川口先生のペットコラム
旭化成ホームズ株式会社
Profile
ゾウの先生 川口 幸男

1940年東京都伊豆大島に生まれる。上野動物園飼育課を定年退職後、エレファント・トークを主宰。講演や執筆をしている。講演依頼は、メール またはFax 048-781-2309にお願いします。
NHKラジオ番組夏休みこども科学電話相談の先生でもあり、本編では長年の経験を踏まえて幅広く様々な話題を紹介します。
わんにゃんドクター 川口明子

日本獣医畜産大学卒業、同大学外科学研究生として学び、上野動物園で飼育実習後、埼玉県上尾市にかわぐちペットクリニックを開業する。娘夫婦もそろって獣医師で開業しており、一家そろって動物と仲良くつきあっている。
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おもしろ哺乳動物大百科81(食肉目 イタチ科) 2012.06.27

イタチ科
イタチ科は23属、総種類数は66種に分類されます。次に23属を列挙すると、(1)イタチ属 (2)マダライタチ属 (3)テン属 (4)タイラ属 (5)グリソン属 (6)グリソンモドキ属 (7)ゾリラ属 (8)サハラゾリラ属 (9)ゾリラモドキ属 (10)クズリ属 (11)ラーテル属 (12)アナグマ属 (13)ブタバナアナグマ属 (14)スカンクアナグマ属 (15)アメリカアナグマ属 (16)イタチアナグマ属 (17)スカンク属 (18)マダラスカンク属 (19)ブタバナスカンク属 (20)カワウソ属 (21)オオカワウソ属 (22)ツメナシカワウソ属 (23)ラッコ属です。
本科の仲間は南極大陸、オーストラリア、ニュージーランド(ヨーロッパケナガイタチとオコジョが後に移入されました)、ニューギニア、西インド諸島、マダガスカル、セレベス、フィリッピンの島々を除き広く全世界に分布しています。イタチ属のイイズナの体重は、わずか25~250gですが、最大の種、クズリやオオカワウソは100倍の30kg以上となります。ほとんどの種に強い匂いを出す肛門腺があります。肛門腺は皮脂腺が変化したもので貯蔵のうに蓄えられ、排便の際にわずかに付着し匂いの信号となります。多くの種は陸上で生活していますが、カワウソ属やラッコ属のなかまでは時々陸地に上がるものの、水中生活に適応し餌を水中でとります。ラッコは海中に潜り貝を採って水面に仰向けになり石で貝を割って食べることが知られています。歯式は種によって大きく異なり、最も歯数が多い種はアナグマ属で総数は38本あります。食性はオコジョやイイズナのように完全に肉食のものから、果実なども食べるアナグマのように雑食のものまで種により様々です。捕食に当たっては嗅覚を頼りに獲物を捉えますが、環境によっては視覚で餌を見つけるラッコやカワウソなどもいます。盲腸はなく、腎臓は単純な形状をしています。イタチ科の仲間は古くから毛皮として利用する種が多く、人間に捕獲され種によってはラッコのように絶滅が危惧されている種もいます。
今回はこの中からイタチ属、クズリ属、アナグマ属、スカンク属の4属を取り上げ、それぞれ1種ずつ紹介しましょう。

イタチ属
この属の中には次の18種類がいます。(1)アルタイイタチ (2)オコジョ (3)オナガオコジョ (4)キバライタチ (5)イイズナ (6)タイリクイタチ(チョウセンイタチ)(7)ニホンイタチ (8)セスジイタチ (9)ハダシイタチ (10)アメリカミンク (11)ヨーロッパミンク (12)ヨーロッパケナガイタチ (13)フェレット (14)ステップケナガイタチ (15)クロアシイタチ (16)アマゾンイタチ(スジハライタチ)(17)コロンビアイタチ (18)ウミミンク。
このうち、ペットとして知られているフェレットはヨーロッパケナガイタチを家畜化したものと考えられ、毛皮用に養殖されているミンクはアメリカミンクを改良したものです。ウミミンクはかつて北米の海岸に生息していましたが、1860年頃に絶滅したと推測されています。
本属の仲間はいずれも四肢が短く、胴が長いのが特徴で、体は小形のものが多く、食肉動物のなかで最小といわれるイイズナでは体長10~20㎝、体重は25~250g、最大のハダシイタチでも体長が約30㎝、体重が1~3㎏程度です。
また、ニホンイタチをタイリクイタチ(チョウセンイタチ)の亜種とする学者もいます。
今回はこれらの中からニホンイタチを紹介します。

81)ニホンイタチ
日本固有種で本来の分布は本州、四国、九州、淡路島、佐渡、隠岐、壱岐、伊豆大島、種子島、屋久島ですが、その他に移入種としてサハリン、北海道、八丈島、奄美大島、沖縄、西表島、波照間島にも分布しています。
川辺や海岸近くの森から人家近くまで河川や水田などに幅広く生息し、海抜2,000mぐらいの高所でも見られた報告があり、基本的に水のある場所を好みます。通常は単独で生活し夜行性ですが、繁殖期になると日中も活動します。行動圏は1988年に多摩川河川敷でラジオテレメトリー法により行われた調査では、平均0.08km2と報告されています。オスは複数の巣を持っており、メスは通常単独の巣で過ごします。水かきがあり泳ぎも得意で潜って魚を獲るほか、木登りも上手で鳥の卵や鳥を捕まえて餌とします。休息や出産用に、木の洞やほかの動物が使った穴、岩や石垣の割れ目を巣穴として使います。地中の巣は直径5~10cm、奥行き60cmから1mで、出産用に使うときは中に枯草や自分で捕った鳥の羽や動物の毛も入れます。歩行は足の裏を半分地面につけて歩く半蹠行性です。時々後肢で立ち上がりあたりを見回す行動が見られます。

  イタチはとてもかわいいんですよ。でも家畜のニワトリにとっては怖い相手です。
イタチはとてもかわいいんですよ。でも家畜のニワトリにとっては怖い相手です。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
体は胴長短足、頭部が平らで、動きは素早く、しなやかな体でわずかな隙間でも入り込むことができます。体毛は上毛がふかふかとして厚く、腹部は白くなっています。夏毛はチョコレート色ですが、冬毛に変ると赤褐色に黄色が加わり下顎の口のまわりの白色部分との区切りがはっきりしません。オスはメスの倍ぐらいの大きさとなり、体長はオスが27~37cm、メスは16~25cm、体重がオスは290~650g、メスは115~175gです。4肢は短くそれぞれ5本の指があり、足の裏には毛が生えていません。指間には水かきがあって、鋭い爪がありますが引っ込めることはできません。「イタチの最後っ屁」ということわざがあるように、強い匂いを出す肛門腺が発達しており、排泄のときに匂いのついた排便をすることや、驚いたときに反射的に噴射することで防衛作用としても働いています。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/3、臼歯1/2で左右上下合わせて34本です。乳頭数は腹部に1~2対、鼠蹊部(そけいぶ)に1~2対の6~8個あります。

えさ
肉食傾向が強い雑食性で、おもにネズミなどのげっ歯類を捕食していますが、カエルなどの両生類、トカゲ、ヘビ(マムシのように毒ヘビからアオダイショウのような無毒のヘビ)などの爬虫類、ザリガニ、カニ、エビなどの甲殻類、鳥類とその卵、昆虫などの無脊椎動物、魚類、死肉、果実なども食べます。嗅覚が優れているのでウサギなども匂いを頼りに追いかけ捕まえると報告があります。また、食べきれない餌は巣内に持ち帰り貯める習性があります。

繁殖
発情期は本州中部から関東地方では3~5月で、交尾したときに排卵する動物なので、ふつう1回の交尾で妊娠します。妊娠期間は35~38日、産子数は1~8頭、通常3~5頭です。生まれたばかりの赤ちゃんは体長約5cm、体重は3~4g、毛は生えてなく、生後10日齢で灰白色の毛が生え始め、20日齢で全身が毛で被われます。目は閉じて生まれますが、生後約4週齢で開きます。離乳はおよそ生後40日齢ですが、その前から固形物も食べ始めています。生後70~80日齢で親と同じ大きさになり、10~11ヶ月齢で独立します。5月生まれの子は7月末から母親と一緒に獲物を探しに出かけ、秋には独立し早熟な個体は1歳未満で発情するといいます。その後繁殖を続けますが、寿命が5歳くらいと短いので、繁殖し育児が成功するのは満3歳くらいまでで生涯の繁殖回数は推定3~4回とされています。長寿記録としては、日光にあった国立の養殖場での8歳78日、東京都多摩動物公園で2004年3月23日に死亡した個体(メス)の飼育期間5年4ヶ月、推定年齢5歳10ヶ月という記録があります。

外敵
人間以外では各地に生息するイヌワシ、ノスリ、ケアシノスリ、クマタカ、チュウヒ、シロフクロウ、シマフクロウ、ワシミミズクなどの猛禽類、食肉類では、ヒグマ、ツキノワグマ、キツネ、タヌキ、アナグマ、イノシシ、イヌ、幼獣やメスではネコ、ハブやアオダイショウなどに捕食されます。さらに、ニホンイタチは外来種のタイリクイタチ(チョウセンイタチ)が一回り大きく強いため(体長30~40cm、体重350~800g)、彼らによって平野部から山間部に駆逐されています。
タイリクイタチは1930~1935年頃、阪神地方の毛皮養殖場から逃げ出したものや、さらに1945年頃には戦後の混乱期に朝鮮半島から九州北部に持ち込まれたものが野生化し、西日本各地に分布を広げたと考えられています。

イタチ
分類   食肉目 イタチ科
本種はタイリクイタチ(チョウセンイタチ)の亜種とされることもあります。
分布   日本(本州、九州、四国 およびその周辺の島)
サハリン、北海道、八丈島、奄美大島、沖縄、西表島、波照間島などで移入したものが野生化して分布しています。
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
オス27~37cm、メス16~25cm
オス290~650g、メス115~175g
オス12~16cm、メス7~9cm
亜種   ニホンイタチはコイタチ(種子島・屋久島に生息)、オオシマイタチ(伊豆大島に生息)、その他の地域に生息するホンドイタチの3亜種に分類されます。
絶滅危機の程度   西日本では外来種であるタイリクイタチ(チョウセンイタチ)により山間部へ追いやられ、また急速な都市化により生息地と生息数が減少しています。しかし現在のところはまだ絶滅の恐れは少ないと判断され、国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版のレッドリストでは、低懸念種(LC)にランクされています。

主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典 監修   動物大百科 食肉類 平凡社 1986.
日高敏高 監修   日本動物大百科1.哺乳類 Ⅰ 平凡社 1996.
今泉忠明   イタチとテン 森をかけめぐる万能選手 自由国民社 1986.
林壽朗   標準原色図鑑全集 動物Ⅱ 保育社 1981.
齋藤勝・伊東員義・細田孝久・西本秀人   イタチ科の分類. In. 世界の動物 分類と飼育(2) 食肉目: 今泉吉典 監修, ㈶東京動物園協会 1991.
東英生、原正宣、羽澄俊裕、楠本清吾   多摩川河川敷におけるイタチの生息状況の把握並びに行動圏の調査(ラジオテレメトリー法による), とうきゅう環境浄化財団研究助成成果報告書 115号, 1988.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of the World, 1. Carnivores, Lynx Edicions 2009.

おもしろ哺乳動物大百科80(食肉目 アライグマ科) 2012.06.14

キンカジュー属
1属1種で、キンカジューが中米から南米にかけて分布しています。分布により次の7亜種に分類されます。
(1)ギアナ (2)アマゾン川流域 (3)中央アメリカ、メキシコ (4)コロンビア、パナマ (5)ベネズエラ (6)エクアドル西部 (7)ブラジル東部
なお、生態が夜行性で夜間に樹幹を走りまわる点や、体型が似た種類に別属(オリンゴ属)のオリンゴがいますが、キンカジューの方が全体にずんぐりとしていて、体も2~3倍大きいこと、尾を枝などにまきつけることができることなどから区別できます。

80)キンカジュー 
生息地はメキシコ南部からブラジル中央部のマットグロッソ州に至る 海抜0~2,500mの熱帯雨林、雲霧林、乾燥林、拠水林に生息しています。夜行性で木登りが上手でほとんど樹上で生活し、めったに地上に降りません。昼間は木の洞などで休息していています。
キンカジューは他の夜行性で樹上性の動物とはちがう珍しい社会構造をしています。多くのキンカジューは2頭の成獣オス、1頭の成獣メス、1頭の亜成獣、1頭の子どもで群れが構成されています。採食、移動など夜間の活動時間帯のほとんどは群れを離れて単独で行動しますが、日中の休息時や果実がたくさん実る大きな木では群れで行動します。この時にいくつかの群れが集まり大きなグループを作ることがあります。休息時には別の群れと少なくとも55%を同じ巣穴で一緒に過ごします。行動圏は0.1~0.5km2でメスよりオスの方が広範囲で一部は重複し、夜間は平均2㎞移動します。パナマの調査例では、彼らは行動圏の近くで年間44ヶ所の穴を利用していました。
社会行動の一つとして、群のメンバーはお互いに体の各部をグルーミングしますが、耳や頭など自分でできない部位も行い、頻度は成獣と亜成獣のオス、メスと子どもが最も多くなっています。声を使ったコミュニケーションについては1940~1970年代の調査で、親愛を表す優しい声から悲鳴のような警戒音として、(1)チチチといったかん高い鳴き声(2)吠える(3)クンクン(4)チュウチュウ(5)うなる(6)シュー(7)キャーなどの報告があります。また、イヌ科やネコ科の仲間に見られる肛門のうはありませんが、下顎部、喉、腹部の3ヶ所に分泌腺があり、それぞれ目的によって「なわばり」「通行したしるし」「発情の有無」などに使い分けることで重要な情報源となっています。

 

  フカフカとぬいぐるみのような毛をしています。
フカフカとぬいぐるみのような毛をしています。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
かつては体つきが食肉目の仲間よりキツネザルに似ていたため、サルの仲間に分類されたこともありましたが、現在は食肉目に分類しています。体は全体的に丸みをおび、頭は丸く、目が大きく前方を向き、先が丸い耳は側頭部に付き、鼻づらは短く先が尖っています。舌は細くて長いため柔らかい果実、花の蜜やハチミツを食べるのに適応しています。4肢は短く、後肢の方が前肢より長くなっています。前後肢ともに指は5本で、爪は短く先が鋭くなっています。長い尾にはリング状の模様はなく、枝に巻きつけることができます。体の上面と尾の上面はオリーブがかった褐色、黄褐色、赤褐色といろいろで、背の正中線が黒いものもいます。下面は黄褐色、バフ色あるいは褐色を帯びた黄色で、毛は柔らかく、羊毛状でふかふかしています。
乳頭は鼠径部(そけいぶ)に1対あります。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/3、臼歯2/2で左右上下合わせて36本です。前臼歯はアライグマ科の他の仲間にくらべ上下共に1本少なくなっていますが、食性が柔らかい植物質やハチミツが主食のためと考えられます。

えさ
雑食性で、主にグアバ、アボガド、マンゴーなどの果実を食べていますが、その他に花の蜜、ハチミツ、木の実、昆虫、小鳥、鳥の卵などを食べます。パナマにおける調査例によれば、餌の果実は全体の90~99%を占め、採食した植物の種類数は29科で78種類を食べた報告があります。一方で、ボリビアの1例によれば、6頭のキンカジューから9種類のアリが胃の中に見られたと報告しています。生息域や果実の豊富な時期か否かなどにより差がみられますが、餌はすべて樹上で採ります。尾は枝に巻きつけることができるため、前足と尾の両方を使ってぶら下がり餌を採ることもあります。動物園の餌では、果物以外にも、煮イモ、パン、卵、ハチミツなどを与えています。

繁殖
繁殖期は特に決まっていなませんが、4~5月に多く生まれる地域もあります。この時期は果物が実る時期と一致しています。発情周期は46~92日で、この間12~24日間発情が続き、雌雄が配偶者関係として続くのは1~3日間でこの間に交尾します。妊娠期間は112~118日で、ふつうは1産1頭ですが稀に2頭のこともあります。群れは2頭のオスと1頭のメスですが、交尾するのは優位のオスです。出産は巣穴として使っている樹上の洞で行われます。生まれた時の赤ちゃんの体重は150~200gで、体には褐色がかった灰色の毛が生えていますが、腹部には毛がほとんど生えていません。生後8週齢で固形物を食べ、生後3ヶ月齢で樹間を移動します。雌雄の群れで生活していても、オスは生まれた赤ちゃんの世話はしません。メスは自分が餌を探す間、子どもを木の枝に置いていきます。性成熟に達する年齢は、オスで1.5 歳、メスで 2.25歳です。
長寿記録としては、アメリカのホノルル動物園で2003年に死亡した個体の40歳6ヶ月、ドイツのウィルヘルマ動物園で1997年9月22日に死亡した個体(オス)の38歳5ヶ月などの記録があります。

外敵
外敵の筆頭は人間で、1960年代にはペルーだけで年間100頭以上の生きた個体と数百枚の毛皮が輸出された記録があります。現在は皮が市場に出回ることはありません。また、現地の人が食料として捕獲することもあります。
野生の外敵としては、オウギワシやアカクロクマタカなどの猛禽類、ジャガー、オセロット、大型のヘビなどが挙げられます。 

キンカジュー
分類   食肉目 アライグマ科
分布   メキシコ南部からブラジル中央部のマットグロッソ州
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
肩高(体高)
40.5~76cm
1.4 ~4.6kg (オスはメスより大きい)
39.2~57cm
約25cm
絶滅危機の程度   家畜を襲い田畑を荒らす動物、人間に危害を加える種は人間から厳しく迫害されてきました。しかし、本種は体が小さく人間社会への脅威も少ないことや、餌が果実で豊富である点が幸いして、少ない産仔数でも個体群が維持されていると推測されています。また、樹上性で夜行性のために生息数などの調査が不十分なこともあり、国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版のレッドリストでは絶滅の危険が少ないと判断され低懸念種(LC)にランクされています。

主な参考文献
林壽朗   標準原色図鑑全集 動物Ⅱ 保育社 1981.
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典 監修   D.W.マクドナルド編 動物大百科1 食肉目 平凡社 1986.
中里竜二   2.アライグマ科の分類 In. 世界の動物 分類と飼育(2)食肉目: 今泉吉典 監修、(財)東京動物園協会 1991.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Ford, L. S. & Hoffman, R. S.   Mammalian Species. No.321, Potos flavus . The American Society of Mammalogists 1988.
Parker, S.P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of the world, 1. Carnivores, Lynx Edicions 2009.

おもしろ哺乳動物大百科79(食肉目 アライグマ科) 2012.05.28

ハナグマ属
ハナグマ属の分類は、アカハナグマ、ハナジロハナグマ、コスメルハナグマの3種、又はアカハナグマの中にハナジロハナグマを含めて2種とする説があります。北米の南部から南米にかけて分布しています。
アカハナグマはアンデス東部、アルゼンチン、ウルグアイに分布しています。体長が43~66cm、尾長が42~68cm、体重が3.5~5.6kgです。ハナジロハナグマと似ていますが、鼻端が白くないので容易に区別できます。
コスメルハナグマはメキシコ、ユカタン半島のコスメル島に分布しています。尾のリングがはっきりして、他の2種より小型で体長が42~44cm、尾長が33~35cm、体重3~4kgです。メキシコのコスメル島に生息している本種の生息数はわずか約150頭と推定されて絶滅が危ぶまれています。
本属は3種とも尾が長いのですが、物に巻きつけることはできません。本稿では3種の分類として、その中から次のハナジロハナグマについて詳しく見ていきましょう。

79)ハナジロハナグマ
ハナジロハナグマは、アメリカ合衆国のアリゾナ南東部、ニューメキシコ、テキサス南部、中央アメリカのパナマ、南アメリカのコロンビア北西部に分布しています。生息環境は熱帯雨林、ナラやブナ、川岸の松などの森林地帯から開発された森、しばしば砂漠やサバンナまで入り込み、アリゾナでは海抜508~2,897mの範囲に見られます。性成熟したオスは単独で生活し、母親とメスの子どもは集まって4~25頭(大きなものは200頭になります)の群れを作り、この群れをバンドと呼びます。バンドのメンバーは通常成獣のメスと、雌雄の亜成獣、ワカモノ、赤ちゃんで構成され、オスは発情期にバンドに入り交尾します。行動圏は0.33~13.5km2で熱帯地域より北方のほうが広い傾向が見られます。パナマの3つのバンドの行動圏は、0.45km2、0.41km2,0.34km2で、お互いに隣接している場合は重複していますが、よく利用する中心部は重複せずその広さはそれぞれ0.20km2、0.15km2、0.15km2でした。1日の移動距離は1,500~2,000mで雨季より乾季は短くなっています。さらに、繁殖で巣にいるときの移動距離はもっとも少なくなります。
基本的に昼行性で夜間は静かな森林で休みますが、アリゾナではしばしば岩棚や穴で休憩します。雨季の盛りにはバンド全体が神経質になり辺りを警戒し、子どもたちは母親に抱かれています。日中の90%は地上で過ごし、そのうち90%は餌を探すのに費やしています。彼らは直径2cmから50cmの太さの木を垂直に登り、樹冠では数メートルをとび跳ね、また頭部を下方に向けて木から降りることができます。時速約27kmで走り、猟犬に追われたときに3時間走った報告があります。自発的に水に入ることはありませんが、泳ぐのも得意です。
バンドのメンバーには相互のグルーミング、敵への警戒、外敵への攻撃などの行動が見られます。チイッ、チイッというかん高い鳴き声は周波数が30~55kHz(キロヘルツ)のヒトには聞こえない超音波で、移動時にコンタクトコールとしての機能があると考えられています。視覚サインでは、鼻上げ、頭下げ、尾ふりなどがあります。匂いつけは、オスは1年中、メスは発情期にのみ会陰部からの分泌物を木や丸太、つる草につけます。餌は協力して捕ることがありますが、分け合うことはしません。

 

  良く見ると赤ちゃんの爪が長いのがわかるでしょう。爪はとても大事な役割を果たしています。
良く見ると赤ちゃんの爪が長いのがわかるでしょう。爪はとても大事な役割を果たしています。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
体色は頸部と肩部は黄色みを帯びていますが、全体的にうすい褐色から赤褐色、目の周囲はこげ茶か褐色で、鼻端、頸部、喉は白っぽくなっています。また、鼻端から目の間を通って白い筋が入っています。腹部は黄色みを帯びるか暗褐色、尾は背面と同色でぼんやりとした輪が見られます。耳は小さく白く縁取りされています。口吻部は長く突き出て鼻端は丸く白いバンドがあり、動かすことができます。4肢にはそれぞれ5本の指があり、前肢は頑丈で、爪は後肢より長めで湾曲し地面を掘って根や朽木の下の昆虫や幼虫、ムカデ、サソリなどを探します。歩行は足の裏全他を付けて歩く蹠行性です。尾は長く立てることができバランスをとるときに役立ちます。歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、前臼歯4/4、臼歯2/2で左右上下合わせて40本です。前臼歯と臼歯の歯冠が高く、アライグマより大きくて鋭い犬歯は武器となります。乳頭は3対~4対です。

えさ
雑食性で果実、アリ、シロアリ、クモなどの昆虫、ムカデ、サソリなどの節足動物、カエル、トカゲ、小鳥、鳥、カメ、トカゲの卵、ネズミなどの小型哺乳類、時には死肉などを食べます。果物があるときは数日間同じ木で過ごし、樹上と地上に落ちたもの双方を食べます。パナマの観察例では、44%は葉にいる無脊椎動物、56%が果実、脊椎動物は1%以下の報告があります。乾季と雨季、果物が多く多く実る時期で食性が変わります。餌は視覚より嗅覚を使って見つけ、脊椎動物などの大きな獲物は数回噛んで殺します。

繁殖
発情期は1~3月です。パナマでは1月下旬から約2週間続き、交尾は地上と樹上の双方で行います。妊娠したメスは単独でバンドから離れ木の上や岩棚に作った巣に移動し、2~7頭の子を出産します。妊娠期間は70~77日で平均74日です。出産時期はアリゾナで6月下旬、メキシコで6月から7月、パナマでは4月から5月初旬と地域差があります。パナマにおけるメスの初産は生後22ヶ月齢ですが、生後46ヶ月齢の初産の場合もあります。すべてのメスが繁殖するのではなく、わずかに20%ほどのメスが繁殖する場合もありますが、数の増減は餌が十分採れるか否かなどの生態的な条件に左右されます。生まれたばかりの赤ちゃんの体長は15.5~16.5cm、体重は約180g、濃い灰色の毛が生え、顔と尾の模様はうっすら出ています。飼育下の報告例では生後10日齢の平均値は体長17.7cm、体重214g、尾長12.8cmになりました。目は生後4~11日齢で開きます。赤ちゃんは生後11日齢頃に歩きはじめ、尾を立てることができます。乳歯は生後15日齢頃から門歯が生え始め、犬歯は27日齢頃に生え、生後2ヶ月齢ぐらいで乳歯がすべて生えそろいます。生後約5週齢で母親は樹上の巣から子どもを連れて地上に降りて群れに合流します。授乳のほとんどは巣の中で行われますが、バンドに戻っても生後3ヶ月齢ころまで行われます。生後9ヶ月齢でオスはメスより大きくなります。
産後の4~5週間は、母親は子どもの世話をしながら単独で餌を探し、授乳するとき巣に戻り夜間は一緒に寝ます。巣から離れた最初の数週間は子どもの死亡率が最も高くなります。オスは次第に1頭でいることが多くなり、生後24ヶ月齢頃から単独で生活するようになります。繁殖期にはオス同士は闘うことがよくあり、約30%のオスが犬歯で噛まれて負傷します。オスは生後約34ヶ月齢で初交尾しますが、繁殖オスとなるのは4~5歳です。
長寿記録としては、英国のチェシントン動物で1990年6月29日に死亡した個体(メス)の飼育期間26年5ヶ月という記録があります。

外敵
人間以外では、ピューマやジャガーなどの大形のネコ科動物、猛禽類、ボアなどの大形のヘビ、ノドジロオマキザルが巣にいるハナジロハナグマを捕食した例も報告されています。また子どもがオスの成獣の犠牲になることもあります。

生息数減少の原因
正確な生息数は不明ですが、多くの生息地で減少しています。原因としては生息地の消失と狩猟によることは他の動物と共通していますが、その他にメキシコや中央アメリカの人々によって食料用やペット用に捕獲されています。またイヌのジステンパーや狂犬病にかかりやすいことも問題になっています。

アライグマ
分類   食肉目 アライグマ科
分布   アメリカ合衆国アリゾナ南東部、メキシコ、中央アメリカのパナマ、南アメリカのコロンビア北西部
大きさ  
体長(頭胴長)
体重

肩高
尾長
43~66cm
3.5~6kg
メスは オスより約20%少ない
約30cm
42~68cm
絶滅危機の程度   生息地の消失と狩猟により生息数が減少している地域もありますが、分布域が広く、保護区内ではまだ個体数も多いことからIUCN(国際自然保護連合)発行の2011年版のレッドリストでは低懸念種(LC)にランクされています。毛皮の商品価値が少ないことや、家畜にたいする脅威がオオカミやコヨーテ、クマなどの大型食肉獣ほどなく、雑食性であることからすぐに絶滅の恐れはないとしています。


分布により次の3亜種に分類されます。(1)北アメリカ南部、メキシコ (2)メキシコ南部、中央アメリカ、コロンビア北西部 (3)メキシコ・ユカタン半島

主な参考文献
Wilson, D.E. and Ruff, S.(ed)   The Smithsonian Book of North American Mammals, Smithsonian Institution Press, 1999.
Gompper, M. E.   Mammalian  Species . No.487 Nasua narica , The American  Society of  Mammalogists , 1995.
林壽朗   標準原色図鑑全集 動物Ⅱ 保育社1981.
今泉吉典 監修 D.W.マクドナルド編   動物大百科1 食肉目 平凡社 1986.
中里竜二   2. アライグマ科の分類 In. 世界の動物 分類と飼育□2 食肉目 : 今泉吉典 監修、(財)東京動物園協会 1991.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker, S.P.(ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 3, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A. (ed)   THE  MAMMALS  OF  THE  WORLD, 1. CarnivoresLynx Edicions  2009.

おもしろ哺乳動物大百科78(食肉目 アライグマ科) 2012.05.12

アライグマ科
アライグマ科は6属:(1)カコミスル属 (2)ヤマハナグマ属 (3)オリンゴ属 (4)アライグマ属 (5)ハナグマ属 (6)キンカジュー属に分類されます。
本科の仲間はアメリカ全般にわたり広く分布する食肉類です。木登りが上手で、ハナグマ属以外は夜行性です。基本的に雑食性ですが種によって肉食傾向が強いものと植物食の傾向が強いものがいます。盲腸はありません。足の裏を踵(かかと)まで地面につけて歩く蹠行性(しょこうせい)と半蹠行性のものがいます。
歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、前臼歯3~4/3~4、臼歯2/2で左右上下合わせて36~40本で、カコミスル属では裂肉歯が発達しています。
今回は6属の中から良く知られている(1)アライグマ属 (2)ハナグマ属 (3)キンカジュー属の3属を取り上げ、3属の中から各1種ずつ紹介します。

アライグマ属
この属の中にアライグマとカニクイアライグマの2種が含まれますが、近年亜種としていたものを種として分類し、次の6種とする学者もいます。(1)アライグマ (2)カニクイアライグマ (3)バルバドスアライグマ (4)トレマリアアライグマ (5)グアドル-プアアライグマ (6)コスメルアライグマです。
本稿は今泉先生の分類に従っているので、2種としてアライグマとカニクイアライグマを紹介します。

78)アライグマ
カナダ南部からアメリカ合衆国、中央アメリカ及びその周辺の島々に分布しています。生息域は川や湖、湿地や沼地の森林、マングローブ、そして乾燥地でも近くに水があれば、そこに生息している動植物を餌として生活している地上でもっとも雑食性に富んだ種のひとつです。一夫多妻で泳ぎや木登りが得意で、夜行性のため日中は高い木の洞や岩の割れ目、シマスカンクやオッポサムなどが使った巣穴を利用して休憩しています。他にも移入種となり都市部まで入り込んだ本種は家屋の屋根裏、用排水路、暗渠にも生息しています。カナダのように寒い地方にすむ個体は、冬季に食事をとらないで半冬眠のように巣穴にこもり、夏から秋に蓄積した脂肪分を使うので体重が半減します。行動圏は都市部では狭く0.05~0.79km2(5~79ha)、田園地帯では広くなり0.5~3km2(50~300ha)、荒地になるとさらに広くなりノースダコタ州で8.0~25km2(800~2,500ha)でした。また移動距離では一夜に14kmとの報告があります。

  ほんとうにかわいいんだけど、これがけっこう乱暴者なんだ!
ほんとうにかわいいんだけど、これがけっこう乱暴者なんだ!
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
体は長い上毛と豊富な下毛があり、寒冷地でも対応ができます。体色は全体に銀白色から銀黒色ですが淡褐色や赤褐色が混じることもあります。仮装に使う黒メガネのような形に目の周囲から口角にかけて黒くなり、鼻端と顎は白です。尾の地色は灰色で、黒いリングが5~7本あります。体長は41.5~60cm、体高22.8~30.4cm、尾長20~40.5cm、体重は2~12kgです。フロリダ・キーズ(フロリダ州南部のサンゴ島群をさす)で5頭の成獣オスが平均で2.4kg、一方ウイスコンシン州では体重は6~11kg、1頭のオスの最高体重は例外的に28.3kgもありました。からだは湾曲して丸みを帯びており、4肢にはそれぞれ5本の指があります。前肢の指は長く広げることができて物をつかむのに適応しています。爪は鋭く鉤爪となっていますが引っ込めることはできません。足の裏には毛は生えておらず蹠行性で、後肢で立つこともできます。嗅覚は鋭く食物を探すときに役立ち、指先の触覚も発達しており、水中に手を入れてかき混ぜて触った感触で餌となる生物を察知して捉えます。この水中に手を入れてかき混ぜる行動が、アライグマという名前の由来になっています。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯4/4、臼歯2/2で左右上下合わせて40本です。乳頭数は4対です。

えさ
雑食性でカエルなどの両生類、ヘビやトカゲなどの爬虫類、ザリガニ、カニ、エビなどの甲殻類、小型の哺乳類、鳥類とその卵、昆虫などの無脊椎動物、死肉、また嗅覚が優れているので地下に埋もれている木の実、淡水産のカメやウミガメの卵を匂いで察知し掘り出して食べます。植物では、その他に野イチゴ、果実、木の実から農作物のトウモロコシや野菜など手当たり次第何でも食べます。夏から秋にかけて脂肪を蓄積する季節には動物質を好むと言われます。

繁殖
繁殖期はアメリカ合衆国では12月から8月の間と分布域が広大なため地域差が見られますが、ピークは交尾期が2月と3月、出産期は4月~6月です。発情期になるとオスは複数のメスと交尾し、最初の発情で妊娠しないときは、次の発情がきてほぼ妊娠します。発情周期は80~140日で妊娠期間は60~73日、平均63日です。産子数は1~7頭、通常3~4頭です。生まれたばかりの赤ちゃんは体長約10cm、体重は約70g、灰黄色の毛でおおわれ、すでに顔の黒い部位の模様がはっきりしており、尾のリングもわかります。目は閉じており生後約3週齢で開きます。新生児は樹上にある木の洞を巣穴として生後7~9週齢まで過ごしますが、その後地上に移ります。固形物は生後約9週齢から食べ始め、生後7週齢から16週齢までの間に離乳します。生後約20週齢で夜間1頭または同腹の子と巣穴から出て付近を歩きます。ひとり立ちするのは翌年冬の終わったころとなります。子どもたちの育児は母親がすべて行います。通常は1歳で性成熟に達します。移入したアライグマの調査結果では、多くのメスは1歳で出産し、しない場合も2歳では妊娠します。
長寿記録としては、アメリカ合衆国にあるフォルサム動物園で1992年3月6日に死亡した個体(メス)の飼育期間19年8ヶ月、推定年齢21歳という記録があります。

外敵
ピューマ、ハイイロオオカミ、コヨーテ、アカギツネ、オオヤマネコ、ボブキャット、クズリ、ワシミミズクなどの大型猛禽類、ワニ(アリゲーター)、大型のヘビなどがいます。ピューマやハイイロオオカミが減少した地域ではアライグマの増加が見られます。

現在の生息状況
多くの動物が絶滅への道を突き進んでいく中で、本種は現在も森林から都市部へと分布を広げ、生息数も増加している珍しい例といえます。その原因としては環境への適応性が非常に高いこと、繁殖力が高いこと、雑食性で食性の幅がひろくほとんどのものを採食することなどが考えられます。しかし、毛皮を採るための狩猟や農作物の被害から守るために行う罠が一部地域でおこなわれているため、将来減少していくことが懸念されています。

○アライグマは特定外来生物に指定されているので、飼育するには許可が必要です。
2004年「特定外来生物による生態系などに係る被害の防止に関する法律」が制定されました。
この法律は日本国内の生態系、人の生命・身体又は農林水産業に被害を及ぼし、又は及ぼす恐れのある外来生物を「特定外来生物」として指定し、その飼養や輸入等を規制するとともに、被害を防止ために必要があるときは国などが防御することなどにより、生態系等の被害の防止を図ることを目的としています。このため指定を受けた動物は原則として飼養が禁止され、一定条件を満たした場合にのみ、環境大臣等の許可を得て飼養などすることができます。
現在、アライグマは全国的に定着し特定外来生物に指定されています。一見すると愛らしい外見ですが、原産国以外で野に放された結果、在来種の動植物をはじめ、家禽、養殖魚類、農作物が甚大な被害を受けています。日本以外でも、ドイツに導入された個体が近郊各国に広がり同様に大きな問題となっています。
また、飼育していたアライグマが蛔虫症に罹患し、飼育されていた隣の動物に感染した例や、北米では狂犬病の媒介動物として危惧されています。

アライグマ
分類   食肉目 アライグマ科
分布   カナダ南部、アメリカ合衆国、中央アメリカ
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
肩高(体高)
41.5~60cm
2~12kg
20~40.5cm
22.8~30.4cm
絶滅危機の程度   分布が広く、生息数も増加しているので、国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ない低危急種(LC)に指定されています。

〇カニクイアライグマ
カニクイアライグマは中米のコスタリカ、パナマから南米のコロンビア、ブラジル、アルゼンチン北部に分布しています。アライグマにくらべ毛は粗く下毛が少ないため体がスマートに見えます。尾長は20~41cmで、7~8本の黒から灰色、あるいは黄色を帯びたリング状の縞があります。体長は45~61cm、体重は3.1~7.7kgです。生態については2種共に類似しているのでアライグマの項を参考にしてください。            

主な参考文献
池田 透   14外来種問題 アライグマを中心に In. 日本の哺乳学(2)中大型哺乳類・霊長類 :高槻成紀・山極寿一編、東京大学出版会 2008.
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
林 壽朗   標準原色図鑑全集 動物II 保育社 1981.
中里竜二   アライグマ科の分類. In. 世界の動物 分類と飼育2 食肉目:今泉吉典 監修, (財)東京動物園協会 1991.
Lotze, J.-H. & Anderson, S.   Mammalian Species . No.119, Procyon lotor. The American Society of Mammalogists 1979.
Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker, S.P.(ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 3, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of the World, 1. Carnivores, Lynx Edicions 2009.
Zeveloff, S. I.   Raccoons ― A Natural History ― , Smithsonian Institution 2002.

おもしろ哺乳動物大百科77(食肉目 パンダ科) 2012.04.23

ジャイアントパンダ属
1属1種でジャイアントパンダがいます。中国の南西部の高地に生息し、竹が主食の肉食獣です。人間が好む体形と言われる大きな頭、よく目立つ黒と白のツートンカラー、たれ目のように見える目のまわり黒など外見的な特徴から世界的にもっとも人気の高い種の一つです。

77)ジャイアントパンダ
中国南西部の四川(しせん)省、甘粛(かんしゅく)省、陝西(せんせい)省の標高2,500~3,500mの竹林に生息しています。体のつくりは寒冷地に適応しているので暑さは苦手で、夏季には高地に冬季には低地に移動して生活しています。活発に動く時間帯は朝と夕方ですが、昼も夜も活動し採食します。肉食獣なので消化器が草食獣のようなシステムを持っていないため消化率が悪く、長時間かけて大量の竹を食べなくてはなりません。1日の活動時間では、採食が約55%、休息が約41%で2つの行動で1日の大半を占めています。行動圏は3.9km2~6.2km2です。歩行はクマと同じように足の裏を付けて歩く蹠行性でギャロップはできず、後肢で直立できます。座るときはお尻ではなく、背の下部が地面につくため座ったままでも排便ができます。また、ときどきつきたての餅のような粘性物(粘膜便とも言います)を糞と同じように肛門から排泄しますが、どうして出すのかその原因についてはまだ明確な答えは出ていないようです。

  こんな竹だってひと咬みですっぱりと切れます。
こんな竹だってひと咬みですっぱりと切れます。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
成獣になっても子グマのような体形で頭部が大きく全体的に丸みを帯びています。頬に大きな筋肉があり顎が張ったようになっていますが、かたい竹の茎を食べるために進化したものと考えられます。毛は粗くて油っぽく、体は黒と白のツートンカラーです。黒い部位は耳、目の周囲、後肢、肩から前足で、その他の部位は白です。白い部分の毛は1本ずつで見ると無色透明ですが光の反射で白く見え、地肌は肌色です。模様と黒の部位は個体により若干の違いがあり茶色っぽくなるものや、尾の色は白色ですが先端部に黒い毛が混じる個体もいます。からだは頑丈で4肢は短く各肢に5本の指があり、前足の爪は後肢より長く鋭くなり、足裏の肉球の間に毛が生えています。手首にある種子骨は5本の指に対向しており、物をつかむときに人間の親指と同じ役割を果たします。最近は小指側にある副手根骨の突起もまた、物を握るときに使用しているのでは、と指摘する学者もいます。音のする方に耳を動かすことができる点から聴覚は鋭いと考えられます。肛門と生殖器のまわりには分泌腺があり発情期には木にこすり、匂いを付けます。乳頭は2対、胸部と腹部に各1対あります。
体長は120~150cm、体高70~80cm、尾長約10~15cm、体重はオスで85~125㎏、メスでは70~100㎏ですが、飼育下ではふとる傾向があり160㎏の記録があります。歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、前臼歯4/4、臼歯2/3で左右上下合わせて42本です。臼歯の表面は大きくて沢山の隆起があり、主食の固い竹をひき臼のようにすりつぶして食べます。

えさ
主食は竹で99%を占め、約25種が知られており、季節によって竹の幹や葉など食べる部位が変わります。竹以外にもわずかですが他の植物の茎や葉、げっ歯類や有蹄獣の幼獣、死肉、人間の作った作物なども食べます。消化器は肉食獣並みで食物の腸内滞在時間は約8時間と短く、消化率は約20%です。野生のパンダは1日に約12kgの竹を採食します。
動物園では竹の他にパンダミルクやトウモロコシ団子、柿やサトウキビなども与えていましたが、最近では肥満を考慮し、餌を高い場所に吊るし、あるいは隠して探させるなどの工夫をしています。これには野生状態のパンダの休息時間がおよそ41%に対し、動物園の場合は64~81%に増加することから運動不足による肥満が問題となり、現在解決策の一つとして行っているものです。

繁殖
発情期は3~5月に1回くるのが普通ですが、春に来ない場合秋に来ることがあります。発情の兆候はヤギの声と似た声、フフフフンやエエエンと鳴くほか、食欲がなくなり、匂いつけをする回数が増え、さらに池に入って体を冷やす行動が見られます。この間に交尾するのはわずか1~3日です。野生の場合の出産は、岩の洞や大きな木のくぼんだ場所に小枝や木屑を入れてその中で行われます。妊娠期間は83~181日と幅がありますが、これは受精卵の着床遅延があるためと考えられています。上野動物園で3回出産したときの妊娠期間は100日、110日、121日でした。平均産子数は1.7頭ですが、3頭の例も報告されています。野生ではこのうち1頭生育するのが普通ですが、飼育下では最近パンダ用の人工乳が開発されたので、人工哺育や介添哺乳で2頭目も育てることに成功しています。生まれたばかりの赤ちゃんの体重は100g前後で白色の産毛が生えています。尾の長さは体長の3分の1もあります。生後1週齢頃から体色が変化しはじめ生後約1ヶ月齢で親と同じ体色になります。歯は生えていず、目は閉じていますが、生後2~2.5ヶ月齢で開きます。生後2ヶ月半齢ころから後肢で体を支えて歩けるようになります。離乳は生後8~9ヶ月齢、母親と離れるのは生後1年半、性成熟はオスが7~9歳、メスは6~8才でメスの方が少し早いです。初産は5~7歳で20歳頃まで繫殖するので、条件が良ければ生涯で6回程度の出産が可能となります。
長寿記録としては、中国の武漢動物園で1999年7月22日に死亡した個体(メス)の飼育期間35年7ヶ月、推定年齢36歳10ヶ月という記録がありますが、通常の寿命は20~25年と推定されます。

外敵
成獣では外敵はほとんどいませんが、ヒョウ、ドール、ヒグマに襲われたという記録があります。子どもは巣穴にいる時にゴールデンキャット、イタチ、テンなどに狙われるおそれがあります。

生息数減少の原因
人口増加により生息地への道路が通り、農地、産業用地の開発が進んだ結果生息域が分断され、減少しました。また、毛皮や薬用として肉を採るための密猟などが主な原因でした。この他に主食となる竹の周期的な大規模な枯死で餌不足となり多くのパンダが犠牲になったこともあります。
これらの減少原因を踏まえて、中国政府、WWF、IUCNなどが中心となり、積極的に保護政策に取り組んでいます。

ジャイアントパンダ
分類   食肉目 パンダ科
分布   中国南西部(四川省、甘粛省、陝西省)
大きさ  
体長(頭胴長)
体重

体高(肩高)
尾長
起立したときの高
120~150cm
オス 85~125kg
メス 70~100kg
70~80cm
10~15cm
約170cm
絶滅危機の程度  

野生における生息数は最近の調査では約1,600頭と推定され、国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版レッドリストでは、絶滅の恐れが非常に高い絶滅危惧種(EN)に指定され絶滅が懸念されています。また、ワシントン条約では付属書Ⅰに掲載し、商業取引を禁止しています。

            
主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
中川志郎   カンカンとランランの日記―パンダ飼育この一年の記録―、芸術生活社 1973.
中里竜二・佐川義明   ねぼすけパンダのフェイフェイ 学習研究社1985.
中里竜二   3. パンダ科の分類. In. 世界の動物 分類と飼育2 食肉目: 今泉吉典監修, ㈶東京動物園協会 1991 .
中里竜二   知っておきたい野生ジャイアントパンダの基礎知識 In. 動物園【真】定番シリーズ(1) パンダ 写真/図鑑/データブック:監修 エレファント・トーク、CCRE 2008.
倉持浩   パンダもの知り大図鑑. 誠文堂新光社 2011.
Schaller, G.B.(熊田清子訳)   野生のパンダ. どうぶつ社、1988.
Chorn, J. & Hoffmann, R. S.   Mammalian Species . No.110 Ailuropoda melanoleuca.
The American Society of Mammalogists 1978.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of the world, 1. Carnivores,
Lynx Edicions 2009.

おもしろ哺乳動物大百科76(食肉目 パンダ科) 2012.04.09

パンダ科
本シリーズの分類は今泉吉典博士の分類に従っているので、レッサーパンダとジャイアントパンダはパンダ科の中に含めて、レッサーパンダ属とジャイアントパンダ属の2属について概説します。 しかし、レッサーパンダとジャイアントパンダの分類は、他にもレッサーパンダをアライグマ科、クマ科、レッサーパンダ科に、ジャイアントパンダをクマ科あるいはジャイアントパンダ科とする説など諸説あります。(社)日本動物園水族館協会では、レッサーパンダはアライグマ科にジャイアントパンダはクマ科に分類しています。
レッサーパンダは中国南西部からヒマラヤの高山に生息し、体重が5㎏前後でキツネより小さめです。一方、ジャイアントパンダは中国南西部の高山に生息し、体重も100~120kgと大型です。ともに、4肢には5本の指があり蹠行性です。主食は竹ですが、他にも少量の小型の哺乳類や卵も食べます。ジャイアントパンダは「第6の指」と言われる手首の種子骨の突起が、前足の指に対向し竹をつかむときに人間の親指と同じ働きをしています。レッサーパンダにも同じような突起があります。盲腸はありません。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3~4/4、臼歯2/2、で左右上下合わせて総数は38~42本です。

レッサーパンダ属
1属1種ですが、ネパールレッサーパンダとシセンレッサーパンダの2亜種に分類しています。シセンレッサーパンダの方が大型で体色が濃いのが特徴です。ネパール、アッサムのヒマラヤ山系からミャンマー北部、中国の雲南省、四川省の標高1,800~4,000mの森林や竹林に生息しています。

76)レッサーパンダ
中国の雲南省、四川省からアッサム、ネパール、ミャンマー北部に分布し、標高1,800~4,000mの竹林や森林に生息していますが、ミャンマー北部では夏季におよそ5,000mまで登り、一方インドのメーガーラヤの熱帯林では700~1,400mの低地にも見られるなど生息地によって異なります。
活動時間は日中や夜間も活動しますが、ほとんどは朝夕が多く日中は樹上で休憩しています。嗅覚、視覚、聴覚を使ってコミュニケーションを行うほか、排泄物や足跡から匂いを嗅いで情報を得ます。匂いつけや鳴き声は交尾期になると平常時より頻繁になります。成獣はふつう繁殖期以外単独で生活していますが、他にも血縁関係のある3~5頭のグループでいるとの報告もあります。出産した子どもは1年間、あるいは母親に次の子どもができるまで一緒にいます。行動圏は野生の場合、1~4km2、1日の移動距離235~481mの報告があります。

  背中が赤茶色で腹部が黒ですが、顔にばかり気を取られていると体色はわからないものでしょう。
背中が赤茶色で腹部が黒ですが、顔にばかり気を取られていると体色はわからないものでしょう。

写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
頭部は丸く、鼻口部が短く、耳は大きめの三角形で先端がとがっています。体毛は柔らかくて長く、全身が赤茶色で背は濃い栗色、中国に生息する亜種は体色が濃いのが特徴です。尾には淡褐色のリングがあり、黒の部位は耳の裏、4肢、腹部で、白い部位は鼻口部、唇、頬、耳の先端部です。ジャイアントパンダに比べると小さいですが、手首の種子骨が突起状になり、竹やその他のものをつかむときに親指のような役割を果たしています。肛門腺が発達しており、なわばり内の岩や木の幹にこすり付けて匂いつけをします。4肢は短く各肢に5本の指があり、足の裏にも毛が生えています。爪は湾曲し内側に少し引っ込めることができ、木登りをするときに役立ちます。長い尾は樹上を移動する時にはバランスをとる働きをし、寝るときは体に巻いて暖を取るのに役立ちます。地上では尾を真っ直ぐ立てるか水平にして歩きます。歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、前臼歯3/4、臼歯2/2で左右上下合わせて38本です。乳頭数は4対です。

えさ
主食は竹の葉で一年を通して80~90%を占めています。筍は春、果物は夏遅くから秋にかけて重要な餌となり、他にも小型の哺乳類、鳥、卵、果実, 昆虫を食べます。インドのダージリンにあるヒマラヤ動物園では、野生のレッサーパンダの糞を調査したところ糞中に昆虫の痕跡はなく昆虫は食べない、と報告しています。木登りは上手で高い木の上にも容易に登りますが、採食は地上で行います。横浜市野毛山動物園でかつて飼育していたレッサーパンダは、左利きと右利きがあり、竹をつかむとき決まった方の前肢で持つ個体がいたと報告しています。

繁殖
交尾期は1月から3月中旬で、この間に26~44日の周期で発情を繰り返し、発情中の12~36時間中に2~3回交尾します。飼育下の17例の妊娠期間は112~158日、平均134日でした。出産は主に6~7月で、野生の場合は、樹の洞や岩の割れ目などの巣穴に、出産の数日前から枝や草などの巣材を入れます。産子数は通常2頭ですが、1~4頭の幅があり、5頭の記録もあります。生まれた時の子どもの体重は110~130gです。後頭部は淡黄色、腹部は薄茶色、口さきは淡桃色、耳は茶褐色の柔らかな毛でおおわれています。生まれて数日から1週間、母親は頻繁に子どもの体をなめ、生後1週齢頃から徐々に自分の餌を採りに巣穴から出る時間が長くなり、時々授乳や世話をするために帰ってきます。生後約18日齢で目が開き、東京都多摩動物公園での出産例では生後2ヶ月齢で体重が約1kgの報告があります。体色は生後約70日齢で成獣と同様になります。釧路市動物園の繁殖例によれば、初めて固形物を食べるのは生後3ヶ月齢頃で、最初食べたのは竹でしたが、その後の好物はブドウでした。離乳までの育児はすべて巣穴で行われます。生後約90日齢で巣穴から出て、生後約12ヶ月齢で成獣と同じくらいに成長します。オス、メスともに生後18~20ヶ月齢で性成熟します。
長寿記録としては、京都市動物園で2004年9月現在、19歳3ヶ月でなお飼育中いう記録があります。

外敵
人間以外の外敵としては、ユキヒョウやウンピョウ、キエリテン、また子どもはワシやフクロウなどの猛禽類に狙われることもあります。

生息数減少の原因
原因としては、生息地の消失と分断化、密猟、商取引の横行、森林火災、道路の開発などが挙げられます。中国ではこの50年間で40%が減少したと推測されています。中国、インド、ブータン、ネパールなどの生息地域の国々では、それぞれ野生動物保護法、森林法などで捕獲や狩猟を禁止して保護しています。

レッサーパンダ
分類   食肉目 パンダ科
分布   ブータン、ネパール、インド北部、中国南西部、ミャンマー北部
大きさ  
体長(頭胴長)
体重

尾長
肩高(体高)
50~60㎝
オス 3.7~6.2kg (平均5.0kg)
メス 4.2~6.0kg (平均4.9kg)
30~50㎝
28~29㎝
絶滅危機の程度   国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版レッドリストでは、絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定されています。
野生での調査が十分におこなわれていないために、正確な生息数は不明ですが、現在分布域の面積はおよそ69,900km2で、16,000~20,000頭が生息していると推定されています。
            
主な参考文献
林壽朗 監修   標準原色図鑑全集 動物Ⅱ 保育社 1981.
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
小林強志   野毛山Zooっといい話 かなしん出版 1999.
板山聖子、志村良治   レッサーパンダの誕生 どうぶつと動物園 30巻 10号
(財)東京動物園協会 1978.
中里竜二   3.パンダ科の分類 In. 世界の動物 分類と飼育2 食肉目: 今泉吉典 監修、
(財)東京動物園協会 1991.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore  1999.
Roberts, M. S. and Gitttleman, J.L.   Mammalian Species. No.222, Ailurus fulgens .
The American  Society of  Mammalogists  1984.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.(ed)   Handbook of The Mammals of the world, 1. Carnivores,
Lynx Edicions 2009.
MacClintock, D.   Red Panda ― A Natural History―,
Macmillan Publishing Company. 1988 

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