川口先生のペットコラム
旭化成ホームズ株式会社
Profile
ゾウの先生 川口 幸男

1940年東京都伊豆大島に生まれる。上野動物園飼育課を定年退職後、エレファント・トークを主宰。講演や執筆をしている。講演依頼は、メール またはFax 048-781-2309にお願いします。
NHKラジオ番組夏休みこども科学電話相談の先生でもあり、本編では長年の経験を踏まえて幅広く様々な話題を紹介します。
わんにゃんドクター 川口明子

日本獣医畜産大学卒業、同大学外科学研究生として学び、上野動物園で飼育実習後、埼玉県上尾市にかわぐちペットクリニックを開業する。娘夫婦もそろって獣医師で開業しており、一家そろって動物と仲良くつきあっている。
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おもしろ哺乳動物大百科46(霊長目 オナガザル科) 2010.12.20

ヒヒ属
サハラ砂漠以南のアフリカ及びアラビア半島の一部に分布しています。今泉吉典博士は、本属をアヌビスヒヒ、キイロヒヒ、ギニアヒヒ、チャクマヒヒ、そしてマントヒヒの5種に分類しています。このうちマントヒヒは半砂漠に生息していますが、他の4種はサバンナにすみ、アフリカをほぼ4分した地域に生息し、重複する地域は限定されています。体はサルの仲間では大きく、オスの体重は17〜37kgになります。体に模様がなく1色ですが、この方が開けた土地では目立たないと考えられています。また、全てのオスはワカモノ期に生まれた群れを出ます。
エジプトでは、マントヒヒは古代から神の使いとして崇められ、パピルスの巻物や神殿の中に絵や彫刻があります。

46)マントヒヒ
エチオピア、エリトリア、ソマリア、サウジアラビア南部、イエメン南部に生息します。エチオピア北部では海岸から海抜2,000〜2,500mの高地まで、半砂漠や乾燥した岩山の谷間や、荒れた草原のような場所の地上で生活しています。
群れの最小はワンメールユニットと呼ばれる1頭の成獣オスと数頭のおとなメスとその子どもたちです。ワンメールユニットがいくつか集まり、クランと呼ばれる集団になります。そして、クランがいくつか集まり60頭前後になり、バンドと呼ばれます。このバンドが一つの基本社会となり、日中の採食行動ほかさまざまな社会行動が見られます。エチオピアのバンドのテリトリーは約30k�でした。さらに昼行性の彼らは夜間になると、外敵のヒョウなどが近づくことができない崖縁の場所に移動します。これをトゥループ(休眠集団)と呼んで、バンドがいくつか集合し、数100頭の大群になります。
ワカモノが自分のユニットを持つにはいくつかの方法があります。一つは1歳児のメスに近づき彼女たちの世話をしながら母親から離し、自分に追従するように馴らして新たなユニットを作ります。他にも、別のバンドに属しているオスが幼いメスを強引に誘拐し、成長したとき配偶者にすることもあります。
また、エチオピアの一部地域には野生のアヌビスヒヒとマントヒヒの種間雑種が見られます。

  真ん中にどっかり座っているのがオス。手前にいるのが母親ですが大きさが半分くらいですね。 写真家 大高成元氏撮影
真ん中にどっかり座っているのがオス。手前にいるのが母親ですが大きさが半分くらいですね。
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
若いオスやメスにはありませんが、成獣オスのリーダーの肩部から背にかけて銀色の長い毛がマントのようになり、これが名前の由来です。
鼻は長くイヌ顔で、耳は成獣のオスの場合毛に隠れています。顔と股間部には毛がなくて肌色の皮膚が見えます。メスと子どもは褐色ですがオスは成長すると灰色となります。雌雄で体重が倍近く違い、大きなオスでは20kgを超えますが、メスは10kg程度です。
歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯2/2、大臼歯3/3で左右上下合わせて32本で、オスの犬歯はメスより長くて強力で、歯や体の大きさなどの性的2形が顕著です。飼育中の群れでは競い合って頬袋に食べ物を詰め込む様子が見られます。尻だこは大きくて赤いのが特徴の一つです。

えさ
野生時の主食は、何種類ものアカシア花、豆、果実が多く、雨期と乾季で若干異なります。雨期の初めには草の若葉、実ると穂を歯でしごいて食べ、乾季になると木の葉の基部や、根、球根などのほか昆虫やトカゲ、ごく稀に小型のガゼルなども食べる雑食性です。
動物園では、サル用のペレット、季節の果物、野菜などを主に与えています。

繁殖
月経周期は約30日で、妊娠期間は170〜173日、1産1子です。出産は1年を通じて見られますが、エチオピアでは5〜6月と11〜12月に出産のピークがあります。赤ちゃんの体重は600〜900gで、体は黒色です。授乳期間は約8ヶ月です。性成熟はメス5歳、オス7歳です。ヒヒの中でもマントヒヒのメスは、発情中も妊娠中の区別なく特定の1頭に追従し、さらに若いオスが将来配偶者にするために1歳児のメスの子どもの世話をするなど他のヒヒにない行動がみられます。
飼育下の長寿記録は、ブルックフィールド動物園で37歳6ヶ月まで生存した記録があります。

外敵
野生の外敵としては、ヒョウ、ライオン、ジャッカル、ハイエナ、ニシキヘビ、大型のワシなどがいます。また、他種の動物たちと同様に、土地の開発により生息域を人間に奪われ殺されているほか、スポーツとしての狩猟や、食料にするためワナや狩猟で捕らえられて地域によっては減少しています。

マントヒヒ
分類   霊長目 オナガザル科
分布   アフリカ北東部のエチオピアからソマリア、アラビア半島南西部
大きさ   体長 オス 60〜94cm メス 50〜65cm
体重 オス  18〜25kg メス  13〜18kg
尾長 オス 約55� メス  約39�
絶滅危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2010年版のレッドリストでは、現在のところは絶 滅の恐れが少ない低危急種(LC)に指定されています。
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
林壽朗   標準動物図鑑全集 動物� 保育社1968

ジョン・R・ネイピア プルー・H・ネイピア
伊沢紘生 訳

  世界の霊長類 どうぶつ社1987
H・クマー 著 水原洋城 訳   霊長類の社会 社会思想社1978
Nowak , R.M.   Walker's Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999
Parker, S.P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス1996

おもしろ哺乳動物大百科45(霊長目 オナガザル科) 2010.12.10

マンガベイ属
アフリカ西海岸のギニアからケニアまでの赤道沿いの森林に住んでいます。マンガベイの名前の由来は、フランスの博物学者ビュフォンがマダガスカルの地名・マンガベから来たサルと勘違いして命名したといわれます。今泉吉典博士は、本属(Cercocebus)を、ホオジロマンガベイ、ブラックマンガベイ、アジルマンガベイ、シロエリマンガベイの4種に分類していますが、学者によっては、ホオジロマンガベイとブラックマンガベイは、頭部に毛の房があり、体毛がやや長めであるところや生化学的な面からも差が見られるため、この2種を別の属 ( Lophocebus) とする学者もいます。
マンガベイ属は全て瞼が白く、ホオジロマンガベイ、ブラックマンガベイは樹上性ですが、他種は移動や採食に地上を利用しています。最近はマンガベイを飼育している動物園が少なくなりましたが、今回シロエリマンガベイを紹介しましょう。

45)シロエリマンガベイ
西アフリカのセネガルからガボンにかけて海岸線およそ180km以内で生息しています。昼行性で常緑の川辺林、沼沢林、湿地帯、マングローブに生息し、古い大木の樹冠も好み、地上で歩行するときは尾を背中に高く掲げるか、先端部を前方に曲げて1列で歩いているのが観察されています。
群れは成獣の雌雄とその家族の混成群で、10〜20数頭あるいは、これらが合流して40〜50頭で生息しています。オスは1日数回、とくに順位の高いオスが「ホウ、ホウ、ホウー」と大きな声を出します。オスの喉には共鳴袋があって、声が遠方まで届くので他の群れが呼応することもあり、テリトリーの主張や危険を知らせる場合に役立っています。飼育している個体のすぐ近くで録音した声を聞かせると、その場所から離れましたが、遠くの場合は無視しました。また、野生の観察でも近くで声がするとそこから移動し離れることから、お互いの位置確認に役立ち、お互いに近づき無用な争いを引き起こさないようにしている、と考えられています。

  キリリとしてきれいなサルでしょう。写真家 大高成元氏撮影
キリリとしてきれいなサルでしょう。
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
頭頂部に房があるのが特徴の一つです。頬から喉にかけてきれいな白色となっており、シロエリの名前の由来となっています。背は暗灰色、腹部は白色か灰色です。顔は長く口が突き出て、後肢が長く、跳躍力に優れています。
マンガベイの仲間では一番大型の種類で、大きな個体では15kg前後の報告例があります。性的二形が顕著で、オスの体重はメスの2倍近くになります。尾は枝に巻きつけて体のバランスを安定させるのに役立ちますが、体重を支えることはできません。
歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯2/2、大臼歯3/3で左右上下合わせて32本で、オスの犬歯はメスより長くて強力です。オスの尻だこは中央部でくっついていますが、メスは性器で両側にわかれています。頬袋もあります。

えさ
野生時の主食は、堅果と果実と種子で80%以上、その他、若葉、葉、キノコ、昆虫、無脊椎動物などを食べます。マンガベイは強い顎と歯でヤシの実も食べることができるので、同じテリトリー内にいるオナガザル科の仲間であるグェノンと一緒に生息することができます。

繁殖
月経周期は30日で、発情中のメスの性器と肛門周辺は腫脹し、臭いが強くなってきます。そして、積極的にオスに近寄り、そのうちの1頭と配偶関係に入り、数日間行動を共にしながら交尾をくり返します。性成熟はメスで3〜4歳、オスでは5〜7歳です。初産は4歳半( 生後56.5ヶ月)で出産間隔は平均16.6ヶ月です。飼育下の出産は年中見られましたが、3月から8月が多くなっています。
妊娠期間は168〜173日、1産1子で、赤ちゃんはおとなと同じ体色です。22歳でも出産例があります。飼育下の寿命は20年以上です。 長寿記録としては、ヒューストン動物園で2000年8月1日に死亡した個体の39年1ヶ月という飼育記録があります。この個体は来園時推定7歳と考えられているので、死亡時の年齢は推定46歳になります。

減少した原因
他種の動物たちと同様に、土地の開発により生息域を人間に奪われ、食料にするためワナや狩猟で捕らえられて大幅に生息数が減少しています。野生の外敵としては、ヒョウやワシの仲間がいます。ナイジェリアでは保護区を決め保護していますが、広さは約100k�しかありません。


シロエリマンガベイ

分類   霊長目 オナガザル科
分布   西アフリカ・セネガルからガボン
大きさ   体長 オス 45〜65cm メス 40〜55cm
体重 オス 7〜13kg メス 5〜7kg
尾長 オス 55〜75cm メス 45〜65cm
絶滅危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2010年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定されています。
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
ジョン・R・ネイピア プルー・H・ネイピア
伊沢紘生 訳
  世界の霊長類 どうぶつ社1987
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
林壽朗   標準動物図鑑全集 動物� 保育社 1968
Beacham, W. and Beetz, K.H.(ed)   Beacham’s Guide to International Endangered Species Vol.1
Beacham Publishing Corp., Florida 1998
Nowak , R.M.  

Walker’s Mammals of the World   Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press ,Baltimore  1999

Parker, S.P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.

おもしろ哺乳動物大百科44(霊長目 オナガザル科 マカク属) 2010.11.12

44)ブタオザル
東南アジアとその周辺の島々にすんでいます。生息域は熱帯雨林の低地から高地まで、海岸から内陸の森林まで幅広く生息しています。北方系と南方系の2つに分けることもあり、ミャンマーのイラワジ川上流やアラカン山脈の標高およそ2000mにすんでいる北方系の個体は大型で冬の寒さにも対応できます。ミャンマー南部、マレー半島、スマトラ島、ジャワ島、ボルネオ島とその周辺の島々の南方系の個体はやや小型になります。体型や顔つきも生息地によって多少異なり、それらを細かく亜種に分ける学者もいます。
昼行性で、成獣の雌雄と母系家族の混成で多くは20頭前後ですが、50〜80頭の群れもいます。地上、樹上の双方を利用していますが、地上生活が多く、外敵に追われると走って逃げます。遊動域はおよそ7k�で、1日に1〜3km前後を遊動します。

  子どもと一緒で幸せそうですね。 写真家 大高成元氏撮影
子どもと一緒で幸せそうですね。
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
南方系の個体は、全体的にオリーブがかった褐色で頭部に黒い毛の房か、黒くウマの蹄状の部位があり、頭頂部から背に沿って黒くなっています。北方系の個体は、金褐色で、腹部と脇腹は色が淡くなっています。南方系、北方系ともに尾は背のほうにクルリと回りブタの尾に似ています。この特徴がブタオザルの命名の由来です。
オスの体重は6〜15kg、メスは5〜11kgと雌雄及び生息地による性差があります。北方にすんでいる群れは、毛が長く、尾や顔に毛が生えていて、手足が短くてずんぐりとした体型ですが、南方系では、顔や耳、尾には長い毛が生えていません。
頬には頬袋があって一時食べ物を蓄えておくことができ、また雌雄共に尻だこがあります。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪で、親指は他の4本の指と対向しており、物をつかんだり、握ったりできます。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯2/2、大臼歯3/3で左右上下合わせて32本で、オスの犬歯はメスより長くて強力で、性差が顕著です。

えさ
野生時は植物質が主食で果物が75%を占めた、と報告例があります。この他に昆虫などの無脊椎動物、木の芽、葉、茎、根、キノコ、などを食べており、雑食性です。

繁殖
交尾期は決まってなく年中見られますが、1月から3月にやや多くなります。妊娠期間は約170日、1産1子で、稀に双子が生まれます。出産間隔は18〜24ヶ月で、赤ちゃんの体重は400〜500gです。最初の1年間は母親が抱いて、授乳、移動、保護しています。他のメスたちも育児を手助けしますが、順位の低い母親は高い母親の赤ちゃんを抱いていると、攻撃される頻度が少なくなるため競って赤ちゃんを取り合うことがあります。
子ども時代は3歳半まで続き、メスの子どもはその群れに留まりますが、他の群れに入る個体もいます。メスの性成熟は3歳、発情中はお尻が赤く腫脹し肥大します。オスの性成熟は3.5〜4歳です。長寿記録としては、京都市動物園で1956年5月11日に生まれ、1994年1月2日に死亡した37年7ヶ月の飼育記録があります。

天敵
生息域によって違いますが、一番の外敵は人間です。そのほか、大陸では、トラやヒョウ、ウンピョウなどのネコ科動物が、大型のヘビはどこの生息地でも外敵となります。

絶滅に瀕した原因
森林を伐採し、材木として搬出、あるいは農地や住居に転換した結果、生息域が大幅に縮小したことが大きな要因の一つです。この他にも食料やペットにするために捕らえており、国や保護団体は狩猟の禁止や、保護区の住民に対し、森林保護の重要性を理解するように働きかけています。
絶滅危機の程度:国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定され、絶滅が懸念されています。


ブタオザル

分類   霊長目 オナガザル科
分布   インドネシア、マレーシア、インド、タイ、バングラディシュ、中国、ミャンマー、カンボジア、ボルネオ島及び周辺の島々。
大きさ   体長 オス 50〜60cm メス 45〜55cm
体重 オス 6〜15kg メス 5〜11kg
尾長 オス・メス 15〜25cm
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
Lang, K.C.
(Reviewed by Maestripieri, D.)
 

Primate Factsheets: Pig-tailed macaque(Macaca nemestrina )
Taxonomy,Morphology,Ecology, Behavior & Conservation,
National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2005

Nowak , R.M.  

Walker’s Mammals of the World   Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press ,Baltimore  1999Parker ,S.P. (ed.)

Parker, S.P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
安間繁樹   ボルネオ島 アニマル・ウォッチングガイド 文一総合出版 2002

おもしろ哺乳動物大百科43(霊長目 オナガザル科 マカク属) 2010.11.4

43)バーバリーマカク
アフリカの北側、モロッコのアトラス山脈やアルジェリア低地の潅木林やカシ林、高地では1600〜2200mの針葉樹で生活しています。サハラ砂漠より北側に生息する唯一のマカク属の1種です。ほかにも対岸に位置するイベリア半島南端のイギリス領・ジブラルタルの要塞跡に生息しています。この群れを、ヨーロッパに生息する唯一野生のサルとしていますが、由来について2つの説があります。一つは、かつてイベリア半島がモロッコと陸続きだった頃の群れであった、もう一つは、7〜8世紀に侵攻してきたイスラム教徒が搬入したという説です。
昼行性で、成獣の雌雄と母系家族の混成で10〜60頭の群れをつくり、地上、樹上の双方を利用して生活しています。


  一見するとニホンザルそっくりですね、赤ちゃんのときは色が黒いのも似ています。

一見するとニホンザルそっくりですね、赤ちゃんのときは色が黒いのも似ています。
写真家 大高成元氏撮影

   

からだの特徴
体は黄色味のある灰色、又は灰色がかった褐色、腹部と脇腹は色が淡くなっています。外見上尾は見えないことから、ゴリラやチンパンジーと同じように尾がないサル、エイプとして分類し英語名でバーバリーエイプ、と呼ばれることもあります。
高地の冬は寒くなりますが、厚い毛で防寒しています。オスの体重は15〜17kg、または、7〜10kg、メスは10〜11kg、又は4〜7kgと諸説あり、生息域の環境で体の大きさに幅がある、と考えられます。頬には頬袋があって一時食べ物を蓄えておくことができます。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪で、親指は他の4本の指と対向しており、物をつかんだり、握ったりできます。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯2/2、大臼歯3/3で左右上下合わせて32本で、オスの犬歯はメスより長くて強力で、性差が顕著です。また、尻だこがあります。

えさ
野生時の主食は、森林の伐採によって生態系が脅かされ本来の森林が減少した結果、冬季には針葉樹の樹皮の採食量が増加したとの報告や、アルジェリアでは昆虫やどんぐりが主食との報告もあります。これらの報告から、乾期や雨期、及び生息地により、昆虫が豊富なときにはそれらが主食となり、タンパク質を充分蓄えるのでしょう。他にも、木の芽、葉、茎、根、無脊椎動物などを食べます。

繁殖
群れは母系集団で、アルジェリアの交尾期は秋、出産期は4〜6月です。群れの中で優位なオスがメスとの交尾権を持っています。月経周期は約31日で臀部が腫脹しピンク色になります。妊娠期間は5〜6.5ヶ月、1産1子で、稀に双子が生まれます。赤ちゃんの体重は400〜500gです。授乳期間は約半年〜1年で、最初は母親がお腹に抱いていますが、その後背に乗り移動します。
本種の特徴の一つは、成獣のオスは血縁関係にある赤ちゃんが母親から離れたときに、近寄って歯をかみ合わせて鳴らし、あやすような声やグルーミングをする子守行動が見られることです。この行動は複数のオスで同時に行うこともあります。劣位のオスが他のオスに攻撃されたときに、赤ちゃんを抱き上げて攻撃するサルに差し出すと、攻撃を止めて一緒に赤ちゃんをなだめます。これらの行動はチベットモンキーでもみられ赤ちゃんを2頭のサルが抱き、橋渡しするようなスタイルになることからブリッジング行動とも呼ばれます。群れ内で社会関係を融和する役割を果たしています。
メスの子どもはその群れに留まりますが、オスは性成熟後に群れから出て行きます。性成熟は、メスで2.5〜4歳、オスで3.5〜5歳ですが、初産年齢は5〜8歳です。飼育下の寿命は25年ぐらいです。長寿記録としてはドイツのユッカーミュンデ動物園で29歳1カ月の記録があります。

絶滅に瀕した原因
森林を切り開いてウシ、ヒツジ、ヤギの飼育が盛んになったことや、材木として森林を伐採したことで生息地を失い、大幅に数が減少しました。

バーバリーマカク(バーバリーエイプ)

分類   霊長目 オナガザル科
分布   アルジェリア北部、モロッコ、ジブラルタル
大きさ  

体長 オス 55〜70cm  メス 45〜60cm
尾長  オス、メス  1〜2cm
体重 オス 6〜14kg  メス 5〜10kg

絶滅危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが高い絶滅危惧種(EN)に指定されています。現在、約10,000頭が生息していると推定されます。
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
Parker, S.P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Nowak , R.M.   Walker's Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999

おもしろ哺乳動物大百科42(霊長目 オナガザル科) 2010.10.14

42)シシオオザル
インド南西部、デカン高原の西側ゴーツ山脈のゴアからデカン半島のコモリン岬の高度およそ1,600mの湿潤な広葉常緑林に生息しています。昼行性で樹上性が強く、高さが30mもある頂上付近で過ごし、地上に降りるのはわずか1%程度との報告があります。群れは数頭の成獣オスを含む10〜20頭(3〜34頭の報告もある)の家族で混成群をつくり生息しています。群れは100〜500ha(ヘクタール)のテリトリー(なわばり)をもち、ラウドコールと呼ばれる低く響き渡るような声は、遠方まで届くので、テリトリーの主張や、危険を知らせる声の場合はいち早く樹の頂上に避難します。年間を通じ川で水を飲むことはありませんが、湿潤な森林を好むことから、水分補給は樹の葉や幹から伝わる水を飲むことで充当しています。

  顔のたてがみは立派ですし、全身をみるとライオンを連想させるでしょう。 写真家 大高成元氏撮影
顔のたてがみは立派ですし、全身をみるとライオンを連想させるでしょう。
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
体は全体的に黒く、顔の周りには灰色で長くたてがみのような毛があります。シシオザルの名前の由来は、尾の先端には雌雄ともに房毛があり、たてがみのような毛と共に、ライオンの姿を連想させることから命名されました。現地ではワンデルーと呼ばれていますが、これは顔のたてがみがモジャモジャと生えていると意味で、インド人の立派なヒゲを彷彿させたのでしよう。オスの体重は4.5〜8.5kg、メスは3.5〜4.5kgで性差が顕著です。頬には頬袋があって一時食べ物を蓄えておくことができます。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪で、親指は他の4本の指と対向しており、物をつかんだり、握ったりできます。手の使い方が器用で、飼育下では留め金をぐるぐると回して外した、などの報告もあります。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯2/2、大臼歯3/3で左右上下合わせて32本で、オスの犬歯はメスより長くて強力です。また、尻だこがあります。

えさ
野生時の主食は、果実と種子で約90%を占めていますが、ほかにも木の芽、葉、茎、昆虫、卵、ネズミ、トカゲ、カエルなどの小動物など食べることが知られ、食性の幅が広く雑食性です。動物園では、リンゴ、バナナ、煮甘藷、青菜、ニンジン、パン、煮干、サル用ペレット、など与えています。

繁殖
交尾は群れの中の優位なオスがメスとの交尾権を持っています。オスは群れの間を渡りあるいていますが、これによって近親交配を避けています。野生時における交尾期のピークは1月から2月ですが、出産は年間を通じて見られています。月経周期は約34日で臀部が腫脹しピンク色になり、臭気を伴います。妊娠期間は約5ヶ月半(162〜186日)、1産1子で、赤ちゃんの体重は約450gです。赤ちゃんは未だ顔の長い房毛はなく、顔や指は白くなっています。授乳期間は約半年で、メスはその後も群れに留まりますが、オスは性成熟後に群れから出て行きます。性成熟は、メスで2.5〜4歳、オスで3.5〜5歳ですが、初産年齢は5〜8歳です。
飼育下の寿命は約30年です。 長寿記録としては、日立市かみね動物園で1965年に生まれた個体が、2004年8月現在、仙台市八木山動物公園で生存中の記録があります(飼育期間 38年8ヶ月以上)。

保護
世界の動物園では協力して絶滅危惧種を守る活動をしており、シシオザルもまた国際血統登録がされています。血統登録者は国内外の動物園間におけるブリーディングローン(繁殖のために動物園の間で貸し借りすること)などを行い、種の維持に努めています。国内の動物園における飼育頭数は合わせて70頭くらいです。

シシオザル
分類   霊長目 オナガザル科
分布   インド南西部
大きさ   体長 オス 45〜60cm メス 42〜49cm
尾長 オス  4.5〜8.5cm メス  3.5〜4.5cm
体重 オス 25〜40kg メス  25〜32kg
絶滅危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが高い絶滅危惧種(EN)に指定されています。現在、3000〜4000頭が生息していると推定されます。
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社1986
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
Parker, S.P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Nowak , R.M.   Walker's Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999
Beacham, W. and Beetz, K.H.(ed)   Beacham’s Guide to International Endangered Species Vol.1
Beacham Publishing Corp., Florida 1998

おもしろ哺乳動物大百科41(霊長目 オナガザル科) 2010.9.28

ニホンザルは50万から30万年前に朝鮮半島から渡ってきたと考えられ、DNAで遺伝子の変化を見ると、西日本のサルのほうが古く、最終氷河期のあと東日本に分布域が広まったと推定しています。マカク属のサルは、飼育下で同居させると生殖能力を持つ種間雑種ができます。野生では青森県の下北半島他いくつかの群れで、同じマカク属のタイワンザルとの間に種間雑種が増えて物議をかもし出しています。

41)ニホンザル
日本の本州、四国、九州、および周辺の島々に生息し、南限は鹿児島県の屋久島、北限が青森県の下北半島で、サルの仲間で北限にすむ種として知られています。生活域は海岸から標高3,000mを超える日本アルプス高山地帯まで広い範囲に生息しています。多くの群れは、常緑広葉樹林、落葉広葉樹林を生活圏としています。群れの大きさは10頭以内から数100頭まで幅がありますが、亜種のヤクシマザルの群れはホンドザルに比べ、一つの群れの頭数は少なく、50頭内外と報告されています。また、餌付けした群れでは高崎山のように1,000頭以上になります。群れの構成は、母親と子ども、およびオスで生活しています。オスは性成熟を迎える4〜5歳になると群れから出て行き、群れをわたり歩いたり、単独で生活したりします。

  雪が降るとやっぱり温泉だね。ほんとに地獄谷は寒いんだから! 写真家 大高成元氏撮影
雪が降るとやっぱり温泉だね。ほんとに地獄谷は寒いんだから!
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
体色は茶褐色から灰褐色ですが、ホンドザルのほうがヤクシマザルより色が薄くなっています。ただし、赤ちゃん時代は黒味を帯びています。乳頭は胸部の左右に1個ずつあります。頬袋をもち、この中に食物を一時溜めて安全な場所に移動した後で取り出しゆっくり食べます。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯2/2、大臼歯3/3で左右上下合わせて32本で、オスの犬歯はメスより大きいです。昼行性で色覚も発達して、ほぼ人間と同程度の視力があると考えられています。人間の聴覚は、高い音は20kHzくらいですが、ニホンザルは50kHz以上の超音波を聞くことができます。低い音は人間のほうが良く聞こえます。
指は手足とも5本あって、それぞれに平爪があります。親指と他の指が向かい合っているので物を握ったり、つまんだりすることができます。顔や臀部が赤いのは、この部分の毛が少なく皮膚の下の血管がすけて見えます。血液中の赤血球にはヘモグロビンという赤い色素が含まれており赤く見えるのです。

えさ
ニホンザルの主食は植物で、遊動しながら、一つの群れで50〜200種類の植物を食べて生活しています。ヤクシマザルのおもな活動時間の平均は、採食33%、移動23%、休息23%、グルーミング19%で、季節によって変化はあるものの採食と移動時の合計時間はほぼ一定との調査結果があります。

繁殖
野生のニホンザルの交尾期は大きく2つに分けられます。一つは広島県の宮島ほかの地域で見られる10月から12月に迎える群れと、もう一つは、宮崎県の幸島ほかで1月から3月に見られ、前者より3ヶ月間遅れとなっています。妊娠期間が173日前後、月経周期は26日〜28日、月経の持続日数は3日前後、排卵は月経から15日目頃と報告されています。一産一子で赤ちゃんの体重は400〜600g、ごく稀に双子もあります。生後1ヶ月齢頃から母乳以外のものを飲み込みます。生後3ヶ月齢になると便に母乳以外のものが混じり、生後6カ月齢頃に離乳します。初産の年齢は、高崎山では、6歳から7歳が多く、出産間隔も隔年や数年に一度が多いです。一方、上野動物園におけるサル山の初産は4〜5歳で3歳の出産例もありました。さらに16頭出産し、このうち14年連続出産した個体もいます。

絶滅危機の程度
環境省レッドリストでは、下北半島に生息するニホンザルは今まで「絶滅のおそれのある地域個体群」に掲載されていましたが、2007年8月3日の最新版では削除され、現在は、金華山と北奥州・北上山系の2つの地域個体群のみが指定されています。また、日本の天然記念物として、宮崎県幸島、大分県高崎山自然公園、大阪市箕面山自然公園、千葉県高宕山自然公園、岡山県臥牛山自然公園、青森県下北半島の6ヶ所が指定されています。
国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。

ニホンザル
分類   霊長目 オナガザル科
分布   日本
大きさ   体長 オス 53〜60cm メス 45〜55cm
体重 オス 11〜18kg メス  8〜15kg
尾長 オス  8〜12cm メス  7〜10cm
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
京都大学霊長類研究所 編著   新しい霊長類学 講談社2009
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
ジョン.R.ネイピア,プルー・H.ネイピア著 伊沢紘生訳   世界の霊長類 自然誌選書 1987
Nowak , R.M.   Walker's Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999
丸橋珠樹・山極寿一・古市剛史   屋久島の野生ニホンザル 東海大学出版会1986

おもしろ哺乳動物大百科40(霊長目 オナガザル科) 2010.9.13

霊長目は2つの亜目、祖先型のサルの体型でネズミやリスのような原猿亜目と、チンパンジーやニホンザルに代表される真猿亜目に大別されます。さらに、真猿類は主に外見上の特徴から、鼻の穴が外側に向いて開いている広鼻猿類と、鼻孔の間隔が狭い狭鼻猿類に分類されます。広鼻猿類は中央及び南アメリカに生息して新世界ザルと呼ばれているのに対し、狭鼻猿類はアフリカや東南アジアの限定された地域に生息しています。(No19 霊長目 キツネザル科 参照)
これまでは、原猿類と真猿類のうち中南米に分布する広鼻猿類を紹介してきましたが、これからは残りの狭鼻猿類を取りあげることにします。
今泉吉典博士は、狭鼻猿類について(1)オナガザル科 (2)テナガザル科 (3)ショウジョウ科 (4)ヒト科の4科に分類しています。

オナガザル科
オナガザル科はコロブス亜科とオナガザル亜科に分類され、共通点として、歯式が門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯2/2、大臼歯3/3で左右上下合わせて32本であること、および尻だこがある、ことです。かれらはアフリカから中国、インド、パキスタンなどアジア各地に広く分布しています。本科は霊長類の中で最大のグループで、(今泉吉典博士は)15属78種に分類しています。
この中からみなさんになじみ深いサルや、特徴のあるサルを順次紹介していきましょう。

マカク属
マカク属は、16種に分類されていますが、この中から(1)ベニガオザル(2)ニホンザル(3)バーバリーエイプ(バーバリーマカク)(4)ブタオザル(5)シロエリマンガベイの5種類を紹介します。この5種類中でバーバリーエイプ以外は、すべてアジアに生息しており、外見上、ニホンザルと似ている点が多くあります。
他にも、私たちの血液型でRh血液型が話題にのぼるときがありますが、この名前の由来は、アカゲザルの英名rhesus macaque の頭文字からきています。マカク属の仲間はさまざまな実験やワクチン生産動物として、私たちのために飼育されてきました。

  アップで見ると赤が妙にインパクとあるよねー。 写真家 大高成元氏撮影
アップで見ると赤が妙にインパクトあるよねー。
写真家 大高成元氏撮影
   

40)ベニガオザル
インド東部から中国の雲南省や四川省、タイ、ベトナムの熱帯、亜熱帯で生息しています。バングラデッシュでは最近約20年間観察されていません。主に高度1500〜2500mのモンスーン林や、常緑広葉林、乾燥林などの森林で、10〜50頭の成獣の雌雄や家族の混成群で生息しています。昼行性で1日数kmを遊動し、ふだんは地上を歩きながら餌を探していますが、樹幹を移動することもあります。活動は早朝から昼間で、暑さが厳しい日中や夜間は樹上か崖ふちの安全な場所で休息したり、眠ったりします。飼育下の観察では、トラブルのとき威嚇相手の手足をつかんで咬むまねをして、仲直りをすることが頻繁に見られます。また、赤ちゃんを間にして双方が抱きかかえるブリッジング行動を行うことが知られています。外敵が近づくと木の枝をゆすり大声で相手を威嚇し、群れのメンバーに危険を知らせます。

からだの特徴
雌雄差がありオスはメスより一回り大きく、オスの体重は10〜12kg、メスは7〜9kgです。からだの色は暗褐色から赤褐色まで地域差があります。毛は粗く、前額の毛は薄く皺(しわ)が目立ちます。顔と耳、尻には毛がなくて赤みを帯び、顔には黒い斑点があります。メスよりオスのほうが黒く、頭部の長い毛は肩部までかかります。北方にすむ個体は毛が長く対寒性があります。頬には頬袋があって一時食べ物を蓄えておくことができます。尾は毛が少なく、長さが10cm以下と切り株のように短いことからstump-tailed macaque、別名株尾ザルとも言います。オスの犬歯はメスより長くて強力です。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪で、親指は他の4本の指と対向しており、物をつかんだり、握ったりできます。左右の尻だこは、オスの場合、尻の中央で双方がくっついています。

えさ
野生では、果実、葉、種子、昆虫、小鳥、卵、ネズミ、トカゲ、カエルなどの小動物など食べることが知られ、主食は植物質ですが食性の幅が広いようです。

繁殖
野生の交尾期は10月〜11月、月経周期は29〜30日、妊娠期間は175〜177日です。1産1子で、出産間隔は2年です。メスの性成熟はおよそ4歳、オスは7〜8歳で成獣の体格になります。赤ちゃんの体重は400g〜500g、出産したとき赤ちゃんは真っ白で、半年後くらいから褐色に変わり始め、2〜3歳で親と同じ色になります。サルの赤ちゃんはこの他にも親と異なる色をしている種類も多いのですが、これは子どもの証で、親と同色になるまで親や群れの仲間に守られる時期にあたり、赤ちゃん側からすれば、何をしても親から怒られない年代といえます。授乳期間は6〜12ヶ月齢です。とりわけ群れ内で順位が高い母親の赤ちゃんは、他のメスたちが遊びやグルーミング相手をして育児を助けます。劣位の母親は育児の手助けをして群れ内の地位を安定させているのでしょう。飼育下での長寿記録はスミソニアン国立動物園で29年3ヶ月という記録があります。

天敵
人間以外では、ウンピョウ、ヒョウ、ドール、大型のフクロウ、タカなどの猛禽類がいます。

ベニガオザル
分類   霊長目 オマキザル科
分布   インド東部、中国西部、ベトナム、ミャンマー、タイ
大きさ   体長 50〜70cm 尾長 1〜10cm 体重 7〜12kg
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定され、絶滅が懸念されています。
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
Beacham, W. and Beetz, K.H.(editor)   Beacham's Guide to International Endangered Species Vol.�
Beacham Publishing Corp. , Florida 1998
Lang, K.C. (Reviewed by Hideo Uno)   Primate Factsheets: Stump-tailed macaque(Macaca arctoridesTufted ) Taxonomy,Morphology,Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2005
Nowak , R.M.   Walker's Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999
Parker. S. P. (Editor)   Grzimek's Encyclopedia of Mammals, Volume 2
McGraw-Hill Publishing Company, New York 1990

おもしろ哺乳動物大百科39(霊長目 オマキザル科) 2010.8.30

ウーリーモンキー属
ウーリーモンキー属はヘンディーウーリーモンキーとコモンウーリーモンキー(フンボルトウーリーモンキー)の2種類に分類しています。前者は、1802年初めて発見されて以来、1925〜1926年に約120年ぶりに再発見され、その後情報が途絶えました。そして、1974年に再発見、生存が確認された種類です。アンデス山地の一部、ペルーのアマゾン川支流域の標高2,000m前後の森林に生息するだけで、絶滅寸前の状態にあり今後の生存が懸念されています。後者は、南米のアマゾン川の中流から上流にかけて広く生息しています。角刈りのような頭と、羊毛のような柔らかい毛から、別名羊毛ザルの呼び名もあります。

39)コモンウーリーモンキー(フンボルトウーリーモンキー)
南米のコロンビア北部から南はボリビア北部に至るアマゾン川流域に広く分布しています。生息地によって異なりますが、標高1,800〜3,000mの亜熱帯及び熱帯雨林で、湿潤な川辺林や果実の実る二次林の樹冠で生活しています。群れは10〜50頭と幅があり、成獣の雌雄と子どもや母子、そして、オス同士などの混成群ですが、遊動するときは2〜6頭の小さな集団に別れます。昼行性で夜間は高い樹冠で眠ります。匂いつけは、成熟した雌雄やワカモノが胸部にある分泌腺を木の枝にこすりつけ、肛門腺や尿による匂いつけも行います。このほか、尾の上げ下げ、顔の表情、口の動き、枝ゆすりなどさまざまなロコモーションや声による情報交換も報告されています。

  がっしりとした体格で力強く感じられます。 写真家 大高成元氏撮影
がっしりとした体格で力強く感じられます。
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
オマキザル科のなかでは大型で、オスがふつう7〜8kg、メスの体重はオスの約65%で5〜6kgと小型で雌雄の体格差が大きいです。4肢や尾が太く、体全体が筋肉質でがっしりとした体格です。体毛は短く密に生え、色は灰色から濃オリーブや黒褐色、黒色ですが、顔、手、尾は一層黒色が強いです。成獣のオスは胸部が赤褐色で、頭部のこぶ状の隆起はメスより大きく発達しています。前肢の指は、クモザルが4本なのに比べ、親指がありますがヒトのように親指が他の指と対向してなく、5指共に同方向を向いています。尾の先端部の約3分の1は内側に毛がなく尾紋があり、感覚が敏感で物をつかんだり、つまみ上げたりすることができます。樹間を移動するときブラキエーションをしますが、尾を補助的に使うことからセミブラキエーションといわれ、安全に樹上生活を過ごすことができます。メスの生殖器はオスに似ており外見上の性差は簡単にできません。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。犬歯はオスのほうがメスより3分の1程度長くなっています。頬袋はありません。乳頭は胸部に1対あります。

えさ
野生時の主食は果物で約80%を占め、そのほか、木の実、若葉、花や花の蜜、卵、クモ、昆虫などの無脊椎動物を食べます。果物が少ない時期や場所では、葉やその他の割合が増加します。動物園では、リンゴ、バナナ、パイナップル、トマト、人参、ミカン、青菜、蒸かしたサツマイモ、サル用ペレット、ゆで卵などを与えています。

繁殖
交尾は年間を通して見られますが、繁殖は8月〜12月に見られます。妊娠期間は約7ヶ月で通常1産1子でまれに双子が生まれます。およそ21日の短い月経周期があって、この間に出血もわずかにあります。また、発情は3〜4日間続きます。性成熟はメスが4歳、オスが5〜6歳で、オスの体が成熟するのは8歳です。初産年齢は5〜7歳、出産間隔は3年です。赤ちゃんは分娩後自力で母親のお腹に這い上がり、しがみつくことができます。赤ちゃんの手のひらと足の裏は濃いピンク色です。生後2週間は母親のお腹にくっついていますが、その後は脇から背中に移動します。生後8週齢で母親から始めて離れ、4〜6ヶ月齢はまだ母親の近くでほとんど過ごします。授乳は16〜20ヶ月齢まで行います。優位オスが育児を手伝うとの報告があります。
長寿記録は、日本モンキーセンターで29年1ヶ月の飼育記録があります。

減少している原因
人間が生息域の森林伐採を進めた結果、生息域の減少や分断されたことが最も大きな原因です。その他、ペットとして人気が高いのですが、1頭の赤ちゃんを捕るために母親や家族を殺すことや、食料にするための狩猟も原因の一つです。野生動物で主な外敵は、猛禽類のワシやタカとジャガーやオセロットなどのネコ科動物です。

コモンウーリーモンキー(フンボルトウーリーモンキー)
分類   霊長目 オマキザル科
分布   南米のコロンビア、ボリビア、ベネズエラ、エクアドル、ペルー、ブラジル
大きさ   体長 45〜65cm 尾長 55〜75cm 体重 5.5〜10.0kg
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、コモンウーリーモンキーは絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定され、自然公園の保護区で保護されています。
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
ジョン・R・ネイピア
プルー・H・ネイピア、 伊沢紘生訳
  世界の霊長類 どうぶつ社1987
林壽朗 著   標準原色図鑑全集20 動物� 保育社 1968
Welker,C. and Schaefer-Witt,S.   New World Monkeys. In ( Parker, S.P. editor) Grizimek's Encyclopedia of Mammals Volume 2, : McGrow-Hill Publishing Company 1990

おもしろ哺乳動物大百科38(霊長目 オマキザル科) 2010.8.12

クモザル属
クモザル属は学者によって1種、あるいは4〜7種に分ける場合がありますが、今泉吉典博士は、(1)ケナガクモザル (2)ブラウンクモザル (3)クロクモザル、そして (4)ジェフロイクモザル(アカクモザル)の4種に分類しています。
クモザルは中米のメキシコ南部からブラジルやボリビアにかけて広く生息しています。ほっそりとした4肢と、きわだって長い尾をまるで手のように使うことから、5本の腕を持つクモのようなサルを連想させ命名したと言われます。

38)ジェフロイクモザル(アカクモザル)
メキシコから中央アメリカ全域にわたり広く分布し、別名をチュウベイクモザルとも称されます。生息地は熱帯多雨林で、川辺林、沼沢地、マングローブ、落葉林から半落葉林にまで広く適応し、樹上で生活しています。昼行性でふつうは高層の樹冠にいて、めったに地上に降りません。夜間は樹上で眠ります。移動は4足歩行とブラキエーション(腕でぶら下がり、反動を利用して枝から枝へ飛び移る移動方法)のほか、太い樹幹の上や、地上を2本足で走ることもできます。群れの大きさは、生息地の環境によって異なり、ふつう1頭又は複数のオスを含む5〜6頭の群れですが、時には数10頭の群れが観察されています。群の間のコミュニケーションのために、オスは遠くまで届くフープと呼ばれる声を出します。オスはメスの尿をなめ、あるいは嗅ぐことで発情を察知しています。匂いつけは、尿の他にも胸部にある分泌腺を木の枝にこすりつけて行います。

  尾でしっかり枝にぶら下がっています。なんとなくクモを連想しますね。 写真家 大高成元氏撮影
尾でしっかり枝にぶら下がっています。なんとなくクモを連想しますね。
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
オマキザル科のなかでは大型で、オスの体重は8kg前後です。体色は金色、赤、暗褐色と変化に富んでいます。目の周りは白く、頭部と4肢の一部が黒です。尾は長く、先端部の約3分の1は内側に毛がなく、汗腺や末梢神経が集まり感覚が鋭敏で、物を摘まむこともできます。また、指紋のような尾紋があり、枝を掴むときにすべり止めの役割も果たしています。前肢の親指は退化し、欠如しているか、痕跡程度なので、外見上、指は4本です。これらの指をひょいと枝に引っ掛けて空中ブランコのように巧みな枝渡りをします。尾は5番目の手のように枝につかまることができるので、より安全な樹上生活を過ごすことができます。メスの生殖器はオスに似ており外見上の性差は簡単にできません。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。犬歯はオスのほうが大きく発達し、頬袋はありません。乳頭は胸部に1対あります。

えさ
野生時の主食は果物で、約80%を占め、そのほか、木の実、若葉、花や花の蜜、クモ、昆虫、卵などを食べます。動物園では、リンゴ、バナナ、パイナップル、トマト、人参、ミカン、青菜、蒸かしたサツマイモ、サル用ペレット、ゆで卵などを与えています。

繁殖
繁殖は年間を通じて見られます。妊娠期間は226〜232日(226〜262日、210〜225日の報告があります)で通常1産1子、まれに双子が生まれます。発情周期は24〜27日で、発情は2〜7日間続きます。性成熟はオスが約5歳、メスは4歳です。初産年齢は5〜7歳、出産間隔は飼育下の場合は1年半の例がありますが、野生の場合、2年〜4年間隔で繁殖します。赤ちゃんの体重は300〜500gで、赤ちゃんの背中は黒く、おとなのような色に変わり始めるのは生後5ヶ月齢過ぎです。生後6〜10ヶ月齢の間、もっぱら母親に面倒を見てもらい、オスは育児に参加しません。
クロクモザルの人工保育の例によれば、固形物としてバナナを始めて食べたのが、生後46日齢、生後80日齢以降離乳食として果物やチーズを与え、生後180日齢でミルクを1日1回にしています。
また、授乳は2年半に及ぶという報告もありますが、野生の場合、出産間隔が2年以上あるので、この間は母親に依存しているのでしょう。
長寿記録は、タロンガ動物園で47年1ヶ月の飼育記録があるほかに、やはりタロンガ動物園で2004年6月現在、46年6ヶ月飼育されてなお生存中という記録があります。

天敵
人間による生息地の森林伐採のために生息地が減少し分断されたこと、及び食料にするための狩猟が本種にとって大きな脅威となっています。野生動物で主な外敵は、猛禽類のワシやタカとジャガーやピューマなどのネコ科の動物があげられます。

ジェフロイクモザル
分類   霊長目 オマキザル科
分布   メキシコ南部からパナマ東部までの中央アメリカ全域
大きさ   体長 30〜65cm 尾長 65〜85cm 体重 6〜9kg
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、クモザルの仲間は、種類ごとにランクが異なりますが、ジェフロイクモザルは絶滅の恐れが非常に高い絶滅危惧種(EN)に指定されています。
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
Welker, C. and Schaefer-Witt, S.   New World Monkeys, In (Parker S.P editor) Grzimek's Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990
Nowak,R.M.   Walker's Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press  1999
山崎泰   クロクモザルの成長期 どうぶつと動物園 (財)東京動物園協会1984

おもしろ哺乳動物大百科37(霊長目 オマキザル科) 2010.7.26

ホエザル属
今泉吉典博士は(1)アカテホエザル (2)クロホエザル (3)ブラウンホエザル (4)マントホエザル (5)メキシコクロホエザル、そして今回紹介するアカホエザルの6種に分類しています。一方、アカホエザルについて、3亜種に分類している学者もいます。 ホエザルはメキシコ南部からアルゼンチン、ブラジル南部まで広い地域で生息しています。ホエザルの名前の由来は、森林でおよそ3km、水辺では5km先まで届くというラウドコールと呼ばれる大声です。

37)アカホエザル
コロンビア北部とベネズエラ南部からアマゾン川上流地域に分布しています。生息地は乾燥地から雨林、沼沢地、マングローブ、サバンナと広範囲に適応し、樹上で生活しています。昼行性でふつうは森林の中高層の樹冠にいますが、ときどき餌を拾うために地上に降ります。移動は4足歩行で、樹幹を跳びはねることはしませんが、下の枝に飛び移ることはあります。ふつう1頭又は複数のオスを含む10頭前後の群れで生活しています。群れ間の行動域は重複しており、大声で鳴き交わすことでお互いに認識しています。オスは群れ内の争いの収拾を行うほか、餌となる木を他の群れから防衛します。主食は葉ですが、栄養価が低いので余分な体力を使いエネルギーを消費しないように行動はゆったりとしています。1日にうち約80%は休息していますが、外敵が近づいたときは敏捷に動きます。群れの中で最強のオスが地位を追われると、新しいオスは前夫の子殺しを行い、新たに自分の子をもうけるといいます。匂いつけは、太い木の枝に喉袋部や鼻孔部、顎、さらに排泄後に肛門をこすりつけて行います。

  オッ、大声でほえているね!写真家 大高成元氏撮影
オッ、大声でほえているね!
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
オマキザル科のなかでは大型で、オスの体重は6kg前後です。体色は赤褐色ですが、淡黄色のものもいます。顔は毛がなく黒紫色の肌が露出し、あごひげが長く喉まで覆っています。尾は長く先端部の内側に毛がなく、枝をつかむことができます。また、尾と後ろ足で枝にぶら下がりながら葉を採って食べることができます。手で物をつかむときは、オマキザル科の1種であるサキのように第2指と第3指の間でつまみます。オスの下顎骨はよく発達して上下に広がり、卵形の大きな舌骨があって、この下の空洞部に共鳴袋がありライオンのような低いうなり声を出すことができます。舌骨はメスよりオスが大きく、さらに群れの中で優位の個体が著しく発達しています。鳴くのは早朝が一般的ですが、他の群れが近づくと日中も鳴きます。鳴き声でお互いの状況がわかり無益な闘争を避けているようです。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。大臼歯が大きく葉を食べるのに適応しています。頬袋はなく、乳頭は胸部に1対あります。

えさ
主食は葉で大腸がふつうのサルの仲間よりやや長くなっています。また、季節によって葉を食べる比率は変わり、果物が実る頃は花や花の蜜、未成熟の果物の量が増加し、少ないときは葉が多くなるほか、蔓や茎や葉柄、若菜、木なども食べます。また、シロアリや塩分を含んだ土を食べた例もあります。

繁殖
繁殖は年間を通じて見られます。妊娠期間は186〜194日で通常1産1子でまれに双子が生まれます。発情周期は約17日で、発情は2〜4日続きこの間に交尾をします。群れ内のオスとコンソート(配偶者)関係を結び、また他のオスとも交尾をします。初産は4〜5歳、オスは7歳くらいまで父親になれません。赤ちゃんは出産直後に自力で母親の腹部につかまります。生後4週齢までは尾を巻きつけることはできませんが、10週齢以降になると、母親の背に乗り、母親の尾の付け根に巻きつけています。自分の尾を使ってぶら下がることができるようになるのは19週齢以降です。離乳は10〜14ヶ月齢です。育児に関しては、オスが手伝うことはなく、赤ちゃんは群れ内のほかのメスや子ども、そして若者と過ごします。母親の育児は17〜18ヶ月齢で終わります。ほとんどメスは2〜4歳で群れから出ますが、オスは4〜6歳です。
長寿記録は、フランクフルト動物園で2005年1月現在22年1ヶ月飼育されてなお生存中という記録があります。

天敵
人間の森林伐採による生息域の減少や分断、及び食料にするための狩猟が大きな脅威になっています。野生動物の外敵としては、猛禽類のオウギワシ、ネコ科のジャガー、ピューマ、オセロット、ヘビなどがいます。

アカホエザル
分類   霊長目 オマキザル科
分布   南米北部:コロンビア、ベネズエラ、ブラジル、ペルー
大きさ   体長 オス51〜63cm  メス48〜57cm 尾長 オス57〜68cm  メス52〜68cm 体重 オス5.4〜9kg  メス4.2〜7kg
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、アカホエザルは現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
Gron,K.J.(Reviewed by Crockett, C.)   Primate Factsheets: Red howler(Alouatta seniculus) Taxonomy, Morphology, Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2005
Welker, C. and Schaefer-Witt, S.   New World Monkeys, In (Parker S.P editor) Grzimek's Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990
Nowak,R.M.   Walker's Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press ,Baltimore  1999

おもしろ哺乳動物大百科36(霊長目 オマキザル科) 2010.7.12

ウアカリ属
ウアカリ属は、これまで(1)シロウアカリ(2)クロウアカリ(3)アカウアカリの3種類に分類していましたが、最近はハゲウアカリとクロウアカリの2種に分類し、ハゲウアカリの亜種として、シロウアカリとアカウアカリに分類しています。この他にも更に亜種を細分する学者もいます。
サルの仲間は種類が多く顔も千差万別でそれぞれ特徴がありますが、ハゲウアカリほどインパクトの強いサルは少ないでしょう。顔から前頭部にかけて毛がなくピンクから真紅の顔は、一度見たら忘れられないほどです。

36)ハゲウアカリ
ハゲウアカリは南米のアマゾン川上流のペルーとブラジルの国境地帯に生息しています。熱帯雨林の冠水するような小川が流れる原生林や湖沼地を好みます。樹層では高層から低層までどの層にでも生息していますが、上層部を好みます。通常は5〜40頭程度群れで生活し、現地の人によれば、100頭以上の大きな群れを作ることがある、と言われます。昼行性で、早朝から活動をはじめ、暑い日中は休息して、午後涼しくなると再び遊動しながら餌を探します。ふつう4足歩行ですが、両手をあげて2足歩行したり、樹幹を跳びはねて移動することもあります。また、乾季には地上に降りて種子や実生を探し食べます。遊動の合間に、木の上で座り、あるいは腹ばいになって休息します。夜間は群れが分散して高い樹上で眠ります。コミュニケーションは、顔に毛がないことから表情も豊かで、さまざまな声と共に状況に応じて変化させます。さらに短い尾はイヌのように、上げたり下げたりすることで感情の意思表示となります。その他、尾腺からの臭い付けや尿洗い行動もみられます。

  こんなサルにジャングルの中であったらゾッとしません?写真家 大高成元氏撮影
こんなサルにジャングルの中であったらゾッとしません?
写真家 大高成元氏撮影
   

からだの特徴
オマキザル科のなかでは中型で体重は3kg前後です。ハゲウアカリの中で、シロウアカリの体色は全体に白く、顔から前頭部にかけて毛が生えてなく、ピンク色を呈しています。アカウアカリの体毛は赤みを帯びた栗色で、前頭部と頭頂部が無毛かまばらに生え、顔の色が真紅なので一層際立っています。別種のクロウアカリは、顔と頭部に黒い毛が生えているので簡単に識別できます。肩から背にかけ長い毛が生えており、短いマント状となっています。また、新世界のサルの仲間でとりわけ尾が短く、15cm前後で房のような毛で被われているのも特徴の一つです。4肢に5本ある指の爪はすべて平爪です。歯式は門歯2/2、犬歯が1/1、小臼歯3/3、大臼歯3/3で左右上下合わせて36本です。歯の特徴は、下顎の門歯が前方に傾き、犬歯が外側に反っています。頬袋はなく、乳頭は胸部に1対あります。

えさ
主食は果実の種でおよそ70%を占め、未熟及び完熟した果実の種を食べています。その他に果実、花、花の蜜、葉、芽、そして、昆虫やカメの卵を食べた報告もあります。

繁殖
繁殖期は10月〜11月の乾季が出産のピークとなります。出産間隔はおおむね2年間です。発情周期は14〜48日で約1週間続き、この間の数日間に交尾します。妊娠期間は約6ヶ月間、通常一産一子です。初産は3歳の記録があります。オスの性成熟は6歳です。赤ちゃんの顔と頭部は灰色がかっていて毛が生えています。生後1ヶ月間はほとんど母親から離れません。3〜5ヶ月齢は母乳を飲み、固形物は4〜6ヶ月齢で食べはじめます。出産から3〜4ヶ月間は母親の腹部や横腹にしがみついていますが、その後背中に乗って移動します。6〜7ヶ月齢で群れの他のこどもに近づき一緒に遊びはじめます。頭部や顔の毛は3歳になると脱毛して、成獣と同様にピンクや真紅となります。長寿記録は、ケルン動物園で2005年1月現在35年10ヶ月飼育されてなお生存中の記録があります。

天敵
人々が生息域の森林伐採を進めた結果、生息域の減少や分断されたこと、及び食料にするための狩猟が生息数減少の主要な原因です。野生動物の外敵としては、猛禽類のオウギワシ、ネコ科のオセロット、ヘビなどがいます。

ハゲウアカリ
分類   霊長目 オマキザル科
分布   南米アマゾン川上流 ブラジル北西部とペルー東部
大きさ   体長 37〜57cm、尾長 15〜16cm、体重 オス 3.5kg メス 2.7kg
絶滅の危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2009年版のレッドリストでは、ハゲウアカリは絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定され、現在は国立公園や保護区で保護されています。また、クロウアカリは現在のところは絶滅の恐れが少ないので、低危急種(LC)に指定されています。
主な参考文献
伊谷純一郎 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 3 霊長類ほか 平凡社 1986
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
河合雅雄 岩本光雄 吉場健二   世界のサル 毎日新聞社 1968
杉山幸丸 編   サルの百科 データハウス 1996
Gron, K.J.(Reviewed by Barnet,A.)   Primate Factsheets: Uakari(Cacajao )Taxonomy, Morphology, Ecology, Behavior & Conservation, National Primate Research Center (University of Wisconsin) 2005
Welker, C. and Schaefer-Witt, C.   New World Monkeys, In(Parker S.P. editor) Grzimek's Encyclopedia of Mammals Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990
Nowak,R.M.   Walker's Mammals of the World Six Edition Vol.�
The Johns Hopkins University Press ,Baltimore  1999
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