川口先生のペットコラム
旭化成ホームズ株式会社
Profile
ゾウの先生 川口 幸男

1940年東京都伊豆大島に生まれる。上野動物園飼育課を定年退職後、エレファント・トークを主宰。講演や執筆をしている。講演依頼は、メール またはFax 048-781-2309にお願いします。
NHKラジオ番組夏休みこども科学電話相談の先生でもあり、本編では長年の経験を踏まえて幅広く様々な話題を紹介します。
わんにゃんドクター 川口明子

日本獣医畜産大学卒業、同大学外科学研究生として学び、上野動物園で飼育実習後、埼玉県上尾市にかわぐちペットクリニックを開業する。娘夫婦もそろって獣医師で開業しており、一家そろって動物と仲良くつきあっている。
Archives
  おもしろ哺乳動物大百科
 ・亥年にちなんだイノシシの話(番外編)
 ・戌年にちなんだイヌの話(番外編)
 ・酉年にちなんだニワトリの話(番外編)
 ・128 げっ歯目(ネズミ目)
 ・127 有鱗目 センザンコウ科
 ・126 菅歯目 ツチブタ科
 ・125 ハイラックス目 ハイラックス科
 ・124 偶蹄目(クジラ偶蹄目)プロングホーン科
 ・123 偶蹄目(クジラ偶蹄目)ウシ科
 ・122 偶蹄目(クジラ偶蹄目)ウシ科
 ・121 偶蹄目(クジラ偶蹄目)ウシ科
 ・120 偶蹄目(クジラ偶蹄目)ウシ科
 ・干支「申:サル」にまつわる話(番外編)
 ・119 偶蹄目(クジラ偶蹄目)シカ科
 ・118 偶蹄目(クジラ偶蹄目)シカ科
 ・117 偶蹄目(クジラ偶蹄目)ラクダ科
 ・116 偶蹄目(クジラ偶蹄目)カバ科
 ・115 偶蹄目(クジラ偶蹄目)カバ科
 ・114 偶蹄目(クジラ偶蹄目)イノシシ科
 ・113 偶蹄目(クジラ偶蹄目)キリン科
 ・112 偶蹄目(クジラ偶蹄目)キリン科
 ・111 奇蹄目 サイ科
 ・110 奇蹄目 サイ科
 ・109 奇蹄目 バク科
 ・干支「未:ヒツジ」にまつわる話(番外編)
 ・108 奇蹄目 バク科
 ・107 奇蹄目 ウマ科
 ・106 奇蹄目 ウマ科
 ・105 長鼻目 ゾウ科
 ・104 長鼻目 ゾウ科
 ・103 長鼻目 ゾウ科
 ・102 食肉目 ネコ科
 ・101 食肉目 ネコ科
 ・100 食肉目 ネコ科
 ・99 食肉目 ネコ科
 ・98 食肉目 ネコ科
 ・干支「午:ウマ」にまつわる話(番外編)
 ・97 食肉目 ネコ科
 ・96 食肉目 ネコ科
 ・95 食肉目 ネコ科
 ・94 食肉目 ネコ科
 ・93 食肉目 ネコ科
 ・へびの話(番外編)
 ・92 食肉目 ネコ科
 ・91 食肉目 ハイエナ科
 ・90 食肉目 ハイエナ科
 ・89 食肉目 ハイエナ科
 ・88 食肉目 マングース科
 ・87 食肉目 マングース科
 ・86 食肉目 ジャコウネコ科
 ・85 食肉目 ジャコウネコ科
 ・84 食肉目 イタチ科
 ・83 食肉目 イタチ科
 ・82 食肉目 イタチ科
 ・81 食肉目 イタチ科
 ・80 食肉目 アライグマ科
 ・79 食肉目 アライグマ科
 ・78 食肉目 アライグマ科
 ・77 食肉目 パンダ科
 ・76 食肉目 パンダ科
 ・75 食肉目 クマ科
 ・74 食肉目 クマ科
 ・73 食肉目 クマ科
 ・72 食肉目 クマ科
 ・71 食肉目 クマ科
 ・70 食肉目 クマ科
 ・タツノオトシゴの話(番外編)
 ・69 食肉目 クマ科
 ・68 食肉目 イヌ科
 ・67 食肉目 イヌ科
 ・66 食肉目 イヌ科
 ・65 食肉目 イヌ科
 ・64 食肉目 イヌ科
 ・63 食肉目 イヌ科
 ・62 食肉目 イヌ科
 ・61 食肉目 イヌ科
 ・60 食肉目 イヌ科
 ・59 食肉目 イヌ科
 ・58 霊長目 ヒト科 またはショウジョウ科
 ・57 霊長目 ヒト科 またはショウジョウ科
 ・56 霊長目 ヒト科 またはショウジョウ科
 ・55 霊長目 ヒト科 またはショウジョウ科
 ・54 霊長目 テナガザル科
 ・53 霊長目 オナガザル科
 ・52 霊長目 オナガザル科
 ・51 霊長目 オナガザル科
 ・50 霊長目 オナガザル科
 ・49 霊長目 オナガザル科
 ・48 霊長目 オナガザル科
 ・47 霊長目 オナガザル科
 ・卯年にちなんで(番外編)
 ・46 霊長目 オナガザル科
 ・45 霊長目 オナガザル科
 ・44 霊長目 オナガザル科
 ・43 霊長目 オナガザル科
 ・42 霊長目 オナガザル科
 ・41 霊長目 オナガザル科
 ・40 霊長目 オナガザル科
 ・39 霊長目 オマキザル科
 ・38 霊長目 オマキザル科
 ・37 霊長目 オマキザル科
 ・36 霊長目 オマキザル科
 ・35 霊長目 オマキザル科
 ・34 霊長目 オマキザル科
 ・33 霊長目 オマキザル科
 ・32 霊長目 オマキザル科
 ・31 霊長目 マーモセット科
 ・30 霊長目 マーモセット科
 ・29 霊長目 マーモセット科
 ・28 霊長目 マーモセット科
 ・27 霊長目 メガネザル科
 ・26 霊長目 ロリス科
 ・25 霊長目 ロリス科
 ・24 霊長目 アイアイ科
 ・23 食肉目 ネコ科
 ・22 霊長目 インドリ科
 ・21 霊長目 インドリ科
 ・20 霊長目 キツネザル科
 ・19 霊長目 キツネザル科
 ・18 翼手目 オオコウモリ科
 ・17 翼手目 ブタバナコウモリ科
 ・16 翼手目 チスイコウモリ科又はヘラコウモリ科
 ・15 翼手目ヒナコウモリ科
 ・14 皮翼目ヒヨケザル科
 ・13 ツパイ目ツパイ科
 ・12 食虫目ハリネズミ科
 ・11 食虫目アズマモグラ
 ・10 貧歯目アルマジロ
 ・9 貧歯目フタユビナマケモノ
・(番外編)バードウイークとペット
おもしろ哺乳動物大百科
 ・8 貧歯目オオアリクイ
 ・7 有袋目コアラ
 ・6 有袋目ウォンバット
 ・5 有袋目タスマニアデビル
 ・4 有袋目オポッサム
 ・3 有袋目アカカンガルー
 ・2 単孔目 ハリモグラ
 ・1 単孔目 カモノハシ
・ウシに見習う
・サンタはトナカイが引いたソリに乗ってやってくる
・ネコの足
・足のはこび
・秋は食がすすむなー
・TBSラジオ『全国こども電話相談室』最終回に出演
・恋の季節
・ゴリラのドラミング
・ウンチの話 その3
・夏はスイカだ
・帰省するときのペット対策
・ウンチの話 その2
・魚のすみか
・ウンチの話 その1
・ビーバーのすまい
・テングザルのおなか
・焼酎一杯グイー
・おっぱいの魅力
・アブラコウモリの住まい
・お乳の成分
・樹上にベッドを作るオランウータン
・乳の話 その1 乳頭の数
・冬はホッキョクグマの季節だ
・手を使った動物のおねだり
・ネズミの嫁入り
・動物の住居
・手の話(3) 指紋
・手の話(2) いろいろな動物の手
・カメの冬眠
・手の話(1) サルの手
・食欲の秋
・ネコのゴロゴロ
・王様の耳はロバの耳
・あえぐように暑い
・ライフルマン
・動物の口
・泳ぐどうぶつと泳げない動物
・動物の舌
・メダカの飼い方
・動物の歯
・バードウイーク
・動物の頬袋
・春 新入生の季節
・動物の鼻
・ヤドカリのすまい
・なんで眼(がん)つけているんだ!
・贅沢が好きな男
・ゴリラの頭とゾウの頭
・ブタもおだてりゃあ木に登る

干支「午:ウマ」にまつわる話(番外編) 2014.1.1

新年明けましておめでとうございます。

皆さん初詣に行き、絵馬を奉納されましたか?
昔、お金持ちは生きた馬を神社に奉納して1年の大願成就を祈ったそうですが、そのようなことができる人は限られています。そこで徐々に簡素化し1,000年前頃から板にウマの絵を描いた絵馬になったそうです。正月のご来光を仰ぎ絵馬を奉納するなんてすっきりとした気分になるでしょうね。合格祈願、就職祈願、健康祈願など何時の世もそれぞれお願いことは尽きませんね。
正月は気分一新するチャンス、お互い元気に頑張りましょう。

それでは今年の干支「午:ウマ」にまつわる話を紹介しましょう。

  モウコノウマの親子 親子の写真を見ると心が癒されますね。
モウコノウマの親子
親子の写真を見ると心が癒されますね。
写真家 大高成元 氏撮影
   

1. ウマのなかまの分類
ウマのなかまは奇蹄目ウマ科に属します。ウマ科はウマ属1属のみで、総種類数は11種です。ウマ属はさらに5亜属:①ウマ亜属、②アジアノロバ亜属、③ロバ亜属、④グレービーシマ亜属、⑤シマウマ亜属に分類されます。この中で家畜ウマの祖先と考えられる野生ウマはウマ亜属に属し、モウコノウマとタルパン(ターパン)の2種が知られています。タルパンはソウゲンタルパンとシンリンタルパンの2亜種に分類され、アジアの一部とヨーロッパに広く分布していましたが、人間が生息地に進出し、さらに食料にするために捕獲したことで野生のものは1879年に絶滅しました。
現存する唯一の野生ウマは中央アジアのモンゴル地方に生息するモウコノウマだけとなっています。

初めに野生ウマで唯一生存しているモウコノウマについて紹介しましょう。

2. モウコノウマ(別名:プルツェワルスキーウマ)Equus przewalskii Poliakov,1881
唯一生き残った野生ウマの1種モウコノウマは、ソ連の探検家プルツェワルスキーにより1879年にキルギスで発見されました。学名は彼の名前に由来しています。1897年に初めてモンゴルでモウコノウマの捕獲をおこない、黒海に面したアスカニア・ノバで1899年から飼育が始まりました。かつてモンゴル内に多数見られた本種は生息地へ人々が進出したことで生息環境の悪い半砂漠や乾燥地域に追いやられ、また人々の食料とされたため1960年代後半に野生個体は絶滅しました。しかし、幸運にもヨーロッパの動物園に送られた個体が絶滅を免れました。1959年にモウコノウマ保護国際シンポジウムがプラハで開催され、1960年以降プラハ動物園から本種の血統台帳が出され近親交配を防ぐようになりました。さらに1992年からモンゴル国内の動物保護区で野生復帰させるプロジェクトが始まって以降徐々に数がふえ、2013年現在保護区に約400頭がいるそうです。世界中では2,100頭以上、国内では多摩動物公園に8頭、千葉市動物公園に2頭が飼育されています。

生態と体の特徴
モウコノウマは中央アジアのモンゴル南西部の草原や乾燥地帯で、1頭のオスがメスとその子どもで数頭から10数頭でハーレムを形成して生活しています。種オスとなるにはオス同士で闘争して勝たなくてはなりません。
頭部が大きく、4肢は短めで頸部は太いため全体的にみるとがっしりした印象を受けます。たてがみは16~20cmと短く直立し、前がみはありません。たてがみから尾のところまで、背中の中央に暗褐色か黒色の線が通っています。他の亜属との相違点は後肢にも「タコ」(夜目:よめ、附蝉(ふぜん)ともいう)がある点と耳の短いところです。個体識別にはこの「タコ」と体色の特徴を合わせて判別します。体高120~146cm、体長(頭胴長)220~280cm、体重200~300kg、耳長14~17cmです。メスはオスより一回り小型です。なき声は家畜のウマと同じです。オスの歯式は門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/3、臼歯3/3で合計40本ですが、メスは稀に小さな犬歯が生えていますが、通常はなく36本です。乳頭数は1対で、鼠蹊部(そけいぶ)にあります。
交尾期はモンゴル地方では5~6月で、発情は3~8日間続きます。約340日の妊娠期間を経て翌年の春4~5月に1頭を出産します。授乳期間は6~7ヶ月間です。

それでは、いつごろウマは家畜化されたのでしょうか、そして現在ウマは私たちの生活とどのようなかかわりがあるのか紹介しましょう。

3. 家畜のウマ
家畜として飼うようになった時期は、およそ6,000年前で、野生ウマの2種、ターパン(タルパン)とモウコノウマが関係していると推測されていますが、家畜への経緯については諸説あります。その中で最も可能性が高いと考えられている説は、最初に家畜化された野生ウマはタルパンで、その後野生ウマを家畜化する考えは東方と西方へと広がり、アジア東北部にはモウコノウマに似た小型のモウコウマが生まれ、西欧ではベルギーやフランスで大型の在来馬が誕生したのではないかというものです。
一方では、モウコノウマが中国で家畜化されたのが、世界におけるウマ飼育の始まりであるとする説もあります。

1)ウマの飼育目的
(a)食料として飼育
原産国の人々がさまざまな動物を飼う場合、親を殺し食料にしたあとで一緒にいた子どもを一時飼育してペットにする様子がみられます。とくに草食獣の場合、性質が穏健で生育が早く、数ヶ月間飼育することができれば大型のものでは数100kgとなり、大量の肉が手に入ることになります。先人たちはすでにウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタなどを、およそ1万年前から飼育しており動物を飼育するノウハウを経験的に会得し、ウマの飼育に応用したと考えられます。とは言え、同じ草食獣でもウシのような複数の胃を持つ反芻動物と、ウマのような単胃で反芻しない動物では、飼育の面で大差があり苦労したことでしょう。やがて食肉以外の目的でウマは人間にとって必要不可欠の動物となっていきますが、食肉の目的は現在も残り、馬肉を桜肉と称し脂肪分が少なく食べやすいと好む人も多く、日本では今もなお肉用のウマを約1万頭飼育しています。

(b)乗馬、農耕、運搬用などの使役動物として
家畜は当初肉用として飼育されていましたが、やがてウシやアジアノロバの1亜種であるオナガー(オナーゲル)の背に荷物を載せて使役に使うようになりました。5,000年程以前メソポタミアのシュメール人が車輪を考案すると運搬用の車が工夫され、動物に牽かせ農耕や牧畜に家畜を利用するようになっていきます。およそ4,000年前(時期には諸説あります)にはウマの飼育技術が進み、手綱を付けることに成功してウマを自由にコントロールできるようになると、使役動物の仲間入りをしました。モウコウマの競馬は片道30kmを走ることからもわかるように長距離を走ることができるのみならず、ウマは性格が穏健で粗食に耐え強力な牽引力を秘めています。そのために数千年の時を経て食料とするほかに乗馬、農耕、運搬そして戦争における活躍で圧倒的な存在感を持っているのです。

(c)軍馬として活躍
多くの動物社会においてなわばりや繁殖期に雌雄間で闘争が付きまといますが、人間社会も例外ではありません。国家間や個人の戦闘は古代から現在まで形態こそ初期の槍、弓矢、ワナなどから近代兵器に変わっていますが、闘争という点では同じです。ウマの馴化を行い戦車をウマに曳かせ、さらに乗馬できるようになると戦争における様相が一変しました。紀元前1,900年のヒッタイト人の戦車、あるいはクリミア半島周辺のスキタイ騎馬民族など、アジア大陸ではウマを多く所有する国は強国となり、13世紀にはモンゴル帝国の騎馬民族がロシアやヨーロッパに侵入し、16世紀になるとスペイン人がアメリカ大陸にウマを持ち込みます。最近100年でも戦争に使うために品種改良を重ね、例えば、大型で力の強いフランス原産の品種ペルシュロンは輓馬として第一次世界大戦以降武器や戦闘員の運搬で活躍し、その後世界中の国々に分散して行きます。このように戦時におけるウマの活躍は自動車が発明され実用化したつい最近100年前まで続いていたのです。

  轡(頭絡)をつけたトカラウマのオス。
轡(頭絡)をつけたトカラウマのオス。
写真家 大高成元 氏撮影
   
  3.轡の口の中に入るハミ。世界中で約200種類以上あります。
轡の口の中に入るハミ。世界中で約200種類以上あります。
写真家 大高成元 氏撮影
   

(d)馬具の発明
戦争は殺戮兵器の開発を進化させますが、一方で平和利用すれば大きな恩恵を受けることになります。ウマを乗りこなす技術は4,000年前に口に轡(くつわ)を付けハミ(写真参照)と呼ばれる堅い木や骨で作った馬具を口にはめることで一挙に向上しました。ハミはウマの犬歯と前臼歯の間が大きく開いている点に着目し、口内を傷つけることなく入れて手綱とつなぎ乗り手の合図を送る方法です。左の手綱をちょっと引けば左に曲がり、両手綱を引っ張るとブレーキになり、緩めると進むなど微妙な指示を伝えることができます。今では200種以上のハミがありますが、ウマの大きさや品種毎に使うハミも違い、個体とぴったりと合わなければウマもつけられるのを嫌がり乗馬を拒否されます。現在は焼き物や金属製の趣向を凝らしたものもあります。やがて鞍や鐙(あぶみ:足を乗せる器具)もできると両手を離して武器を使うことが可能になり、一層戦時におけるウマが重要視されるようになりました。

(e)パレード、競馬、そしてアニマルセラピー
各地域の長が行う儀式ではウマがパレードの先頭にたって行列を先導することも、重要な役割となります。スペインのアンダルシアン種は外観が美しく優雅で人気がありました。娯楽としては、競馬用にサラブレットやアラブをはじめ各国で多くの種類を作り出しています。また、ペルシャで紀元前6世紀に始まったウマに乗ってボールをゴールに入れるポロ競技や、17世紀以降イギリスの貴族の間で流行ったキツネ狩りは楽しみのひとつでした。最近ではアニマルセラピーとして日本ではイヌ、ネコが主役になっていますが、欧米では乗馬が活躍しています。肩高が147cm以下の品種をポニーと呼びますが、子どもの乗馬やペットに飼われています。ウマに乗った時の爽快感やウマの知性溢れる反応に心が洗われると言われます。これは欧米人が長い歴史を経て私たち日本人より深くウマと関わってきた結果かもしれません。

2)体の特徴
(a) 蹄の特徴
草食獣が肉食獣から身を守る術として、ウマは素早く逃げる方法を身につけ、サラブレッドは最高時速77kmの記録もあります。化石で見ると、ウマの祖先は始新世前期の6,500万年前に現れたヒラコテリウム(エオヒップス)で、前足4本、後足3本の指がありました。その後第3指が太くて長くなった結果、6,000万年以上の時を経て、100万年前(洪積世)になると第3指だけが残りました。これは1本の蹄に体重を乗せて、できるだけ早く走って肉食獣から逃げるための適応と考えられています。野生ウマは長距離を移動するので、伸び続ける蹄も程よくすり減るのですが、飼育すると過剰に伸びたり、反対に使いすぎて摩耗し過ぎたりします。そこで装蹄師が蹄を保護するために定期的に削蹄して蹄鉄を付けているのです。日本では蹄鉄が普及する前、ウマは平安時代から軍馬として貴族や武士が所有し大きな戦力となっていましたが、平安時代末期には馬わらじを作り、蹄を保護していました。

(b)消化器の特徴
ウシとウマは良く比較されますが、それは消化器でも同じです。草食獣は胃や腸内に無数にいる微生物により食物繊維を発酵分解し、最終的には微生物をエネルギー源として吸収しています。内容物1ミリリットルの中に細菌が数千億、プロトゾア(原虫)が数十万いて、この中にセルローズを分解できる細菌と真菌がいます。十分に消化させるためには発酵をさせることが重要ですが、ウマの場合、繊維成分は小腸の後部にある盲腸や結腸の発酵槽まで行かなければ発酵分解されません。ウシは前胃が発酵槽の役割を果たし第1胃と第2胃で約200リットル入ります。胃と腸の容量比はウマの胃が1とすれば腸は20、ウシは胃が1に対し腸は0.5です。採食時間はウマが10~20時間と長いのに比べ、ウシは6~9時間ですが、反芻に9~11時間費やすのでほぼウマと同様になります。ウマは腸内滞留時間も短く約10時間(ウシは40~50時間)と短いので次々と食べて消化の悪いものは排泄します。そのため馬糞は粗繊維が残りパサパサですが、牛糞は良く消化され水分が多くペチャとなっています。

(c)歯と鼻の特徴
顔の長い人がウマのように長い顔と例えられますが、長い顔には大きな歯と鼻が収まっています。ウマは走るときに大量の酸素を必要としますが、その時鼻を円形に膨らませて取り込みます。また、口中には、オスは40本、メスはふつう犬歯を欠いているので36本の大きな永久歯があります。このように大きな歯と鼻を必要とするために長い顔となったのです。オスは門歯(前歯)と犬歯の間、メスは門歯と第一前臼歯の間が大きく開き、この部位を歯槽間隙と言いますが、この部位に轡(ハミ)を通しています。ウマは上顎と下顎の両方に歯が生えていて先端がきっちり合い、草を噛み切ることができ、樹皮も食べることができます。

(d)聴覚、視力、嗅覚
聴覚は人間の場合20~2万Hz(ヘルツ)の範囲が可聴域ですが、ウマはおよそ3万Hz(ヘルツ)の高音を聞くことができるので、私たちに聞こえない音を聞いていることになります。さらに耳は自由に動かすことができるので、長い首と共に音のする方向に向けて音を拾います。目はこめかみのすぐ下にはみ出すように外側に出て、瞳孔は横長なので真後ろ以外は320~340度の広範囲を見渡せることができます。視力自体はそれほど良くなくて停止していれば約300m、走行中はおよそ100m先の物を識別できると推定されています。色は赤、青、緑、黄色、灰色が見分けられます。嗅覚もまた優れており、仲間や人間、餌の識別は嗅覚に頼っています。他にも触覚や味覚など五感を駆使して、外敵の接近や仲間を認識しています。

3)家畜ウマの品種
世界中には約250の品種があり、日本にも地方にそれぞれの地名が付いた在来馬がいましたが、現在は天然記念物となっている宮崎県都井岬の三岬馬をはじめ、与那国馬、宮古馬、トカラ馬、対州(たいしゅう)馬、野間馬、木曽馬の8品種に留まっています。この他、世界の品種では最大種はシャイアーで体重が1,500kg以上あった個体がいますし、最少の品種はアメリカンミニチェアホースで体重は15kg位なので、4肢の長い柴犬程度しかなく大小様々です。サラブレッドの体重が450~650kgなので比較するとその大きさがお判りになるでしょう。 また、ロバのオスとウマのメスを交配して生まれるのがラバで、体が丈夫で粗食にも耐えるので人間の役に立っていますが、この逆にウマのオスとロバのメスを交配して生まれるのがケッテイと呼ばれるもので、体もラバほど大きくなく、体も丈夫でないので実用化されていません。

ウマにまつわる話を簡単に紹介してきましたが、今年は目標に向かってまっしぐらに元気に進みましょう!

主な参考文献
秋篠宮文仁・小宮輝之 (監修・著)    日本の家畜・家禽 学研 2009.
林壽朗   標準動物図鑑全集 動物Ⅰ 保育社 1968.
今泉吉典 (監修)   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典・中里   奇蹄目総論 In世界の動物 分類と飼育 4奇蹄目
今泉 吉典(監修)(財)東京動物園協会 1984. 
加世田雄時朗   「野生」馬の現在 どうぶつと動物園 Vol.42 No.1
(財)東京動物園協会 1990.
近藤誠司   ウマー食べて走って どうぶつと動物園 Vol.54 No.1
(財)東京動物園協会 2002.
松尾信一   馬の文化史 どうぶつと動物園 Vol.30 No.1
(財)東京動物園協会 1978.
成島悦雄   鼻のはなし どうぶつと動物園 Vol.25 No.10
(財)東京動物園協会 1973.
成島悦雄   ひづめのはなし どうぶつと動物園 Vol.54 No.1
(財)東京動物園協会 2002.
大高成元 (写真)・川口幸男・中里竜二   十二支のひみつ 小学館 2006.
實方剛   獣医師の診たモンゴル国 どうぶつと動物園 Vol.65 No.4
(財)東京動物園協会 2013.
坂田隆   砂漠のラクダはなぜ太陽に向くか? 講談社 1991.
祖谷勝紀   ①ウマ科のウマ属について ②ロバ、ノウマについて ③モウコノウマ飼育の歴史
In世界の動物 分類と飼育4奇蹄目:
今泉 吉典(監修)(財)東京動物園協会 1984.
正田陽一   ウマ科の家畜についてIn世界の動物 分類と飼育4奇蹄目:
今泉 吉典(監修)(財)東京動物園協会 1984.
正田陽一 (監修)   世界家畜図鑑 講談社 1987.
正田陽一 (監修)   馬の百科 小学館 1982.
正田陽一 (監修)   人間がつくった動物たち 東書選書 1987.

次号は『おもしろ動物大百科 No98. ジャガー 』にもどります。

おもしろ哺乳動物大百科97(食肉目 ネコ科) 2013.12.3

97)ライオン
砂漠と赤道周辺の熱帯多雨林を除いたアフリカのサハラ砂漠以南およびインド北西部に生息しています。茂みのあるサバンナ、開けた森林、やぶ、ときには半砂漠、そしてケニアのエルゴン山では標高3,600m、エチオピアのベール山で標高3,240m、さらに標高5,000mの高地でも見られ、またインドでは森林が生息地として知られています。 ふつうヒョウ属の仲間は繁殖期と子育て以外は単独生活をしていますが、アフリカに生息するライオンは群れで生活し、この群れをプライドと呼んでいます。プライドの通常の構成メンバーは1~3頭の成獣オスと、1~4頭のメス及びその子どもたち1~3頭で、合わせて4~12頭です。
タンザニアのセレンゲテイ国立公園のプライドは4~37頭で、平均15頭でしたが、しばしば5頭ぐらいずつに分散していました。プライドの構成員の間に順位はなくリーダーもいません。基本的に母系集団で母から娘に行動圏と共に代々引き継がれており、そこに成獣オスが入れ替わり入ってくるため成獣オスとメスの間に血縁関係はありません。プライド内が過剰になると余分なメスの子どもは追い出されてしまい、新たなプライドを作るか生涯放浪メスで終わることになります。 一方、インドのギル森林ではプライドを作らないで雌雄は発情期にのみ一緒に行動しています。 また、カラハリ砂漠では獲物が減少した乾季にプライド間でメスの出入りが見られたとの報告もあり、ライオンはすべてプライドを作るのではなく、生息環境に応じて変化しています。 アフリカライオンのオスは2~3才で群れから追い出されて、性成熟すると近くのプライドにやってきて乗っ取る機会を狙っています。プライドの乗っ取りに成功したオスは、そこにいる子どもを殺してしまいますが、これは自分の遺伝子を効率よく残すための有効な手段と考えられています。狩りは多くの場合メスが中心となって行いますが、オスもまた大型の獲物を倒すときは手伝い、最初に満足するまで食べて、その後メスと子どもが食べます。オスの仕事はおもに行動圏とメスを他のオスから守ることで、数年から10年で別のオスと入れ替わります。
活動時間はアフリカの場合、基本的に夜行性で主に薄暮の時間帯に活動し、1日のうち20~21時間は休憩しています。プライドのメンバーが狩りに出かけるときは、1頭の年長のメスがプライドに留まり外敵となるハイエナなどから子どもを守ります。 乾燥地域にも適応して生活しているのですが水は良く飲み、湿った砂地に寝転がるのを好み、また泳ぎも巧みです。若い個体は木に登り、アフリカ中部にあるタンガニーカのマニヤラ湖畔の個体群は木登りライオンとして有名です。 行動圏は20~500km2と生息域により幅があり、セレンゲテイ国立公園では約80%が1年中行動圏にとどまりますが、約20%は有蹄獣と一緒に移動します。ナイロビ国立公園での調査によれば、一晩に0.5~11.2km移動したと報告されています。 一方、インドのギル森林にすむライオンは日中も活動しています。歩行速度は時速約4kmで、獲物を襲う時には時速50~60kmで追いかけ、ひと跳びで12m、高さ3.6m飛びあがった記録があります。コミュニケーションとしては少なくとも9種類の声を出すとことが知られ、とりわけ咆哮(ほうこう)は食肉目中最大の大声で9km先に届くことが知られ、オスでは1歳頃から吠え始めます。他にも尿をスプレイして匂いをつける、足で地面をひっかく、足を引きずるようにして歩く、尿をなめるなどがあります。

  野生のライオンは群れを守るために闘うので、体が引き締まっていますね。
野生のライオンは群れを守るために闘うので、体が引き締まっていますね。
写真家 大高成元 氏撮影
   

からだの特徴
体は全体的にがっしりとして、頭部は大きく咬合力が強いことを示しています。百獣の王と称される由縁はオスにのみ生える立派なたてがみです。たてがみはオス同士の戦いの際急所の頸部を守ることや、黒くて立派なたてがみを持つ個体がメスに好まれると言われていましたが、北米の動物園の調査結果によれば、寒い地方の動物園で飼育されているライオンほど黒く立派なたてがみを持っていたとの調査結果もあります。
また、たてがみは湿地帯ほど黒いことも知られており、防寒にも役立っているようです。1~2歳から生えはじめ立派になるまでには5~6年かかります。体の大きさは生息地により大きな違いがみられ、アフリカに生息する亜種の方がアジアのインド産より大型になると共に、オスはメスより20~27%大きくなります。アフリカライオンの体長(頭胴長)は、オス170~250cm、メス140~175cm、尾長は、オス90~105cm、メス70~100cm、体重はオス150~250kg、メス120~182kgです。一方、インドライオンの体重はオスが160~190kg、メスが110~120kgです。
大きな記録としてはアフリカライオンの体長で330cm、また、体重では272kgの報告があります。4肢は力強く、指向性で前肢に5本、後肢に4本の指があり、それぞれ引っ込めることのできる鉤爪があります。尾は長く先端に黒い房毛があります。耳先は丸く短く、裏側に黒い部位があります。瞳孔は丸く、乳頭は2対、稀に3対あります。体毛は下毛が0.6~0.8cm、上毛は1.0~1.4cmで、体色は生息地で違いがありますが、黄褐色から赤褐色で腹部と4肢の内側は白色です。歯式は門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3/2、臼歯1/1、合計30本で、犬歯の長さは4.3~5.2cmあります。分泌腺は肛門の両側に肛門腺があり、他にも指間、顎、頬、唇等にもあります。

えさ
アフリカライオンはメスが共同して獲物を倒しますが、インド北西部の森林にすむインドライオンは交尾期以外日中も行動し、単独で小型のアクシスジカを捕捉し主食としています。アフリカライオンも又、見通しが悪い森林や深い藪のある場所や曇りや雨で視界の悪いときは日中も狩りを行います。 彼らは自分の体重の2倍、時には4倍もあるヌー、シマウマ、アフリカスイギュウ、キリンも倒します。ふつうは成獣で1日に5~7kg食べれば十分ですが、1頭で体重約120kgの獲物を1年間に20頭、一度に22~27kg食べた、との報告があります。
狩りの成功率は低く61回獲物を狙い、仕留めることに成功したのは10回だけという報告や、単独で狩りをおこなった時の成功率は17~19%、複数の場合は約30%との報告もあります。獲物を襲う距離は50~100mが普通で、稀に500mと言う記録があります。
獲物は生息地ごとに若干の違いがありますが、主食は有蹄獣です。アフリカでは主な種類として、ハーテビースト、ヌー、シマウマ、キリン、アフリカスイギュウ、若いアフリカゾウ、カバ、ウオーターバック、セーブルアンテロープ、クズ―、インパラ、イボイノシシの他にウサギ類、げっ歯類、鳥類、爬虫類、昆虫(バッタ)、死肉、水分補給のために草類やウォーターメロンも食べる場合があります。インドではアクシスジカが主食ですが、そのほかにサンバー、また家畜のウシの占める割合も高くなっています。

繁殖
決まった繁殖期はなく、発情は平均すると16日間周期で4~7日間続きます。プライドのメスたちはほぼ同時に発情するので同時期に出産し、自分の子ども以外にも授乳することが知られています。ネコと同様に交尾排卵し、交尾は1日におよそ100回、妊娠までには約1,500回もの交尾をすると推測されています。
妊娠期間は105~110日で、1産で1~4子を、約2年に1回出産します。出産は外敵から子どもを守るためプライドから離れた巣穴や藪などで行い、その後も何回か巣穴を変えます。出産時の新生児の体重は1,300~1,700g 、体長は約20cm、尾長約10cm、目は稀に開いている場合もありますが多くは閉じて出産し、生後3~11日齢で完全に開きます。子どもの体には暗褐色の斑点がありますが、生後10ヶ月齢頃にはほとんど消えてしまいます。生後2週齢頃になるとヨチヨチと歩きはじめ、生後25~30日齢で走ることができ、生後4~5週齢で動くものを追い始めます。親子が自分のプライドに合流するのは生後6~8週齢です。生後8週齢頃から固形物を食べ始めますが、授乳期間は生後7~9ヶ月齢になります。乳歯は生後21~30日齢で萌芽しはじめ、生後9~12ヶ月齢で永久歯に代わります。生後11ヶ月齢で狩りに参加しますが生後16ヶ月齢まで親の獲物に依存し、オスは2歳~4歳で独立します。性成熟の年齢はオスでは3~4歳ですが、メスではやや早く3歳ぐらいです。
飼育下での長寿記録は、アメリカのアイオワ州にあるノックスビル動物園で1973年4月11日に生まれ、2000年2月10日にインディアナ州のナッシュビル動物園で死亡した個体(メス)の26歳10ヶ月という記録があります。

外敵
成獣は人間以外に外敵はいませんが、子ども、老齢、病気の個体はブチハイエナ、ヒョウ、リカオンなどに殺されることがあります。

亜種
亜種について今泉吉典博士は生息地によって7亜種に分類していますが、すでにバーバリーライオンとケープライオンの2亜種が絶滅しています。現在はアンゴラ、トランスバール、マサイ、セネガル、インド地方に生息する個体群の5亜種が生存しています。
亜種の分類についてはアフリカとインドの2亜種に分類する学者もいます。

分類   食肉目 ネコ科
分布   アフリカのサハラ砂漠以南及びインド北西部(ギル森林)。赤道沿いの熱帯多雨林及び砂漠を除いて広く生息しています。
大きさ  
アフリカライオン
体長(頭胴長)
体重
尾長
オス 170~250cm メス 145~175cm
オス 150~250kg メス 120~182kg
オス 90~105cm メス 70~100cm 
インドライオン
体重 オス 160~190kg メス 110~120kg
絶滅危機の程度   1800年代にはアフリカの大部分からパキスタン、インド全域にかけて生息していましたが、現在はアフリカではサハラ以南の東部、および南部を中心に生息し、2002-2004年の調査では生息数は16,500~47,000頭と報告されています。一方、インドでは2005年の調査で、北西部のギル森林(1,412km2)の保護区に350~370頭が生息しています。IUCN(国際自然保護連合)発行の2013年版のレッドリストでは、インドライオンは絶滅の恐れが非常に高い絶滅危惧種(EN)に、アフリカライオンは絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定されています。ワシントン条約ではインドライオンが付属書Ⅰ表に、他の亜種はすべてⅡ表に該当し商取引が制限されています。生息数は各地で減少を続けているため、多くの地域で狩猟の禁止や保護区を設定する一方で、一部の国では外貨獲得の手段のひとつとして、スポーツハンティングングが許可されています。

主な参考文献
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.
Haas, S.K., Hayssen,V. & Krausman, P.R.   Mammalian Species . No.762, Panthera leo. The American Society of Mammalogists. 2005.
林壽朗   標準動物図鑑全集 動物Ⅰ 保育社1968
今泉忠明   野生ネコの百科  データハウス 1993 
成島悦雄   ネコ科の分類 In世界の動物 分類と飼育 □2食肉目 (財)東京動物園協会
Nowell, K. & Jackson, P.(ed)   Wild Cats―Status Survey and Conservation Action Plan― IUCN 1996
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol. The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World. Vol.1 Carnivores. Lynx Edicions 2009.
山崎晃司   ライオンの生態 どうぶつと動物園 Vol.50 No.9,
(財)東京動物園協会 1998.

おもしろ哺乳動物大百科96(食肉目 ネコ科) 2013.11.14

96)オオヤマネコ(ヨーロッパオオヤマネコ)
ユーラシア北部に分布し、主にヨーロッパとシベリアでは有蹄獣の生息する森林、中央アジアでは開けたまばらな森のある地域、ヒマラヤ山脈の北斜面では樹木限界線より上の荒れ地や岩地、半砂漠から密生した藪、チベット高原や北極圏では針葉樹と落葉樹の混成林などさまざまな環境下で生活しています。ネパールのダウラギリ山では標高4,500m地点で見られていますが、冬季には標高が低い場所に移動します。木登りや水泳も上手で狩りや身を隠す時に役立っています。夜行性で真夜中と日中は休憩し、活動時間のピークは薄暮の時間帯で日中の活動時間は25%以下です。ポーランドのビャウォヴィエジャ原生林における調査によれば、15時から翌朝の7時までの間に平均6.5時間活動し、活動時間はオスで夜間が73%、メスでは昼と夜が半々でしたが、子連れの母子は通常より2倍の活動しました。また、強い雨や気温が30度以上の暑いときは動きが少なくなっていました。1日の移動距離は数100m~40kmと開きがあり、平均でおよそ10kmです。基本的に単独生活ですが、母子と交尾期には雌雄が一緒に生活します。雌雄ともになわばりをもちオスのなわばりの中には1~3頭のメスがいます。行動圏の広さはいろいろで、ヨーロッパの中央及び西部では、オスが100~450km2、メスが45~250km2でした。行動圏の大きさは餌がどの程度確保できるかと密接に関連して、スカンジナビア半島ではオスは400~2,200km2、メスが200~1,850km2と広域を示しています。本種はネコの仲間で最も広い行動域を持つ1種ですが、そのうち75%余りをロシアが占め、北極圏の北緯72度まで生息しています。なわばりの主張は主に境界線上での排便と排尿のスプレイおよび頬腺からの分泌物をこすり付けて行います。発情期の恋泣き以外の声は小さくコミュニケーションには使わないようです。

  飼育していると少々肥満気味になりますね。短い尾も特徴の一つです。
飼育していると少々肥満気味になりますね。短い尾も特徴の一つです。
写真家 大高成元 氏撮影
   

からだの特徴
全体的にがっしりとした体格で、短く密生した毛はふかふかで寒冷地に適応しています。他のネコの仲間にくらべ体色は多様ですが北方産の個体は斑点が薄くなります。体の模様も一様でなく、縞模様や斑点の有無、濃淡などがさまざまです。顔は丸く、耳は三角形で背面に白い虎耳状班はなく、先端の長さ6cmほどになる黒い房毛は音を聞くために重要な役割を担い、イヌよりも聴力が優れています。尾は短く、先端が黒くなっています。頬の長い毛はイエネコと同様に触覚の役割を果たしています。前肢より後肢の方が長く、指向性で前足に5本、後肢に4本の指があり、それぞれ引っ込めることのできる鈎爪があります。足底は他のネコの仲間に比べ大きくて、冬季には厚い毛に被われて広くなり、かんじきと同じように雪に埋もれることなく深い雪の中を歩くことができます。目は正面に位置し立体視できることから獲物までの距離を測ることができ、視力も優れています。虹彩は黄土色か黄緑色で、瞳孔は円形に収縮します。体長は80~130cm、尾長11~25cm、体重18~38kgで、オスはメスより約25%重くなります。歯式は門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯2/2、臼歯1/1で合計28本です。乳頭数は2対です。

えさ
主食は生息地にすむ小型有蹄獣の仲間のノロジカ、ジャコウジカ、シャモワ、中国ではバーラル(ヤギの仲間)などで、これらの獲物が獲れない時に、ナキウサギやノウサギ、大型のげっ歯類、ライチョウを餌にしています。スカンジナビア半島では秋から冬にかけて小型のノウサギなどから大型の有蹄獣に代わり、北部では半家畜化したトナカイを獲ります。この他、家畜のヒツジ、ヤギ、飼育しているダマジカも襲います。自分の体重の3~4倍ある獲物を殺す能力があり、稀にアカシカ、イノシシ、アイベックスも捕えます。年間50~70頭の有蹄獣を捕え、1日あたり1~2.5kgを食べると報告されています。

繁殖
ロシアでの交尾期は1月から3月、出産期が4月から6月、また他の地域では3月から4月中旬が交尾期で、出産期が5月から6月初旬の報告もあります。いずれも出産期は5月が中心となっており餌となる動物たちの出産期と重なっています。妊娠期間は68~72日。1産で1~4子と幅がありますが通常2頭を出産します。生まれたばかりの赤ちゃんの体重は約250gで、目は閉じて生まれ生後9~14日齢で開眼します。羽村市動物園で1979年6月12日に生まれた2頭の出産記録では、赤ちゃんの毛色は黒味がかり、生後11日齢で母親と同じように褐色に変化し、生後約61日齢の体重が1,570g、1,610gでした。生後50日齢ころ母親は固形物を持ち帰り離乳期に入り、およそ3ヶ月齢で離乳します。そしてこの頃になると子どもは母親の狩りに同行し、母親が次の交尾期に入る頃に独り立ちします。メスの性成熟は生後約22ヶ月齢でこの頃初めての繁殖期に入ります。オスの性成熟はおよそ生後約30ヶ月齢ですが、ノルウェーで生後31ヶ月齢や生後21ヶ月齢の報告例があります。高齢の繁殖年齢はメスが14歳、オスでは16~17歳の報告があります。
長寿記録としては、ポーランドのワルシャワ動物園で1980年5月17日に生まれた個体(オス)が、ポーランドのクラクフ動物園において、2004年1月20日現在23歳8ヶ月でなお飼育中の記録があります。

分類について
オオヤマネコは、(1)オオヤマネコ(ヨーロッパオオヤマネコ) (2)スペインオオヤマネコ (3)カナダオオヤマネコの3種に分類する場合と、(1)(3)を統合し2種としスペインオオヤマネコをその一亜種とする場合があります。本稿では3種に分類する説に従いました。

スペインオオヤマネコ
スペインオオヤマネコは、スペイン、ポルトガルの主に山岳地の針葉樹林に生息し、ヨーロッパオオヤマネコより一回り小型で、体格は、体長85~110cm、尾長12~13cm、体重12~20kgです。生態、体の特徴、繁殖はいずれもヨーロッパオオヤマネコと類似しています。

分類   食肉目 ネコ科
分布   西ヨーロッパからシベリア、インド北部、中国、朝鮮半島
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
80~130cm
18~38kg (オスの平均21.6kg、 メスの平均18.1kg)
11~25cm
絶滅危機の程度   生息地の分断と消失、現在も続く密猟により生息数が減少している地域がありますが、分布も広く生息数は比較的安定していると考えられています。そのために今すぐに絶滅する恐れは少ないと判断され、IUCN(国際自然保護連合)発行の2013年版のレッドリストでは、LC(低懸念種)にランクされています。2003年の調査によると野生の生息個体数はロシアで30,000~35,000頭、ロシア以外のヨーロッパで約8,000頭と推測されています。そのほかに中国とモンゴルでは不確かな情報ですが、あわせて約10,000頭が生息していると考えられています。

主な参考文献
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.
羽村信義   シベリアオオヤマネコの繁殖 どうぶつと動物園 4月号 (財)東京動物園協会 1980.
林壽朗   標準動物図鑑全集 動物Ⅰ 保育社1968
今泉忠明   野生ネコの百科  データハウス 1993 
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
Nowell, K. & Jackson, P.(ed)   Wild Cats―Status Survey and Conservation Action Plan― IUCN 1996
成島悦雄   ネコ科の分類 In世界の動物 分類と飼育 □2 食肉目:今泉吉典 監修、 (財)東京動物園協会 1991
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol. The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World. Vol.1 Carnivores. Lynx Edicions 2009.

おもしろ哺乳動物大百科95(食肉目 ネコ科) 2013.9.25

95)サーバル
通常はサハラ砂漠以南のアフリカで中央アフリカの熱帯雨林を除いた地域に広く分布し、エチオピアのバレマウンテン国立公園では標高3,200m、ケニアのキリマンジャロ山では3,800mの高地で生息が確認されています。なお、北アフリカのモロッコ、アルジェリア、チュニジアの北部に少数が生息しているという報告がありますが、このうちアルジェリアではすでに絶滅したと考えられ、またチュニジアの個体群は東アフリカから再導入されたものといわれています。ほとんどの環境に適応し生活していますが、丈の高い草地や開けたサバンナ、小さな森林、沼沢地や川沿いの葦の茂みなど湿地を好みます。これらの地域は水場が1ヵ所以上あり、いずれも主食となる齧歯類が多く生息する場所です。交尾期と子育て以外は単独で生活し、ネコの仲間としては日中の活動も多く報告がありますが、本来夜行性でセレンゲティの調査報告例では活動のピーク時間が22時~23時と4時~5時、また他の地域では主に薄暮の頃と生息環境により差があります。日中の休息場所や出産時には巣穴として、葦が小山のように堆積した中やイボイノシシやツチブタ、ヤマアラシが捨てた穴を利用します。行動圏は南アフリカの調査例で2.1~2.7km2、中央アフリカ東部のタンザニアでは、オスが11.6km2でその中に少なくとも2頭のメスがいて、メスは9.5km2で、1晩の移動距離は2~4kmでした。聴覚や嗅覚が優れ、およそ15分毎に立ち止り地下に潜む動物の動きを探っていた報告があります。コミュニケーションは、発情期には尿を草にスプレーしたり頬腺をこすり付け、さらに地面をひっかいたりして頻繁に匂いつけを行います。高い声や、唸る声、喉を鳴すのも聞かれることから声による交信もしていると推測されています。サーバルとはポルトガル語で猟犬を意味しています。

  野生のサーバル見たら興奮するだろうなー。きっと。
野生のサーバル見たら興奮するだろうなー。きっと。
写真家 大高成元 氏撮影
   

からだの特徴
頭部は小さくて頸部が長く、ネコ科のなかでは大きい耳は左右の基部が接近していて、大きく三角形で、先端が丸みを帯びて背面が白く虎耳状斑となっています。尾は短くて黒い輪状斑があり先端は黒色です。前肢には5本、後肢には4本の指があり、指向性で引っ込めることのできる鈎爪をもっています。ひと跳びで4mも跳ぶことができる4肢は発達して長く、足裏には肉球があり、獲物に音を立てないで近づくことができます。毛は柔らかく、体の上部は明るい黄茶色で腹部は白く、体全体に大小の斑点、頸部から肩にかけて黒い縞、肘と飛節には横縞がありますが、形状と濃淡は生息地による変異があります。虹彩は淡黄色、瞳孔は縦長の楕円形に収縮します。体長は60~100cm、尾長24~45cm、体重8.6~18kgで、メスよりオスの方が大型です。歯式は門歯3/3、犬歯1/1、小臼歯3/2、臼歯1/1で合計30本です。乳頭数は3対です。

えさ
獲物のおよそ90%は体重200g以下のネズミの仲間で、1年間におよそ4000頭を獲ると推定されています。地下に潜むネズミを察知すると前足で穴を掘り、長い親指と鋭く曲った爪で引っかけて捕えるほか、ジャッカルやキツネのように跳び上がって上から両前肢で押さえ込むようして捕えます。餌の種類としてはヨシネズミ、アレチネズミ、デバネズミ、ヌマネズミ、ジリスなどのげっ歯類、キンモグラ類、トガリネズミ、アカクビノウサギなどが挙げられます。足が速く木登りも得意なことから、樹上のトカゲも捕食します。稀にダイカー(小型のウシ科の動物で、成獣の体重が15kg前後のものが多い)や同じくらいの小型のアンテロープの幼獣を捕えます。泳ぎも上手なので水中に入り水鳥のカモ、ヘラサギ、フラミンゴやカエル、カニも捕食します。さらに地上性のホロホロチョウが飛び立つのを狙い1~3mジャンプして空中で捕らえるところが観察されています。そして、他にも昆虫、ヘビ、腐肉から果実も餌となります。

繁殖
繁殖期は決まっていませんが、アフリカ南部のジンバブエでは9月~4月にかけて、東アフリカでは3月~4月と9月~10月の2回ピークがあります。発情は1~4日間続き、コンソート関係(配偶関係)の間は一緒に休憩し獲物を獲ります。妊娠期間は67~77日、岩の割れ目や草叢の中に作った巣、ツチブタやヤマアラシが捨てた巣穴を使い2~3頭の子を出産します。新生児の体重は230~260g、生後9日齢で目が開きます。生後約1ヶ月齢で母親は獲物を持ち帰るのでこの頃固形物も食べ始めるのでしょう。犬歯は生後6ヶ月齢ごろ永久歯に代わり、この頃に離乳して自分で狩りを始めるようになります。オスは自分で完全に狩りができるようになるとすぐに母親から追われますが、メスの方はもう少し長く母親と一緒にいます。性成熟は1歳半~2歳です。
長寿記録としては、ドイツのクレフェルト動物園で1982年6月27日に生まれ、2004年12月24日にオランダのロッテルダム動物園で死亡した個体(メス)の22歳5ヶ月があります。
人間の他には、野生の天敵としてブチハイエナ、リカオン、ヒョウなどがいます。

亜種
分布が広いために、地域によって体の大きさや斑紋などに大きな差があるので6または7亜種に分類する学者もいます。

分類   食肉目 ネコ科
分布   アフリカ モロッコ北部とサハラ砂漠以南
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
60~100cm
オス 9~18kg  メス 8.6~13kg
24~45cm
絶滅危機の程度   モロッコに分布する亜種は生息域が狭く、孤立し、個体数も少ないので絶滅の恐れがありますが、サハラ砂漠以南では分布域が広く、個体数も安定していることから、現在のところは絶滅の恐れは少ないと判断され、種としてはIUCN(国際自然保護連合)発行の2012年版のレッドリストで低懸念種(LC)にランクされています。しかし、主要な生息地の湿地帯の草地が焼畑農業で消失しつつあり、餌となるネズミの仲間が減少したことで生息数が減少している地域もあるので注意が必要です。その他、毛皮が美しいためセネガル、ガンビア、ベニンでは毛皮目的、ナイジェリアでは薬用目的のために捕獲されています。ごくまれにヤギ、ヒツジの幼獣をまたニワトリは捕食するので農村地帯では狩猟対象となっています。

主な参考文献
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.
林壽朗   標準動物図鑑全集 動物Ⅰ 保育社 1968.
今泉忠明   野生ネコの百科  データハウス 1993.
今泉吉典 監修   世界哺乳類和名辞典 平凡社1988
Nowell, K. & Jackson, P.(ed)   Wild Cats―Status Survey and Conservation Action Plan― IUCN 1996.
成島悦雄   ネコ科の分類 In世界の動物 分類と飼育 2 食肉目 (財)東京動物園協会 1991.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World. Vol.1 Carnivores. Lynx Edicions 2009.
Skinner, J. D. & Smith, R. H.N.   The Mammals of The Southern African Subregion,
University of Pretoria. 1990.

おもしろ哺乳動物大百科94(食肉目 ネコ科) 2013.8.26

94)オセロット
米国のテキサス州南部から中央アメリカのメキシコ、パナマをへて南アメリカのコロンビア、ペルー、エクアドル、ブラジル中部、西部、アルゼンチン北部に分布しています。標高1,200m以下の湿潤な熱帯雨林、密生した森林、藪が点在する乾いた荒野や川の土手沿いの沼地、河口のマングローブ林、山地の落葉樹や常緑樹の森林の中で様々な環境に適応して生活しています。休息するときは樹の洞や岩の割れ目、蔓の絡まった藪などを利用し、お互いに600~1,200m離れていますが、同性の個体同士が同じ場所で休憩するのも観察されています。狩りは主に地上で行われ、木登りと泳ぎが巧みなためこれらの場所でも行われます。夜行性で日没前から活動がはじまり、その後夜間の12~14時間が費やされ、曇天や雨天には日中も活動します。育児中は活動時間が長くなり1日に17時間に増加した報告があります。生息環境や雨季と乾季で活動時間帯に違い、雨期の方が日中の活動時間が長くなっていました。テキサスでは日中21%、夜間76%でしたが、中米のパナマ共和国、バロ・コロラド島では昼夜の区別なく活動していました。行動圏は生息地の環境により異なり、メスが0.8~15.6km2、オスは3.5~17.7km2と推測されています。ペルーにおける調査ではメスの行動圏は約2km2でしたが、オスはメスの数倍の広い行動圏を持っていました。成獣のオスのなわばりは通常数頭のメスのなわばりと重複しています。狩りをする場合は時速0.3kmとゆっくり移動しますが、オスがなわばりの境界を見回る場合、時速0.8~1.4 kmと速度が上がります。ベネズエラでラジオテレメトリ―を付けた調査では、乾期の成獣オスは1晩に7.6 km移動しましたが、メスは3.8 kmでした。通常、交尾期以外は単独で行動していますが、ベネズエラにおいて交尾シーズンに7時間をオスとメスが共に過ごした、また、ペルーでは37回のうち19回は成獣とその子どもと思われる個体との間の交流であったとの報告もあります。昼間に活動する場合は獲物も昼行性の鳥やイグアナ、小型の霊長類が多くなります。獲物は鋭い聴覚や嗅覚、昼夜ともに良く見える目で獲物を探し捕えます。コミュニケーションは主にネコ科特有の頬部にある分泌腺を木や岩にこすりつけ、あるいは肛門嚢(のう)もあることから便や尿に匂いが付着した状態で排泄されます。これらの匂いを互いに嗅ぎ合うことでなわばりを察知しています。

  オセロットのこの姿、たまらなく好き、とファンが多いのもうなずけます。
オセロットのこの姿、たまらなく好き、とファンが多いのもうなずけます。
写真家 大高成元 氏撮影
   

からだの特徴
被毛の地色は生息地によって違い、中央アメリカと南アメリカの森林地帯に分布する個体は黄褐色が多く、乾燥した低木地帯の個体は灰色がかっています。体の長軸と並行に黒い斑点と縞模様が走り、腹部は白く黒点があり、尾には不完全な輪状の縞と斑紋があります。耳の裏側は白く(虎耳状斑)、音を聞く時に耳だけ動かし聞き耳を立てることができます。虹彩は褐色で瞳は縦の楕円形に収縮します。体の模様はアメリカに生息する小型のネコ科の中で最も美しいとされ、被毛は短く上毛が約10mm、下毛は約8mmです。頸部の皮膚は厚くなっており、噛まれたときの保護に役立つと考えられます。指は前肢に5本、後肢には4本で、それぞれにかぎ爪があり第2、3、4指の爪は引っ込めることができます。前肢は後肢より長くて力強く、掌は大きくて木登りに適しています。頭胴長は70~100cm、尾長28~45 cm、体重7~15.5kgです。乳歯は門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯0/0、臼歯3/2の合計26本で、生後7~8ヶ月齢で永久歯にかわります。永久歯は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯2-3/2、臼歯1/1で合計28~30本です。乳頭は4個あります。

えさ
主食はオセロットの体重の1~3%以下の小型哺乳類で、おもにトウネズミ、アナホリトゲネズミ、コメネズミなど夜行性のネズミのなかまです。大きな獲物としてはパカ、アグーチ、オジロジカやペッカリーの子ども、ウサギ、イグアナの子どもやヘビ、陸生のカメなどの爬虫類、さらに泳ぎも上手なことから産卵期の魚類、カニ、両生類のカエルから昆虫まで幅広い種類を餌とします。餌の割合は小型の齧歯類が65%, 爬虫類が18%, 甲殻類7%, 中型の哺乳類6%, 鳥類4%の報告があります。彼らは獲物を捉えるために1ヵ所で30~60分間も待つことがあります。小さな獲物は頭から食べますが、大きな獲物は頸部を咬み、殺してから腹部や肢、臀部から食べはじめ、食べきれなかった餌は隠しておき翌晩また食べに来ます。

繁殖
メキシコのユカタンでは10月交尾し1月に出産しますが、テキサスでは9月から10月に出産し、熱帯地域では決まった繁殖期はみられません。発情周期は平均25日、発情は平均4.6日間続きます。妊娠期間は79~85日、1産1~3頭で通常2頭を出産します。出産場所は深い茂みの中や木の洞、岩の隙間などで数週間はその中に留まっています。テキサスにおける生まれたばかりの子どもの全長は23~24.8 cm、尾長5.5 cm、体重200~276gでしたが、他にも体重については200~340gの報告があります。新生児にはすでに斑紋がありますが、体色は成獣とは異なり全体に灰色で肢の下部がほとんど黒色です。数ヶ月後に初めは頸部から徐々に成獣の体色に変ります。新生児の目は青色ですが、約3ヶ月齢で褐色に変ります。目は閉じて生まれ、生後約14日齢で開きます。約3週齢で歩行ができるようになり、4~6週齢で巣穴から出て母親の狩りに同行します。生後約8週齢で固形食の肉を食べ始めますが、授乳は3~9ヶ月間続きます。育児はすべて母親が単独でおこないます。メスは生後18~22ヶ月齢、オスは生後30ヶ月齢頃に性成熟に達します。子どもは2~3歳で生まれた場所を去ります。
国内の繁殖記録によれば、1977年8月に生まれた子どもは、生後7日齢で腹ばいになり自力で這い、生後13日齢で目が開き、親の肢や尾でじゃれて遊ぶのが生後31日齢。馬肉や新鮮な内臓などの固形食を食べ始めたのが生後51日齢。生後61日齢の体重は、オス1.95kg、メス1.91 kg、86日齢でオス2.85 kg、メス2.95 kg。184日齢でオス7.9 kg、メス7.0 kgと報告されています。
長寿記録としては北米のアリゾナ・ソノラ砂漠博物館で1975年8月に生まれ、2003年10月にフェニックス動物園で死亡した個体(メス)の28歳2ヶ月があります。

分類   食肉目 ネコ科
分布   北アメリカ南部、中央アメリカ、南アメリカ
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
70~100 cm
オス 7~15.5 kg メス 6.6~11.3 kg
28~45 cm
絶滅危機の程度   分布域の消失と分断が大きな減少要因ですが、オセロットの場合、とくに毛皮の模様が美しいことや人に順化しやすいことから毛皮やペットに利用するために乱獲されてきました。本種は分布域が広く、パラグアイやボリビアにまだ一定の生息数がいることなどから、一部の亜種を除き種として現在は絶滅の危機は少ないと判断され、国際自然保護連合(IUCN)発行の2012年版のレッドリストでは、軽懸念種(LC)に指定されています。またワシントン条約では付属書の第Ⅰ表に該当し国際商取引の禁止対象種となっています。
現在、生息地による違いから10亜種に分類していますが、この中でテキサス南部からメキシコ北東部に生息する亜種は、テキサスでの野生の個体数が100頭以下と推定され、近い将来における野生での絶滅の危険性が高いとされ、米国魚類・野生生物局は絶滅危惧種に指定し保護しています。

主な参考文献
Murray, J.L. & Gardner, G.L.   Mammalian Species . No.548, Leopardus Pardalis.
The American Society of Mammalogists 1977.
林壽朗   標準動物図鑑全集 動物Ⅰ 保育社 1968.
今泉忠明   野生ネコの百科  データハウス 1993.
Nowell, K. & Jackson, P.(ed)   Wild Cats―Status Survey and Conservation Action Plan― IUCN 1996.
ジョン・ボネット・ウェクソ編
増井光子訳・監修
  ライオン/ネコ 誠文堂新光社 1985.
小林和夫   オセロットの繁殖 どうぶつと動物園 Vol. 30 No.8 (財)東京動物園協会 1978.
成島悦雄   ネコ科の分類 In世界の動物 分類と飼育 □2 食肉目 (財)東京動物園協会 1991.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World. Vol.1 Carnivores. Lynx Edicions 2009.

おもしろ哺乳動物大百科93(食肉目 ネコ科) 2013.1.15

93)ピューマ(アメリカライオン)
北はカナダのブリティッシュコロンビア州から南は南米のパタゴニアまで生息しています。高山、低地熱帯林、沼沢地、半乾燥地域、カルフォニア州では海岸から標高3,350mまで、エクアドルでは標高4,500m、アンデスでは標高5,800m。基本的に夜行性で、チリにおけるラジオテレメトリ―の調査によれば、活動時間のピークは夕暮れから日没後で、ときどき日中にもみられました。また、フロリダではピークは1時から7時まで、及び18時から22時までで、ある母子は22時に巣穴を出て翌朝8時に戻りました。単独オスも活動時間帯は似ていますがピークに違いがありました。子づれの母親を除いては、繁殖期以外は基本的に単独生活をしています。子どもがいる親子は木の茂みや岩の割れ目、洞穴などを隠れ場所にします。動きは機敏で地上から5.5mの木にジャンプし、またひと跳びで12~15m跳んだ記録があります。泳ぎが上手なことが知られていますが、めったに水に入らないようです。24時間で20km以上移動し、オスはメスの2倍以上活動します。行動圏は32~1,031km2と大幅な範囲が報告されていますが、通常オスは数100km2以上、メスは100km2以下です。行動圏には季節変化がみられ、1頭のオスは冬から春に145km2、夏から秋には293km2に増加し、再び春から冬に96km2になりました。オス同士の行動圏は重複しますが、メスとは一部重なります。しかし、カルフォニア州中部のディアブロ山ではオスの行動圏がメスと重複しない、との報告もあるので、ケースバイケースということでしょう。狩りは優れた視覚と嗅覚を頼りに足跡をたどり、排泄物の匂いから獲物を追跡します。聴覚も優れており、獲物となる動物の鳴き声や同種の鳴き声も聞き分けていると推測できます。コミュニケーションは母子の場合は、なめたりこすったりする接触によるものや鳴き声で行い、個体間では吠える声、シュシュや短くピュウピュウする声、及び大きな甲高い声も聞かれますがその機能は解明されていません。

  別名をアメリカライオンとも呼ばれ、ライオンのメスと似ています。キリッと引き締まった顔は美しく貫録もあります。
別名をアメリカライオンとも呼ばれ、ライオンのメスと似ています。キリッと引き締まった顔は美しく貫録もあります。
写真家  大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
ネコ属の中では最大種で頭部は短く、長い4肢は太くがっしりとし全体的にスマートな体形です。前肢より後肢の方が長く掌は大きくて力強く、顎と肢の筋肉は良く発達しています。前肢には5本の指がありますが親指は小さく、後肢には4本の指があります。爪は鋭く、イエネコのように引っ込めることができます。尾はJの字に曲がり体長の二分の一程度あり、耳は小さく先端は丸くなっています。瞳孔はイエネコと違い丸く収縮し虹彩は淡黄色です。舌は粗い小乳頭突起で被われており、他のネコ科動物と同様に骨についた肉をなめとり、あるいは自分の毛を舐めてきれいにします。被毛の色は亜種により変異がありますが、大別すると淡褐色~褐色と灰色の2系統になり、いずれも腹部は白色、鼻鏡と耳のうしろ、及び尾の先端は黒です。毛は季節変化が大きく、冬季には長く上毛は約4cmになり、下毛が柔らかく根元でよじれて密になり、春には換毛して短くなります。
体の大きさは生息地により大きな違いがみられ、頭胴長97~19cm、尾長53~8cm、体重36~10kgになります。体重の最大のものとしては13kgの記録があります。
歯式は門歯3/3、犬歯1/1、小臼歯3/2、臼歯1/1で合計30本です。乳頭は8個ありますが、機能するのは6個です。

えさ
北米ではエルク、オジロジカ、ミュールジカ、カナダヤマアラシ、アライグマ、ビーバー、南米ではダマジカ、マザマジカ、プーズー、ナマケモノ、オオカワウソ、キノボリヤマアラシ、カピバラ、アグーチ、その他にネズミやウサギの仲間など多くの哺乳類、トカゲやワニなどの爬虫類、魚、昆虫、カタツムリ、時には死肉まで何でも食べます。北米の西部では冬季の餌の約75%がミュールジカで、夏季にはその割合は約60%に減少し、平均で6~9日に1度食べた報告があります。一般に夏季には小型の獲物が多く、冬季に大型動物になりますが、狙われるのは多くの場合年老いたオスか幼獣です。ユタ州では1頭のピューマがオジロジカを16日に1頭、生後3ヶ月齢の子連れの場合は9日、生後15ヶ月齢頃の子連れは3日に1頭捕食しました。しかし、南米などでは大型のバクなどは稀に獲物になるだけで、通常は小型や中型動物で、まれに家畜のウシ、ヒツジも狙われます。チリではグアナコ1頭の代わりに25頭のヨーロッパノウサギが食べられました。ヨーロッパノウサギは90年まえに南米に移入されて以来肉食獣の餌となっています。余った肉は葉や瓦礫、パインの葉などで覆い隠し、後日その場所に戻り数日間は食べます。1回に約10kgの肉を食べることができます。

繁殖
繁殖期は特に決まっていませんが、北米では4月から9月、チリ南部では2月から6月にかけて生まれます。発情周期は約23日、発情は4~12日間(平均で8日間)続き、もし新生児が24時間以内に死亡した場合は、ふつう数週間以内に再発情します。妊娠期間は90~96日、産子数は1~6頭、ふつう3~4頭です。新生児の目と耳は閉じて生まれ、生後1~2週齢で開きます。新生児の体重は250~600gで、生後10~20日齢で1kgになり、生後6週齢頃に固形物の肉を食べ始めます。授乳期間は生後1~2ヶ月齢までですが、この頃体重は3~4kgになります。生まれた時は黒い斑点のある毛が密に生えています。この斑点は生後3~4ヶ月齢ころから消えはじめ、およそ生後6ヶ月齢でなくなりますが、上腕の縞は3歳まで残る個体もいます。乳歯は門歯が生後10~20日齢、犬歯は20~30日齢、前臼歯は生後30~50日齢で生えはじめ、生後約5.5ヶ月で門歯が、犬歯は生後8ヶ月で永久歯に生え代わります。春に出産した場合、秋には母親の狩りに同行し、冬の終り頃には自分で獲物を殺すようになりますが、その後も数ヶ月あるいは年が変わっても母親と一緒にいることがあります。成獣の体重になるのは2~4歳です。メスの性成熟は生後2~3年、オスはメスより遅く3歳で性成熟します。若い個体は自分の行動圏をもつまでは繁殖しません。繁殖はメスで12歳頃まで可能です。長寿記録としては、フランスのツアーパーク動物園で、2004年2月27日現在飼育中の個体(メス)の飼育期間23年9ヶ月があります。

亜種
亜種については、諸説あり約30種に分類する説と、最近ミトコンドリアDNA分析結果を踏まえて6亜種とする学者がいます。

分類   食肉目 ネコ科
分布   北はカナダのブリティッシュコロンビアから南は南米のパタゴニアまで。
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
オス 105~196cm メス 97~152cm
オス 67~103kg メス 36~60kg
オス 66~78cm メス 53~82cm
絶滅危機の程度   生息地の消失と狩猟圧により生息数は減少していますが、ピューマは分布域が広く、現在の生息数は50,000頭以下と推定されることから、IUCN(国際自然保護連合)発行の2012年版のレッドリストでは低懸念(LC)種にランクされています。生息地により約30亜種に分類した場合、フロリダピューマ、ペンシルバニアピューマ、コスタリカピューマの3亜種はワシントン条約では付属書Ⅰ表に、他の亜種はすべてⅡ表に該当し商取引が制限されています。生息数は各地で減少を続けているので、多くの地域で狩猟の禁止や保護区を設定するなどしていますが厳しい状況のようです。

主な参考文献
Currier,M.J.P.   Mammalian Species . No.200, Felis concolor. The American Societyof Mammalogists 1983.
林壽朗   標準動物図鑑全集 動物Ⅰ 保育社 1968.
今泉忠明   野生ネコの百科  データハウス 1993.
Nowell, K. & Jackson, P.(ed)   Wild Cats―Status Survey and Conservation Action Plan― IUCN 1996.
ジョン・ボネット・ウェクソ編
増井光子訳・監修
  ライオン/ネコ 誠文堂新光社 1985.
成島悦雄   ネコ科の分類 In世界の動物 分類と飼育 □2 食肉目 (財)東京動物園協会 1991.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World. Vol.1 Carnivores. Lynx Edicions 2009.

次のページへ →
c旭化成ホームズ株式会社