川口先生のペットコラム
旭化成ホームズ株式会社
Profile
ゾウの先生 川口 幸男

1940年東京都伊豆大島に生まれる。上野動物園飼育課を定年退職後、エレファント・トークを主宰。講演や執筆をしている。講演依頼は、メール またはFax 048-781-2309にお願いします。
NHKラジオ番組夏休みこども科学電話相談の先生でもあり、本編では長年の経験を踏まえて幅広く様々な話題を紹介します。
わんにゃんドクター 川口明子

日本獣医畜産大学卒業、同大学外科学研究生として学び、上野動物園で飼育実習後、埼玉県上尾市にかわぐちペットクリニックを開業する。娘夫婦もそろって獣医師で開業しており、一家そろって動物と仲良くつきあっている。
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おもしろ哺乳動物大百科110(奇蹄目 サイ科) 2015.3.4

サイ科の分類
  サイ科は新生代の6,550万年前から現代にかけて生存していますが、とりわけ漸新世(ぜんしんせい:約3,400万年前から約2,300万年前)に栄えていました。しかし、更新世(258万年前から約1万年前までの期間)が訪れると、その大部分が氷河時代であったために約1万3,000年前に多くの動物と共に絶滅しました。
  現存するサイ科は3亜科、4属、5種に分類されています。生息地はサバンナ、藪地、熱帯から亜熱帯の森林で、アフリカに生息する種類はアジア産の種類より開けた空間を利用しています。いずれの種類も決まった場所に排便し、糞塊ができてサインポストとして情報交換の場となっています。体全体は厚い皮膚に被われ、スマトラサイ以外は尾端と耳先以外は皮膚が裸出しています。頭部の正中線に沿って1本又は2本の角が生えています。サイの角は牛の角と異なり、骨質の角心がなく毛の塊(ケラチン質)が頭骨の上に乗っているだけで一生伸び続けます。大きな頭部と短い首、強力な筋肉を付けた広い胸部、がっしりとした臀部で構成され、このように大きくて頑丈な体を太くて短い4肢が支えています。現存する種類の蹄は3本ですが化石種で4本の蹄をもつ種類もいました。体長は200~420cm 肩高100~200cm 尾長60~75cm、体重1,000~3,500kgです。目は頭部の横、鼻孔と耳の間に位置しているために両サイドは良く見えますが真正面は死角になります。嗅覚と聴覚が鋭く糞貯め場でお互いの情報を収集したり、大きく自在に動く耳で音を拾ったりしています。口先はやわらかく、シロサイ以外は上唇と鼻端が少し長く指のような役割を果たしています。歯式は門歯(切歯)0-1/0-1、犬歯0/0-1、前臼歯3-4/3-4、臼歯3/3で合計24-34本と、種類によって違いがあります。精巣が陰嚢に降下しないところはゾウと同じです。

現存するサイ科の分類
1.スマトラサイ亜科
a)スマトラサイ属 1種
(1) スマトラサイ
分布 現在確実なのはスマトラ島とボルネオ島の北東部。
  生息場所は熱帯雨林で繁殖期と育児期の母子以外は単独で生活しています。 体長236~318cm 肩高110~150cm 体重600~950kg。5種の中で最小です。角は2本あり、オスの前の角は通常30cm前後、後ろは10cm程度です。メスの前の角は約15cm、後ろはこぶ状になっています。皮膚にはインドサイのようなひだがありますが、はっきりとしていません。インドサイの臀部にあるような横のひだは本種にはありません。生息数は275頭前後といわれ、IUCN(国際自然保護連合)発行の2014年版レッドリストでは近絶滅種(CR 絶滅寸前の状態にある種)に指定されています。

2.イッカクサイ亜科
b)インドサイ属 2種
(2) インドサイ:おもしろ動物大百科No.110で紹介。
(3)ジャワサイ
分布 ジャワ島
  生息場所は低地の熱帯雨林でふつう繁殖期以外は単独生活をしています。水浴や泥浴びを好むため川や入り江付近に生息しています。5種の中で最も絶滅が危ぶまれ、IUCN(国際自然保護連合)発行の2014年版のレッドリストでは近絶滅種(CR 絶滅寸前の状態にある)に指定されています。ジャワ島西端にあるウジュンクロン半島の森林で保護されながら50~60頭が生存していると推測されています。
  体長 300~320cm 肩高150~170cm 体重1,200~1,500kg。角は1本で長さはオスでも25~30cmしかありません。メスでは角がない場合がしばしばあります。

3.クロサイ亜科
c)クロサイ属 2種
(4) クロサイ:おもしろ動物大百科No.111で紹介。
(5) シロサイ:おもしろ動物大百科No.111を参照。

110) インドサイ
  インドサイはサイの仲間で最も北に分布し、インド北東部のアッサムとベンガル地方、ネパールといったヒマラヤ山脈の低地にも分布しています。川や水辺に近い湿地帯で丈の高い草地やサバンナに生息しています。
  筆者が訪れたアッサム地方のサンクチャリーでは公園の森林保護官が生息数を把握しており、ゾウに乗って視察することができました。万一のためにライフルを手にした保護官が別のゾウに乗って同行しました。高さが2~4mのカヤの茂みに点在する小さな水たまりがあり、サイはそこで水浴や泥浴びをしていました。トラはめったに見ることはできないと言っていましたが、帰途で私たちの目の前をヒョウの子どもが横切るハプニングがあり生息環境の代表的な場面を垣間見たと感じました。インドサイは保護官を識別しており、近づいてもさほど警戒心を見せることなく過ごしていました。
  インドの沖積地平原の川や沼地では高さが8mにもなる草地を好むとされています。成獣のオスは単独生活ですが、保護区内では2~3頭の亜成獣のオスと育児中の母子が一緒に暮らす混合グループも観察されています。明確なテリトリーはないという報告もありますが、個体間の強弱は見られメスの集まるところではメスとカップルになるために強いオスが幅を利かせています。
  活動時間は早朝や夕方の薄暮で日中の暑い時間帯は水浴や泥浴しながら休憩します。水中生活に適応し、採食時に顔を水中に入れたり、大きな川を泳いで渡り、潜ったりすることもできます。メスの移動距離はどのシーズンでも24時間で5km以内でした。
  行動圏はチタワン国立公園で繁殖オスは2~8km2、年間平均で繁殖メスが3.4 km2、オスが4.3 km2、もっとも狭い例ではモンスーン時の2頭のメスが0.22 km2と0.28 km2でした。1日の47~54%を採食に費やすと報告されています。ふだんはおとなしいのですが驚くと、時速35~40km、短距離であれば時速55kmで走ることができると言われています。跳んだり跳ねたりすることもできます。
  コミュニケーションは聴覚と嗅覚が発達しているため声と排泄物の匂いで情報交換しています。声は、金切り声、キイキイ音、うなり声、ブウブウ音、プーと吹きだす音、鼻を鳴らすなど10種類以上出すことが知れています。オスのペニスは後ろを向いているため排尿すると後肢の指にかかります。指の付け根には匂いを分泌する腺があり、個体の痕跡を残します。

  野生で生活している動物はたくましさを感じます。ラッパのような耳を立てているので、警戒しているかもしれません。
野生で生活している動物はたくましさを感じます。ラッパのような耳を立てているので、警戒しているかもしれません。
写真家 大高成元氏 撮影
   

体の特徴
  体長310~380cm、肩高は148~186cm、尾長70~80cm、体重1,600~2,200kg、メスはオスより小型で体重も軽くなっています。
  角は一生伸び続け、ふつうオスで25cm、メスで24cmになりますが、メスの角はオスより細めです。また、雌雄ともに長い個体では約60cmになります。体毛は耳の先端と尾端に短い黒い毛がありますが、あとは裸出しています。インドサイの特徴は鎧(よろい)を連想させる皮膚の厚い隆起がある点で、肩と臀部で顕著です。首の後ろの皮膚のひだは肩部で止まり左右は連結していません。体色は灰色から黒色まであり、腹部とひだの部位はピンクがかっています。鼻と少し長めの上唇を指のように使い、餌となる草や果物を引き寄せたり掴んだりして採食します。
  歯式は門歯(切歯)1/1、犬歯0/1、前臼歯4/4、臼歯3/3で合計34本です。門歯の長さはメスは3cm以上、オスでは折れたりしなければ5.1~8.9cmになります。特に下顎の門歯はよく発達して牙のようになり、攻撃と防御の両方に武器として使われます。乳頭数は1対で、鼠蹊部(そけいぶ)にあります。

えさ
  草、木の葉、低木の小枝、果物の他に農作物の米、穀類、コーン、実った小麦を好みます。種類としては、フタバガキ科、アジサイ科、マメ科、ジャケツイバラ科、クマツジラ科、トウダイグサ科のほかに果物23種が含まれていました。ネパールのチトワン国立公園での調査では、採食した種類数は57科183種でしたが、そのうち草類が季節によっては70%~89%を占め、その他に果物、木の葉や枝が含まれていました。米、トウモロコシ、麦のような穀類も好みますが、公園の境界線1km以内が被害を受けています。少し長めの上唇を指のように使い草などを引き寄せてりつかんだりして採食します。モンスーンが襲来したときはトウダイグサ科Trewiaの大きな実が地面に大量に落ちるときに待ち受けたインドサイによって採食されます。未消化の種子は糞として排泄されますが腸内を通過することで発芽率が向上すると考えられています。モンスーンの季節は湿度が高く、気温も低いので日中も採食しています。

繁殖
  発情周期は幅があり46~48日、21~42日、マイソール動物園では21~33日、野生では27~42日の報告があります。発情中のメスは尿を飛ばしたり、呼吸時に笛を吹くような音を出したりします。1回の発情は24時間続き、発情が始まるとすぐにオスはフレーメンをしながらメスの後を追いかけ、数日間一緒に過ごします。交尾は約1時間持続します。発情したメスや良い餌場を巡ってオス同士争うこともあり、その結果重傷を負ったり死亡したりすることもあります。妊娠期間は462~491日で、31例の平均値は479日でした。出産は年中見られますが、2月から4月が多く、一産一子で稀に双子が生まれます。出産直後の子は体長96~122cm、肩高56~67cm、体重40~81kgです。出産の所要時間は分娩開始後約30分で、生まれた子どもは30分以内に立ち上がり母乳を飲みます。子どもの成長は早く1日あたり2~3kg増加しました。肩高は1歳で120cm、2歳で145cmでした。子どもはプールが大好きで中に入ると必ず排便したと報告されています。メスは4歳で初発情がみられますが出産は6~8歳、オスは約10歳で繁殖可能となります。体の成長はメスで6.5歳、オスは10歳くらいまで続きます。出産はネパールの場合、3~5年間隔で、メスの性成熟は7~7.5歳でした。新生児が生まれると前の子どもは親から離れます。
  野生での外敵はトラで主に生後8ヶ月齢未満の個体が狙われ、約10%が殺されると報告されています。
  飼育下の長寿記録としては、オスでは、ロンドン動物園に1862年7月25日搬入され、1904年12月6日に死亡した個体の飼育期間40年4ヶ月、推定年齢42歳、またフィラデルフィア動物園に1955年9月14日に搬入され、1996年1月6日に死亡した個体の飼育期間40年3ヶ月、推定年齢43歳という記録があります。
  メスではインドのアッサム国立動物園で1963年7月10日生まれた個体が、サンディゴ動物園からサンデイエゴ野生動物公園をへてフロリダのガルフブリーズ動物園に移動し、2004年1月9日に40歳6ヶ月で死亡した記録があります。

主な減少原因
  生息地の沖積平野を農地にしたこと、家畜の放牧、外来植物の進攻で生息地が大幅に減少したことに加え、アジア諸国で漢方薬、北アフリカ、中東では装飾品として角だけでなく皮や体の各部位も高額で取引がされるため古くから密猟に晒され続けたことが主な減少原因となっています。

分類   奇蹄目 サイ科 インドサイ属
分布   インド北東部のアッサムとベンガル、ネパール南部
大きさ  
体長
体高(肩高)
尾長
体重
オス 368~380cm メス 310~340cm
オス 170~186cm メス 148~173cm
70~80cm
オス 約2,200kg メス 約1,600kg
絶滅危機の程度     アジアのサイ専門家グループ(Asian Rhino Specialist Group 2007)が2007年5月に発表したインドサイの生息数は、インドに2,200頭、ネパールに378頭と報告し、1,900年代前半より200頭回復している反面、ネパールのロイヤル・チトワン国立公園では2000年に544頭が確認されていましたが、2005年には政治的に不安定な状況から密猟の増加により372頭に減少していると報告しています。
インドサイの保護活動はインドのカジランガ国立公園、マナス国立公園、オラング国立公園、ダファー国立公園、ロイヤル・チトワン国立公園他で継続しておこなわれています。
国際自然保護連合(IUCN)発行の2014年版レッドリストでは、絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定されています。また、ワシントン条約では付属書Ⅰに掲載し、商業取引を禁止しています。


主な参考文献
Brooks,D.M., Bodmer, R.E. and Matola, S.(ed)   Tapirs: Status Servey and Consevation Action Plan of the lowland tapir(Tapirus terrestris) IUCN. 1997.
D.W. マクドナルド編 今泉吉典監修   動物大百科4 大型草食獣 サイ 平凡社 1986
Laurie, W.A., Lang, E.M. and Groves, C.P.   Mammalian Species. No.211, Rhinoceros unicornis The American Society of Mammalogists. 1983.
今泉吉典 (監修)    世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典・中里竜二   奇蹄目総論 In世界の動物 分類と飼育4 奇蹄目 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
桑原 久   インドサイの繁殖と成長 In世界の動物 分類と飼育 4 今泉吉典(監修) (財)東京動物園協会 1984.
中里竜二   2.世界のサイ  In世界の動物 分類と飼育 4 奇蹄目 今泉吉典(監修) (財)東京動物園協会 1984.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.Ⅱ The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parkers, S. P. (ed.)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals volume 4 Mcgraw-hill publishing company 1990
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World.2. Hoofed Mammals,Lynx Edicion. 2011.
 
おもしろ哺乳動物大百科109(奇蹄目 バク科) 2015.2.1

バク科 バク属
  アメリカ大陸に生息するバクの種類は、中央アメリカと南アメリカに①べアードバク ②ヤマバク ③アメリカバク、の3種があげられます。しかし、2013年に新たにカボマニバクの発見に伴い4種目として新種登録する学者もいます。
  今回は主としてアメリカバクについて説明し、他は簡単に紹介します。

① ベアードバク
メキシコから南の中央アメリカとコロンビア、アンデスより西側のエクアドルの熱帯林に生息しています。湿地の丘陵地の林で近くに水場がある場所を好み、水草や周辺の草や茎を採食しています。体には短くて硬い毛が生えています。色は濃い赤褐色で、毛は耳の縁は白色です。短毛で幅の広いたてがみがあります。体長(頭胴長)200~230cm、体重250~350kg。鼻はアメリカに生息する種の中で最も長くなります。

② ヤマバク
別名をアンデスバクとも呼ばれるように南アメリカ北西部のコロンビア、エクアドル, ペルーのアンデス山地に分布し、森林限界となる標高2,000~4,400mの高地に生息、寒さに適応し長い体毛でおおわれています。体色は黒から赤褐色で口のまわりと耳の先端が白色です。バク科の中では小型の種類で、体長(頭胴長)180cm、体重130~140kgです。口の周囲と耳の先端の内側白く、皮膚は他の3種類に比べ薄く、頸部の背側は堅い短毛がたてがみのように生えており、ジャガーなどの外敵に頸筋を噛まれるのを防いでいます。

③ カボマニバク(英名:Kabomani tapir)
2013年に、ブラジルとコロンビアに生息するバクが、カボマニバク(英名:Kabomani tapir、学名:Tapirus kabomani)として新種登録され、話題になりました。アメリカバクに似ていますが、アメリカバクが体重180~300kg、ヤマバクが130~140kgであるのに対し、このカボマニバクは110kg程度で現生種の中で最小種です。

109) アメリカバク(別名 ブラジルバク、ナンベイバク)
  分布地域は南米のブラジル、ギアナ、ベネズエラ、コロンビア、ボリビア、パラグアイ、アルゼンチンです。
  通常、川や湖沼、池等の近くで、標高は2000mの高地まで生息します。これらの地域は、通常年間降雨量が2,000~4,000mm、平均気温27.4℃、湿度75%の湿潤な広葉樹林、山地林、草原やサバンナ、山地草原、マングローブですが、さらに乾燥林にも生息しています。半水生と言われることもあるくらい水中生活に適応し、泳ぎや潜水が得意で外敵に襲われると川や沼沢地に逃げこみます。また、ダニなどの外部寄生生物から逃れるために泥浴びや尿浴びを行います。
  単独生活者ですが、繁殖期には一時的に雌雄が一緒にすごし、子どもが1歳になるまで一緒に暮らします。 世界最大の熱帯雨林であるブラジルのモロ・ド・デイアボ州立公園(以下モロ公園と表記)における、81頭の調査によれば、単独個体は77.78%、ペア(成獣の雌雄、成獣のメスと子ども)は12.35%で、3頭のグループもいました。
  行動圏は生息地や季節によって差が見られ、最も広い行動圏を持つモロ公園では、平均4.67km2(1.12~14.19km2)を利用して30%が他個体と重複していました。一方、狭いのはペルーのアマゾンで、平均2.612(1.06 km2〜3.86 km2)で、両者の中間がボリビアのグランチャコ国立公園で平均2.48 km2でした。モロ公園の場合、なわばりは明確でありませんでしたが、ペルーのアマゾンでは、GPSテレメトリを通じて監視したところ、定期的に行動圏の境界に沿って歩き、なわばりを確認していました。なわばりを巡って2頭が優劣の決着を付けようとする場合、当初、耳は前方に立てていますが、負けた個体は耳を伏せます。
  通常の活動時間帯は主として薄暮と夜間ですが、モロ公園の場合、満月に活動する割合は低く、その理由として、明るいので肉食獣に狙われ易いためと考えられています。アルゼンチンのエルレイ国立公園では人間の危険が及ばない場所では昼間も活動していました。
  飼育下における一日の行動パターンの報告例によれば、採食15.5%、餌探し8.6%、歩行13.4%、休息(睡眠を含む47.9%)でした。授乳中の子どもと妊娠しているメスは一日の多くを睡眠時間にあて、採食時間が少なくなります。深い睡眠が見られるのは22時~23時及び1時~2時で、これらの時間帯を除いた時間に採食や排泄、一般行動が見られます。
  ゆっくり移動する時には、ふつうは頭を下げて歩きますが、トロット(速歩)になると頭部を上げ、さらにギャロップ(駆け足)もできます。傾斜地も難なく登り、高いフェンスも飛び越えることができ、筆者(川口)は約1.5mのフェンスを助走なしで軽く飛び越えられた経験があります。
  コミュニケーションは主に鳴き声と尿による匂いつけで行います。鳴き声は発情期に多く、お互いにかわす鳴き声では4種類の声が知られ、鋭い声は危険や痛みを伴う時に発せられます。また虫がうるさく付きまとう時に鼻でプープーと吹き飛ばします。他にも、探索やなだめる時には、舌と口蓋でカチリと鳴らしたり、鼻から息を吹きだしたりします。
  感覚はとくに嗅覚に優れ排泄物から他個体の発情や多くの情報を得ていますが、夜行性で視界が悪いジャングルでは効率的な方法と考えられます。

  赤ちゃんはきれいな縞模様です。保護色となり静かにしていると見つかりません。
赤ちゃんはきれいな縞模様です。保護色となり静かにしていると見つかりません。
写真家 大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
  体長は191~242cm、体重は180~300kg(オスは180~280kg、メスは200~300kgでメスの方が若干重い)、体高(肩高)はオス83~118cm、メス83~113cmです。
  体色は背面が暗褐色から赤褐色で、頬、頸、胸の下面は淡色です。耳の先端は白く縁どられています。全身が短く硬い毛で被われ、鼻の基部から頭頂にかけて走る幅の狭い硬いたてがみが直立しているのが特徴で、外敵から急所の頸部を守っています。このたてがみはアメリカ大陸の他の3種ではあまり発達しません。若い個体の体の毛は成獣に比べると柔らかです。頭頂と鼻の間はへこんでいるので、横から見ると種を見極める目安になります。
  前肢が後肢よりも長く頑丈で、前足には4本の指がありますが、肢の主軸は第3指が中心となり開き奇蹄目の特徴を持っています。4本目は小さく他の指より高い部位についており、水辺の柔らかい地面を歩くときに役立っています。後肢には3本の指があります。すべての指は蹄に被われて底部の接地する部位はタコのように硬くなっています。
  歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、前臼歯4/3、臼歯3/3で左右上下合わせて42本です。上顎の第3門歯は円錐状で犬歯より長くなっています。犬歯と頬歯の間には歯隙があり、頬歯(前臼歯+臼歯を含めた呼び名)はセメント質がなく歯冠は低い単純な臼状をしていますが、横に走る顕著な隆起があり堅い植物を磨り潰すときに効果的に働きます。
  唾液腺と耳下腺は発達し、肛門の左右に肛門腺が2つあり、排泄の時に匂いつけをしています。乳頭は鼠径部に1対あります。

えさ
  ヤシの実、木の葉、木の芽、小枝、果実、水草、草、樹皮、時には魚も採食したことが報告されています。この他、塩分を多く含む場所を探しミネラルを補給します。
  胃の内容物の調査結果から見ると、グレイザー(地面に生えている草を主に食べる種類)と言うより、ブラウザー(木の葉を主に食べる種類)に近いようです。果実と木の葉の採食の割合は地域差があります。ペルーのアマゾンでは、果実33%、木の葉66%を採食。 ボリビアのチャコでは、果実16.8%、木の葉62%、食物繊維21.2%でした。 植物の種類は60科、果実の170種以上が同定されています。ヤシの実は、乾季の果実が少ないときに利用できる重要な食料資源の一つで、地域によってヤシの種類は変わります。ミリチーヤシ(Mauritia flexuosa)はペルーのアマゾンで最も重要な食料となり76%を占めています。これらのヤシはパッチ状に分布しているため、移動パターンに影響を与えると共に、結果的として糞中から萌芽するヤシの種子が効率的に分散されていきます。ボリビアのチャコでは、干ばつ時にはサボテンも餌として採食しています。この他、農作物のココア、メロン、トウモロコシ、穀類も採食します。

繁殖
  発情周期は28~32日で発情は1~4日間続きます。交尾は陸地で行い、その際、甲高い声や、フレーメンを呈しながら、互いに陰部の匂いを嗅ぎ合い、肢やわき腹、耳を咬んだりわき腹を突っついたりします。妊娠期間は385~412日。一産一子ですが稀に2頭を生みます。出産は年中見られますが、野生では雨期の始まる前に交尾し、翌年の雨期の初期に出産するのが多く見られます。新生児の体重は4~7kgです。飼育下の観察では、「新生児は出産当日に口を動かし、生後3日齢に少量の餌を採食し、授乳のとき母親は横臥し、後肢を上げて乳房を出して子供が飲みやすくしていた。生後2ヶ月齢で固形物の人参、サツマイモを少しずつかじるようになり、生後3ヶ月齢頃から、背側、頬、4肢などの斑点が消えはじめ、生後6ヶ月齢で体全体の斑紋が薄くなり、完全に消えるのは生後8ヶ月齢頃でした。生後300日齢では体重が134kgになり、母親と同じくらいまで成長した」と報告されています。完全に成獣の体格になるのは生後18ヶ月齢です。離乳は生後3ヶ月齢頃から始まり、母親は10ヶ月齢迄授乳し、10~11ヶ月齢まで母親と一緒に過ごします。
  新生児は飼育下の場合、生後14~24ヶ月齢で性成熟を迎え、初産は平均で生後32ヶ月齢(2.7歳)です。早熟の例では生後23ヶ月齢の妊娠と、高齢出産では28歳の報告があります。しかし、野生の場合、初産は4歳で繁殖行動は雌雄ともに20歳までと推定されています。乳歯は切歯(門歯)が生後1週齢頃、犬歯は23日齢頃、前臼歯は25日齢頃に萌芽し始め約18ヶ月齢までにすべての歯が永久歯に交換します。
  長寿記録としては、1966年6月20日にトワイクロス動物園で生まれ、2003年12月13日にハウレッツ野生動物公園で死亡した個体(メス)の37歳5ヶ月という記録があります。

外敵
  最大の外敵である人間のハンターは夜間農園で待ち伏せて撃ちます。人間以外の天敵としてはジャガーとピューマ、ヤブイヌ、クロコダイルがいます。母親は子どもを守るときにジャガーや猟犬を蹴って撃退します。

生息数減少の原因
  IUCN(国際自然保護連合)の報告によれば、バクの生息数が減少している主な原因は①農地開発やダム建設のための森林伐採による生息地の破壊と分断 ②狩猟 ③家畜の感染症 ④ 交通事故 ⑤焼畑などです。
  バクの毛皮から良質の皮革がとれ、鞭や手綱に珍重されていました。しかし、一番の脅威は農地開発やダム建設などのための森林伐採で、局所的に絶滅の危機に脅かされています。

亜種
諸説ありますが、分類学者として著名なリチャード・ライデッカー(Richard Lydekker 1849-1915)は次の4地域に生息するバクを亜種に分類しています。①ブラジル、パラグアイ ②ベネズエラ ③アマゾン河口のメキシアナ島、④アルゼンチン。

分類   奇蹄目 バク科 アメリカバク
分布   南アメリカのコロンビア、ベネズエラからブラジル南部、アルゼンチン北部まで
大きさ  
体長(頭胴長)
体高(肩高)
体重
尾長
耳長
191~242cm
オス83~118cm メス83~113cm
180~300kg (オス180~280㎏ メス200~300㎏)メスの方が若干重い
約8cm
約12cm
絶滅危機の程度     IUCN(国際自然保護連合)は、2014年にアメリカバクをレッドリストでVU(危急種)に指定し、絶滅の恐れが増大している種としています。また、ワシントン条約で国際的な商取引が禁止され「附属書I 」にランクアップされています。


主な参考文献
Brooks,D.M., Bodmer, R.E. and Matola, S.(ed)   Tapirs: Status Servey and Consevation Action Plan of the lowland tapir(Tapirus terrestris) IUCN. 1997.
D.W. マクドナルド編 今泉吉典 監修   動物大百科4 大型草食獣 ゾウ、ウマ,ロバ他 平凡社 1986.
今泉吉典 (監修)    世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典・中里竜二   奇蹄目総論 In世界の動物 分類と飼育4 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.Ⅱ The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Padilla.M and Dowler ,R.C.   Mammalian Species. No.481 Tapirus terrestris The American Society of Mammalogists. 1994.
祖谷勝紀   2.世界のバク バク科バク属について  In世界の動物 分類と飼育[4] 今泉吉典 (監修) ㈶東京動物園協会 1984.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World.2. Hoofed Mammals,Lynx Edicion. 2011.
吉野重雄   アメリカバクの繁殖 In世界の動物 分類と飼育[4] 今泉吉典 (監修) ㈶東京動物園協会 1984.
 
干支「未:ヒツジ」にまつわる話(番外編) 2015.1.1

新年明けましておめでとうございます。
  今年も皆様のご健康とご多幸を祈念いたします。

  干支は日本や中国だけでなくアジア各国でも使っていますが、ベトナムではヒツジの代わりにヤギが干支になります。ヤギとヒツジは外見で見分けるのは案外難しいのです。ヒツジはヤギと比べると全体的に柔らかくふっくらしています。ヒツジには眼下腺(目の前下方にある分泌腺)があるのがはっきりわかりますが、ヤギにはありません。座りだこはヤギだけにあり、あごひげがあるのはヤギのオスだけです。
  ところで世界のヒツジの飼育頭数ランキングによれば第1位中国1億8,700万頭、第2位インド7500万頭、第3位オーストラリア7472万頭でした(2012年国際連合食糧農業機関(FAO)発表データ)。日本もかつて1957(昭和32年)年には100万頭飼育していたこともあったのですが、右肩下がりに激減して、2010年の報告では世界158位で12,000頭でした。日本での減少理由は、気候が高温多湿で寒冷地を好むヒツジに適さなかったことや、国土が狭く大きな群れで放牧する農家が少なかったことに起因していると考えられます。
  昨今の化学繊維の技術の進歩は著しく衣類の軽量化が進み、新しい住宅は床暖房が普及して国内の生活が一変しつつあります。一方、2億頭に迫る勢いで飼育する中国を見てもわかるように、人々は肉や乳、チーズなど舌鼓を打って食し、家ではなめしたムートンを敷き、毛で編んだセーターを着て、外出の時はウールのコートにマフラー等など供給する有益な家畜としてヒツジは今でも必要不可欠な存在です。日本人はもっぱら輸入に頼りながらラム、マトンを賞味し、腸ではテニスラケットの弦、脂肪は化粧品の材料として使いお世話になっています。

  それでは早速、今年の干支「ヒツジ」にまつわる話を紹介しましょう。

  おだやかで福々しい顔に見とれます。今年もお世話になりますヒツジさん!
おだやかで福々しい顔に見とれます。
今年もお世話になりますヒツジさん!
写真家 大高成元氏 撮影
   

1. 野生のヒツジの分類
  ヒツジは今泉吉典博士によれば、偶蹄目(又は鯨偶蹄目)、ウシ科、ヒツジ属に分類されます。ヒツジ属は野生種としては①ムフロン②アジアムフロン③ウリアル(シャポー)④アルガリ⑤ビッグホーン⑥ドールビッグホーン(ドールシープ)⑦シベリアビッグホーン(ユキヒツジ)の7種がいます。ヒツジ属の特徴としては、眼下腺、蹄腺、鼠蹊(そけい)腺、などの分泌腺をもつことで近縁のヤギ属と異なります。尾は短く(家畜は除く)、角はふつう雌雄共にありますがメスの角は小さく、ムフロンではメスにない個体もいます。ビッグホーンは家畜ヒツジの原種を除いた3種の中で最も大きく、体重57~140kg、角は8~10kg、まれに12kgの記録もあります。メスはオスより小型で、体重はオスの60~70%です。

2. 家畜にした野生のヒツジ
1)ムフロンとアジアムフロン
  (1)ムフロン
イタリア西部のサルジニア島、コルシカ島、地中海東部キプロス島、イラン西部の険しい山岳地帯に分布しています。体格はオスで体長110~130cm、体高65~75cm、体重25~55kgでヒツジ属の中で最も小型です。オスの角は渦巻き型です。キプロス島では亜高山の開けた森林に生息して草、木の芽や柔らかい枝を採食しています。染色体数は2N=54です。
  (2)アジアムフロン
小アジア、イラン、アフガニスタン、トルキスタンなどに生息。体格はムフロンより一回り大型で、オスの体長110~145cm、体高82~100cm、体重36~87kgです。ムフロンと同じく染色体の数は2N=54です。

2)ウリアル
カスピ海東部、イラン高原、アフガニスタン、パンジャブ、ラダック、チベットの山地に生息しています。オスでは体長110~160cm、体高75~97cm、体重36~66㎏です。アジアムフロンの亜種とも考えられていましたが、染色体数は2N=58なので別種と考えられます。

3)アルガリ
パミールからモンゴル周辺部、チベット高原などの高山帯や砂漠の寒冷な場所に生息しています。ヒツジ属の中で最大の種で体長180~200cm、体高110~125cm、体重95~180kgです。角の最大角長は190cm、角周囲は50cmです。染色体数は2N=56で、他の3種とも違います。

2.家畜化の始まり
  ヒツジは今から8,000~10,000年前に上記の4種を、それぞれの生息地で家畜化して行ったと考えられています。家畜化の始まりについては諸説ありますが、その一つは、家畜のヒツジの染色体数が2N=54でムフロンとアジアムフロンに同じこともあり、最初に家畜化されたヒツジはこの両種で、その後家畜化したヒツジを連れ歩く間に同じ仲間のウリアルやアルガリと交雑してさまざまな品種を生み出していった、とする説です。家畜化に携わった砂漠の遊牧民は、高山の山岳地帯や寒暖の激しい砂漠の熱く乾燥した砂漠にも適応したヒツジを家畜として飼育することで、肉だけでなく乳や体の各部位も利用し大きな恩恵を受けてきました。また、塩性湿地は熱帯ではマングローブの密生した根や幹に阻まれて大型の草食獣は住めませんが、ヨーロッパでは海辺で干潮時になると湿地帯に入り採食し、満潮時になると湿地の高台に上げて放牧地として使用する地域があります。このような高台の草はヒツジの排泄物が草地の栄養分となり繁茂するので放牧が可能となっています。ヒツジは塩分濃度1.5~2.0%の水を飲むことができ過酷な環境への適応性も高くなっています。この他、紀元前2世紀までさかのぼり、西洋で紙が発明されるまで羊皮紙が重要な書類を記録するために使用されていました。

3.ヒツジの食性の多様性
  野生のヒツジの仲間は平地より山岳地帯の岩場を好み草の極めて少ない環境で生きてきました。飼育下でもこの習性が残り、平地に放牧すると採食しながら上方に登り風通しの良い所で休息します。周辺の草類の約 90%を採食し、乾季に草が不足すると針葉樹の葉まで採食しますが、毒草は識別して採食しません。このような餌の多様性は家畜としては大きな利点となっています。ヒツジの胃は4室に別れていて反芻しながらおよそ30時間をかけてセルロースを微生物に分解させて栄養として吸収しています。

4.群れ飼育に適した習性
  ヒツジは群れを成し、群れはリーダーによって導かれ、メンバーはリーダーの後をついて行動する習性があります。馴致しやすい上に粗食に耐え丈夫なので、群れる習性と共に家畜として飼うにはうってつけな動物です。この習性を利用して国土の広い中東、モンゴル、中国、オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパでは放牧して飼育するのが主流です。管理方法はいくつかありますが、その一つは、野生のオオカミが草食獣にとって怖い外敵となることを応用して、イヌを調教してヒツジの群れを自由自在に管理する方法です。羊飼いはイヌ笛を使って犬を操り、放牧中のヒツジを追いたてて誘導して囲いの中に入れます。私たちの通常の会話は200~4,000Hz(ヒトの可聴音域 16~20,000Hz)ですが、イヌ笛の音域は15,000~30,000Hz(イヌの可聴音域 65~50,000Hz)なので人間には聞こえなくイヌには聞こえます。牧童はイヌ笛をつかい、前後左右や停止の合図を送り自在に動かすことができます。牧羊犬を使ってショウとして見せてくれる牧場や動物園がお住まい近くにも結構あると思いますのでネット検索してみてはいかがでしょう。
  イランで遊牧生活する民族の中にはこの習性を利用してヤギを1頭入れて群れを管理する人々がいます。活発なヤギは群れのリーダーになるため、このヤギを誘導すれば群れがあとに続くので至極簡単に管理できるのです。

5.ヒツジの体のひみつ
1)毛
  もともと高山の山岳地帯に生息していた種なので寒さにはめっぽう強い反面、汗腺の発達が悪く暑さに弱いのです。ヒツジの毛は粗いヘアー(一次毛嚢(もうのう)と柔らかいウール(二次毛嚢)と呼ばれる毛で2重になっています。正田陽一博士によれば「代表的な毛用種のメリノー種は、一次毛嚢から二次毛嚢と同じような毛が出るように改良し、さらに二次毛嚢の毛は抜け替わることなく伸び続けるように育種している。本種は毛嚢が1㎠に8,000~10,000個あり、野生種と比べおよそ10倍ある」としています。とくに毛用種は暑い夏が来る前に毛刈りをしなければなりません。
  私も高校生の時、飼育実習でヒツジの毛刈りを大きな専用のハサミを使って行いました。細心の注意を払ったつもりでしたが傷をつけてしまい、みんなで終了後赤チンを付けたところ体中が赤い斑点ができ、ヒツジさんごめんなさい、と皆で謝った思いがあります。
  私たちの苦い思い出とは別に、世界では毛刈りの速さでびっくりするような記録があります。ヒツジの飼育で有名なニュージーランドの記録によれば、1980年に1人で9時間に804頭の毛刈りをした記録があり、1頭あたりに換算すると40秒ですから驚異的な速さと言えます。ふつう電気バリカンで刈って3~5分、ハサミでもおよそ15分もあれば刈ることができるそうです。このようなカリスマ理容師に早く済ませてもらえばヒツジに負担がかかりませんね。1頭のヒツジからスーツ1着分の毛が取れるそうです。

2)目
  以前は上野動物園で宿直当番があって、月に4~5回園内に泊まっていました。そのおかげで閉園後動物舎を巡回するときに、ふだんならば決して見ることができない姿や仕草を至近距離から見ることができました。興味を持ったひとつに動物によって異なる瞳の形があります。担当していたゾウやサルの仲間、イヌ等全て瞳孔は丸いのですがバーバリーシープ(ヒツジの仲間)は一本の横棒でびっくりしたものです。もちろんヒツジも同じです。捕食者に狙われる動物たちは広角レンズのような作りで300度くらいの範囲が見え、常に四方八方に目を配っていち早く外敵を発見して避難します。
  目の下には眼下腺から液体を分泌して樹の枝などにこすり付け情報を残しておき、お互いに匂いによるコミュニケーションを行います。

3)角
  原種のムフロンはオスのみ角がありますが品種改良した家畜のヒツジは様々です。角がないコリデールやオスだけあるメリノー、変わったところではヤコブは4本、まれに6本の角を雌雄共に持つ品種がいます。角の役割はオスが発情したメスに大きな角を誇示したり、交尾権を得るためにオス同士で闘争したりするときに使うほか、稀に外敵に反撃するときに使う場合もあります。角は角質の鞘と骨の芯から構成され、シカのように脱落し生え変わることはありません。鞘の内側から毎年新しい鞘ができて古い鞘を押し上げるため角はだんだん長くなります。

4)口
  草食獣の中には丈の長い草や先端を好む種と短い草を好む種がいます。ヒツジは短い草を食べますが、その秘密は上唇が縦に裂けていて左右別々に細かく動かすことができるためで、短い草や木の芽を選びだし、下顎の切歯(門歯)と上顎の歯床板(ししょうばん:上顎には切歯がなくその代わりに歯ぐきが厚く硬くなっている部分をさします)で挟んで噛み切ります。この短い草を食べる習性を利用して農家の方々は畑に放牧し、あるいは繋留して草取りと餌を兼用させるのみならず、糞は肥やしとして一石三鳥の役目をしています。

5)耳
  大型草食獣にとって耳は外敵の接近と仲間とのコミュニケーションに視覚や嗅覚と共に必要な器官です。耳はコリデールのように耳が小さく立っている品種と、アフリカなどの暑い地方に多いのですが、耳が大きく垂れ下がっている種がいます。耳の大きな種は耳の血管温度を下げることによって体温調整をしています。

6)肢と蹄
  偶蹄目(鯨偶蹄目)の名前が示す通り、蹄は2つに別れているために高山の岩場に蹄が密着して地に付くので安定した歩行ができます。蹄の間には趾間腺と呼ぶ分泌腺があって地面に匂いを残しながら歩き、後続のヒツジはこの分泌腺から出る匂いを頼りに歩いています。そのため山道は一直線の道となり、その道を人間も利用する場合もあります。

7)断尾とイヤータッグ
  全てのヒツジを断尾するわけでありませんが、断尾する羊は生まれた翌日から生後2週間齢の間に行い、イヤータッグを付け、生年月日や個体ナンバーなど必要な情報を記しておきます。現在ではマイクロチップを埋めることもあります。一方、尾の役割は本来害虫を追い払うことが主な役割ですが、家畜となった毛用種や毛肉兼用種の多くは伸び続けると糞や尿が肛門付近に付着し不潔になります。そのため新生児で痛みに鈍感な間に断尾します。私たちが行ったコリデール種は尾の根元を縛ってからハサミでチョンと切って簡単に終わりました。

6.代表的な品種
群れで生活する習性を利用して世界各地で改良が進み現在は1,000種類以上の品種がいると考えられています。今回はその中から目的別に4種類紹介しましょう。

代表的な4品種の本格

この他にも、有名なアストラカンと呼ばれる革製品はウズベキスタン原産のカラクール種の子羊の毛皮です。また、野生の性質を残したセント・クロイ・ヘアーシープは換毛するため毛刈りの必要がなく、ヤギと似て細身で体重は50~60kgでペットにする人もいます。
  最後にあまりなじみがないヒツジの品種を紹介しましょう。

尻と尾に脂肪を貯める種類
  中東と中央アジアの草原や高原で生活している遊牧民が現在も飼育している品種の1つで、尾や臀部に脂肪を蓄積する脂臀羊や脂尾羊と呼ばれる品種がいます。本種は野生のヒツジのアルガリを祖先に改良した種で、脂尾羊では尾が肥大し引きずって歩くほどになるため、乗せる小さな荷車を取りつけて歩かせています。この脂肪は柔らかくすぐに溶け消化も良いため火がない場合、生のまま食べることができます。遊牧民はこの脂肪を得るために手間のかかる方法で脂尾羊を飼うそうですが、ヒツジを殺さないでも脂肪の部位だけ取って使うこともできるので余計貴重なヒツジと言えましょう。また、中国西部の脂臀粗毛羊種は、臀部に脂肪を貯め込みその重量は7~11kgになるそうです。

  このように人間は古くから都合の良いように品種改良を重ねてヒツジさんのお世話になっているのです。みんなで感謝しましょう!

主な参考文献
1) 秋篠宮文仁・小宮輝之 (監修・著)   日本の家畜・家禽 学研 2009.
2) D.W. マクドナルド編 今泉吉典 監修   動物大百科4 大型草食獣 ヤギ,ヒツジの仲間 平凡社 1986.
D.M.ブルーム編 正田陽一 監修   動物大百科10 ヒツジ 平凡社 1987.
F.E. ゾイナー(国分直一 木村信義 訳)   家畜の歴史 法政大学出版部 1983.
今泉吉典 (監修)   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典   ウシ科の分類 ヒツジ属 In世界の動物 分類と飼育 7偶蹄目Ⅲ 今泉吉典 (監修)㈶東京動物園協会 1988.
大高成元 (写真)・川口幸男・中里竜二   十二支のひみつ 小学館 2006.
P. D.ムーア編 小野勇一 監修   動物大百科 18 動物の生態 平凡社 1987.
坂田隆   砂漠のラクダはなぜ太陽に向くか? 講談社 1991.
正田陽一   美しい・善い家畜―羊 どうぶつと動物園 Vol.43 No.4㈶東京動物園協会 1991.
正田陽一 (監修)   世界家畜図鑑  講談社 1987.
正田陽一 (編著)   家畜という名の動物たち(自然選書)中央公論社 1983.
 
おもしろ哺乳動物大百科108(奇蹄目 バク科) 2014.11.28

バク科 バク属
  バクの祖先はおよそ2,000万年前にはすでに栄えていましたが、その後もほとんど変化をしていないので、奇蹄目のなかでは原始的なグループと考えられています。かつてはヨーロッパや北アメリカにも分布していましたが、当時の地球はヨーロッパと北米がつながっておりローラシア大陸(現在のユーラシア大陸と北アメリカ大陸)と呼ばれる1つの大陸でした。現在、バクは東南アジアと中米と南米に生息していますが、北米から南米に渡ったのは更新世(200万年前)以降で、ヨーロッパや北米に分布していた仲間は氷河期で絶滅しました。
  奇蹄目の祖先は指が5本ありましたが、進化するにつれて指が3本又は1本と少なくなっていきました。バクの場合、前肢は4本指、後肢では3本指ですが、骨格から見れば前肢も中指を中心として体重を支えているため奇蹄目としての特徴は備えています。前駆は頸が太くて足が短く、後躯はふっくらとして丸味を帯びてずんぐりとしています。鼻はゾウと同じように上唇と鼻が長く伸び、神経が発達して自由に動かし、草などを採食するときに鼻先で選ぶことができます。生息場所は半水生と言われるくらい水中生活にも適応し、潜ることもできて鼻先を水面に出して息を吸うこともできます。高地に生息するヤマバクの皮膚は他の種類に比べ薄くて、長い毛に被われ寒さに適応しています。活動時間帯は薄暮が多いのですが、マレーシアのタマン・ネガラでは人間が近くにいない場所では日中も時々活動すると報告されています。
  バク科はバク属のみで次の4種(又は5種)が含まれます。
  ① マレーバク ②アメリカバク ③ヤマバク ④ベアードバク、の4種類とされていましたが、 2013年に、ブラジルとコロンビアに生息するバクが、⑤カボマニバク(英名:Kabomani tapir、学名:Tapirus kabomani)として新種登録されています。バクの仲間では最小の種類として話題になりました。

108) マレーバク
  かつてはインド北部から中国の東部及び中央部、ベトナム南部、スマトラ、ボルネオまで東南アジアで広範囲に分布していましたが、現在はミャンマー南部、タイ南西部、マレーシア(マレー半島)およびインドネシア(スマトラ島)のみに分布し、現存するバク4(又は5種)種のうち唯一アジアに生息しているバクです。子連れのメス以外は単独生活者で熱帯雨林、低地湿潤林の一次林や二次林に生息し、湖や河川周辺部の草地や叢林、近くに水がある地域を好みます。日中は林や草地の茂みですごし、夜間になると採食に出かけます。行動は外見に似ず素早く走り、斜面を駆けのぼります。泥水や水のあるところでは転げまわったり水の中で遊んだりするほか、川や池で泳ぎ、水に潜ることもできます。用心深いので危険を感じると水中に逃げ込み、安全が確かめられるまで長時間入って逃れます。水中では鼻をシュノーケルのように使うところはゾウと似ています。コミュニケーションは甲高い口笛のような声と尿による匂いつけで、野生のバク同士が出会うとお互いに攻撃します。聴覚と嗅覚が発達しており、地面に鼻端を付けるようにして歩きます。タイのフワイ・カーケーン野生生物保護区では標高100m~1,500m、スマトラでは標高1,500mで見られ、山越えするときには標高2,000mを越えると推測されています。本来は低地で生活している動物と考えられていますが、乾季で青草がない時や森林火災などがあったときは高所に移動します。
  マレーシアのタマン・ネガラ国立公園で発信機を付けて調査したところ、オスの行動圏は12.75km2で数頭の個体と重複していました。子連れの母親の27日間の行動圏が0.52 km2や、さらに最近やはり発信機をつけた調査で、クラウ自然公園では10~15 km2との報告があります。オスの一日の平均移動距離は直線距離にして0.32kmでした。オスはなわばりをもち尿や糞で自分の存在を主張しています。

  上半身と下半身のツートンカラーは鮮やかでしょう。耳の先端がちょっと白くなっています。
上半身と下半身のツートンカラーは鮮やかでしょう。耳の先端がちょっと白くなっています。
写真家 大高成元氏 撮影
   

からだの特徴
  東南アジアの熱帯雨林の中で最大級の1種です。体長は 235~250cm、体重 250~350kgになります。
  体色はアメリカ大陸に生息する他の3種(又は4種)のように、体全体が単一色でなく、肩甲骨の後ろから腰部にかけて、及び蹄の周囲は白く、前駆と4肢は黒色ではっきり分かれているため、簡単に見分けることができます。スマトラとマレーシアでは全身黒い個体がトラップ写真で撮られています。
  頸部は短く、鼻が長くて腰部がふっくらとして丸みを帯び、皮膚は引き締まって毛がまばらに生えています。バクの体形は頭部を下げた状態で藪などを突っ走る場合に都合がよく、ほかの動物ならば躊躇するような深い茂みも難なく突破できます。たてがみがありませんが、頭部の後ろと頸部の皮膚の厚さは2~3cmあり、急所となる首筋を肉食獣に咬まれるときや、深い藪を突き抜けるときに体を保護しています。
  鼻はアメリカ大陸に生息する種類より長くおよそ30cmでその先端に鼻孔があり、上面が丸く下側が平らで強く、伸縮し草を引きよせたり選別したりすることができます。出産して子どもを自分の方に引き寄せるときに鼻を使っていた、と飼育下の報告もあります。通常、頭を下げて歩くときは鼻端が地面に近いので鋭い嗅覚で多くの情報を得ることができる、と推測できます。
  目は小さく眼窩(がんか)の奥にあることで藪の中を通るときに傷つけることから防ぐことができ、また顔の横についていることで広範囲を見渡すことができます。瞳孔は丸く暗紫色です。耳は楕円形に突出し、尖端が白いので母子の識別に役立っていると考えられます。
  尾は5~10cmと短く、根元は太く先端は細くて房がないので害虫による被害を厚い皮膚で防いでいるのでしょう。
  肢は頑丈で短く前肢に4本の指がありますが1本は小さく、後肢に3本あります。前肢には4本の指がありますが、肢の主軸は第3指が中心となり奇蹄目の特徴を持っています。体全体では肩より腰の方が少し高くなっています。
  歯式は、門歯3/3、犬歯が1/1、前臼歯4/3-4、臼歯3/3で左右上下合わせて42~44本です。上顎の第3門歯は円錐状で犬歯より長くなっています。犬歯と頬歯(前臼歯+臼歯を含めた呼び名)の間には歯隙があり、頬歯はセメント質がなく歯冠が低いのですが、横に走る顕著な隆起があり堅い植物を磨り潰すときに効果的に働きます。乳頭は鼠径部に1対あります。

えさ
  水草、草、樹の葉、木の芽、小枝、地上の低いところに実る果実を採食しますが、特に新芽を好むと言われています。被子植物のコミカンソウ科のランバイ属では太い枝から3cm位の果実が実りますが、1.4mぐらいの高さまで採食できます。スマトラでは双子植物のトウダイグサ科やアカネ科、チョウセンシダ科のオオタニワタリ、アオイ目のドリアン、そして、単子植物ではユリ科、シダ植物のチョウセンシダ等それぞれ多種多様な植物を採食しています。115種以上の植物がリストアップされていますが、このうち27種類を良く採食していたと報告されています。タイでは39種の植物を好んで採食し、採食部位は葉が86.5%、果実8.1%、小枝と葉の混ざったもの5.4%でした。

繁殖
  1年を通じて繁殖記録がありますが、野生下のピークは4月~5月です。発情周期は雌雄間の性行動の観察から1ヶ月ぐらいと考えられていましたが、楠田哲士博士と国内の動物園との共同研究結果によれば、元々の生理として、1ヶ月くらいの発情周期と2ヶ月くらいの発情周期の2パターンがあると報告しています。1産1子で生まれたばかりの子どもの体重は6.4~9.1kg。妊娠期間は390~410日です。2007年にマレーシアのセランゴール州、スンガイドゥス・マレーバク保護センター(MTCC)において、初めて双子が生まれています。
  多摩動物公園の繁殖例によると、生後45分後に立ちあがり、母親は横臥して授乳しました。体重は1週間に4~6kg増加し、生後10日齢で2倍、生後2ヶ月齢で5倍に達したと報告されています。
  バクの子どもは体の模様が野菜のマクワウリ(真桑瓜)に似ていることからウリ坊と呼ばれ、体全体は黒色で白から黄白色の縞と斑点があります。イノシシの子どもにも縞がありますが、こちらは体が薄茶色で濃紺の縞があり、いずれも天敵から身を守る保護色と考えられています。白黒のツートンカラーにかわる日齢は個体差があり、生後77日齢で体の後躯が白くなり始め生後132日齢で完全に成獣と同じになったとの報告のほかに、生後70日齢頃から後躯が白くなり始め5~6ヶ月齢頃に成獣と同じ模様になる、と言う報告もあります。このように親と同じ色調になる時期は幅がありますが、遅くとも1歳で成獣と同じ模様になります。子どもは母親と同じくらいの体格になる生後6~8ヶ月齢で離乳します。性成熟はオスの早い個体で3歳、メスは2.8歳の報告があります。
  長寿記録はとしては、ドイツのニュルンベルク動物園で1966年6月1日に生まれ、2002年12月16日にシュトゥットガルトにあるウィルヘルマ動物園で死亡した個体(メス)の36歳6ヶ月という記録があります。
  外敵としては、人間以外ではトラ、ヒョウ、ドールがいます。

生息数減少の原因
  生息数減少の大きな原因は過度の開発による生息地の消失、分断と狩猟圧によるものです。現地ではマレーバクは信仰の対象になっていたので、長い間狩猟の対象にはなっていませんでしたが、近年は食料やスポーツのための狩猟による被害が増加しています。
  スマトラではタバコ、ゴム園、パーム油にするために1984年の報告でバクの生息していた森林の20~35%、最近15年間で最大60%を損失し、現在の生息地は元の10%程度に減少しているのにもかかわらず、さらに食料やスポーツのために狩猟が横行して生息数の減少に拍車をかけています。東南アジアの熱帯雨林は、最近36年間で50%減少したともいわれています。最も多く残っているといわれているマレーシアでも、2008年の報告では生息数はわずかに1,500~2,000頭と推測されています。今後は他の地域でもより詳細な生息数の調査が必要です。
  現在はタイ、ミャンマー、マレーシア(マレー半島)、インドネシア(スマトラ島)の国立公園で保護されています。

分類   奇蹄目 バク科
分布   ミャンマー南部、タイ南西部、マレーシア(マレー半島)、インドネシア(スマトラ島)
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
尾長
肩高(体高)
230~250cm
250~350kg
5~13cm
100~130cm
絶滅危機の程度     IUCN(国際自然保護連合)発行の2014年版レッドリストでは、マレーバクは絶滅の恐れが非常に高い絶滅危惧種(EN)に指定されています。また、ワシントン条約では「付属書Ⅰ」に該当し国際的な商取引が禁止されています。   日本国内でのマレーバク飼育数は2013年12月31日時点で11ヶ所の動物園でオス19頭、メス15頭、計34頭飼育中です。


主な参考文献
D.W. マクドナルド編 今泉吉典監修   動物大百科4 大型草食獣 ウマ,ロバ,シマウマ. 平凡社 1986.
今泉吉典 (監修)    世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典・中里竜二   奇蹄目総論 In世界の動物 分類と飼育4 奇蹄目+管歯目+ハイラックス目+海牛目、 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
熊沢信吉・宗近功   奇蹄目 バク科 Ⅱ. バクの飼育 2. マレーバクの繁殖 In世界の動物、 分類と飼育 4 奇蹄目+管歯目+ハイラックス目+海牛目、今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
楠田哲士   Vol.14『バクの繁殖研究① 採血と発情周期』、どうぶつのくにnet. http://www.doubutsu-no-kuni.net/?=21574. 参照2014-11-16.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.Ⅱ The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
祖谷勝紀   奇蹄目 バク科 Ⅰ.バクの分類 1.バク科バク属について 2.世界のバクIn世界の動物 分類と飼育 4 奇蹄目+管歯目+ハイラックス目+海牛目 今泉吉典(監修)㈶東京動物園協会 1984.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World.2. Hoofed Mammals,Lynx Edicion. 2011.
Brooks,D.M., Bodmer,R.E. and Matola,S.(ed.)   Tapirs―Status Survey and Conservation Action Plan―IUCN, 1997.
 
おもしろ哺乳動物大百科107(奇蹄目 ウマ科) 2014.10.30

ウマ属の分類
  ウマ属の総種類数は家畜種をふくめて11種です。ウマ属はさらに5亜属:①シマウマ亜属 ②グレビーシマ亜属 ③ロバ亜属 ④アジアノロバ亜属 ⑤ウマ亜属に分類されます。
  今回紹介するグレビーシマウマはグレビーシマウマ亜属に属し1種だけが含まれます。
  ウマ属は乾燥した地域で生活していますが、最も乾燥した地域にはアフリカノロバが生息し、次がグレビーシマウマ、そしてシマウマ亜属となり、グレビーシマウマは両者の中間地点にいます。シマウマ亜属のサバンナシマウマとヤマシマウマは1頭のオスと数頭のメスで恒久的なハーレムを作り、80~600km2の広い行動圏を持っています。アフリカの気候は乾季と雨期の2季に別れ、乾季の前には草と水を求めて各ハーレムは集合し、ヌーやレイヨウの仲間と共に100万頭以上の大集団となり移動します。一方、グレビーシマウマは質の悪い植物が広い範囲に点在するような場所で生活しているため、個体数の多い集団が複数で長期間留まることはできません。そのためハーレムを形成することができず、群れを作るのは数ヶ月間を過ごす一時的なものです。
  シマウマは名前の示す通り体全体に縞模様があるのが特徴の1つですが、種ごとに縞模様が異なり、種類を見分けることができます。グレビーシマウマの縞模様は腹部にはなく、他の2種のヤマシマウマ、サバンナシマウマに比べ縞が細く、肢にまで縞があるので簡単に種類を見分けることができます。グレビーシマウマはウマ科の中で最も大型で美しいとされています。

107) グレビーシマウマ
  アフリカ東部のケニア北部と中部、エチオピアに分布し、スーダン南部にも少数が生息している可能性があると報告されていますが、より詳細な検証が必要とされています。
  グレビーシマウマはジャングルのような木の密生した場所は好まず、石がある半砂漠の平原や丘でアカシアやハーブ、カンラン科コミフォーラ属の植物(アフリカに自生する多肉植物)など棘のある小さな藪や草地で生活しています。授乳期のメスは水分が必要なため水場近くで生活しますが、授乳期以外のメスとなわばりをもてないオスは毎日水を飲まないでも平気で5日間水を飲まない例も報告されています。社会構成は①1頭でなわばりをもっているオス②ワカモノ又は母と子のグループ③混成グループに分かれています。ふつう乾季になり水と餌が不足すると一時的に群れを作り、1日におよそ35kmを移動することも珍しくなく、水場周辺部では40頭、あるいは100~200頭になります。群れにリーダーは存在せず、オスはメスより優位ですが、ハーレムを作りません。生活場所に水源があれば移動しないでエランドやダチョウ、ヌー等と一緒に留まることもあります。メスの行動圏は10~15km2です。雨期(7~8月、10~11月)には水と餌があるため移動せず、ふつう10頭以下の群れですごします。なわばりは基本的に6歳以上の優位なオスが単独で水場周辺部に6~10 km2を持っていますが、劣位なオスとワカモノはもつことができません。ケニア地方ではオスのなわばりの広さは2.7~10.5 km2、平均で5.75 km2でした。なわばりの境界線20~50mでは糞や尿スプレイで目印とし、侵入者が近づくと噛みついたり、蹴ったりして守ります。オスはなわばり内に入るメスと交尾するため、乾季に群れが山の涼しい草地に移動してもなわばり内に留まります。なわばりが急速に大きくなるとオスの間で闘争が起き単独で維持できる広さに改良されます。サバンナシマウマと同じ場所で過ごすときに2種が同じ群れにいることはありません。日中は人間を避け、夜間は肉食獣を警戒して過ごしています。
  コミュニケーションの1つである鳴き声は、サバンナシマウマがイヌのような大きな声で「クヮッ、ハッ、ハッ」と2~3節の鳴き声を出すのに比べ、ロバに似た「ヒーホー、ヒーホー」に近い鳴き声を出します。嗅覚も発達しており、排泄物の糞塊や尿で発情を判断します。長い耳は自由に動くことで体の位置を変えずに左右の音を聞くことができます。目は顔の横に位置し瞳孔は横長の楕円形で広範囲を見ることができます。このように嗅覚、聴覚、視覚などの感覚が鋭くライオンやハイエナなどの外敵の接近を常に警戒しています。走るスピードは時速64km(60~70km)の記録があります。

  大きな耳と、顔、体、4肢の細かい模様がきれいですね。
大きな耳と、顔、体、4肢の細かい模様がきれいですね。
写真家 大高成元氏 撮影
   

体の特徴
  野生ウマの中では最も大型のグレビーシマウマは、体高140~160cm、体長 250~300cm、尾長 38~60cm,体重は350~450kgになります。
  大きな頭部に長い顔は、堅い草や樹の葉も咬みきり咀嚼できる大きな臼歯とよく発達した強い筋肉から成っています。また、鼻孔は大きく開閉できることで呼吸を助け、太く長い頸部は走行の際振ることでバランスを取っています。耳は大きく幅が広く先端は丸みを帯び、内側は毛が密生して砂やごみの侵入を防いでいます。胴は太くがっしりとしており、大腿部から臀部にかけて筋肉が発達していて走行や蹴るときの原動力となっています。4肢は大腿部が太く、肘、脛から蹄にかけて筋肉質で細く、体重は中央の指(第3指)1本で支えられ、爪が蹄となっています。奇蹄目の名前の由来は指の数(蹄の数)が奇数であることからきています。前肢だけにある「たこ=夜目=附蝉」は他のシマウマでは発達していますが、本種は小さいか、ない個体もいます。体の縞模様は細くて数が多く、肢にまでありますが、腹部にはありません。また背中から正中線上に沿い尾まで長い縞があり、腹部と尾のつけ根周辺は白、鼻先は褐色です。たてがみは長くて直立し、尾の先端には房があります。縞模様の効果として、外敵に襲われた時に一斉に逃げるとライオンなどが個体を絞ることができない、また木々に同化して保護色の役割を果たしている、子どもが親の識別をするなどの理由が挙げられます。夜間グレビーシマウマがじっと静止していると、月明かりの中では15m、星明りでは5m離れると存在がわからなくなり、また小枝の陰にいると、その細い美しい縞模様によって距離が100m離れなくても姿がぼやけてしまうとの報告もあります。この他、2014年にカリフォルニア大学デービス校の生物学者ティム・カロ氏らは、アフリカの草食獣にとって悩ましい害虫に刺されない防虫効果がある、と報告しています。歯式は、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯4/4、臼歯3/3で合計44本です。門歯は上下がきっちりと合うので草を噛み切るのに適し、堅いイネ科の草を大きな臼歯で咀嚼するために下顎は大きく咬筋が発達しています。長い口先は感覚が鋭く、鋭敏で草を選んで採食するのに適しています。消化は胃で消化された後、消化できないセルロースは結腸(大腸)と盲腸に送られ、無数にいる腸内細菌によって発酵され約45%が分解、吸収されます。消化効率は反芻動物より悪いため、長時間かけて多量に採食します。胆嚢はありません。乳頭は鼠径部(そけいぶ・後肢のつけ根)に1対あります。体温は生息地の高温に対応して他のシマウマ亜属より高く37.0~37.3℃、あるいは39℃≦の報告があります。

えさ
  グレビーシマウマは1日の大半(14~19時間)を採食時間に費やします。主にウシや他の有蹄獣が食べない、イネ科やカヤツリグサ科などの堅い茎の草を採食しますが、そのほかに樹の葉やマメ科の植物も食べます。マメ科植物は草や樹の葉より繊維が少なく、より多くのタンパク質やリンを供給するのに役立っています。本来生息域としていた地域まで家畜が進出した地域や、旱魃の時には樹の葉も全体の30%ていど採食します。
  動物園では、青草(冬は乾草)ウマ用ペレット、家畜用配合飼料をあたえています。

繁殖
  繁殖は年間を通じて見られますが、ピークは長い雨季の7~8月及び短い雨季10~11月の2回あります。発情周期は19~33日で発情は9~14日続き、このうちオスを受け入れるのは2~3日です。オスはなわばりに入ったメスと交尾しますが、メスは発情中に複数のオスのなわばりを移動して交尾します。なわばりをもつオスはもたないオスより多くのメスと交尾できます。妊娠期間は358~438日、平均409日で、ふつう1産1子です。多摩動物公園の例によれば、発情期間は1週間で、1~2日間追尾行動をおこない、続いて2~3日間交尾するパターンを繰り返し、腹部の増大は妊娠8ヶ月以降に見られ、妊娠期間は最終交尾から数えて415日でした。他のウマの妊娠期間は1年以内なのでウマ科で一番長い妊娠期間となります。野生時の観察によれば、分娩時メスは群れを離れて深いヤブに入り、横臥姿勢で分娩しました。生まれたばかりの赤ちゃんは体長80cm、体高(肩高)90~110cm, 体重約40kgです。からだは明るいチョコレート色の柔らかい毛に被われ、頭部、頸部、肢はあずき色の縞があり、たてがみは縮れていて後頭部から尾まで続いています。生まれて1時間後には母親について群れに戻り、最初の2日間で母親の匂いや声、尻の模様を識別して付いて行きます。生後10日齢から母親の糞を食べるのが時々観察されました。母親は水場に行くとき群れに子どもを残していきます。被毛は生後3ヶ月齢で頸部の淡い茶色の縞模様が茶色に代わり、生後4ヶ月齢頃に急速に成獣の模様になります。生後約5ヶ月齢で柔らかい毛から成獣の短い毛に代わって縞模様が黒くなりますが、親と同様にはっきりとした白黒になるのは1歳半ころです。生後約7ヶ月齢で母親から半ば独り立ちして、このころは母親が放っておいたり、あるいは子どもは自分から短時間離れたりします。生後8ヶ月齢で肩高が132cmになり、主に草を食べます。生後9ヶ月齢までには離乳しますが、まだ母親のもとにとどまり、一緒に走り、跳び、遊び、追いかけっこをしたりします。メスの子どもは生後13~18ヶ月齢で母親から独立します。このとき母親はすでに妊娠2~7ヶ月です。オスの子どもは3歳まで母親と一緒にすごし、その後ワカモノグループや混合グループに参入します。野生の場合、オスは5~6歳まで交尾できないと言われています。メスの初産は2~4歳です。
  飼育下の長寿記録としては、1964年にケニアで生まれ、1995年1月2日にイギリスのマーウェル動物園で死亡した個体(メス)の飼育期間30年3ヶ月、推定年齢31歳という記録があります。

主な減少要因
  開発による生息地の破壊や損失、人と家畜との競合による水場の減少、観光客の水場利用、食料と毛皮を得るための密猟、生きた個体を捕獲して売却する、ことなどが減少原因となっています。かつてアフリカ北東部のソマリアやジブチ共和国にも生息していましたが1973年以降の目撃例がなく絶滅した、と考えられています。野生の生息数はIUCNの調査によれば、1970年代にはケニアで約14,000頭、エチオピアで約1,500頭、その後ケニアでは1988年に約4,000頭に減少しました。最近の報告ではケニアに2,000~2,300頭、エチオピアの一部に約150頭が生息していると言われています。また、スーダン南部に少数が生息しているとの報告もありますが、現在のところは不確かでさらに調査が必要とされています。現在の生息地は保護区の5%程度にしかすぎません。ケニアでは狩猟規制はありますが法律による保護規制はありません。エチオピアでは法律で守られています。

分類   奇蹄目 ウマ科 ウマ属
分布   アフリカの東部:ケニア、エチオピア、スーダン(?)
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
体高(肩高)
尾長
オス・メス  250~300cm
オス・メス  350~450kg
オス・メス  140~160cm
オス・メス   38~60cm
絶滅危機の程度     国際自然保護連合(IUCN)発行の2014年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが非常に高い絶滅危惧種(EN)に指定されています。またワシントン条約では付属書の第Ⅰ表に該当し国際商取引の禁止対象種となっています。

主な参考文献
Churcher, C.S.   Mammalian Species. No.453, Equus grevyi. The American Society of Mammalogists. 1993 .
D.W. マクドナルド編 今泉吉典監修   動物大百科4 大型草食獣 ウマ,ロバ,シマウマ. 平凡社 1986.
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.
今泉吉典 (監修)    世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典・祖谷勝紀   奇蹄目 ウマ科 Ⅰ. ウマの分類 2. シマウマのなかま. In世界の動物 分類と飼育 4 奇蹄目+管歯目+ハイラックス目+海牛目 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
今泉吉典・中里竜二   奇蹄目総論 In 分類と飼育 4 奇蹄目+管歯目+ハイラックス目+海牛目 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
Moehlman, P.D.   Equids: Zebras, Asses, and Horses ―Status Survey and Action― IUCN. 2002.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.Ⅱ The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
関井照治・近藤忠男・目沢康生   グレビーシマウマの繁殖 In世界の動物 分類と飼育 4 奇蹄目+管歯目+ハイラックス目+海牛目 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
祖谷勝紀   奇蹄目 ウマ科 Ⅰウマの分類 1.ウマ科ウマ属について. In世界の動物 分類と飼育 4 奇蹄目+管歯目+ハイラックス目+海牛目 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World.2. Hoofed Mammals,Lynx Edicion. 2011.
 
おもしろ哺乳動物大百科106(奇蹄目 ウマ科) 2014.9.29

奇蹄目
  ウマ、シマウマ、ロバ、バク、サイのように奇数本の指の先端に蹄を持ち、体重を支える中心軸が第3指(中指)を通っている動物のグループを奇蹄目と呼びます。ウマ類は前肢、後肢ともに1本、サイでは3本、バクの場合は例外的に前肢に4本、後肢に3本の蹄を持っています。しかし、4本の場合もよく発達した第3指を肢軸が通っていて奇蹄目の特徴を示しています。
  奇蹄目の起源は約5,500万年前の始新世初期にさかのぼりますが、進化の上で頂点に達したのは約3,500万前の斬新世初期で、この頃には絶滅した科を含めて16科もありました。しかし、その後は衰退に向かい現在ではウマ科、バク科、サイ科の3科だけが残っています。

ウマ科の分類
  ウマ科はウマ属のみで、総種類数は家畜種を含めて11種です。ウマ属はさらに5亜属:①シマウマ亜属 ②グレービーシマウマ亜属 ③ロバ亜属 ④アジアノロバ亜属 ⑤ウマ亜属に分類されます。
  ロバ亜属は野生種としてはアフリカノロバ1種で、以下の3亜種に分類されています。

亜種
① ヌビアノロバ 絶滅の可能性があります。
② ソマリノロバ 少数が生存しています。
③ キタアフリカノロバ アトラス山脈南側に生息していたのですが、3~4世紀に絶滅しました。

106) アフリカノロバ
  耳は特に長く先端は尖っています。尾の先端には黒い房毛があります。蹄はウマの仲間で最も幅が狭く長くなり、スピードより頑丈さを重視した作りになっています。蹄が固いので飼育下では年に2回の削蹄が必要です。「たこ」(夜目:よめ、附蝉(ふぜん)ともいう)は前肢だけにあります。
  アフリカノロバはアフリカ北東部のエチオピア、エリトリア、ソマリアに分布、起伏のある岩石砂漠に生息しています。体長(頭胴長)195~205cm、体高(肩高) 110~140cm、尾長40~45cm、体重270~280kgです。メスはオスより一回り小型で、体の色は生息地により差があります。

(1)ヌビアノロバ
  ヌビアノロバはアフリカの東部、スーダン北東部のヌビア砂漠(ナイル川の東から紅海まで)及び南はアトバラ川とエリトリア北部の山岳地帯の半砂漠や草原に生息していましたが、1970年以降確認報告がなく生存が危ぶまれています。
  ソマリノロバに比べ小型で、体高は約120cm。体色は黄色がかった灰色で、背中中央の黒線と両肩を通る黒線が十字に交わっています。

(2)ソマリノロバ
  ソマリノロバはアフリカ北東部のエチオピアとエリトリアにまたがるダナキル砂漠の岩石混の砂漠およびソマリアのヌガール渓谷に生息していますが、砂地は避けて、わずかに低木が残る荒れた草原に生息しています。この地方は年間降雨量が100~200mmほどの乾燥地域です。またエチオピアでは標高約1,500mでも生息が記録されています。1977年にKlingelは群れの構成について次のように報告しています。「ダナキル砂漠における群れは、単独生活するものが5%、2~6頭が30%、7~20頭が30%、21~60頭が36%でした。いずれも永久的なグループではなく母子以外は一時的な集まりで水場や餌を探すときに集まります。なわばりをもっているオスはどのような場合でも、また雌雄の成獣は若者より優位です。エチオピアではなわばりをもつオスのみが交尾していました。また、大きなグループに決まったリーダーが存在せず、成獣はどの個体でもリーダーになりことができ、リーダーが交代しても争いはおこりません。」
  しかし、生息数が極端に減少した現在では、1970年代のように大きな群れは存在せず、単独か母親とこども、1頭のオスと数頭のメス、あるいはすべてオスかメスで、通常は5頭以下の小さな群れを形成しているにすぎません。
  生息地の乾燥した地域には水場が少なく、オスはまばらに点在する餌場と水場周辺になわばりを持ち、複数のメスたちがなわばり内に入るのを黙認する代わりに、メスとより長く一緒にいることで交尾権を得てメスを独占します。オスの順位は年長個体が優位で、メスが優位個体に興味を示すため、若オスは単独でいるかワカモノ同士で一緒にいます。なわばりはおよそ20km2の報告があり、なわばり内は糞を堆積させて目印としています。旱魃時における日中の外気温は50度に達し、夜間の低いときは5~15℃になります。活動時間は早朝か午後遅く、さらに夜間で砂漠の気温が下がる頃に活発になり、日中の暑いときは近くの岩陰で休みます。このような気温差が大きい環境に適応して体温が35.0~41.5℃の範囲で変わり、暑い夏、オスの体温は36.5℃に比べ、メスは38.2℃でした。メスは体温が高いため一日の発汗量が少なく2%の水分を節約できて、オスより1日長く水を飲まずにいられます。水場から4~6km離れた場所で生活し、20~30km以内の水場を知っています。水場には午後4時から夜中にかけて注意深く近づき飲みます。

  アフリカノロバの亜種、ソマリノロバです。
アフリカノロバの亜種、ソマリノロバです。
現在の競走馬に比べるとがっしりとして、キリッとした感じを受けます。
写真家 大高成元 氏撮影
   

からだの特徴
  ヌビアノロバより大型で体高(肩高)は130~140cmあります。
  体は脂肪分が少なく筋肉質で、頭部が大きく、4肢は短めで頸部が太いため、全体的にみるとがっしりした印象を受けます。前がみはなく、たてがみは16~20cmと短く直立しています。体色は生息地により変異がありますが、全体的に灰色で、腹は白色、背の中央に黒線があります。
  ヌビアノロバは肩に黒線がありますが、本亜種にはなく、黒い縞が背中中央部の腰から尾にかけてあります。前後肢共に細い黒線がありますが、ヌビアノロバは黒線がなく両者を区別するのは容易です。
  歯式はオスの場合、門歯3/3、犬歯1/1、前臼歯3-4/3、臼歯3/3で合計40~42本ですが、メスは稀に小さな犬歯が生えていますが、通常はなく36~38本です。乳頭数は1対で、鼠蹊部(そけいぶ)にあります。

えさ
  1日の大半(14~19時間)は採食時間に費やし、イネ科やカヤツリグサ科の草を主食としていますが、樹皮や葉、芽、果実、根も好んで採食します。野生の場合毎日水を飲まないでも平気で、体重の約30%水をロスしても、2~5分水を飲めば一気に補充できます。一般に砂漠にすむ動物たちは尿細管が長く、濃い尿を排泄することができるため、塩分濃度の高い水や餌を採食できます。ウシは1.0~1.5%の塩水、ラクダはこの3倍、ロバは中間程度の2倍の濃度の塩分を含む水も飲めると思われます。生息地には餌が少ないため枯草のような消化しにくい餌も採食しますが、消化管の中にとどまる時間が短いので、消化しやすい部分だけを利用し、質の悪い部分をすばやく排出することで多くの餌を採食できます。

繁殖
  初発情は生後約12ヶ月齢でみられますが、ふつう2~3歳まで繫殖しません。発情周期は20~21日間で受胎するまで続きます。メスの発情を匂いで察知したオスはフレーメンを呈し、続けて排尿をします。妊娠期間は約360日(330~365日)です。繁殖行動は雨期の間に起こり、出産はほとんどが10月から2月にみられます。初産は2歳から2歳半で隔年に繁殖します。出産率が高いのは約4歳で、14歳までの繁殖記録があります。オスは生後9ヶ月齢で精子が認められますが、性成熟は約2歳です。生まれた子は1時間足らずで親について歩き、こどもは鼻を母親にこすり付けたりしています。母親は出産した日は他個体をそばに近づけずグルーミングしながら面倒を見ます。子どもが母親から1m以内にいる割合は生後1ヶ月齢までは71%で、生後1~2ヶ月齢ではこの割合が35%、1歳になると母親との距離はほとんどの時間で10m以内になった、との報告例があります。生後4~6ヶ月齢で離乳しますが、水飲み場を探すために一緒にすごし、生後1年でも時々授乳します。
  飼育下の長寿記録としては、イスラエルのハイバール自然保護区で1975年に生まれた個体(オス)が、2004年2月現在28歳8ヶ月で飼育中という記録があります。

主な減少原因
  生息地の半砂漠地帯まで牧畜のための開発が進み、家畜を飼うようになると少ない水場と餌を家畜と競合するようになりました。家畜としても有益なロバは、野生種を捕獲し家畜のロバやウマと交配させて、現在の家畜ロバの近親交配を改善するために捕獲してきました。さらにエチオピアとエリトリア間で戦争が勃発したため、武器が容易に入手できると食用や薬にするための狩猟も増加していっきに減少してきました。
  野生のアフリカノロバは、現在はエチオピアとエリトリアを合わせても600頭以下、ソマリアでは10頭以下で、3ヶ国あわせとも600頭に満たないと言われるほど危機的な状況にあります。しかし、幸いなことに2012年現在44の施設で220頭(オス 87頭、メス 133頭)が飼育され、繁殖も順調といわれています。

分類   奇蹄目 ウマ科 ウマ属
分布   アフリカ北東部(エチオピア、エリトリア、ソマリア)
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
体高(肩高)
尾長
195~205cm
270~280kg
110~140cm
40~45cm
絶滅危機の程度     国際自然保護連合(IUCN)発行の2014年版レッドリストでは、絶滅寸前種(CR)に指定され「ごく近い将来における野生での絶滅の危険性が極めて高い」としています。また、ワシントン条約では付属書Ⅰに掲載し、商業取引を禁止しています。
  絶滅寸前種の定義のひとつに、「成体の生息数が250頭未満と推定され、かつ生息地が100 km2未満か、あるいはここ10年間または三世代で少なくとも80%以上生息数が減少したもの」としており、早急に対応しなければ絶滅を免れません。
 
  家畜となったロバ
  ロバはおよそ6,000年前にアフリカノロバから家畜化されました。当初は肉用に家畜化したのでしょうが、乾燥地帯にすんでいるので暑さに強く、粗食にも耐えて丈夫な体を持っているため、使役動物としても飼育し始めたのです。車がなかった時代、ロバは悪路の山道を背に荷物をのせたり、車を曳いたりして大活躍をしました。現在もなお自動車が通れない山地にすむ人々の生活に貢献しています。

主な参考文献
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.
Grinder,M.I., Krausman,P.R. and Hoffmann, R.S.   Mammalian Species. No.794, Equus asinus. The American Society of Mammalogists. 2006 .
今泉吉典 (監修)    世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典・中里竜二   奇蹄目総論 In世界の動物 分類と飼育 4 奇蹄目 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
Moehlman, P.D.(ed)   Equids: Zebras, Asses, and Horses ― Status and Action Plan ―, IUCN. 2002.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1,The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
大高成元(写真)・川口幸男・中里竜二   十二支のひみつ 小学館 2006.
坂田隆   砂漠のラクダはなぜ太陽に向くか? 講談社 1991.
祖谷勝紀   ウマ科ウマ属について In世界の動物 分類と飼育 4奇蹄目 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
祖谷勝紀   世界の野生馬(Ⅰ) どうぶつと動物園 Vol. 34. No.8 .(財)東京動物園協会 1982.
正田陽一(監修)   馬の百科 小学館 1982.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World.2. Hoofed Mammals,Lynx Edicions 2011.

参考

今年は午年のため、おもしろ動物大百科 2014年1月1日付けで、「干支:ウマにまつわる話(番外編)」を載せています。
  ウマ科の話は干支の記事も合わせてご覧ください。参考までに「ウマ科・体の特徴」を一部加筆して以下に載せておきます。

ウマ科 体の特徴
1. 蹄の特徴
  化石で見ると、ウマの祖先は始新世前期の5,600万年前に現れたヒラコテリウム(エオヒップス)で、前足4本、後足3本の指がありました。その後第3指が太くて長くなった結果、5,000万年以上の時を経て、100万年前(洪積世)になると第3指だけが残りました。これは1本の蹄に体重を乗せて、できるだけ早く走って肉食獣から逃げるための適応と考えられています。野生ウマは長距離を移動するので、伸び続ける蹄も程よくすり減るのですが、飼育すると過剰に伸びたり、反対に使いすぎて摩耗し過ぎたりします。そこで装蹄師が蹄を保護するために定期的に削蹄して蹄鉄を付けているのです。日本では蹄鉄が普及する前、ウマは平安時代から軍馬として貴族や武士が所有し大きな戦力となっていましたが、平安時代末期には馬わらじを作り、蹄を保護していました。
  草食獣が肉食獣から身を守る術として、ウマは素早く逃げる方法を身につけ、サラブレッドは最高時速77kmの記録もあります。しかし、ロバはウマの仲間で最も蹄の幅が狭く早く走るより、半砂漠化した岩石が混じった環境に適応していきました。

2. 消化器の特徴
ウシとウマは良く比較されますが、それは消化器でも同じです。草食獣は胃や腸内に無数にいる微生物により食物繊維を発酵分解し、最終的には微生物をエネルギー源として吸収しています。内容物1ミリリットルの中に細菌が数千億、プロトゾア(原虫)が数十万いて、この中にセルローズを分解できる細菌と真菌がいます。十分に消化させるためには発酵をさせることが重要ですが、ウマの場合、繊維成分は小腸の後部にある盲腸や結腸の発酵槽まで行かなければ発酵分解されません。ウシは前胃が発酵槽の役割を果たし第1胃と第2胃で約200リットル入ります。胃と腸の容量比はウマでは胃が1とすれば腸は20、ウシは胃が1に対し腸は0.5です。採食時間はウマが10~20時間と長いのに比べ、ウシは6~9時間ですが、反芻に9~11時間費やすのでほぼウマと同様になります。ウマは腸内滞留時間も短く約10時間(ウシは40~50時間)と短いので次々と食べて消化の悪いものは排泄します。そのため馬糞は粗繊維が残りパサパサですが、牛糞は良く消化され水分が多くペチャとなっています。

3. 歯と鼻の特徴
顔の長い人がウマのように長い顔と例えられますが、長い顔には大きな歯と鼻が収まっています。ウマは走るときに大量の酸素を必要としますが、その時鼻を円形に膨らませて取り込みます。また、口中には、オスは40本、メスはふつう犬歯を欠いているので36本の大きな永久歯があります。このように大きな歯と鼻を必要とするために長い顔となったのです。オスは門歯(前歯)と犬歯の間、メスは門歯と第一前臼歯の間が大きく開き、この部位を歯槽間隙と言いますが、この部位に轡(ハミ)を通しています。ウマは上顎と下顎の両方に歯が生えていて先端がきっちり合い、草を噛み切ることができ、樹皮も食べることができます。

4. 聴覚、視力、嗅覚
聴覚は人間の場合20~2万Hz(ヘルツ)の範囲が可聴域ですが、ウマはおよそ3万Hz(ヘルツ)の高音を聞くことができるので、私たちに聞こえない音を聞いていることになります。さらに耳は自由に動かすことができ、長い首と共に音のする方向に向けて音を拾います。目はこめかみのすぐ下にはみ出すように外側に出て、瞳孔は横長で真後ろ以外は320~340度の広範囲を見渡せることができます。視力自体はそれほど良くなくて停止していれば約300m、走行中はおよそ100m先の物を識別できると推定されています。色は赤、青、緑、黄色、灰色が見分けられます。嗅覚もまた優れており、仲間や人間、餌の識別は嗅覚に頼っています。他にも触覚や味覚など五感を駆使して、外敵の接近や仲間を認識しています。

 
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