川口先生のペットコラム
旭化成ホームズ株式会社
Profile
ゾウの先生 川口 幸男

1940年東京都伊豆大島に生まれる。上野動物園飼育課を定年退職後、エレファント・トークを主宰。講演や執筆をしている。講演依頼は、メール またはFax 048-781-2309にお願いします。
NHKラジオ番組夏休みこども科学電話相談の先生でもあり、本編では長年の経験を踏まえて幅広く様々な話題を紹介します。
わんにゃんドクター 川口明子

日本獣医畜産大学卒業、同大学外科学研究生として学び、上野動物園で飼育実習後、埼玉県上尾市にかわぐちペットクリニックを開業する。娘夫婦もそろって獣医師で開業しており、一家そろって動物と仲良くつきあっている。
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おもしろ哺乳動物大百科87(食肉目 マングース科) 2012.10.01

マングース科
マングース科をジャコウネコ科に含めてマングース亜科とする分類学者と別の独立した科を設けてマングース科とする学者がいます。本稿は基本的に今泉吉典博士の分類に従っているのでマングース科として17属37種とします。一方、マングース亜科とする学者は13属33種としています。
マングース科の中で大型の種としては、アフリカに生息するシロオマングース属のシロオマングースとエジプトマングース属のエジプトマングースがあげられます。前者は体長47~69cm、体重が1.8~5kg、後者は体長45~60cm、体重1.9~4.0kgとなります。一方小型の種としては、コビトマングース属のコビトマングースがあげられ、体長18~28cm、体重210~350gです。
分布域はアフリカ、中近東、東南アジアに広く分布しており、ふつうは早朝や夕暮れ時に活動する薄暮動物ですが、ミーアキャットやクシマンセのように群れで昼間活動する種、また、夜間を単独で活動するハナナガマングースがいます。
体形はキツネのようにとがった顔と小さな耳、長い尾、短い4肢で指数は4~5本、爪は引っ込めることができません。ジャコウ腺はありませんが、肛門腺と頬腺をもつ種がいます。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3~4/2~4、臼歯2/2で左右上下合わせて34~40本です。乳頭は腹部に2~3対です。肉食性で昆虫、爬虫類、鳥類、卵、甲殻類、軟体動物、無脊椎動物を食べます。
今回は日本でも飼育している動物園が多いスリカータ属とシママングース属の2属を取り上げ紹介していきましょう。

スリカータ属
スリカータ属は1属1種でアフリカ南部にミーアキャットが生息しています。生息地により3亜種に分類されます。

87)ミーアキャット(スリカータ)
南アフリカ、アンゴラ、ナミビア、南ボツワナに分布しています。岩や石の多い開けた荒れ地や開けた半乾燥地帯、やぶ、牧草地、草地に生息し、地下にトンネル状の巣穴を掘って生活しています。巣穴はトンネルと部屋が連なる大規模な構造となっており、夜の寒さや避難場所として役立っています。その内部は、深さ1.5~2mで長さが約5m、それぞれ5ヶ所程度の出入り口があり、それらがいくつか連結し25~30mの長さになり、その中には共同トイレもあって迷宮のようになっています。血縁個体からなる家族集団で暮らしていて、この集団をパックと呼び高度な社会を持っています。パックは雌雄のペアか家族単位で形成され、時には数家族が合流し10~30頭の群れで活動します。パックの頭数は生息地により若干の差があり、南アフリカのオレンジ自由州(OFS=Orange Free State)における8パックの平均頭数は11.3頭(9~17頭)で、その内訳は成獣オスが5.4頭(2~9頭)、成獣メスが4頭(1~7頭)、子どもが0.75頭(0~2頭)、そして亜成獣が1.1頭(0~4頭)でした。行動圏は平均5km2(2~10km2)ですが、カラハリの行動圏は広く、12のパックの平均は15.5km2でした。1日に約6kmを移動し、巣穴は数日毎に変えますが、育児中は長期にわたり利用していました。また、危険が迫ると彼らのなわばり内にある1000ヶ所以上もある巣穴に逃げ込みます。活動時間は日の出から日没までの昼行性で、夜間は巣穴で過ごします。寒さが苦手なので日が昇り気温が上がると、巣穴から出て太陽に向かってメンバーが一列に並び、尾を支柱にして後足で立ち上がり日光浴をします。移動は歩くか、走る場合はジャンプしながら走り、木登りはしません。声によるコミュニケーションも盛んで、威嚇のうなり声、子どもをたしなめる声、いくつかの警戒音などおよそ10種類が報告されています。外敵となる猛禽類を見つけるために視覚が発達していますが、聴覚は人間ほど良くありません。嗅覚は地下の餌を見つけるときに使うので鋭敏です。

  みんな仲良く並んで記念撮影ですか?
みんな仲良く並んで記念撮影ですか?
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
頭部が丸く目は前方についており、胴長で体長は25~31cm、尾長19~24cm、体高約15cm、体重は620~970gです。4肢は細く、それぞれ第1指が欠如し4本の指があり、前足の爪の長さは後肢の2倍の約1.5cmありますが、引っ込めることはできません。体の色は上面が灰白色、灰褐色、黄褐色で約10本の暗褐色の横縞があります。頭部と喉部は白、鼻端、耳、目の周囲は黒です。毛は柔らかく、長さは肩部が約1.5cm、臀部が3~4cm、尾の根元が約2cm、先端は約1.2cmあります。腹側の毛は背中側にくらべると短く淡い色をしていて、日光浴をするとき温まりやすく、また暑すぎる時は、地表の冷気を受けて暑さをしのぐのに適しています。雌雄ともに頬腺はありませんが、肛門腺はあり、とくにオスが発達しており巣穴の入口近くで頻繁にこすりつけます。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/3、臼歯2/2で左右上下合わせて36本です。上顎の外側の門歯は他の門歯より大きく、上顎の犬歯は真っ直ぐ下を向いていますが、下顎の犬歯は内側に曲がっています。尖端が鋭い幅広い臼歯と裂肉歯が昆虫食に適合しています。

えさ
肉食性で主食は昆虫とその幼虫ですが、ほかにもクモ、小型の哺乳類、ヘビ、トカゲ、ムカデ、サソリ、ヤスデ、鳥類、卵、地下茎も食べます。ボツワナで集められた23例の胃を調べたところ、そのうちの91%からカブトムシなどの甲虫類の幼虫が、35%からはサソリが見つかったとの調査結果があります。餌を採るときはパックのメンバーはそれぞれが地表の匂いを嗅ぎながら地下にいる幼虫の匂いを探し、察知すると地面を掘って幼虫を捕まえます。成獣は子どもに餌を分配しますが、ふつうは餌を探しているとき他個体が近づくのを嫌います。水場がない地域では水分を野生のメロンや地下茎から採ります。
飼育下では馬肉、鶏肉、昆虫の幼虫、ミールワーム、青菜、リンゴ、バナナ、サツマイモ、ドッグフード、マウスなどで、その割合は動物園によって違います。

繁殖
野生状態における交尾は地下の巣穴で行われるので、まれに観察される程度です。出産期は8月から11月までと2月から3月までが多く、この時期は暖かい季節と多湿な季節となります。妊娠期間は約77日、一腹の産子数は2~5頭、通常2~3頭です。生まれたばかりの赤ちゃんは体長約5cm、体重は25~36g、目と耳は閉じており、体には薄い毛が生えていますが縞模様はありません。耳は生後10日齢頃、目は生後12~14日齢で開きます。生後3~4週間の間子どもたちは巣穴に留まります。生後2ヶ月齢で親と同じ毛色となります。授乳は49~63日間続き、この間出産した母親以外のメスも乳が出るため、子どもはパック内の複数のメスから授乳されます。生後1ヶ月までの死亡率は21%ですが、離乳から独立するまでは70%の子どもが生き残ります。そして、およそ生後2ヵ月齢で離乳しますが、巣穴から出るときはヘルパーたちが肉食獣たちから守るために付き添い、パックのメンバーが子どもにサソリの捕り方など狩りの方法を教えます。年間の子どもの生存率は20%ですが、成獣では68%となります。生後約10週齢で独立しますが、若オスは親の近くに留まります。生後6ヶ月齢で親と同じくらいの体重になり、生後9ヶ月齢から1歳までに性成熟に達します。飼育下での出産間隔は4ヶ月毎という記録があります。また温度の条件がコントロールされた飼育下では31ヶ月間に11回出産した例が報告されています。 繁殖は優位なつがいだけがおこなうのが普通で、子どもの75%は優位なメスが出産し、優位なオスは群れ内の80%の子どもの父親になります。劣位個体は子育てのヘルパーとなり育児に参加し、餌運び、子守、授乳などを行い基本的に繁殖はしません。
静岡市立日本平動物園の繁殖記録によれば、「母親以外にもオスや兄姉も一緒になって世話をした。授乳は横臥と座って後肢を前方に広げそこに子ども入れて行う2通りの方法で行い、赤ちゃんを運ぶときは1頭ずつくわえて運んだ。生後30日齢では親がマウスを持って行ってもしゃぶる程度であったが、生後40日齢ころバナナは自分で食べ始めた。生後50日齢でマウスを自分で殺すことができた」との報告があります。
野生におけるミーアキャットの寿命は8歳くらいですが、飼育下では12歳を超えることができます。
長寿記録としては1973年2月22日にシカゴのブルックフィールド動物園で生まれて、1993年10月11日にセントルイス動物園で死亡した個体(オス)の20歳7ヶ月があります。

外敵
人間以外では各地に生息するソウゲンワシ、ダルマワシ、コシジロウタオオタカなどの猛禽類が主な外敵となります。空中からの外敵に備えてグループ内の数匹は常に上空を見張っており、猛禽類の姿を発見すると鋭い警戒音を発して群れのメンバーを素早く巣穴に避難させます。この他にもセグロジャッカルやケープコブラそして、子どもは隣のグループのメンバーに殺されることもあります。

分類   食肉目 マングース科
マングース科をジャコウネコ科に含め、マングース亜科として分類する学者もいます。
分布   アフリカ南部(南アフリカ、アンゴラ、ナミビア、ボツアナ)
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
25~31cm
620g~970g
19~24cm
絶滅危機の程度   ミーアキャットは主食が昆虫類や多足類など人間と競合しないことから、人家近くに生息し牧場などが被害を受けなれば駆除されないので、現在のところはまだ絶滅の恐れは少ないと判断され、国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版のレッドリストでは、低懸念種(LC)にランクされています。

主な参考文献
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
Moira J. van Staaden   Mammalian Species . No.483, Suricata suricatta . The American Society of Mammalogists 1994.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker, S.P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 3, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
佐野豊・三宅隆   ミーアキャットの飼育と繁殖 どうぶつと動物園 Vol.30 No.7
(財)東京動物園協会 1978.
祖谷勝紀・伊東員義   ジャコウネコ科の分類. In. 世界の動物 分類と飼育□2 食肉目: 今泉吉典 監修, ㈶東京動物園協会 1991.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of the World, 1. Carnivores, Lynx Edicions 2009.

おもしろ哺乳動物大百科86(食肉目 ジャコウネコ科) 2012.09.18

ビントロング属
1属1種でアジア南東部にビントロングが生息しています。分布により6亜種、あるいは学者によっては9亜種に分類します。

86)ビントロング
アジア南東部のネパール、インド北東部のシッキムやアッサム、ブータン、中国南部、北ミャンマー、マレー半島、スマトラ、ボルネオ、フィリピン(パラワン島)、及び周辺部の島に生息しています。原生林や二次林、草原などの混合林にすみ、ボルネオでは標高1,500m、スマトラでは標高700~2,500m、インドの北東部では熱帯や亜熱帯の深い森林で標高2,000m位まで生息しています。ジャコウネコ科で唯一長い尾をもつ種で、樹上生活するうえで木の枝に巻きつけることができるため5番目の手のような役割を果たしています。枝から枝へ跳ね移ることはできません。休むときは樹上で尾を体にくるりと巻いて心地良さそうにしています。野生では単独か小さな群れで生活し、動作は他のジャコウネコ科に比べゆったりとしています。野生状況を再現した動物園の展示はタイの動物園で見られ、動物舎内にある1本の樹上に5~8頭が枝々に分散して眠っていました。ふつうは夜行性で日中は樹の洞などで休み、夜間おもに樹上で餌を探しますが、時には地上に降りたり、水中に潜ったりして魚を獲ることもあります。活動時間はタイで無線機を付けて行った調査によれば、ピークは午前4時から6時、及び午後8時から10時の2回ありました。他にも日暮れから早朝までの報告や、ボルネオでは昼夜ともに活動するのが観察されています。行動圏はタイの成獣オス5頭の調査例では、年間行動圏は4.7~7.7km2(平均6.2km2)で一部重複し、雨期には拡大します。1日の移動距離は平均688mでした。声によるコミュニケーションも盛んで、飼育下の観察では、すすり泣き、ギリギリやブウブウ、うなり声やシューという威嚇音などが報告されています。
ビントロングの和名を熊猫と言う時代もありましたが、クマのような顔とネコのような体形を併せ持つ外見から命名されたものと思われます。

  太い尾でバランスをとりながら樹上を上手に歩きます。
太い尾でバランスをとりながら樹上を上手に歩きます。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
ジャコウネコ科では体長は最大で61~97cmあります。体重は本種が9~15kg(メスの方が約20%重くなります)に対し、アフリカジャコウネコの方が重く約20kgになります。尾長は56~89cmです。頭部の毛は短く黄褐色か灰色で霜降り状になっているか、ほぼ白い個体までいます。毛は粗くて長く黒い毛が肩から尾端まで生えており、上毛の先端が白や銀色の個体もいます。インド北東部や北ミャンマー、ネパール、ブータンに生息するものは、肩部の毛が約6.5cm、臀部で約11cmあり、冬季は下毛がさらに多くなります。鼻づらは短く、長い口ひげが生えていますが、ネコと同様に触覚の役割を果たしていると推測されます。耳は丸く白く縁取りされて、耳先の背面から長い毛が伸びて房毛のようになり、一見するとリンクスの耳を連想させます。手のような役割も果たす尾は筋肉が発達し太くなっているのが特徴です。4肢は短くそれぞれ5本の指があり、掌部と足底部の肉球は大きく、後ろの足の裏は踵まで裸出しています。爪は短いですが強く、少し曲がっていて、不完全に引っ込めることができます。後肢の第3と第4指球の基部はくっついています。歩行はクマのように足裏全体を地面に付けて歩く蹠行性です。臭腺は会陰部にありますが匂いは強くありません。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯4/4、臼歯2/1‐2で左右上下合わせて38~40本です。犬歯は大きく、臼歯は丸く小さいです。盲腸は小さく、ない場合もあります。乳頭数は2対です。

えさ
雑食性でイチジク、マンゴー、バナナなどの果実が主食ですがこの他、昆虫、小動物、甲殻類、カタツムリも食べます。水中に潜り魚も捕まえて食べます。他にも死肉、葉、茎なども食べます。スマトラでは地面に落ちたジャックフルーツも食べた報告もあります。

繁殖
繁殖は一年中見られます。飼育下での調査によると、メスは季節に関係なく発情する多発情型を示し、発情周期は平均82日で、交尾は樹上で行われます。妊娠期間は84~99日、平均91日で、出産のピークは1~3月でした。産子数は1~6頭の範囲で、ふつう2頭です。生まれたばかりの赤ちゃんの体長は約20cm、体重が300g~320g、全身に毛が生えていますが、毛の色は親よりもやや淡い色をしています。生まれた時閉じていた眼は9~10日齢で開きます。生後6~8週齢で固形物を食べ始め、1年で親と同じ大きさに成長します。性成熟は2.5歳です。飼育下での初交尾は雌雄ともに生後13~48ヶ月齢で見られます。
長寿記録としては、ベルギーのアントワープ動物園で1997年7月11日に死亡した個体(メス)の飼育期間26年3ヶ月、推定年齢27歳があります。

外敵
生息域にいるトラ、ヒョウ、オオカミなどの肉食獣、ワシやタカ、フクロウ、ミミズクなどの猛禽類、大型のニシキヘビが挙げられます。特に幼獣は犠牲になる率が高いといわれています。

分類   食肉目 ジャコウネコ科
分布   アジア南東部:インド、ネパール、ブータン、ミャンマー、中国南部、マレー半島、スマトラ、ボルネオ、フィリピン(パラワン島)
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
61~97cm
9~15kg(1kgの個体が捕獲されたことがあります)
56~89cm
絶滅危機の程度   生息数の減少が顕著ですが、一番大きな要因は原生林の伐採による開発です。他にも人に馴れやすいことからペット目的の捕獲や食用、薬用、毛皮に使うために密猟されています。これらの現状を踏まえて国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが高い危急種(VU)にランクされ、生息地ではそれぞれの国にある自然保護区域で保護されています。

主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典 監修   動物大百科 食肉類 平凡社 1986.
林壽郎   標準原色図鑑全集 動物Ⅱ 保育社 1981.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker, S.P.(ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 3 , McGrow-Hill
Publishing Company 1990.
祖谷勝紀、伊東員義   ジャコウネコ科の分類. In. 世界の動物 分類と飼育□2 食肉目:今泉吉典 監修, ㈶東京動物園協会 1991.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of the World, 1. Carnivores,
Lynx Edicions 2009.

おもしろ哺乳動物大百科85(食肉目 ジャコウネコ科) 2012.08.25

ジャコウネコ科
学者によって分類が異なりますが、本稿は基本的に今泉吉典博士の分類を参考にしているので、ジャコウネコ科とマングース科の2科に分類して紹介します。ジャコウネコ科は18属35種に分類され、大型の種類ではアフリカジャコウネコが体長90cm、体重約20kgになるのに比べ、最小の種類ではアフリカリンサンが体長約33cm、体重約650gです。新世界とオーストラリア以外に広く分布しています。
また、学者によってはジャコウネコ科を1科にまとめマングース類は亜科として、他と合わせて6~7亜科、35~37属、70~76種に分類することもあります。
食肉目の中でも最も原始的なグループと考えられ、いずれの種も頭部、胴、尾が細長く、4肢が短いです。4肢の指数は前後肢ともに5本あるビントロングや、各肢に4本ずつあるミーアキャット(スリカータ)のような種類がいます。肛門腺、皮膚腺、会陰腺などの臭腺をもっており、会陰部に溜まる分泌液はシベットと呼ばれ香水の原料に使われています。動物間では分泌された液体を排泄時や痕跡として各所に残し行動圏の印としたり、また直接匂いを嗅ぐことでお互いにコミュニケーションを取り合ったりしています。繁殖期や子育て中、及び北部で寒い時期以外はふつう単独で生活しています。夜行性のため視覚は弱く、聴覚や嗅覚が優れ、聴覚ではパームシベット(マレージャコウネコ)が10万Hz(ヘルツ)の音を聞きとることができるとの報告があります。生活空間は地上や樹上で木登りが上手で、よく果実の実った木に登っています。多くの種は雑食性ですが、主食が肉食、昆虫食、魚食までさまざまな種類がおり、餌に応じて体形も若干異なっています。キノガーレとミズジャコウネコの主食は魚や両生類、甲殻類です。パームシベット(マレージャコウネコ)は樹上生活で果実が主食です。マダガスカル島に生息する食肉目の中では最大のフォッサ(2012年現在、上野動物園で飼育中)は肉食で、同地に生息しているキツネザルやテンレック、ネズミのなかま、鳥類、両生類、爬虫類、昆虫などを食べます。タイガーシベット(ヘミガルス)の主食は昆虫、ミミズ、カタツムリ、カエルです。歯式は食性によって若干異なり、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3~4/3~4、臼歯1~2/1~2で左右上下合わせて32~40本です。
今回はこの中からハクビシン属、ビントロング属の2属を紹介しましょう。

ハクビシン属
1属1種で東アジアにハクビシンが分布しています。分布により6亜種、あるいは16亜種に分類する学者もいます。

85)ハクビシン
分布域は東アジアのインド、パキスタン、ネパール、チベット、中国(陝西省~河北省)、ミャンマー、タイ、西マレーシア、スマトラ、北ボルネオ、台湾、ハイナン島、南アンダマン諸島、及び日本です。日本に生息する種類は在来種か外来種か不明とされていますが、最近のDNA鑑定では台湾産と同系列と言われています。昭和20年(1945年)代初めに四国、静岡、山梨、福島に散在していましたが、分布域を拡大し、現在は北海道を含め全国的に生息域を拡大し各地で目撃情報が報告されています。国内産はやや小柄でずんぐりとし体色が濃く寒さに強いと言われています。繁殖期と子育て以外は単独で生活しています。アジア大陸に生息するものでは、森林や藪に住んでいます。タイでの調査によると乾燥常緑樹70%, 混合落葉樹30%, 乾燥落葉樹(おもにフタバガキ科の樹木が占めています)3%で構成された混合林内を移動し、2,500mの高地にも生息していますが、日本では高地では見られていません。木登りが上手で、日中は巣穴として使う土の穴、岩穴、樹の洞や人家の天井裏や物置に住みつき同じ場所に排泄することが知られています。巣穴に12頭が一緒に入っていた記録もありますが、冬季の寒さ対策かもしれません。夜行性で夕暮れや早朝、夜中に活動し、行動圏はタイで無線機を付けて行われた12ヶ月間の調査結果によれば、成獣オスで5.9km2、成獣メスが3.7km2、1日の平均移動距離がオスで840m、メスが620mでした。また、中国の南東部における調査では、成獣オスの3頭がそれぞれ1.8km2、3.5km2、4.1km2で、メスはこれより少なくなっていました。これらの報告から2~6km2が行動圏と推測されます。

  ハクビシン(白鼻心)は顔の真ん中を白い模様が通っているのですぐにわかります。
ハクビシン(白鼻心)は顔の真ん中を白い模様が通っているのですぐにわかります。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
体は胴が長くほっそりとしており長く柔らかい毛が生えています。額から鼻端にかけて白い模様が入っていることからハクビシン(漢字で白鼻心と書きます)と名付けられています。白い部位が耳の前から顎にかけてと目の下にあります。顔の模様は亜種によって異なり、ほとんど白色のものもいます。体全体の色は生息地により明褐色、黄褐色、褐色、黒色のものまで多様ですが、斑点はなく、頸部、耳、4肢は黒味を帯びています。尾の半分より先端が黒いものや、白いものではボルネオ産がいます。体長は51~76cm、体重3.6~6kg、尾長は40~60cmです。4肢は短くそれぞれ5本の指があり、後肢の第3と4指の基部はくっついています。肛門腺が発達しており、排泄のときに匂いのついた排便をします。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯4/4、臼歯2/2で左右上下合わせて40本です。歯は小さく歯冠が低く、臼歯はお互いに離れています。乳頭数は2対です。

えさ
雑食性でミカン、カキ、ナシ、イチジク、マンゴー、バナナなどの果実が主食ですが、生息地や果物が実らない時期には野菜やげっ歯類が主食となります。この他、昆虫、小動物、甲殻類、カタツムリも食べます。日本では、38頭の胃の内容物を調べたところ果実73%、葉が56%、その他8%が哺乳類でした。なかでも果実と哺乳類は体重の増加に密接に関わっているようです。動物園では、果物を中心に煮イモや鶏頭を与えています 。

繁殖
飼育下では早春と晩秋に2回繁殖した報告もありますが、生息域の西部では年に1回、春から初夏にかけて生まれ、ボルネオでは10月に生まれた報告があります。日本国内における発情期は本州中部から関東地方では3~5月です。発情は1~13日間(平均5日間)持続し、妊娠期間は51~56日、産子数は1~4頭です。生まれたばかりの赤ちゃんは体重約125g、頭胴長15cm、うすい灰褐色の毛で被われています。目は閉じて生まれますが、生後約9日齢で開きます。離乳は生後約3ヶ月齢で、この頃親と同じ大きさになります。性成熟は生後10~12ヶ月齢です。
長寿記録としては、横浜市野毛山動物園で1964年2月に生まれ、1991年6月に死亡した個体(オス)の27歳4ヶ月があります。

外敵
一番の外敵は人間で、食用だけでなく果樹園や農園を荒らす害獣として大量に捕獲されています。野生の天敵としては、ヒョウやトラなどの大形の肉食獣、ワシやタカ、フクロウ、ミミズクなどの猛禽類、大型のニシキヘビの仲間が挙げられます。なお、食肉目の天敵に対し、肛門腺から悪臭のする液を引っかけると報告がありますが、ハクビシンの臭腺がどの程度撃退効果があるか不明です。

分類   食肉目 ジャコウネコ科
分布   東アジア(日本では北海道から本州、四国、九州にかけて散在しています)
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
51~76cm
3.6~6kg
40~60cm
絶滅危機の程度   中国南東部、ラオス、ベトナムではレストランで食事に供される所もあり、食料用として取引されています。1960年代には1年間に野生個体が80,000~100,000頭捕獲された記録や、2003年には660ヶ所の農場で40,000頭を飼育していたと言われています。このような商取引の対象としてだけではなく、生息地の減少、農園や果樹園を荒らす害獣としての処分などで、生息数は減少していると思われます。しかし、雑食性で環境への適応性が高いことから、現在のところは絶滅の恐れは少ないと判断され、国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版のレッドリストでは、低懸念種(LC)にランクされています。
日本ではハクビシンは保全対象種ではなく、1994年に鳥獣保護法(鳥獣保護及び狩猟の適正化に関する法律)によって狩猟獣となっています。また外来動物か在来動物かはっきりしないため、外来生物法(特定外来生物による生態系等に係る被害の防止に関する法律)で特定外来動物には指定されていないので一方的な駆除の対象にはなっていません。鳥獣保護法ならびに鳥獣被害防止特措法(鳥獣による農林水産業等に係る被害の防止のための特別措置に関する法律)があるので、有害鳥獣として捕獲する場合は、各市町村の鳥獣担当部署に申請、狩猟による捕獲の場合には、狩猟免許の取得と登録が必要となります。

主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典 監修   動物大百科 食肉類 平凡社 1986.
林壽郎   標準原色図鑑全集 動物Ⅱ 保育社 1981.
三宅隆   ハクビシン 動物園教室 どうぶつと動物園 Vol.22 No.12
(財)東京動物園協会 1970.
日本哺乳類学会編 責任編集 川道武男   レッドデータ 日本の哺乳類 文一総合出版1997.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
祖谷勝紀、伊東員義   ジャコウネコ科の分類. In. 世界の動物 分類と飼育□2 食肉目:今泉吉典 監修, ㈶東京動物園協会 1991.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of the World, 1. Carnivores,
Lynx Edicions 2009.
増田隆一   日本のハクビシンは台湾からやってきたー遺伝子から探る起源と多様性―
どうぶつと動物園、Vol.63 No.4, (公財)東京動物園協会, 2011.

おもしろ哺乳動物大百科84(食肉目 イタチ科) 2012.08.17

スカンク属
1属2種、セジロスカンクとシマスカンクに分類されます。セジロスカンクは北米のアリゾナ州、テキサス州南西部から中米のニカラグアにかけて生息しています。セジロスカンクの背中は白色か黒色の場合は白色の縞が細く別れていますが、シマスカンクの背の白帯は広くなっています。分布域が一部シマスカンクと重複していますが、本種の方が臆病で劣勢です。体格は体長が30~40cmでシマスカンクよりやや小柄ですが、尾は長めで35~38cm で体長と同じくらいあり白色です。また、乳頭数は5対でシマスカンクより1~2対少なくなっています。
本稿では日本でもなじみの深いシマスカンクについて紹介しましょう。

84)シマスカンク
カナダ南部からアメリカ、メキシコ北部に広く分布しています。標高4,200mの地点で見られたこともありますが、通常は平地から標高およそ1,800mまでの地域で良く見られます。生活地域はまばらな森林、草原、砂漠から人家近くまでさまざまで、開けた場所では土手や雑草の生い茂った場所、峡谷の谷や藪のある所を好むようですが、耕作地など餌と隠れ家があるかぎり特定の場所を選びません。活動時間帯は朝夕および夜間で、日中は巣穴の中や人家の下の乾燥した場所で休んでいます。北部に生息する個体は冬季に浅い冬眠に入りますが、この期間はカナダのアルバータ州で120~150日、アメリカのイリノイ州では62~87日との報告があります。一方南部で生活するものは冬眠せずに活動を続けます。普通は単独で生活していますが、冬季になると巣穴の中に1頭の成獣のオスと数頭のメスが体を寄せ合い同居していることから寒さを凌いでいるのかもしれません。アルバータ州では、1頭のオスと平均5.8頭のメスや母と子供が同じ巣穴の中にいました。地下の巣穴は自分で掘ることもありますが、普通はウッドチャックやアルマジロ、ウサギ、アメリカアナグマなどが掘った穴を使います。行動圏は、6頭の発信機を付けた調査結果では1.1~3.7 km2、平均で2.1km2やそのほかに0.5~12 km2などの報告があります。北方に生息するものや、餌が十分ある地域では狭くなる傾向がありますが、南方では1年中変わりません。歩行速度はギャロップ(駆け足)で時速16.5kmの記録があり、また、平常は水を避けますが水温22度のときに7.5時間以上泳いだとの報告例があります。普段は声を出しませんが、低いチーや、甲高い声、小鳥のさえずりのような声を出します。
スカンクは外敵を撃退するときに肛門腺から極めて強い悪臭がする液体を相手の目に向かって噴射して撃退することで有名です。その際は予め相手に尻を向け、尾を上げて威嚇する行動が伴います。それでも近づく相手に対し発射し約6m飛びますが、正確に届く範囲は3m程度で、もし目に入ると一時的に目が見えなくなります。さらにこの匂いが付着すると簡単には取れないので、この臭いを体験した哺乳類は2度とスカンクを襲うことはないそうです。肛門腺の分泌物は他のイタチ科の仲間より発達しており肛門嚢(のう=ふくろ)に蓄えることができ、数度続けて発射すると量も少なくなり匂いも弱くなります。主成分はブチルメルカプタンで毛やニンニク、ゴムを焼いたときに出る硫黄と二酸化炭素を混ぜたような強烈な匂いがします。動物園やペットで飼育する場合は肛門腺を除去しています。

  背中から尾にかけて白い模様がきれいでしょう。
でも尾を上げて威嚇(いかく)されたら逃げるべきです。
背中から尾にかけて白い模様がきれいでしょう。 でも尾を上げて威嚇(いかく)されたら逃げるべきです。
写真家  大高成元氏 撮影
   

分布により13亜種に分類するのが一般的です。

からだの特徴
体の大きさは、頭胴長(体長)で、オス23~40cm 、メス17~34cm、尾長オス20~47cm、メス15~36cm、体重オス0.8~4.1kg、メス0.6~3.6kgです。冬の間に減少する体重の割合はメスで31.6~55.1%、オスでは13.8~47.7%の報告例があります。体形は4肢が短くがっしりとしており、後肢の方が前肢より長くなっています。指は前後肢ともに5本で、前肢の爪は長く曲がり、後肢では短く真っ直ぐ鋭くなっています。前肢の長い爪で地面や倒木の下を掘って中にいる昆虫や齧歯類、無脊椎動物を食べます。人間のように足裏全体を地面に付けて歩く蹠行性ですが、時折後肢の踵を地面に付けずに歩くことがあります。耳は丸く小さくて、尾は体長と同じくらいでふさふさとした長い毛におおわれています。体色は背が黒、茶、時には赤い個体も野生では見られています。後頭部から背中を尾にかけて2本の縞があることからこの名前が付けられましたが、個体差が大きく中には尾の先端や横、前頭部の他、体のいたるところが白い個体もいます。嗅覚と聴覚は優れていますが視覚は良くありません。体温は冬季に活動している時は36.2~39℃、北極圏に近いカナダのマニトバにおける飼育下の巣穴では28.4~34.6℃に下がりました。乳頭数は10~15で平均6対あります。肛門腺は生まれた時にすでにあり、生後8日齢頃には悪臭のする液体を発射できますが、実際に正確に相手に向かって発射できるのは目が見えるようになってからです。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/3、臼歯1/2で左右上下合わせて34本です。

えさ
雑食性ですが季節によって主食となる内容は変化します。春から夏は昆虫が主食となり、甲虫、バッタ、コオロギ、ガ(蛾)、根切り虫、ミツバチ、スズメバチを食べます。冬と春の間は小型の哺乳類のマウス、ハタネズ、リス、モグラの仲間などの割合が増えます。そのほかに爬虫類のヘビ、両生類のカエル、鳥類とその卵、魚類、死肉、そのほか、ミミズ、カタツムリ、ハマグリ、ザリガニ、野生の果物、イチゴ、穀類、トウモロコシ、ナッツ、廃棄したごみから、外に出してあるペットの餌まで食べます。

繁殖
交尾期は2月中旬から4月中旬、出産は5月から6月初旬です。年に1回の発情ですが、最初の出産で失敗したときは再度発情します。メスの発情はおよそ10日間続き、この間に交尾したあと40~50時間後に排卵し、着床までには若干の遅延が見られます。妊娠期間は59~77日で着床遅延を含みます。産子数は1~10頭、平均で4~5頭です。生まれたばかりの赤ちゃんのしわのある地肌はピンク色で、白黒の縞模様の毛が2~3mm生えています。体重は32~35gです。目と耳は閉じており約3週齢で開き、目が見え耳も聞こえるようになってきます。授乳は生後6~8週齢まで続きます。この頃から母親と徐々に離れ、夏の終わりから初秋までに母親と別れます。メスは1歳で繁殖可能になります。 飼育下の平均寿命は6歳程度ですが、長寿記録としては、オレゴン動物園で1962年9月から1976年8月まで飼育された個体(メス)の飼育期間13年11ヶ月があります。

外敵
外敵の筆頭は人間で、スカンクの毛皮は1991~1992年北米では1頭2ドルで売られ、45,148枚の毛皮の取引がありました。他にも交通事故で死亡したり害獣として処分される個体もいます。野生の外敵としては、アメリカワシミミズク、イヌワシ、ハクトウワシなど猛禽類がいます。ピューマ、コヨーテ、アメリカアナグマ、アカギツネ、ハイイロギツネ、ボブキャットなどの捕食者は死亡しているスカンクを食べます。

分類   食肉目 イタチ科
分布   カナダ南部、アメリカ合衆国、メキシコ北部
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
オス23~40cm、メス17~34cm
オス0.8~4.1kg、メス 0.6~3.6kg
オス20~47cm、メス15~36cm
絶滅危機の程度   スカンクはネズミや昆虫を食べてくれるので人間にとって有益な点もありますが、家畜の伝染病とりわけ狂犬病の仲介動物としても知られ、家畜や他の動物、人間への感染もあること、農場にとって害獣であるために銃、毒餌、罠を用いて処分されることもあります。しかし、生息域が広いだけでなく、雑食性で餌となる対象が幅広く餌に困ることは少なく困りません。そのため国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版のレッドリストでは絶滅の危険が少ないと判断され低懸念種(LC)にランクされています。

主な参考文献
林壽朗   標準原色図鑑全集 動物Ⅱ 保育社 1981.
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典 監修 D.W.マクドナルド編   動物大百科1 食肉目 平凡社 1986.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,
The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker, S.P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
齋藤 勝・伊東員義・細田孝久・西木秀人   イタチ科の分類. In. 世界の動物 分類と飼育□2 食肉目: 今泉吉典 監修, ㈶東京動物園協会 1991.
Wade-Smith, J. & Verts, B. J.   Mammalian Species. No.173, Mephitis mephitis. The American Society of Mammalogists 1982.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of the world, 1. Carnivores, Lynx Edicions 2009.

おもしろ哺乳動物大百科83(食肉目 イタチ科) 2012.08.01

アナグマ属
アナグマは1属1種ですが、広範囲に分布するアナグマを24亜種に分類する学者や、亜種を整理し次の3種とする学者もいます。
(1) アジアアナグマ (2) ニホンアナグマ (3) ヨーロッパアナグマ
この分類に従った3種の体格と歯式を下記に示しましたが、アジアアナグマの中国に分布する種類は若干小型で、歯式はニホンアナグマと共にヨーロッパアナグマより歯数が少なくなっています。

3種の体格       頭胴長   体重   尾長
(1)アジアアナグマ   1種2亜種   49.5~70cm   3.5~9kg   13~20.5cm
(2)ニホンアナグマ    1種   52~68cm   5.2~13.8kg   12~18cm
(3)ヨーロッパアナグマ   1種23亜種   56~90cm   10~16kg   11.5~20.2cm

3種の歯式          
アジアアナグマ・ニホンアナグマ 門歯3/3、 犬歯1/1、 臼歯1/2   計34本
ヨーロッパアナグマ  門歯3/3、 犬歯1/1、 臼歯1/2   計38本

なお、本稿ではアナグマを1種としてその概略を紹介します。

83)アナグマ
分布域は、イギリス、スカンジナビア南部以北のヨーロッパ、ソ連のヨーロッパ部分から北極圏、中東のパレスチナ、イラン、及び中国のチベット、中国南部、そして日本にかけて広く分布しています。亜種の一つであるニホンアナグマは北海道を除く本州、四国、九州、小豆島に分布しています。ヨーロッパでは、標高およそ1700mの森林から低地の川辺、藪、草原、ステップ、半砂漠などの混合地帯に生活しています。アナグマはクランと呼ばれる5~6頭の家族単位の群れで生活していますが、イギリスではクランは雌雄の混成群で最大23頭、平均6頭でした。クランは優位のオスとメスによってリードされていますが、オスよりもメスの方が多いのがふつうです。生活空間は、スペイン中央部では高地や低地を避けて水場に近い森林や岩場、スイスのジュラ山脈では冬から春は森林や木のある牧草地、夏や秋は穀物畑を好みます。活動時間は基本的に夜行性で日没から夜明けまでの約8時間ですが、交尾期には日中も活動します。クランは生活するために隠れ場として巣穴を掘りますが、多くの場合、水はけの良い疎林や斜面の掘りやすい土やまわりが藪で囲まれている場所が選ばれます。巣穴はヨーロッパに住むアナグマの方が大きく複雑になっています。 2つのタイプがあり、1つは直径0.8~1.5m、深さ2~3m、奥行き50~100mのトンネル状の穴を掘り、出入り口も平均10ヶ所もある共同の巣穴です。内部は清潔に保たれ数ヶ月使うと他の巣穴に移動し、休憩や出産用の場所は乾燥した草や枝、コケ、葉など入れておきます。周辺部2~3kmは、日光浴や遊び場として使います。もう一つは出入り口が1ヶ所で、1頭あるいはペアでなわばりを作り、同性の成獣は一緒に住みません。なわばりは尾腺や肛門腺からの分泌物をこすり付けて目印としますが、境界線を巡ってしばしば戦うときもあります。メスは春から夏の暖かい場合、地面を掘らないで岩の割れ目など自然の隠れ場所を好む傾向があります。ポルトガルの調査例ではメインの巣穴の利用率が62.3%でしたが他にも平均14ヶ所の巣穴があって、それぞれ1頭又はペアでなわばりとしています。行動圏は生息地により幅がありますが、0.1~4km2で、1日の移動距離は1.2~10kmになります。
ニホンアナグマは母親と子どもの家族グループで、性成熟したオスは早春以外家族の元をほとんど訪れません。オスの行動圏は2~3頭の成獣のメスの行動圏を含んでいるので、メスより広くなります。東京における行動圏の調査によれば、オスで0.4km2、メスが0.11km2でした。巣穴は年間平均13.5ヶ所を使いますが雌雄ともに同じ巣穴をほとんど使いません。冬季の寒い時期、ヨーロッパの寒い地方と同様にほとんどの時間を冬眠し巣穴で過ごします。ニホンアナグマの場合、冬眠(又は冬ごもり)期間は42~80日と生息環境によって差があり、この期間は体温の低下が見られます。

  ふっくらとした体と両目を通って黒い縞があるところが特徴です。
ふっくらとした体と両目を通って黒い縞があるところが特徴です。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
体格は、体長49.5~90cm、体重 3.5~16kg、尾長11.5~20.5cmと生息地によって幅があります。体重の重いものでは秋に30~34kgになった成獣オスが知られています。体形はずんぐりとして、短い4肢にはそれぞれ5本の指があり、前肢の長く鋭い爪は穴を掘るのに適していますが、後肢の爪はそれほど大きくはありません。耳と尾は短く鼻端部は太く尖っています。頭部から鼻端までの中央線及び耳は白く、その両側に両目を通り2本の黒い縞が入っています。体毛は上面が淡褐色から褐色、灰黒色まであり、背の部分は淡く腹部及び4肢と目の周囲は黒色です。オスはメスより頭部が広く、頸部と尾も太くなります。肛門腺や尾部下腺からの分泌液をなわばりの境界線や相手の体に擦り付け、あるいは、逆立ちして木の30~40cmの高さに排尿して匂いを付けることもあります。これらの匂いによる役割は、餌を探すためだけでなく、個体間の識別、メスの発情状態の確認などコミュニケーションの手段としても重要なので、嗅覚は鋭いと思われます。乳頭数は3対です。

えさ
雑食性で主食は地下に住む無脊椎動物のミミズですが、他にも、昆虫、ハチの幼虫、甲虫や小型の哺乳類のモグラ、ネズミ、ウサギ、両生類のカエル、爬虫類のトカゲやヘビ、鳥類、果物のイチゴ、ブドウ、根茎、穀類、ハチミツ、キノコなども食べます。果物が豊富にある季節はその割合が増えますが、ヨーロッパの調査例では56~89%が地下のミミズや虫で占められていました。また、これらの餌が不足している場合は腐肉(死肉)も食べます。1頭のアナグマがミミズを1時間で数100匹を捕えることが知られています。

繁殖
ヨーロッパに生息するアナグマの交尾期は1年中見られますが、最も多いのは冬の終わりから夏の半ばにかけてです。受精卵の子宮内への着床が10ヶ月間も遅延することがあります。そして胎児の発達は着床後6~8週で急速に進み出産します。交尾から出産までの妊娠期間は9~12ヶ月で、出産期はおもに2月から3月です。産子数は3~4頭、多いもので6頭です。生まれたばかりの赤ちゃんの体重は約75g、目は閉じていますが生後約1ヶ月齢で見えるようになります。授乳期間は生後約2.5ヶ月齢までで、秋には母親から離れます。雌雄ともに約1歳で性成熟し繁殖活動に参加します。
ニホンアナグマの交尾期は4月から8月で、受精卵は翌年の2月ころまで着床遅延し、出産期は2~5月です。産子数は1~3頭、オスの子どもは生後24ヶ月齢まで成長を続けますが、メスの成長は早く1歳で親と同じ大きさになります。性成熟はオスで約2歳、メスは1歳で性成熟し着床遅延をはさんで2歳から出産が始まります。ニホンアナグマのメスの子どもは母親と一緒に生後14ヶ月齢迄しかいませんが、オスは生後約26ヶ月齢まで一緒にいます。
長寿記録としては、チェコのプラハ動物園で1979年12月9日に死亡した個体(オス)の飼育期間18年7ヶ月があります。

外敵
人間が一番の外敵で、畑を荒らした場合は毒殺やワナ、狩猟で捕獲されます。各国で狩猟期には捕えられますが、毛質が悪く毛皮用ではなくヒゲ剃り用のブラシや毛筆に利用されています。野生の外敵としては、オオカミや野犬があげられます。
ペットのイヌにダックスフントがいますが、このイヌはヨーロッパでアナグマを穴から追い出すために改良した品種です。ドイツ語でダックスはアナグマ、フントはイヌを意味し、アナグマ用のイヌという意味です。

分類   食肉目 イタチ科
分布   ヨーロッパ、アジアの寒帯、亜寒帯、温帯地域
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
体高(肩高)
49.5~90cm
3.5~16kg
11.5~20.5cm
22~33cm
絶滅危機の程度   分布が広く、雑食性で主食がミミズなどの地下に住む動物で餌が豊富なこと、また環境への適応性が高いことから国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版のレッドリストでは、現在のところは絶滅の恐れが少ない低懸念種(LC)に指定されています。

主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典 監修   動物大百科 食肉類 平凡社 1986.
林壽朗   標準原色図鑑全集 動物Ⅱ 保育社 1981.
齋藤勝・伊東員義・細田孝久・西木秀人   イタチ科の分類. In. 世界の動物 分類と飼育□2 食肉目:
今泉吉典 監修, ㈶東京動物園協会 1991.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker, S. P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 3, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of the World, 1. Carnivores, Lynx Edicions 2009..
日高敏隆 監修   日本動物大百科1  哺乳類Ⅰ 平凡社 1996.

おもしろ哺乳動物大百科82(食肉目 イタチ科) 2012.07.13

クズリ属
本属はクズリ1種で、分布によってユーラシアクズリとアメリカクズリの2亜種に分類するのが一般的ですが、それぞれを独立種として扱い2種に分類する学者もいます。

82)クズリ
ユーラシア大陸のスカンジナビア半島、ドイツからシベリア北東部、モンゴル、中国東北部、サハリン、カムチャッカ、そして北米ではアラスカ、カナダからカルフォニア中部、コロラド南部、インディアナ、ペンシルバニアにかけて分布します。おもに針葉樹の茂ったタイガや樹木の生えていないツンドラで生活していますが、冬季は低地、夏は高地へと季節による移動がみられます。繁殖期以外は単独で暮らし、活動時間帯は主として夜行性ですが日中も活動することがあり、人間を避けるようにして生活しています。泳ぐことや木に登るのは上手ですが、木から木へ跳び移ることはありません。冬季には1日に45kmほど移動することが知られています。またギャロップで10~15km休憩なしで走り続けた調査例があります。私はかつて上野動物園で飼育中、雪が降り積もった日に、雪の上を音もなく舞うように跳ねているのを観察することができました。その様子からいかにも雪の生活に適応しているか垣間見ることができたのです。休憩場所として巣を使いますが、巣は岩の割れ目、樹の洞、倒木の下、ほかの動物が使った穴、深い雪の中に1~3m掘った穴や、出産するときは地面に5~15cmの浅い穴を掘ってそこに生むケースなどの報告があります。個体ごとに複数の穴を使い分け、穴の長さも1~40mとさまざまで、複数の出入り口もあります。行動圏はイタチ科で最も広く、オスは冬季に広くおよそ2,000km2に及び他個体の行動圏とも重複します。オスは繁殖期の間、その一部50~350km2をなわばりとして防衛します。肛門腺や腹部の腺からの分泌物を定期的に茂みや木に登ってこすり付けてマーキングし、なわばりを主張します。

  写真からもがっしりした体躯と鋭い爪がわかるでしょう! 強い猛獣の仲間です。
写真からもがっしりした体躯と鋭い爪がわかるでしょう! 強い猛獣の仲間です。
写真家  大高茂元氏 撮影
   

からだの特徴
体の大きさは、体長が65~81cm、体重はオスが平均15kg、メスは平均10kgで、オスのほうが約30%重くなります。体はがっしりとして、頭部は大きくて額は幅が広く、耳は小さく毛で被われています。体色は濃茶から黒色で、明るい茶色の帯が両側の肩から尻まで通り尾の基部でつながり、喉部から腹部、肢の一部に白いパッチがあります。体毛は全体的に長く密に生えており、冬の下毛は2~3cm、上毛は6~10cmあります。前足は短く頑丈で、それぞれ5本の指があり、掌は大きく前肢の爪の長さは2.4~2.6cmあってクマの手のようです。尾は21~26cmと短くて、長さ15~20cmもある長く厚い毛で被われています。夏には足裏に毛が生えていませんが、冬は毛で被われます。歩行は踵まで地面につけて歩く蹠行性です。臭腺は顔、腹部、尾、肛門周辺に分布し、肛門腺からの分泌物の匂いが排泄物に付着し、なわばりの主張や発情の状況などの情報源となります。下顎と犬歯は強力で、その咬合力はブチハイエナ並で餌となる大型の有蹄獣のトナカイやヘラジカの骨も噛み砕くことができます。そして、上顎の第3門歯もクマの歯のように大きく強力です。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯4/4、臼歯1/2で左右上下合わせて38本です。嗅覚と聴覚は鋭敏です。乳頭は腹部と鼠径(そけい)部に合わせて4対あります。

えさ
肉食傾向が強い雑食性で、死肉、レミング、ヤマアラシ、リス、マーモットなどの齧歯類、ウサギ、鳥類とその卵、昆虫の幼虫、漿果、果実、種子などを食べます。冬季になり雪が積もるとヘラジカ、トナカイ、ノロジカ、アカシカ、野生のヒツジなど大型の有蹄獣も捕えます。獲物は鋭い嗅覚と聴覚を頼りにトナカイを1~8km追いかけて捕えた例も報告されています。1度に食べきれない場合は、獲物をバラバラに解体して雪や土をその上にかけて隠し、あるいは木の又にかけて貯蔵して後で食べます。

繁殖
交尾期の間は一夫多妻ですが、翌年も同じオスと配偶関係にある場合やテリトリーの関係などにより変わることもあります。年に1回、4月下旬から7月にかけて発情、交尾しますが、着床遅延があるために実際の受精卵の着床は11月から翌年の3月となります。出産は1~4月で、1腹の産子数は1~5頭と幅がありますが、通常2~4頭です。妊娠期間は、デンマークのコペンハーゲン動物園の場合215日、北米のダコタ動物園では272日でした。生まれたばかりの赤ちゃんの体重は90~100gで、白色の毛で被われています。目は閉じ、歯は生えていません。生後7~8週齢で固形物を食べ始め、10週齢頃に離乳します。成長が早く生後約7ヶ月齢で親と同じ体重になります。オスの子どもは次の発情頃には母親と離れますが、メスの子どもはその後も母親の近くにいることもあります。オスの性成熟は生後14~15ヶ月齢ですが、精子の形成は生後26~27ヶ月齢です。メスの初産は2歳頃です。
長寿記録としては、フィンランドのヘルシンキ動物園で2000年9月4日に死亡した個体(オス)の飼育期間19年3ヶ月、推定年齢19歳6ヶ月という記録があります。

外敵
人間以外の外敵としてはハイイロオオカミ、アメリカクロクマ、ヒグマ、ピューマ、イヌワシなどの大形の猛禽類があげられますが、特に幼獣やまだ経験の浅い個体は捕食されやすいと言われています。

分類   食肉目 イタチ科
分布   ユーラシア大陸、及び北米の北極周辺地域
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
体高(肩高)
尾長
オス72~81cm、メス65~68cm
オス11.3~16.2kg、メス6.6~14.8g
35~43cm
オス22~26cm、メス21~25cm
絶滅危機の程度   分布が広く大きな個体群が残っている地域もあることから、現在のところは絶滅の恐れが少ないと判断され、国際自然保護連合(IUCN)発行の2011年版のレッドリストでは低懸念種(LC)にランクされています。しかし、現在も生息地の消失が進んでいる点や、毛皮用や家畜のトナカイを捕食する有害獣として駆除されている地域もあるので、引き続き生息数の推移を見守る必要があります。

主な参考文献
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典 監修   動物大百科 食肉類 平凡社 1986.
林壽朗   標準原色図鑑全集 動物Ⅱ 保育社 1981.
齋藤勝・伊東員義・細田孝久・西木秀人   イタチ科の分類. In. 世界の動物 分類と飼育□2 食肉目:
今泉吉典 監修, ㈶東京動物園協会 1991.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker, S. P. (ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 3, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Pasitschniak-Arts, M. & Larivière,S.   Mammalian Species No. 499. Gulo gulo 
The American Society of Mammalogists 1995.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of the World, 1. Carnivores, Lynx Edicions 2009.

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