川口先生のペットコラム
旭化成ホームズ株式会社
Profile
ゾウの先生 川口 幸男

1940年東京都伊豆大島に生まれる。上野動物園飼育課を定年退職後、エレファント・トークを主宰。講演や執筆をしている。講演依頼は、メール またはFax 048-781-2309にお願いします。
NHKラジオ番組夏休みこども科学電話相談の先生でもあり、本編では長年の経験を踏まえて幅広く様々な話題を紹介します。
わんにゃんドクター 川口明子

日本獣医畜産大学卒業、同大学外科学研究生として学び、上野動物園で飼育実習後、埼玉県上尾市にかわぐちペットクリニックを開業する。娘夫婦もそろって獣医師で開業しており、一家そろって動物と仲良くつきあっている。
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おもしろ哺乳動物大百科64(食肉目 イヌ科) 2011.9.27

タヌキ属
日本では古くから民話などに登場し、各地でなじみ深い動物の一つですが、タヌキ属は1種、タヌキがいるだけです。イヌ属やキツネ属に比べると、体が丸みを帯び短足ですばやく動く体形ではありません。その上、雑食性でイヌ科特有の裂肉歯や犬歯も発達していないことなどから、原始的なイヌのなかまとされています。
日本に生息するタヌキは、北海道のエゾタヌキ、本州、九州、四国にすむホンドタヌキの2亜種に分類されています。寒い北海道にすむエゾタヌキは、ホンドタヌキより大型で、被毛も長くなっており、寒さに適応しています。ここでは2亜種を含めた種、タヌキについて解説していきましょう。

64)タヌキ
シベリア東部のアムール、ウスリ地方から中国、朝鮮半島、ベトナム北部および日本にいたる東アジアに分布しています。現在はヨーロッパの北部や西部および中央アジアに毛皮を採るために持ち込まれた個体が野生化し分布域を拡大しつつあります。生息環境は水辺近くの森林や叢林の繁茂した草地です。夜行性で、岩の隙間、自然の穴、木の洞、ほかの動物が使って住まなくなった穴などに日中は潜んでいますが、動物園では日中も活動するのが観察されます。群れの基本単位は雌雄のペアとその子どもたちで、5~6頭の家族グループを作り、年間を通してペアで行動するとの報告もありますが、一夫一妻か一夫多妻かは、はっきりしません。国内の観察によれば、食物が雑食性で競合することが少ないので、なわばりはないとの報告もあります。行動圏はヨーロッパで0.4~20km2、フィンランドで9.5km2、日本では0.028km2(2.8ha)や秋には0.59km2(59ha)の報告もあります。泳ぎも上手で宮城県の金華山まで約700mを泳ぎ渡った記録もあります。
寒い地方に生息するタヌキは冬ごもりをすることが知られています。冬眠ではないので、大幅な体温の低下や脈拍数の減少はありませんが、秋の11~12月になると冬の穴ごもりに備えて、食欲旺盛となり体重は約50%増加します。そして、春3月には貯めこんだ栄養を使い果たし痩せ細った姿となり出てきます。飼育下では通常穴ごもりをさせませんが、冬季は食欲が減退します。また、タヌキの溜めフンと呼ばれている、同じ場所で排泄する習性があります。人間より鋭い嗅覚をもつ彼らは溜めフンの匂いを嗅ぐことによって、近辺にすむ仲間の情報を得ていると考えられます。
他にも、猟師が鉄砲で撃つと当たらなくとも倒れて失神すると言われてきましたが、すべてのタヌキが失神するのではなく、個体差があり逃げてしまう個体もいます。同様なことはニホンアナグマ、キツネ、オッポサムでも見られ、オッポサムの調査によれば、完全に失神してなく覚醒していたそうです。この行動は、敵に襲われた時に、イヌやキツネのようにすばやく逃げる反射行動をもっていないタヌキにとって、身を守るための捨て身の戦法で進化の過程で得た方法かもしれません。

  満月とタヌキ、昔話に出てきそうなカットですね。
満月とタヌキ、昔話に出てきそうなカットですね。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
体色は一般に灰褐色で、肩部から胸部と前肢にかけて帯状に黒っぽくなっています。4肢と口先は短く、目のまわりと共にそれぞれ先端部は黒褐色です。尾の背面は黒く内側は黄褐色で先端は黒です。春から初夏に換毛すると脱毛して全体的にみすぼらしくなりますが、冬毛にかわると長毛で下毛も密に生えてふっくらと丸みを帯びています。
全体的にみると頭部は小さくて4肢は短く、丸く小さい耳と口先も短いためずんぐりとした体形に見えます。体長は50~70cm、肩高27~38cm、尾長12~25cm、体重は春から夏は4~6kgですが、秋には6~10kgになります。歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、小臼歯4/4、大臼歯2~3/3で、上顎の大臼歯が多くなる個体がいるので、左右上下合わせて42~44本です。

えさ
雑食性で生息場所や季節によって差はありますが、豊富に手に入る小型の哺乳類、鳥類と卵、爬虫類、両生類、昆虫。植物は根から葉、果実まですべて食べます。たとえば、アカネズミ、ヒミズ、セミ、バッタ、トカゲ、ヘビ、カエル、カワニナ、タニシ、サカナ、サワガニ、ザリガニ、ミミズ、ナメクジ、カタツムリ、カキ、アケビ、ケンポナシ、などです。

繁殖
交尾期は1~4月で、発情期間は4日間ですが、ホンドタヌキは3月ころに発情し、5月ころが出産期となります。妊娠期間は59~64日、平均すると63日です。巣穴で出産し1産の平均は5~7頭ですが、最多で19頭の記録があります。生まれた時の体重は60~110gで、体には黒く柔らかい毛が生えています。目は閉じて生まれ、開くのは生後9~10日齢です。歯の萌芽は生後14~16日齢です。授乳期間は1.5ヶ月齢から2ヶ月齢で、固形物は生後25~30日齢から両親が運んできて与えます。育児は父親も協力し、妊娠後期から出産後数日はメスに食べ物を運んできます。父親は赤ちゃんをなめてグルーミングし、遊び相手となり母親の手助けをします。生後4~5ヶ月齢で親とほとんど同じ大きさになり、親と一緒に獲物をとるようになります。秋には親から離れますが、同じ行動域に留まるものもいます。生後9~11ヶ月齢で性成熟しますが、野生で繁殖するのは2~3歳からです。
長寿記録としては、広島市安佐動物公園で1995年12月29日に死亡した個体の16歳7ヶ月という記録があります。

外敵
野生の外敵としては、オオカミ、リンクス、クズリ、キエリテン、イヌワシ、オオワシ、ワシミミズク、野犬や家畜イヌなどがいます。しかし、タヌキもまた、毛皮や肉、毛筆用に使うため、人間に捕えられてきたことが一番の減少理由でしょう。
またタヌキは交通事故での死亡例が多く、高速道路で事故死する動物の中で40%を占めています。事故数は行動量が増える春の交尾・出産期や秋の子別れの時期と生息環境に適した丘陵地や雑木林に近い道路といった特定の場所に多くなっています。これは高速道路によってタヌキの行動圏が分断されていることをうかがわせるとの指摘もあります。他にも、高速道路では車の速度が速く、ライトの灯りでびっくりしてフリーズすることや、車がそばに来てから避けられるほど反射神経が発達していないことに起因しているようです。

タヌキ
分類   食肉目 イヌ科
分布   東アジア(中国、朝鮮、ベトナム北部、ウスリ、アムール地方、日本)。ヨーロッパの北部や西部および中央アジアでは移入種となっています。
大きさ   体長(頭胴長) オス・メス    50~70cm
体重     オス ・メス    春~夏  4~6kg 秋~冬 6~10kg 
尾長     オス ・メス  12~25cm     
肩高     オス ・メス  27~38cm
絶滅危機の程度   タヌキは、現在分布域が広く、個体数も多いことから、IUCN(国際自然保護連合)発行の2010年版のレッドリストでは低懸念(LC)種にランクされています。

主な参考文献
和泉剛   身近な夜行性動物 第2回 タヌキ
なきごえ 大阪市天王寺動物園広報誌 1994
今泉忠明   野生イヌの百科  データハウス 1993
今泉吉典 監修   世界の動物 分類と飼育2 食肉目 (財)東京動物園協会 
盛口満   タヌキまるごと図鑑 大日本図書1997
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999
Ward,O.C. and Wurster-Hill, D.H.   Mammalian Species. No.358, Nyctereutes procyonoides. The American Society of Mammalogists 1990
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A. (chief editor)   Handbook of The Mammals of The World. Vol.1 Carnivores.
Lynx Edicions 2009

おもしろ哺乳動物大百科63(食肉目 イヌ科) 2011.9.12

63)フェネックギツネ
北アフリカのモロッコ、アルジェリア、チュニジア、ニジェール、リビア、エジプト、スーダン、およびシナイ半島北部の砂漠地帯と半砂漠に生息します。砂漠の夜間はマイナス20℃以下になり、日中は50℃以上になることから、岩場近くの砂の下に深さ1m、奥行き10m程度の穴を掘り、その中で暮らすことで暑さと寒さを凌いでいます。夜行性ですが、午前中日光浴をして休むことがあります。基本的な社会単位はペアとその家族で多くとも10頭くらいで構成されています。イヌと似たような体を使った行動と鳴き声で、挨拶や威嚇、警戒音、親子間のコミュニケーションをとっています。動作は敏捷で垂直に60~70cm飛び上がり、また水平に120cm跳んで移動できます。  

  大きな耳で獲物の出すわずかな声も聞き取っているんですね。
大きな耳で獲物の出すわずかな声も聞き取っているんですね。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
イヌ科の中でもっとも小型の種類で、肩高は15~18cm、頭胴長は36~41cm、尾長18~31cm、体重1~1.5kgです。体の割に耳は大きく9~15cmあり、地中に潜む獲物の音を聞き取ると共に、暑いときは血管が拡充し血液温度を下げる役割を果たします。被毛は長くて羊毛のように柔らかく、背中は赤みがかったクリーム色、淡黄褐色からほぼ白色に近い個体もおり、腹側は白っぽい色をしています。目の内側から口唇にかけて濃い赤褐色の筋が通っています。目も大きく瞳は黒です。尾は赤褐色で長さ3~4cmの毛が密に生え、先端は黒です。平熱の体温はイヌより低く37.5℃、脈拍は1分間に100~115回で小型犬程度です。25℃から35℃の外温に適応しており、これより温度が上昇するとイヌのように口を開けてハアハアと浅速呼吸をし、反対に寒くなると、尾を体に巻きつけて暖を取ります。足の裏は幅が広く砂地を歩くのに適しています。パッド(肉球)は毛で被われていて、寒暖の激しい環境に適応した作りとなっています。歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、小臼歯4/4、大臼歯2/3で左右上下合わせて42本で、犬歯は細くて小さく鋭くなっています。

えさ
主食はバッタ、セミなどの昆虫、クモ、鳥、卵などに加えウサギ、ネズミ、トカゲ、ヘビ、サソリ、植物の根などを食べます。水分の多い小動物や植物の根を食べているので、水を飲まなくても長期間過ごせると考えられています。ノウサギやアレチネズミなどの小動物の狩りは1頭で行いますが、獲物の首を噛んで仕留めます。余った獲物は砂の中に隠し、鼻で砂をかけておきます。

繁殖
繁殖は年に1回で、交尾期は生息域によってちがいます。通常は1~2月で、出産は3~4月ですが、失敗すると、2ヶ月半から3ヶ月後にもう一度生むことがあります。ペアは頻繁に鳴き合い交流を深め、なわばり内で排尿が頻繁となり攻撃的になります。妊娠期間は50~52日、通常は1産2~5頭です。メスは赤ちゃんが生まれると、子どもを守るために攻撃的になります。オスもまた、赤ちゃんが4週齢まで食べ物を運び、巣穴周辺を守っていますが、母子の巣穴の中までは入りません。
生まれたばかりの赤ちゃんの大きさは、頭胴長11~12cm、尾長4~5cm、耳長約1cm、体重40~45gです。全身が毛におおわれ、目は閉じていて、生後8~11日で開きます。生後51日齢の体重はオスの2例では200g、430g、メスの3例では330g、330g、405gでした。固形物の肉は生後3週間齢で食べ始めますが、授乳は生後61~70日齢まで続きます。ハンティングの真似事は生後7週齢頃からみられますが、性成熟は生後9~11ヶ月齢です。飼育下では、授乳は生後19日齢まで巣箱で行い、生後20日齢以後は外に出て日光浴をするようになりました。メスは子どもの頚部をくわえて移動します。
長寿記録としては、アメリカのミルウォーキー動物園で1988年2月16日に死亡した個体の16歳3ヶ月という記録があります。

外敵としては、家畜のイヌ、ジャッカル、ハイエナに殺されますが、一番の外敵は人間で、ペットや食べるために捕えられます。

フェネックギツネ
分類   食肉目 イヌ科
分布   北アフリカおよびシナイ半島北部の砂漠地帯・半砂漠。
大きさ   体長(頭胴長) オス・メス    36~41cm 
体重     オス ・メス   1.0~1.5kg  
尾長     オス ・メス  18~31cm
耳長     オス ・メス   9~15cm       
肩高     オス ・メス  15~18cm
絶滅危機の程度   正確な生息数は不明ですが、目撃情報や捕獲数が多く個体数も多いと推測されることから、国際自然保護連合発行の2010年版のレッドリストでは低懸念(LC)種にランクされています。

主な参考文献
今泉吉典 監修   世界の動物 分類と飼育2 食肉目 東京動物園協会 1991
今泉吉典 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 1 食肉類 平凡社 1986
今泉忠明   野生イヌの百科  データハウス 1993
Nowak, R. M.   Walker's Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker, S.P. (ed)   Grzimek's Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Lariviere, S.   Mammalian Species . No.714, Vulpes zerda. The American Society of Mammalogists 2002.

おもしろ哺乳動物大百科62(食肉目 イヌ科) 2011.8.26

キツネ属
本属はユーラシア、南北アメリカ、北極のツンドラまで食肉目の中で最も分布域が広く、分布域によりそれぞれ特徴があります。チベットの高山(海抜4500~4800m)にすむのはチベットスナギツネです。また、最小の種類はフェネックギツネで、北アフリカのサハラ砂漠からシナイ半島、そして、アラビア半島の砂漠にすみ、大きな耳が特徴な種類です。キツネ属の分類については諸説ありますが、今泉吉典博士は、上記2種の他に、ベンガルギツネ、ブランフォードギツネ、ケープギツネ、ハイイロギツネ、コサックギツネ、シマハイイロギツネ、キットギツネ、オグロスナギツネ、オジロスナギツネ、スウィフトギツネ、アカギツネの11種、合わせて13種に分類しています。
今回は、これらの中からアカギツネとフェネックギツネの2種類を紹介しましょう。

62)アカギツネ
アカギツネはオオカミと並んで世界中に分布し、ユーラシア(インド中南部とインドシナ半島を除く)、北アフリカ、北米の北部、北極海の沿岸まで北半球に広く生息しています。分布域が広いため、地域差による変異から、50種類近くの亜種に分類する学者もいます。
生息地域は0~4500mの高地、住居近くから農地、平原、半砂漠、深い森林、極地のツンドラまで見られます。夜行性ですが、子育ての時期には昼間も活動し、一晩におよそ8kmを徘徊します。繁殖期以外は、単独でいる成獣のオスとメス、または成獣のオスとメス1~2頭、およびその子どもで3~4頭で構成する小家族のグループがいます。性成熟しても母親のもとに残る子どもはメスが多く、育児ヘルパーとなって、次に母親が出産すると約1ヶ月間、餌を運んできて母親や子どもに与え、あるいは子どもの遊び相手になります。巣穴は基本的に出産と育児に使いますが、育児の合間に引っ越すので3~5個を用意します。多くは斜面に、深さ1~3m、長さが2~10mの迷路のような穴を自分で掘る場合と、マーモット、アナグマ、アナウサギなどが使っていた穴なども利用し、何年にもわたり使うことがあります。動きは軽快で時速48kmの記録が報告され、垂直に約2m飛び上がることや、傾斜した木に登ること、そして上手に泳ぐことが知られています。行動圏となわばりはほぼ一致しており、市街地のなわばりは約0.5km2、砂漠で約50km2と環境による差が見られます。
国内のアカギツネは2亜種いて、北海道に生息するキタキツネは、南千島、国後島、択捉島にも生息しています。電波発信機を付けた個体調査による行動圏は1~8km2でした。1~2月に交尾、4月前後に巣穴で出産します。もう一つの亜種・ホンドキツネは、本州、四国、九州、まれに四国に生息し、キタキツネに比べて一回り小型です。出産期は3~4月で平均4頭を出産します。

  冬、雪が積もり胸の毛が純白に変わり、美しく変身したアカギツネ。
冬、雪が積もり胸の毛が純白に変わり、美しく変身したアカギツネ。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
アカギツネの典型的な体色は名前の示す通り、背中の色が赤を基調とした赤褐色で、ほかにも灰褐色、黒色、黒と銀色など体色に多くの変異があります。一般に、腹部は白味がかった灰色で、4肢の下部は黒、尾は長い毛で被われていて先端は白です。耳は三角形で大きく先がとがり、背面は黒です。イヌ科の中ではオオカミより一回り小型で、吻が細く尖っている点が特徴です。頭胴長に対して尾が太くて長く、走るときにバランスをとる場合や、眠るときに顔を覆って寒さを防ぐのに役立っています。尾の基部にはスミレ腺と呼ばれる匂いを出す臭腺があり、他にも肛門や指間に分泌腺があります。前肢は5指、後肢は4指ですが、前肢の第1指は地面に着地しません。乳頭数はふつう、胸部1対、腹部2対、鼠径部1対ですが、7~10個まで個体差があります。歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、小臼歯4/4、大臼歯2/3で左右上下合わせて42本で、犬歯は細く鋭くなっています。体長45~90cm、体重3~14kg、尾長30~50cm程度で、寒い地方に生息する亜種は、熱帯地方のなかまより一回り大型です。

えさ
主食はネズミのなかまですが、捉えるときは垂直にジャンプし上から押さえ込んで仕留めます。果物が豊富に実るころは重要な食料源となり、冬に備えて脂肪を蓄えるのに役立っています。他にも鳥、昆虫、爬虫類、両生類、昆虫、魚、カニ、死肉、果物など何でも食べる雑食性で、食べ残したものは、落ち葉などをかぶせて保存します。

繁殖
交尾期は地域差があり、ヨーロッパの南部では12月~1月、中部・1月~2月、北部・2月~4月ですが、北米では大きな差はありません。発情は1~6日間続き、妊娠期間は51~53日です。出産は年1回、3~5月に1産平均5頭(1~13頭)の赤ちゃんを産みます。赤ちゃんの体重は約100g(50~150g)で、黒い毛が生えています。目は閉じており、生後9~14日齢で開きます。生後2週齢ころから固形物も食べ始めますが、離乳は生後8~10週齢です。生後3~4ヶ月齢でほとんどの子どもは親の元を離れて分散してゆきますが、一部は親の行動圏の近くにとどまるものもいます。分散する距離は通常メスで約10kmですが、オスでは約40km、 時には394kmという記録も報告されています。性成熟は8~10ヶ月齢です。
長寿記録としては、アメリカのアイダホ州にあるボイス動物園で、2004年7月現在飼育中の個体の飼育期間18年11ヶ月、推定年齢21歳3ヶ月という記録があります。

外敵としては、クマ、オオカミ、オオヤマネコ、ワシやワシミミズクなどの猛禽類がいます。しかし、最大の敵は人間で、スポーツハンティングで狩猟の的になり、あるいは毛皮をとるためや家畜を守るためにワナで捕えられています。

アカギツネ
分類   食肉目 イヌ科
分布   ユーラシア(インド中南部とインドシナ半島を除く)、北アフリカ北部、北米
大きさ   体長(頭胴長) オス 55~90㎝    メス 45~70㎝
体重     オス 4~14㎏    メス 3~7㎏
尾長     オス  36~49㎝     メス 28~44㎝

(日本に分布する2亜種)
  ホンドギツネ キタキツネ
体長(頭胴長) オス・メス   52~76cm  オス・メス   60~80cm
体重 オス・メス    4~7kg オス・メス   4~10kg
尾長 オス・メス   26~42cm オス・メス   37~44cm
絶滅危機の程度   イヌ科のなかまで最も分布域が広く、個体数も多いことから国際自然保護連合(IUCN)発行の2010年版のレッドリストでは低懸念(LC)種にランクされています。雑食性で何でも食べ、広い生息域を持ち環境への適応性が高いために、絶滅の危険は少ないと考えられています。

主な参考文献
今泉吉典 監修   世界の動物 分類と飼育2 食肉目 (財)東京動物園協会 1991
今泉吉典 監修
D.W.マクドナルド 編
  動物大百科 1 食肉類 平凡社 1986
今泉忠明   野生イヌの百科  データハウス 1993
Nowak, R. M.   Walker's Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker, S.P. (ed)   Grzimek's Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
浦口宏二   病気と生態―キタキツネ
In 日本の哺乳類学(監修 大泰司紀之・三浦慎悟監修)
東京大学出版会 2008
Lariviere, S. and Pasitschiniak-Arts, M.   Mammalian Species . No. 537 . Vulpes vulpes, 8
The American Society of Mammaloigists, 1996.
阿部永 監修   日本の哺乳類(改訂版) 東海大学出版会  2005.
Wilson, D. E. and Mittermeier, R. A.(chief editor).   Handbook of the Mammals of the World. Vol.1 Carnivores. Lynx Edicions. 2009.


おもしろ哺乳動物大百科61(食肉目 イヌ科) 2011.8.15

61)セグロジャッカル
ジャッカルはアフリカ、ヨーロッパ、中近東から東南アジアにかけて生息し、セグロジャッカル、ヨコスジジャッカル、キンイロジャッカル、アビシニアジャッカルの4種に分類されています。今回取り上げるセグロジャッカルは南アフリカと東アフリカのケニア、スーダン、エチオピアに生息しています。開けた草原や低木林、海岸近くの砂漠に、時には3000m級の高地に、単独かペア、あるいは小さな家族群で生活しています。薄暮動物で朝夕に活発に活動しますが、寒い時は昼も餌を探します。自分で掘ったり、ツチブタなどほかの動物が使った穴や古くなったアリ塚、岩の割れ目などを利用して休息します。
動物園の飼育例によれば、性格はとても神経質だが、穴掘りが上手で、斜面に地下1m位の深さを素早く掘り、その中で休む、と報告しています。ふつう時速8~10kmで歩行し、南アフリカの調査報告によれば、一晩に約12kmや40kmを移動した記録もあります。行動圏の広さは南アフリカで3~12km2、平均約11km2でお互いに重複しています。行動圏のすべてあるいは一部分はなわばりとなっていて、その境界を定期的に巡回し尿や糞で匂いつけをしますが、ペアの場合、単独個体の倍の匂いつけをします。群れは雌雄ともに順位制がみられ、上下関係は顔の表情や行動で表します。声は重要な情報源で、なわばりの宣言、警戒、威嚇、子どもを呼ぶ声などが知られ、また、相手の声に反応し返事をします。


  背中の霜降りの黒い毛が鮮やかに写っていますね。
背中の霜降りの黒い毛が鮮やかに写っていますね。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
全体的にオオカミよりキツネに似た体形でほっそりしています。背中は尾端まで霜降りのように黒くなっています。横腹から4肢は淡褐色で、前胸部から喉にかけて白く、尾は毛が密に生えて褐色、先端は黒です。耳は大きな3角形で立っています。前肢は5指、後肢は4趾で、乳頭数は4対です。吻が細く尖っており、犬歯は細く鋭くなっています。歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、小臼歯4/4、大臼歯2/3で左右上下合わせて42本です。


えさ
群れで協力して狩りをする場合、トムソンガゼル、トピなどレイヨウ類の成獣も倒します。そのほか、ノウサギやネズミのなかまからトカゲ、ヘビなどの爬虫類、カエルやカニ、昆虫、屍肉、海鳥や卵、果物など何でも食べる雑食性です。食べ残したものは、落ち葉などをかぶせて保存します。


繁殖
年1回繁殖し、交尾期は5~8月で7~10月に出産します。発情期の前からペアになり、関係は長く続き8年間続いた記録もあります。妊娠期間は60~65日で1産3~9頭、平均4頭を出産します。生まれたばかりの赤ちゃんの体重は約160gで、黒みがかった毛におおわれ、耳は垂れ、目は閉じており、開くのは生後8~10日齢です。母親は出産後3週間、巣穴で90%を赤ちゃんと一緒に過ごし、授乳や体を温めるなど世話をします。生後8~9週齢で離乳します。生後6ヶ月齢頃から狩りの仕方を覚え、その後子どもの一部はヘルパーとして群れに残り、残りの個体は群れを離れてゆきます。群れの基本的な構成メンバーは、両親とその子どもですが、ヘルパーとして群れに残った前年生まれの子どもが、これに加わることもあります。ヘルパーはこの間に、狩りや育児方法を習得すると共に、獲物をそれぞれが巣に持ち帰り、待っている母子に与えます。他にも、ハイエナなどの外敵から群れを防衛するときに役立ち、ヘルパー自身の居場所の確保にもなっています。1頭のヘルパーがいる家族は3頭の子どもが生き残ることができますが、いない場合1頭しか生き残れません。
長寿記録としては、シカゴのブルックフィールド動物園で2005年1月現在飼育中の個体の16歳8ヶ月という記録があります。
外敵としては、ヒョウ、ハイエナ、チーター、ヒヒ、ニシキヘビ、猛禽類がいます。

セグロジャッカル
分類   食肉目 イヌ科
分布   アフリカ東部および南部
大きさ   体長(頭胴長) オス 71~81㎝    メス 67~71㎝
体重     オス 6.4~11.4㎏    メス 5.9~10.0㎏
尾長     オス  31~33㎝     メス 27~32㎝
肩高     オス・メス 38~48㎝
絶滅危機の程度   分布域が広く、個体数も多いことからIUCN(国際自然保護連合)発行の2010年版のレッドリストでは、低懸念(LC)種にランクされています。
北アメリカのコヨーテと共に草原の掃除屋の異名があり、何でも食べることや広い生息域を持っているため、絶滅の危険は少ないと考えられています。

主な参考文献
今泉吉典 監修   世界の動物 分類と飼育2 食肉目 (財)東京動物園協会 1991
今泉忠明   野生イヌの百科  データハウス 1993
桑原久、山下輝光、小森厚   ジャッカル(動物園教室 62)どうぶつと動物園
Vol. 22 No.9, (財)東京動物園協会 1970
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991
Parker, S.P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Walton, L. R. & Joly, D. M.   Mammalian Species No. 715. Canis mesomelas . The
American Society of Mammalogists 2003.


おもしろ哺乳動物大百科60(食肉目 イヌ科) 2011.7.27

60)タイリクオオカミ(ハイイロオオカミ)
食肉目のなかまは単独で狩りをする種類が多いのですが、群れで狩りをする種もいます。代表的な種類は、アフリカとインドに生息するライオンで群れをプライドと呼びます。一方、オオカミの群れはパックと呼ばれ、ヨーロッパ、中近東、ロシア、アジア、北米、メキシコと広範囲に分布し、2000~4000m級の高地や平らな草原、山地、森林、砂漠からツンドラまで生息しています。一般にツンドラのような寒帯にすむ亜種は大型で、餌も大きなヘラジカやトナカイ、ジャコウウシなどです。これに比べ暑いメキシコなどに住む亜種は、中型や小型のウサギやネズミのなかまです。
ふつう両親と子どもたちからなる7~8頭の群れで暮らしますが、寒帯で生活するグループは、冬季に20~30頭の大きな群れをつくり、大型の獲物を狙います。移動は通常時速8km位ですが、獲物を追跡するときは、先頭を交代しながら時速55~70kmの高速で走ることができます。行動圏は100~13,000km2と生息地や獲物の量などにより大きく変わります。群れは雌雄ともに順位制がみられ、上下関係は顔の表情や行動、声で表します。上位の個体は尾を上げ、劣位は下げて仰向けになり腹部を相手にさらすなど、服従の姿勢をとります。休息するときは出産用の巣とは別の土穴、岩の割れ目、樹洞、切り株の下などを使います。夜行性ですが冬季には日中活動することもあります。

  一見するとイヌと変わりませんが、どんなに強そうなペットのイヌでも、遭遇すれば尻尾を巻いて逃げるでしょう。強いんです!
一見するとイヌと変わりませんが、どんなに強そうなペットのイヌでも、遭遇すれば尻尾を巻いて逃げるでしょう。強いんです!
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
寒帯のアラスカに生息する亜種はイヌ科の中では最大で、体長130~160cm、体重80kgに及ぶ個体もいますが、熱帯や亜熱帯のアラビアやインドに生息する亜種は小型で、体長が80~120cm、体重20kg程度です。
体色は、一般に背中が灰色から黄褐色で腹側は黄白色ですが、全身黒色の個体もいます。また、地域によっては全身白色の場合もあり変化に富んでいます。寒帯で生活するグループは、毛の長さ6cm前後で、冬毛では淡色になります。さらに、頸部から肩、背中にかけて、およそ13cmに達するマントのような毛が生えており、雪や雨から体を守っています。走るときの尾の位置は、コヨーテが下がっているのに対し、オオカミは上げているので遠方からでも区別できます。聴覚もすぐれ、耳を左右に動かして音の位置を確かめます。オオカミの遠吠えで知られるように、声はお互いのコミュニケーションの手段として、なわばりの宣言、挨拶、降伏、威嚇のときに使われます。排泄もまた重要な情報手段で、一定の間隔で匂いを残しなわばりの主張とします。嗅覚は鋭敏で1.6km先の獲物のにおいを嗅ぎ取ります。犬歯と裂肉歯(上顎の第4前臼歯と下顎の第1臼歯)が大きくて顎の力も強く、獲物を倒すのに適応しています。歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、小臼歯4/4、大臼歯2/3で左右上下合わせて42本です。乳頭数は4~5対です 。

えさ
餌になる大型動物には、ヘラジカ、ワピチ、ジャコウウシ、オオツノヒツジ、シロイワヤギやバイソンなどです。中型のものは、ビーバー、ウサギ、そして小型のネズミのなかまの他や魚、両生類、爬虫類等それぞれの生息地の動物がほとんど対象となります。1頭がいちどにおよそ9kgの肉を食べることができますが、その後は数日間食べないので、1日に食べる量は平均すると2.5㎏ほどになります。

繁殖
交尾期は1~4月の間で、発情が5~7日間続きその間に交尾します。交尾は通常群れ内の順位の一番高いペアのみで行われます。出産用の巣は、ふつう水辺の近くに掘った長さが2~4mのトンネル状の穴を使います。ほかの動物が使った穴なども利用し、2~3年使うこともあります。
その他に樹洞、岩の割れ目、倒木の下に掘った穴なども使います。妊娠期間は62~63日です。1産1~11頭、平均で6頭を出産します。生まれたばかりの赤ちゃんの体重は約450gで、黒みがかった毛におおわれ、耳は垂れ、目は閉じており、開くのは生後約2週齢(生後11~15日齢)です。生後2週齢で歩きはじめ、3週齢で穴の入り口あたりで遊び始めます。この頃から遊びの中で順位が決まっていきます。授乳は生後2週齢までは乳のみですが、その後パックのメンバーが肉を胃に入れて帰り、吐き戻された肉片を少しずつ食べて生後6~8週齢で離乳します。生後6ヶ月齢頃から狩りの仕方を覚えていきます。生後8週齢頃になると、普段群れが休憩用に使う巣穴の一つに移動します。生後約22ヶ月齢で性成熟しますが、繁殖は3歳になることが多いです。育児は父親と群れに残った年長の子どもが協力して行い、母親以外のメンバーはヘルパーとなって、子どもの遊び相手や、狩りの獲物をそれぞれ巣に持ち帰り与えます。番(つがい)は生涯続きます。
長寿記録としては、ブタペスト動物園で1973年1月2日に死亡した個体の飼育期間17年6ヶ月、推定年齢20歳7ヶ月という記録があります。
外敵としては、唯一人間があげられます。

タイリクオオカミ(ハイイロオオカミ)
分類   食肉目 イヌ科
分布   北アメリカ、ヨーロッパ、アジア、中近東
大きさ  

体長(頭胴長)   100~160cm 
体重    オス   20~80kg  メス  18~55㎏        
尾長         35~56cm 
肩高         68~97cm 

絶滅危機の程度   分布域が広く、個体数も多いことからIUCN(国際自然保護連合)発行の2010年版のレッドリストでは低懸念(LC)種にランクされています。
かつて北半球の砂漠と熱帯雨林以外はほとんど生息していましたが、人々が各地で彼らの生息地まで拡大し生活し始めると、オオカミが牧畜業者の飼育している家畜を殺すので、銃やワナ、毒を使って殺しました。そのほかにも、毛皮をとるために盛んにハンティングを行い一部の地域では絶滅しました。日本でも北海道に生息していたタイリクオオカミ(ハイイロオオカミ)の亜種とされるエゾオオカミは1900年ころ、また日本本土に生息していた亜種、ニホンオオカミは1905年に奈良県で捕獲された個体が最後の1頭となり、それぞれ絶滅したと推測されています。
一方、北米のイエローストーン国立公園ではオオカミが絶滅した結果、エルクなどシカの仲間が過剰になって森林の木々が食料となりダメージを受けました。解決策として、再びオオカミを公園に放し食物連鎖のバランスを図った結果、エルクは半減しましたが、ときおり家畜が被害を受けるので経緯を注意深く観察しています。

主な参考文献
今泉忠明   野生イヌの百科  データハウス 1993
今泉吉典 監修    世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
今泉吉典 監修    世界の動物 分類と飼育 (2) 食肉目 (財)東京動物園協会 1991
林壽朗   標準動物図鑑全集 動物Ⅰ 保育社1968
Mech, L. D.   Mammalian Species . No.37 Canis lupus . The American Society of Mammalogists 1974.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A. eds.   Handbook of The Mammals of The World. Vol.1 Carnivores. Lynx Edicions 2009.
Nowak, R. M.   Walker's Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
ジョン・ボネット・ウェクソ 編者
増井光子 訳・監修
  ズ―・ブックス 6  オオカミ/クマ 誠文堂新光社1985
今泉吉典   インターネット  Yahoo!! 百科事典(小学館『日本大百科全書』)


おもしろ哺乳動物大百科59(食肉目 イヌ科) 2011.7.13

食肉目
食肉目の仲間は、大きく2つのグループに分かれています。一つは、陸上で生活するイタチ、ジャコウネコ、アライグマ、クマ、マングース、ハイエナ、イヌ、ネコなどで裂脚亜目、もう一つは、主に海で生活するアシカ、アザラシ、セイウチ等で鰭脚亜目です。
裂脚亜目のうちジャイアントパンダとレッサーパンダは、以前パンダ科に分類して9科としていましたが、最近のDNAの分析結果からそれぞれをクマ科とアライグマ科に分類するのが主流なので、8科とします。裂脚亜目は3科に分類されています。
今泉吉典博士は食肉目を12科(パンダ科を含む)、109属、271種に分類しています。概して体は被毛におおわれ、鉤爪があります。歯が発達し、なかでも犬歯は鋭く肉を切り裂き、雑食性の種類では、臼歯が発達しています。獲物を探すために嗅覚や聴覚が鋭く、強い咬筋や脚力を持っています。

イヌ科
イヌ科は10属約40種に分類されています。分布域は草原、森林、山間部、伐採林、叢林などに広く生息しています。オーストラリアと南極大陸以外はほとんど世界中に分布しています。
通常は前肢に5本、後肢には4本の指があります。耳は生息域によって形状が異なり、フェネックのように砂漠など熱い地域に住む種類では大きな耳を持っています。寒い地方に生息するホッキョクギツネは、寝るときにはふさふさした長い尾を抱いて防寒にしています。ネコ科のように爪を引っ込めることができません。
歯式は門歯3/3、犬歯1/1、小臼歯4/4、臼歯1~4/2~5で合計38~50本あります。上顎の第4前臼歯と下顎第1臼歯は鋭く尖り、肉を裂くように切ることができるので裂肉歯と呼ばれています。イヌ科の中でも昆虫をよく食べる種類では臼歯の数が増えるなど、食性と密接に関連しています。ネコ科の動物より雑食傾向が強く植物も食べます。繁殖は生息環境に四季がある場合は、冬季に発情、春に出産するのが多く見られ、熱帯地方では年間を通して繁殖が見られます。

イヌ属
コヨーテ、タイリクオオカミ(ハイイロオオカミ)、セグロジャッカルなど9種類に分類され、北米、中央アメリカ、ユーラシア、アフリカに分布しています。前肢の指は4~5本、後肢は4本で、つま先を地面に付けて歩く指行性歩行をします。犬歯は強く裂肉歯が発達しています。小さな盲腸があります。
初めにコヨーテから解説していきましょう。

  大きく口を開けて、仲間に合図を送っているのかな。
大きく口を開けて、仲間に合図を送っているのかな。
写真家  大高成元氏 撮影
   
59)コヨーテ
北米のアラスカ、カナダのオンタリオ南部からコスタリカまで広い地域に分布しています。生息環境は開けた草原、伐採林、叢林ですが、近年は都市周辺まで生息域を広げています。群れの基本的単位はペアで、その他に単独、家族グループで大きなグループは作りません。行動圏はオスが20~40km2、メスが8~10km2です。一晩に平均約4kmを移動し、ふつう時速32~48kmで走りますが、時速64kmの速さで獲物を交代で追跡しながら捉えた報告もあります。基本的に夕方から活動する夜行性ですが、日中も活動します。耳が大きく聴覚が発達し、朝夕どこかで遠吠えが聞こえると、周辺のコヨーテが呼応して一連のコーラスとなります。警告、警戒、挨拶、服従など11種類の声で交信します。聴覚の下限は100Hz、上限は80kHzまで聞くことができ、ペットのイヌに比べ高音で交信しています。

からだの特徴
体色は一般に褐色ですが、灰色や黄色、黒みがかったものもいます。四肢は橙色で、尾端は黒です。寒い地方にすむものは、下毛が密に生え防寒に優れています。口の先はキツネのようにとがり、耳介は大きく直立しています。体長75~100cm、尾長30~40cm、体重 オス8~20kg、メス7~18kg、肩高45~53cmです。北方産の方が大型になっています。爪はオオカミに比べると丸みを帯びています。走るときの尾の位置が、オオカミは上げているのに対し、コヨーテは垂れているので遠方から見て区別できます。
歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、小臼歯4/4、大臼歯2/3で左右上下合わせて42本です。

えさ
生息地によって多少の差異はありますが、食物の90%は哺乳類で56種を採り、植物28種を食べた報告があります。胃の内容物の調査結果によれば、ジャックウサギやワタオウサギ、小型のげっ歯類のネズミやプレーリドッグなどが主食となっています。他にも腐肉や果実、小型の両生類や爬虫類、鳥類、水中に入って魚やザリガニなども食べる雑食性です。食肉目の仲間の多くが絶滅していく中で、雑食性のおかげで生息域を広げていき、都市部近郊まで進出し絶滅を免れています。

繁殖
カナダなどの北方域に生息するものは、繁殖期が決まっています。発情期は1~3月で、発情期間は2~3ヶ月間ありますが、この間における交尾の適期は2~5日間です。妊娠期間は58~65日、平均63日です。樹洞、岩の隙間、あるいは自分でやぶの斜面に穴を掘ってその中で出産します。
1腹2~12頭、平均で4~7頭を出産し、生まれた時の体重は250~275gです。目は閉じており、開くのは生後約2週齢です。授乳期間は5~7週間で、固形物は生後3週齢くらいから食べ始めます。生後8週齢まで週に約300gの割合で増加する、との報告があります。オスと群れに残った年長の子どももヘルパーとして育児に参加し、餌を吐きもどして子どもに与えます。排泄は生後2~3週齢まで母親に陰部をなめてもらい行いますが、その後は自力で排泄します。巣穴から生後2~3週齢経つと出入りをはじめ、生後6~9ヶ月齢で巣穴から出ます。メスは1歳で繁殖が可能となりますが、実際に行動圏をもってペアとなるには2歳です。多くの子どもは、秋から冬にかけて親の元を離れますが、その距離は80~160㎞、なかには544㎞も移動したとの報告があります。
長寿記録としては、フィラデルフィア動物園で1904年6月20日に死亡した個体の、飼育期間21年10ヶ月という記録があります。
野生の外敵としては、人間の他には、天敵として、ピューマ、オオカミ、イヌワシなどがいます。

コヨーテ
分類   食肉目 イヌ科
分布   北アメリカから中央アメリカ北部にかけて
大きさ  

体長(頭胴長) オス、メス 75~100cm
体重     オス   8~20kg     メス7~18kg
尾長     オス、メス   30~40cm
肩高     オス、メス   45~53cm

絶滅危機の程度   コヨーテは、現在分布域が広く、個体数も多いことから、IUCN(国際自然保護連合)発行の2010年版のレッドリストでは低懸念(LC)種にランクされています。

主な参考文献
今泉忠明   野生イヌの百科  データハウス 1993
今泉吉典 監修   

世界哺乳類和名辞典 平凡社1988

今泉吉典 監修   

世界の動物 分類と飼育 (2) 食肉目 (財)東京動物園協会 1991

林壽朗   標準動物図鑑全集 動物Ⅰ 保育社1968
Bekoff, M.   Mammalian Species . No.79 , Cannis Latrans . The American Society of Mammalogists 1977
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A. eds.   Handbook of The Mammals of The World. Vol.1 Carnivores. Lynx Edicions 2009.
Nowak, R. M.   Walker's Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
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