部、肛門、生殖器の分泌腺を木にこすりつけて行いますが、尿は他の種類ほど使いません。

  金色に輝くライオンのような美しいたてがみをもった小型のサルです。
金色に輝くライオンのような美しいたてがみをもった小型のサルです。
   

からだの特徴
全身が赤みがかった金色でおおわれて、頭部から肩にかけてマントのように長い毛があり、それがライオンのたてがみと似ているのでゴールデンライオンタマリンと命名されました。
4肢には5本の指がありますが、前後肢共に親指は人間のように対向せず、他の指と同様な向きとなっています。爪は足の親指は大きく平爪で、あとは全て鉤爪となっています。鉤爪があることで樹上を登り降りするときにしっかりしがみつけます。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯2/2で左右上下合わせて32本です。下顎の門歯(切歯)は犬歯より短く、犬歯が牙のようになっています。乳頭は胸部に2個あります。

えさ
野生では、果実、花、クモ、昆虫、カエル、小鳥、卵、トカゲ、カタツムリ、樹液、樹脂、などを食べる雑食性です。動物園では、いろいろな果物のほかに、鶏のササミ(煮たもの)、ゆで卵、ミールワーム、コオロギなどを与えています。

繁殖
飼育下の発情周期は2〜3週間ごとにみられ、妊娠期間は125〜132日でした。北半球では2〜8月、南半球では9〜2月に多く生まれます。北米のワシントンDCにある国立ワシントン動物園の例によれば、年に2回の出産が多く、出産例165頭の内訳は、双子が116頭、1子が41頭、3子が8頭でした。繁殖回数は、野生の場合、通常1年に1回ですが、栄養状態がよければ2回します。
母親は赤ちゃんを生後1〜2週齢の間、他のマーモセットの仲間と違い自分で運びます。その後、父親や群れの姉や兄が移動のとき運ぶのを手伝い、生後2ヶ月齢頃から自分で移動します。赤ちゃんの体重は50〜75gで全身を柔らかい金色の毛で被われていて、目は開いています。最初の2週間齢は授乳されるとき以外は眠って過ごし、やがて少しずつ周囲に目を向けるようになります。固形物は生後4週齢頃から食べはじめますが、授乳はその後、生後約3ヶ月齢まで続きます。性成熟はオスが約24ヶ月齢、メスは約18ヶ月齢です。母親は出産後、3〜10日経てば再び発情がきます。
寿命は飼育下で約14年。長寿記録では、1967年10月から1999年5月まで31年7ヶ月飼育された例があります。

天敵
人々が農地の開墾のために森林を伐採したことで生息域が激減したことに加え、姿が美しいため古くからペットにするため密猟で捕獲されて一時生存が危ぶまれました。人間以外では、フクロウ、タカなどの猛禽類、ネコ科のマーゲイやヘビに狙われます。

ゴールデンライオンタマリン
分類   霊長目 マーモセット科
分布   ブラジル南東部
大きさ   頭胴長 20〜35cm 尾長 30〜40cm 体重 600〜800g
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが非常に高い絶滅危惧種(EN)に指定されています。現在、保護政策が功を奏し、野生の個体数は約1000頭、飼育下で約500頭と推定されており、飼育下の繁殖個体を野生復帰する取り組みも実行されています。
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス1996
Cawthon Lang KA   Primate Factsheets: Golden lion tamarin (Leontopithecus rosalia) Taxonomy, Morphology, Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2005
Kleiman , D.G.   Mammalian Species No.148, Leontopithecus rosalia.
The American Society of Mammalogists 1981.
Parker, S. P. Editor   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2,
McGraw-Hill Publishing Company 1990.
Nowak , R.M.   Walker’s Mammals of the world Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press 1999
おもしろ哺乳動物大百科29(霊長目 マーモセット科) 2010.3.30

ピグミーマーモセット属
本属は、ピグミーマーモセット1種のみで、真猿の中で最小のサルとして有名です。頭胴長がわずかに12〜15cmほどなので、手のひらに乗せることができます。しかし、コモンマーモセットのように耳の房毛もなく、体色は黒色に金色が混じっているため、野生で木の茂みに隠れていたら保護色となり発見するのは難しいでしょう。

マーモセット(キヌザル)属
マーモセット属は、コモンマーモセット、シルバーマーモセット、サンタレムマーモセット(または、フサミミマーモセット)の3種に分類しています。シルバーマーモセットは、体が全体に白い種類と、黒褐色の種類がいます。フサミミマーモセットは長い耳ふさをもつ種類と短い種類がいます。このように、和名と体の特徴は必ずしも一致していません。ブラジルの東部、西部、南部やパラグアイ北部などにおおかた種ごとにすみ分けています。

  お母さんの両脇からかわいい赤ちゃんが顔をのぞかせています。写真家 大高成元氏 撮影
じっくりご覧になってください。
お母さんの両脇からかわいい赤ちゃんが顔をのぞかせています。
写真家 大高成元氏 撮影
   

29)ピグミーマーモセット
生息地はアマゾン河の上流に沿った地域で、ブラジル、コロンビア、ペルー、エクアドルにまたがっています。熱帯林や川辺林、二次林から最近では伐採地まで見られ、7〜10mの樹上で生活しています。昼行性で、数頭の成獣と子どもたちで5〜6頭の群れを作り、朝夕の涼しい頃に活動します。テリトリーは0.5ha以内が多く、1本から数本の樹上で生活し、古くなると新しい木に移ります。夜間眠るときは、木の洞や、木にからまった蔦(つた)の茂みをねぐらとして使い、体を寄せ合って眠ります。移動は4足歩行しますが、水平に数mくらいは簡単に跳びはねて素早く移動できます。コミュニケーションの手段として、さまざまな鳴き声を出しており、一つには、外敵からの防御に役立っていると考えられます。

からだの特徴
大きさは、頭胴長が12〜15cm、尾長が17〜23cm、体重は100〜120gで、シマリス程度の大きさです。頭は180度回すことできるので広い範囲を見ることができます。4肢には5本の指がありますが、前後肢共に親指は人間のように対向せず、他の指と同様な向きとなっています。爪は足の親指だけが平爪で、あとは全て鉤爪となっています。鉤爪があることで樹上を登り降りするときにしっかりしがみつけます。なわばりの主張は、尿のほかに、胸部、肛門、生殖器に分泌腺があり、木にこすりつけて行います。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯2/2で左右上下合わせて32本です。下あごの門歯(切歯)と犬歯はほぼ同じ長さで、樹皮に穴を開けるときに使います。樹液は滲出するまで、半日もかかるので、次回用に穴を開けておくのです。そのために彼らのすむ樹木には小さな穴が数多く見られます。マーモセットの味覚器官である乳頭状の突起はヒトが9個に対し3個しかないので、ヒトほど繊細な味の区別はできないかもしれません。

えさ
野生では、樹液、樹脂、クモ、昆虫、木の葉、果実、コケなどを食べます。樹液をなめるときは垂直に樹にしがみついてなめます。動物園では、果物やミールワームを与えています。赤ちゃんのときは、タンパク質が不足するとクル病などになりやすいので、紫外線を充分取れるように日光浴に注意して飼育しています。

繁殖
一つの群れの中で、1頭のメスのみが繁殖します。父親や群れの姉や兄が育児を手伝うのは他のマーモセットと同じところですが、サルの仲間で父親が育児に参加する種類は少ないのです。彼らは赤ちゃんを抱き、授乳のときに母親のもとに連れて行きます。日本平動物園は本種の飼育や繁殖に成功している園の一つですが、父親が赤ちゃんを背中に乗せて子守りをして、母親をサポートしたと報告しています。発情は6日間続きます。妊娠期間は133〜140日、1産に双子が多いのですが、飼育下ではまれに3〜4頭の出産が報告されています。繁殖は通年で見られますが、飼育下では1年に2回、5〜7ヶ月間ごとに繁殖し、野生では秋と春(1年の中ごろと終わり)が多いと報告しています。新生児の体重は約15g、授乳期間は生後約3ヶ月です。母親は出産後、約3週間経てば再び発情期がきます。性成熟はオスが16ヶ月齢、メスは15〜17ヶ月齢です。
寿命は約12年です。長寿記録としては、1983年1月6日から2001年9月2日まで18年7ヵ月飼育された記録があります。

天敵
農地の開墾のために森林を伐採し、生息地が大きく減少したほか、ペットにするための密猟で一部地域では生息数が減少しています。人間以外では、フクロウ、タカなどの猛禽類、ネコ科のマーゲイやオセロット、イタチ科のタイラ、ヘビなどに狙われます。

ピグミーマーモセット
分類   霊長目 マーモセット科
分布   アマゾン河上流地域
大きさ   体長 12〜15�  尾長17〜23�  体重 100〜120g
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版レッドリストでは、分布が比較的広く普通に見ることができるので、現在のところは絶滅の恐れが少ない低危急種(LC)になっています。しかし、一部の地域では生息地が失われ数が減少していると報告されています。
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山 幸丸編   サルの百科 データハウス 1996
ジョン・R・ネイピア/プルー・H・ネイピア著
伊沢紘生訳
  世界の霊長類 どうぶつ社1987
Cawthon Lang KA   Primate Factsheets: Callityrix pygmaea Taxonomy, Morphology,
Ecology, Behavior & Conservation,
National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2005
Parker. S. P. (Editor)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2 
McGraw-Hill Publishing Company, New York 1990
Nowak , R.M.   Walker’s Mammals of the world Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press 1999
おもしろ哺乳動物大百科28(霊長目 マーモセット科) 2010.3.15

マーモセット(キヌザル)科
マーモセット科は、今泉吉典博士(1988)によると5属(マーモセット属・ピグミーマーモセット属・タマリン属・ライオンタマリン属・ゲルディモンキー属・)18種に分類され、中米から南米まで広く分布している小型のサルです。
マーモセットとは、フランス語(marmouset)で、かつては「小さなもの」を指していたといいます。一方、マーモセットをキヌザルと呼ぶこともありますが、こちらはドイツ語に由来し「美しい毛」を意味しています。いずれの種類も小型で、頭胴長が15〜30cmほどのかわいいサルたちで、古くからペットとしても人気がありましたが、神経質な面もあり寿命を全うさせるのは困難でした。

マーモセット(キヌザル)属
マーモセット属は、コモンマーモセット、シルバーマーモセット、サンタレムマーモセット(または、フサミミマーモセット)の3種に分類しています。シルバーマーモセットは、体が全体に白い種類と、黒褐色の種類がいます。フサミミマーモセットは長い耳ふさをもつ種類と短い種類がいます。このように、和名と体の特徴は必ずしも一致していません。ブラジルの東部、西部、南部やパラグアイ北部などにおおかた種ごとにすみ分けています。

  顔の白い毛が美しいサルです。写真家 大高 成元氏撮影
顔の白い毛が美しいサルです。
写真家 大高 成元氏撮影
   

28)コモンマーモセット
ブラジル東部の熱帯林や二次林にすんでいますが、乾燥した地域を好むようです。昼行性で1頭の成獣のオスとメス、及び子どもたちで群れをつくります。子どもは成長しても群れに留まり、10頭前後の群れとなりますが、家族が多くなっても子ども作るのは優位の雌雄だけです。夜間は木の洞や木陰で休息します。聴覚にすぐれ、人間では聞き取れない領域の30〜80kHzの超音波を出して交信する、という報告もあります。ちなみに人間の場合、高音は20kHzといわれています。視覚、嗅覚もすぐれています。

からだの特徴
体は背中が灰褐色で背中と大腿部の外側に灰色の横縞があります。尾は黒と白の輪になっています。耳周りに長いふさ毛があります。大きさは、頭胴長が25〜30cm、尾長が25〜30cm、体重は200〜500gでニホンリス程度の大きさです。後肢が前肢より短く、移動は樹幹をとびはねるよう身軽に移動します。4肢には5本の指がありますが、前後肢共に親指は人間のように対向せず、他の指と同様な向きとなっています。爪は足の親指だけが平爪で、あとは全て鉤爪となっています。睾丸や鼠径部に分泌腺があり、木にこすりつけてなわばりを主張します。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯2/2で左右上下合わせて32本です。下あごの骨がV字型で、門歯と犬歯の長さが同じくらいなのも特徴のひとつです。乳頭は胸部に1対あります。

えさ
野生では、樹脂、クモ、トカゲ、カエル、小鳥の卵、木の芽、花、花の蜜、果実などを食べますが、コモンマーモセットは他の種類に比べ昆虫食が強いと言われます。動物園では、コオロギやミールワーム、ゆで卵、煮干、ほかに果実類を与えています。

繁殖
一つの群れの中で、1頭のメスのみが繁殖します。父親や群れの子どもが育児を手伝う点が他のサルと違うところです。彼らは赤ちゃんを抱き、授乳のときになると母親のもとに連れて行きます。発情周期は約30日で、発情は2〜3日続きます。妊娠期間は140〜150日、1産に双子が多いのですが、飼育下ではまれに3〜4頭の出産が報告されています。出産期は、飼育下では1年中見られますが、ブラジルでは、10月下旬から11月、及び3月下旬から〜4月に多いと報告されています。新生児の体重は20〜35g、授乳期間は生後約100日くらいです。性成熟はオスが11〜15ヶ月齢、メスは14〜24ヶ月齢です。寿命は野生では約10年です。長寿記録としては、1978年9月から2001年7月まで22年10ヵ月間、飼育された記録があります。

天敵
農地の開墾のために森林を伐採し、大きく生息地が減少したほか、ペットにするための密猟で生息数が一部地域で減少しています。人間以外では、フクロウ、タカなどの猛禽類、ネコ科のマーゲイやヘビに狙われています。

コモンマーモセット
分類   霊長目 マーモセット(キヌザル)科
分布   ブラジル東部
大きさ   体長 18〜30�  尾長17〜40�  体重 230〜450g
絶滅の危機の程度   絶滅危機の程度:国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、保護区内での生息数が多く、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)になっています。しかし、一部の地域では、生息数が減少しており、早めの保護政策が必要としています。
CITES(ワシントン条約)付属書�に記載され、商業目的の国際取引は可能ですが、輸出入にさいしては輸出国の輸出許可書が必要です。
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山 幸丸編   サルの百科 データハウス 1996
Napier,J.R.   Handbook of Living Primates, and Napier, P.H.
Academic Press, London 1967
Parker. S. P. (Editor)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2 
McGraw-Hill Publishing Company, New York 1990
Nowak , R.M.   Walker’s Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press , Baltimore 1999
おもしろ哺乳動物大百科27(霊長目 メガネザル科) 2010.3.15

メガネザル属
サルの仲間で一番目の割合が大きく、片方の目だけでも脳より大きな目の持ち主です。通常、目が大きな動物は夜行性で、夜間に目が見えるように、目の奥に光を増幅するタペタムを持っています。ところが、メガネザルの場合には真猿類のようにタペタムがないことなどから、真遠類にするか原猿に入れるか議論の的になっています。しかし、タペタムはなくとも夜行性動物の中でもひと際大きな目と、するどい聴覚を使い夜間の生活を可能にしています。
メガネザル科は、今泉吉典博士は(参考文献1)、1属3種:(1)ニシメガネザル(ボルネオメガネザル) (2)フィリピンメガネザル、そして今回紹介する(3)スラウェシメガネザル(セレベスメガネザル、オバケメガネザル)に分類していますが、最近は更に細かく種を分ける傾向が見られます。

27)スラウェシメガネザル(別名セレベスメガネザル、オバケメガネザル)
スラウェシメガネザルは、生息域のスラウェシ(セレベス)島及びその周辺に生息しますが、地域によって特徴があるので、(1)中部に住むダイアナメガネザル(2)中央部高地に住むピグミーメガネザル(3)東部にすむヒガシメガネザル(スラウェシメガネザル)の3種に分類する学者もいます。このうち、ピグミーメガネザルは絶滅したと考えられていましたが、2008年11月に北米のテキサスA&M大学の研究チームが、標高2100mの高地の森林で生存個体を捕獲しました。これはじつに87年ぶりの発見で、捕らえた個体の体重は約60gで発信機を装着して放したそうです。
本種は、主に多雨林や二次林、低木林、マングローブ、そして農園などの、地上から1〜2mの低い樹上が生活場所となっています。食性がフクロウの仲間と似かよっていますが、フクロウより低い場所にすむことで、共存しています。通常は、母系の家族やペアで生活し、巣は作りませんが日中は樹の茂みや、樹洞などの決まった場所1箇所、稀に数箇所で休んでいます。日没から夜間、早朝にかけて採食行動や一般的な親子のグルーミング、休息、繁殖行動などを行います。なわばりは尿や上腹部腺の分泌物を木にこすり付けて主張しています。後肢の踵の部分が長く跳躍力に優れ、カエルのように跳びはねることができます。英語名のTarsierは長く伸びた中足骨に由来します。

  どうです、この大きな目、でもネコの目のように赤く光っていないでしょう。写真家 大高 成元氏撮影
どうです、この大きな目、でもネコの目のように赤く光っていないでしょう。
写真家 大高 成元氏撮影
   

からだの特徴
日本名のメガネザルは、メガネをかけたように見えるサルというのが由来になっています。体色は灰色から淡黄色など個体差があります。頭胴長は10〜15cmでシマリスと同じくらいの大きさです。顔は前方を向いた大きな目と小さな顎、首が短く180度後ろに左右回すことできるので、360度を居ながらにして見ることができます。耳はうすく膜質で動かすことができ、鼻は乾いています。前後肢共に5本の細長い指をもっており、指の先は吸盤のように膨らんでいて物を掴みやすくなっています。後肢の第2指と第3指は鉤爪でグルーミングなどに使いますが、そのほかの前後肢の指は平爪です。親指は完全な対向性ではありませんが、広げることができて物を握ることができます。尾は長く先端の半分から3分の2くらいの部分に毛が生えており、皮膚はネズミの尾のようにうろこ状になっています。また尾は巻きつけられませんが、尾を縦にしてずり落ちるのを防ぎます。歯式は門歯2/1、犬歯1/1, 小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて34本です。下顎の門歯はまっすぐ上を向いて生えています。乳頭は胸部と鼠径部に各1対で計4個あります。

えさ
野生でのえさは、甲虫、アリ、サソリなどの節足動物、トカゲ、コウモリと昆虫など肉食が主食で、植物質のものは採食しません。水は木の葉などに溜まった露をなめて飲みます。

繁殖
出産は1年中見られ、妊娠期間は約6ヶ月といわれていますが、上野動物園での出産例によると約4カ月で出産した例も報告されています。フィリピンメガネザルの場合、発情周期は25〜28日、妊娠期間は約6ヶ月、ニシメガネザルでは、発情周期が18〜27日でこの間の数日の間に交尾します。
1産1子で、全身は毛で被われており、目は開いています。赤ちゃんの体重は、20〜30gで生まれた日からヨチヨチと歩き、軽くジャンプします。赤ちゃんは母親の腹部にしがみついたり、口でくわえられて運ばれます。6週間くらいで獲物を捕まえはじめ、その後授乳が減少して生後2カ月半ぐらいで離乳します。15〜18ヶ月で成獣の体重と同じになります。長寿記録は2004年9月現在、8年3カ月飼育されてなお生存中の記録があります。また近縁種のニシメガネザルで16年4カ月、フィリピンメガネザルで14年2カ月の飼育記録があります。

天敵
野生の天敵としては、樹上性のヘビ、トカゲ、フクロウ、野生のネコがいますが、大きな脅威となるのは森林の開発による生息域の大幅な減少が挙げられます。

スラウェシメガネザル(セレベスメガネザル、オバケメガネザル)
分類   霊長目 メガネザル科
分布   インドネシアのスラウェシ(セレベス)島、サンギヘ諸島、ペレン島
大きさ   体長 8.5〜16.0�  尾長13.5〜27.5�  体重 80〜165g
絶滅の危機の程度   絶滅危機の程度:国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、スラウェシ島とその周辺に分布する種を6種に分け次のようなカテゴリーに指定しています。
サンギヘメガネザル、ペレンメガネザル:絶滅危惧種(EN)
ヒガシ(スラウェシ)メガネザル、ダイアナメガネザル:危急種(VU)
ラリアンメガネザル、ピグミーメガネザル: 情報不足種
なお、近縁種のニシメガネザルは危急種に、フィリピンメガネザルは近危急種に指定されています。
いずれの種も森林伐採と乱獲で生息数が減少しています
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
今泉吉典 監修
D.W.マクドナルド編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
林壽郎 著   動物� 標準原色図鑑全集 別巻 保育社 1968
Nowak, R. M.    Walker’s Mammals of the world Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press 1999
杉山 幸丸編   サルの百科 データハウス 1996
Gron, K.J.   Primate Factsheets: Tarsier(Tarius) Taxonomy, Morphology, Ecology, Behavior & Conservation,
National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2008
おもしろ哺乳動物大百科26(霊長目 ロリス科) 2010.2.10

ガラゴ属
ガラゴはのんびりとしたスローロリスとは対照的に、まるで瞬間移動するようにすばやく動くのが魅力の一つです。今から30〜40年も前にはペットとして愛され、一般の方も飼育していましたが、小型の種類ほど昆虫食が強いため、冬季になると餌に窮し飼育が難しくなり、飼い切れないことが多々ありました。
ガラゴ属はこれまで4種、(1)アレンガラゴ、(2)グラントガラゴ、(3)ザンジバルガラゴ、(4)ショウガラゴに分類していました。ところが近年の分類では、これまで種に分類していたものを新たに近縁属と位置づけ、次の4つの属:(1)アレンガラゴ属(2)デミドフガラゴ属(3)トマスガラゴ属(4)ザンジバルガラゴ属とする学者もいます。

26)ショウガラゴ(セネガルガラゴ)
ショウガラゴは、別名をセネガルガラゴ、あるいはレッサーブッシュベイビーなどと呼ばれ、7〜10亜種に分類していました。しかし、これらの亜種を整理し、ショウガラゴ(セネガルガラゴ)の近縁種として(1)ソマリアガラゴ(2)モホールガラゴ(3)ニシハリヅメガラゴ(4)マチーガラゴの4種を新たに種として認定している学者もいます。
西アフリカから中央アフリカ、ウガンダ、ケニア、タンザニアまで広く生息して、木の多い潅木林、川辺林、木が生えている草原などアフリカの多雨林を除き周辺を大きく取り囲むようにして生息しています。夜行性で日中は樹冠や樹洞、やぶの中に作った巣や古い鳥の巣で、成獣のオスは単独で、母系の家族はグループで寝ています。13箇所のねぐらを使い、約50%は決まった巣で寝ていたとの報告もあります。性成熟したオスの子どもは母親から離れてなわばりを持つようになります。なわばりはやがてメスも持ちますが、オスの方が広い地域をもって多くのメスと交尾するチャンスをねらっています。なわばりの印に、陰部や頚部、胸部を木にこすりつけるほか、尿を手足にためてこすりつけて歩く習性があって、この匂いが通過した後に残ってなわばりとなります。このほかコミュニケーションの手段として、鳴き声を警戒音や喧嘩、親子の会話などで合わせて25種類に分類した学者もいます。

  大きな目と、ふんわりとした毛でおおわれ、なんとも言えずかわいいですね。 尾も長くバランスを取るのに役立っています。写真家 大高 成元氏撮影
大きな目と、ふんわりとした毛でおおわれ、なんとも言えずかわいいですね。 尾も長くバランスを取るのに役立っています。
写真家 大高 成元氏撮影
   
からだの特徴
鼻鏡と手足の裏以外は、顔から体全体が短く厚い羊毛質の毛で被われています。夜行性動物特有のタペタムのある大きな目は、光を増幅して暗いときにも見ることができます。耳は大きくひだがあり、日中寝るときは折りたたむことができます。4肢には5本の指があり、後肢の第2指だけは鉤爪となりグルーミングをする時に使います。後肢が長く跳躍力に優れ、樹間を3mくらい跳び移りながら移動します。また両足だけでピョンピョンと跳ねて歩くこともでき、このとき長くふさふさした尾がバランスをとるのに役立っています。握力はとても強く後ろ足でぶら下がることも容易にできます。歯式は門歯2/2、犬歯1/1, 小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。下顎の門歯は犬歯もふくめて櫛歯(くしば)になっています。乳頭は2対あるいは3対あります。

えさ
野生でのえさは、樹脂、昆虫を好みますが他にも、小動物、鳥の卵、果実などを食べ、大型のガラゴの仲間より動物食が強い傾向があります。昆虫は跳びついて捕まえますが、目の前を横切ると一瞬のすばやさで手を伸ばし捕まえることができます。聴力が発達しているので昆虫の羽ばたきを聞き、前方に向いた目で正確に捉えるのです。下顎の櫛歯は毛づくろいに使われます。

繁殖
ショウガラゴは1年に2回繁殖可能ですがその時期は地域によって異なります。南アフリカでは9月から10月と1月から2月、ウガンダでは12月から2月と7月が出産シーズンにあたります。妊娠期間は120〜140日です。発情周期は約32日で2〜7日間続き、この間の数日に交尾します。1産に2子が多く、1子や3子の例もあります。赤ちゃんの体重は約12gですが、生後1週間齢で2倍、1ヶ月齢で約5倍になります。出産時に目は開いており、体は厚い毛でおおわれています。10日前後で初めて巣から離れ、約1ヶ月で昆虫を捕まえることができます。母親は赤ちゃんを口でくわえて移動します。飼育下では11週授乳していました。オスの性成熟は約10ヶ月でその頃母親のもとから離れますが、メスはもっと長く母親と一緒にいます。長寿記録は1995年現在18年10ヶ月飼育されてなお生存中という記録があります。

天敵
ジャコウネコ科のマングースやジェネット、フクロウ、ヘビ、飼いネコやイヌなどがショウガラゴを捕食します。また一部地域では農地の開墾のために森林が伐採され生息地が減少しています。

ショウガラゴ(セネガルガラゴ ・ ブッシュベイビー)
分類   霊長目 ロリス科
分布   アフリカ:セネガルからエチオピア、ウガンダからタンザニア
大きさ  

体長 13〜21�  尾長20〜30�  体重 110〜 300g

絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)になっています。
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
今泉吉典 監修
D.W.マクドナルド編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山 幸丸編   サルの百科 データハウス 1996
Nowak, R. M.    Walker’s Mammals of the world Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press 1999
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals
The University of California Press 1991
おもしろ哺乳動物大百科25(霊長目 ロリス科) 2010.2.3

スローロリス属
本属は、長い間スローロリスと一回り小柄なレッサースローロリスの2種に分類されていました。しかし、IUCN発行のレッドリスト2008年版によれば、これまで亜種に分類していたものを、種に格上げした結果、(1)ベンガルスローロリス(2)スンダスローロリス(3)ボルネオスローロリス(4)ジャワスローロリス(5)レッサースローロリスの5種に分類しています。この中で、ベンガルスローロリスは体重が他の種類より重くおよそ2kgになりますが、他の種類では500g〜800gほどです。レッサースローロリスの体重は250〜450gで、別名ピグミースローロリスとも呼ばれています。

25)スローロリス
スローロリスは分類学者によって、2種から5種に分類していますが、体のつくりや習性は似ているため、全般的に概説しましょう。生息地は、インドのアッサム、インドシナ半島、ビルマ、タイ、インドシナ、マレー、スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島、フィリピンです。夜行性で日中は森林の高い木や樹洞、あるいは竹林で寝ており、夜間ゆっくりと採食するために動き始めます。野生では単独生活者と言われていますが、飼育下ではペアや家族グループで同居することができます。なわばりを持ち、尿や体をこすりつけて匂い付けをし、あるいは数種類の鳴き声を発してコミュニケーションを行っています。

  ほのぼのした感じがするサルでしょう。
ほのぼのした感じがするサルでしょう。
大高 成元氏撮影
   
からだの特徴
顔や体の色と模様に違いがあり、その特徴から種または亜種を特定できます。体は短く厚い羊毛質の毛で被われています。夜行性動物特有のタペタムのある大きな目は、光を増幅して暗いときに見ることができます。4肢には5本の指がありますが、前後肢の第2指は短くなっています。後肢の第2指だけは鉤爪で他のすべての指は平爪となっています。尾は非常に短く毛で隠れていて一見すると尾がないように見えます。名前のとおり動きが緩慢で、ゆっくり動くことで代謝を極力抑えています。握力はとても強く片手でぶら下がることも簡単にできますが、ジャンプすることができなくて、必ず一本の肢でどこかに掴まっています。口の先端部は鼻鏡となっています。歯式は門歯2/2、犬歯1/1, 小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。下顎の門歯と犬歯はやや上向きに前方に突き出し櫛のような形をしています。乳頭は2対あります。

えさ
野生でのえさは、カタツムリやナメクジなどの軟体動物、昆虫、クモ、トカゲ、トリ、小型の哺乳類、樹液、果物などを食べています。獲物をつかむときはすばやく両足で木をつかんで立ち上がることができ、両手で獲物を捕らえます。

繁殖
野生のスローロリスは年間を通して繁殖していますが、飼育下の発情期は8月から12月、出産期は3月から5月でした。飼育下の発情周期はスンダスローロリスの場合、29〜45日で発情は1〜5日間続きます。産子数は通常1産1子で稀に双子がありますが、レッサースローロリスでは双子の割合が高くなります。赤ちゃんは30〜60gあり、出産後すぐに母親のお腹にしがみつくことができ、授乳期間は5〜7ヶ月です。レッサースローロリスの場合、オスの性成熟は生後14ヶ月齢ですが、飼育下では生後17ヶ月齢で繁殖可能となっています。メスの性成熟はスンダスローロリスが生後17〜24ヶ月齢です。この2種類の妊娠期間は平均で188〜192日でした。寿命はふつう15年ぐらいですが、長寿記録としては1978年10月にロンドン動物園で生まれたスンダスローロリスが、2004年7月現在25年9カ月飼育されてなお生存している記録があります。

天敵
人間がペットとして飼育することや、東南アジアの人々は漢方薬や食料として使うために捕獲しています。この他に森林を伐採することで生息域を失っています。このほか、野生のネコ科動物やマレーグマが天敵です。

飼育は原則的に禁止されています。
スローロリスは人間がかわいいと思う条件である、小さく丸みを帯びた体と柔らかい毛、ゆっくりとした動きが人々を魅了して、ペットとして飼育している人もいました。しかし、2007年(平成19)に種の保存法(絶滅の恐れのある野生動植物の種の保存に関する法律)により国際希少動植物種に指定され、また動物愛護管理法(動物の愛護及び愛護に関する法律)で保護され、現在は原則的に売買が禁止されています。また、許可を受けて飼育しても、虐待、遺棄すると罰せられます。本種は歯がするどく、咬まれた人のなかにはアナフィラキシーショックで蕁麻疹(じんましん)などを発症し、重症に陥ることもあります。咬まれたら速やかに医療機関で受診するようお勧めします。

スローロリス
分類   霊長目 ロリス科
分布   南および東南アジア
大きさ  

スローロリス(レッサースローロリス以外)
体長 270〜380mm 体重 400〜2000g 
レッサースローロリス 
体長 180〜220mm 体重 250〜 450g

絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、ジャワスローロリスは絶滅の恐れが非常に高い絶滅危惧種(EN)に、他の4種は絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定されています。現在は国立公園や保護区で保護されています。
主な参考文献
今泉吉典 監修
D.W.マクドナルド編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
杉山 幸丸編   サルの百科 データハウス 1996
Nowak, R. M.    Walker’s Mammals of the world Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press 1999
中村壮登   スローロリスの新しい分類と保護規制 財団法人東京動物園協会 冬号2010
おもしろ哺乳動物大百科24(霊長目 アイアイ科) 2010.1.12

アイアイ属
現在、生息しているアイアイは1科1属1種ですが、絶滅した1種が発見されています。いまから15〜20年前まで、アイアイは長い中指で樹幹をトントンと叩き、その音の反応で中に虫が潜んでいるかどうか探って主食にしている、と考えられていました。しかし、島泰三先生が野生のアイアイを詳細に調査した結果、主食はラミーという木の実であり、昆虫を食べたのは食物の観察時間のうち2%弱であった、ことが判りました。
動物園に勤務していた時代、飼育するときの基本は、野生のときどのような生活をしているか知ることでした。現在、上野動物園は稀少動物となったアイアイを飼育している世界でも数少ない動物園です。飼育に当たっては、島先生の講演やご高著が大いに参考になっていることでしょう。
  こんな感じのサルです。
こんな感じのサルです。
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24)アイアイ
島の南北にのびる山脈沿いのジャングルから海岸線まで、東側は広く南から北まで、西側は中央部の主に海岸線や北側の一部にそれぞれ点在して生息しています。生息域は、熱帯多雨林や多湿の地域、マングローブや、乾燥したやぶから人間が開発した農園まで、様々な環境のなかで生活しています。アイアイは夜行性の霊長類の中で一番大型の種類で、単独で生活していますが、ときにはペアでいるのも観察されています。日中は7〜20mの高い木の上に、小枝や枯葉で作った巣や、座りやすい木の又や洞で休んでいます。巣は数日で代わり、2年間で100カ所以上作った記録があります。オスのなわばりは100〜200haですが、メスは30〜50haと狭くなり、この中を一晩に数km移動しながら生活しています。

  前肢の中指は細長く、この指で果実の実をほじくり出します。後肢の親指だけが平爪で、そのほかの指はすべて鉤(かぎ)爪です。
前肢の中指は細長く、この指で果実の実をほじくり出します。
後肢の親指だけが平爪で、そのほかの指はすべて鉤(かぎ)爪です。
(クリックすると拡大します。)
   
からだの特徴
体色は黒、または黒褐色で毛先がうすい白色になっています。鼻はピンクで両側から目の上にかけて白味がかっています。尾はおよそ10cm の長い毛で被われています。耳は黒く大きて聴力が発達しており、木の中に潜む幼虫の気配を聞くことがでます。目は黒い縁取りに黄赤色で、瞬膜があり、目の乾燥を防ぐことができます。
4肢の指はそれぞれ5本で、後肢の第1指のみ平爪ですが、他の指はすべて鉤爪となっています。最も長い指は薬指で中指より1cm程度長く太いのですが、果実の実を取り出したり、幼虫を取り出すときは細長い中指を使います。匂いつけは、外陰部、頚部、頬部を木にこすり付けて行います。さらに、尿や犬歯で強く咬んだ痕跡を残すこともあり、これらのことを合わせて年齢層や性差、発情の有無などを感知しています。歯式は門歯1/1、犬歯0/0、 小臼歯1/0、大臼歯3/3で上下左右合わせて18本です。このうち門歯は一生伸び続けます。乳頭は鼠径部に1対あります。

えさ
野生では、ラミーの実、果実、種子、花蜜、昆虫の幼虫、菌類などを食べています。上野動物園の給餌例は、アボガド、パパイア、ミールワーム、ハチミツ、他を与えています。現地の動物園では、この他に豊富にあるヤシやライチの実も与えています。

繁殖
性成熟は2〜2.5歳で、3〜4歳で初産後、2〜3年間隔で出産します。発情期は決まっていませんが年に1回発情し、数日間続きます。発情中は鳴き声をあげ、外陰部が腫脹し匂いが強くなります。妊娠期間は160〜170日、通常は1産1子で体重は90〜140gです。ちなみに、上野動物園の出産例によると、生後1日齢で、体重85g、体長11cm、尾長13.5cmとあります。生後1ヶ月半齢くらいは巣の中で過ごし、その後も約3ヶ月間は巣の近くにいて、母親が開けたラミーの実や食べ残した食物を食べます。生後4ヶ月半ころから自分で朽木の中にいる幼虫を探し始めます。母乳と母親が残したものを食べる生活が1年間続き、生後2年間は母親と一緒に生活しています。長寿記録はオランダのアムステルダム動物園で、23年3ヶ月の飼育記録があります。

天敵
人間が行う森林開発が生息域を狭め生息数を減らす大きな原因になっています。野生動物としては、マダガスカルで最大の肉食獣で体重が10〜20kgになるジャコウネコの仲間、フォッサがいます。

アイアイ
分類   霊長目 アイアイ科
分布   マダガスカル東部、北西部、及び西海岸中央部
大きさ  

体長 35〜45cm
尾長 約45〜60cm
体重 2〜3kg

絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れはないが、近い将来その恐れがあるので近危急種(NT)に指定されています。現在は国立公園や保護区で保護されています。
主な参考文献
Aleta Quinn
and Don E.Wilson
  Mammalian Species Daubentonia madagascariensis
The American Society of Mammalogists 2004
今泉吉典 監修
D.W.マクドナルド編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
島 泰三   どくとるアイアイと謎の島マダガスカル上・下 1997
杉山 幸丸編   サルの百科 データハウス 1996
Nick Garbutt   MAMMALS OF MADAGASCAR
A&C BLACK LONDON 2007
Nowak, R. M.    Walker’s Mammals of the world Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press 1999
Weigel, R.   Longevity of Mammals in Captivity; From the Living Collections of the World. E. Schweizerbart’sche, 2005.

おもしろ哺乳動物大百科23(食肉目 ネコ科) 2010.1.1

新年明けましておめでとうございます

今年の干支はトラ、そこで番外編でトラを紹介しましょう。
トラはライオンよりひとまわり大きくなるネコ科で最大の肉食獣です。WWFの2008年の報告によれば、20世紀初頭10万頭もいたと推定されていたトラが、現在では3500〜5000頭に激減しているそうです。そして、1940〜1980代で、カスピトラ、ジャワトラ、バリトラは絶滅しました。いま、アジアの国々はトラを守るために様々な保護策を行っていますが、私たちもまた、地上最強の動物ともいわれるトラの窮状を知り、彼らの保護に寄与したいものです。
まずはジャングルの王者「トラ」の強さにあやかって今年もお互いに元気に頑張りましょう!!
  大高 成元氏撮影 
新年おめでとう! 今年もよろしく、ウッフン!(トラの鳴き声です)
大高 成元氏撮影  
新年おめでとう! 今年もよろしく、ウッフン!(トラの鳴き声です)

23)トラ
トラは、北の寒い中国東北部やロシアのウスリー、アムール地方から、南のインド亜大陸(スリランカを除く)、インドネシアの島々など広い範囲に生息しています。体の模様や体格などの違いから8〜10亜種に分類していますが、島に住んでいるトラは大陸にいるものより小型です。生息する場所は、ウスリーや中国東北部では針葉樹林や落葉樹林に住み、インドやスマトラなど熱帯多雨林では沼沢地やマングローブ周辺、乾いた森など広い範囲に住んでいます。
夜行性で繁殖期以外は単独で生活し、なわばりの広さは雌雄や生息域で異なり20k�〜180k�あります。獲物が少ない乾期や獲物になるシカなどが少ない場所でより広いなわばりが必要となります。泳ぎは上手で6〜8kmならば簡単に川を泳いで渡ります。暑い地方に生息するトラは、池や水たまりに浸かり体を冷やしますが、水場は多くの動物が来るので待ち伏せて捕らえる絶好の場所ともなります。また、トラの保護区で調査した結果によれば、数頭のメスがそれぞれ単独で持つなわばりの周りを、1頭のオスが巡回してなわばりとしています。オスはメスの3〜4倍の広さ持ちますが、大抵は数年で入れ代わります。

からだの特徴
からだの地色は赤褐色や黄色、あるいは黄褐色で、黒いしま模様が背中から腹部にかけてあり、尾は黒のリング状になっています。耳は黒い縁取りで背側に半月状の白い部分があり、これを虎耳状班と呼び、子どもが母親の後をついて歩くとき、目印にします。アルビノで体色がうすく黄色味を帯びたトラはアジア諸国で珍重されます。4肢はがっしりとしており、後肢の方が長くジャンプ力に優れています。爪は大きく頑丈で、ネコのように引っ込めることができ、木の幹を爪で引っかきなわばりを主張します。なわばりは排尿でも行いますが、動物園ではトラの排尿場所が決まっており、観客の顔にオシッコがかかり、苦情が寄せられたため「トラのオシッコに注意!」の看板をつけたことがあります。トラが近づいてきて尾を上げたら排尿の合図です。あまり顔を近づけて見ていると、霧状のオシッコをかけられるので、少しはなれて見ましょう。歯式は門歯3/3、犬歯1/1, 小臼歯3/2、大臼歯1/1で左右上下合わせて30本です。乳頭は腹部に2対あります。

えさ
野生では、背の高い草や低い木の陰に隠れながらそっと獲物に忍び寄り、いっきょに襲ってしとめます。一晩に10〜20kmくらい歩きますが、狩の成功率は10%程度と言われます。獲物はシカやレイヨウの仲間が多く、そのほかにもイノシシ、幼獣のスイギュウやゾウ、ワニ、トカゲ、カメなどの爬虫類から魚類まで何でも食べます。テレビで、インドの保護区にすむトラが、ナマケグマの毛を口で毛をむしりとり終えてから食べるシーンがありました。保護区内のトラは獲物の毛をむしりとってから食べ始める、と解説していました。

繁殖
性成熟は3〜4歳です。熱帯地方のトラは発情期が決まっていませんが、北方系のトラは冬が発情期にあたります。発情は約3〜9週間ごとにきて、3〜6日間続きます。妊娠期間は、上野動物園で出産した11例では、100〜108日でした。通常は1産2〜3頭です。赤ちゃんの体重は1kg前後、体長は30〜35cm、目は閉じていますが、約10日間で開きます。生後1ヶ月齢で体重は3.5〜4kg、体長は45〜50cmになります。生後3週間齢で歯が萌芽し、生後40日齢で肉に興味を示します。離乳は8週間ころから少しずつ始まりますが、授乳は3〜6ヶ月間続きます。2歳〜2.5歳まで母親と一緒に生活し、狩の仕方を学びます。そして、メスは母親のなわばりの近くに、独立してなわばりをもち、オスはそれより遠く離れてなわばりを持たねばなりません。
上野動物園では、昭和35年(1960)〜昭和45年にかけて12回の出産で43頭の子どもを生んだチョウセントラがいました。母親が育てないことがあり、そんなときは獣医師や飼育係が人工哺育を行います。はた目には小さくてかわいい感じですが、抱いてみると骨太でがっしりとした体格はまさに未来の王者の片鱗を感じたものです。 寿命は12年から18年ですが、オーストラリアのアデレード動物園で26年3ケ月の飼育記録があります。

天敵
幼獣の間は同じ生息域に住むヒョウやなわばりに侵入してくるオスのトラが天敵となります。しかし、なんといっても最大の敵は人間で、毛皮や肉、そして漢方薬として使うために行う密猟です。この他に人間による自然破壊は多くの動物たちの住処を奪い、餌となる動物も減少するので、自ずとトラの数も減ります。

トラ
分類   食肉目 トラ科
分布   インド、ネパール、インドシナ、スマトラ島(インドネシア)、中国東北部、ロシアのウスリー、アムール地方(以前は中央アジア、バリ島、ジャワ島にも生息していましたが、現在は絶滅しました)
大きさ  

亜種によって体格差が大きく、最大はアムール(またはシベリア)トラ、最小は絶滅したバリトラ
体長 140〜280cm 尾長 約60〜110cm 体重 オス100〜310kg、メス75〜170kg

絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが非常に高い絶滅危惧種(EN)に指定されています。現在は国立公園や保護区で保護されています。
主な参考文献
今泉吉典 監修  

世界哺乳類和名辞典 平凡社1988

今泉吉典 監修
D.W.マクドナルド編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
今泉吉晴 著   野生ネコの百科 データハウス 1992
中川志郎   われら動物家族 芸術生活社 1972
成島悦雄 著   世界の動物 分類と飼育2 食肉目 ネコ科の分類 1991
財団法人 東京動物園協会
林壽朗 著   標準原色図鑑全集20 動物� 保育社 1968
Nowak, R. M.    Walker’s Mammals of the world Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press 1999
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