川口先生のペットコラム
旭化成ホームズ株式会社
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ゾウの先生 川口 幸男

1940年東京都伊豆大島に生まれる。上野動物園飼育課を定年退職後、エレファント・トークを主宰。講演や執筆をしている。講演依頼は、メール またはFax 048-781-2309にお願いします。
NHKラジオ番組夏休みこども科学電話相談の先生でもあり、本編では長年の経験を踏まえて幅広く様々な話題を紹介します。
わんにゃんドクター 川口明子

日本獣医畜産大学卒業、同大学外科学研究生として学び、上野動物園で飼育実習後、埼玉県上尾市にかわぐちペットクリニックを開業する。娘夫婦もそろって獣医師で開業しており、一家そろって動物と仲良くつきあっている。
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おもしろ哺乳動物大百科116 偶蹄目(クジラ偶蹄目)カバ科 2015.9.1

116)コビトカバ

  コビトカバ属は本種1種のみです。別名「リベリアカバ」とも呼ばれてリベリアに最も多く住んでいますが、他にもギニア、コートジボワール、シエラレオネに分布しています。熱帯雨林の低地で木々が生い茂った湖沼や川辺近くの湿潤な場所に住んでいます。一日の大半は行動圏の中にある数ヶ所の決まった場所で休息して過ごします。活動時間帯はおもに夕方から夜間で、深い茂みの中にあるトンネルのような道や湿地帯にある堀を利用して移動します。隠れる場所としては、川岸にある他の動物が使ったほら穴やくぼ地が利用されます。危険を感じた時は水中に逃げます。行動圏はメスが0.4~0.6km2、オスは1.65~1.85 km2で、オスの行動圏の中には複数のメスの行動圏が含まれています。そのため一夫多妻の可能性もあると推測する学者もいます。コビトカバはふつう単独生活で、成獣はお互いに接触を避け、交尾期にのみ一時的に出会います。そして争うような縄張りはもたないとの報告もあります。カバよりも陸上生活に適応していて、日中も水中に入り続けることはなく、皮膚を乾燥から保護するために川の土手などの湿った場所を複数もち、時々居場所を変えています。コミュニケーションは、雌雄共に掛け糞をするので排泄物で情報を得ていると考えられます。

  この写真を見ると、カバの子どもと見まちがえるかもしれませんが、これでも立派なコビトカバの成獣です。体重はカバの十分の一くらいです。
この写真を見ると、カバの子どもと見まちがえるかもしれませんが、これでも立派なコビトカバの成獣です。体重はカバの十分の一くらいです。
写真家 大高成元氏 撮影
   

体の特徴

  体長(頭胴長)150~175cm、尾長は約20cm、体高(肩高)75~100cm、体重160~270kg
  一見するとカバの子どものように見えますが、成獣の大きさはカバのおよそ十分の一です。頸部が長く頭部を少し下げると大きなカーブを描くように地面に鼻面が届きます。頭部は丸く、カバのように広く平らではありません。先端に大きく丸い鼻孔がななめ前向きに開口しています。目は突き出てはいないで少しへこんでいます。カバやワニの頭部は、水面に没したときに耳、目、鼻が横一線に出て、鼻で呼吸し目で見て耳で聞くことができます。コビトカバは顔の三分の一を水面に出さないと鼻で呼吸することや見ることが一緒にできません。カバの祖先はコビトカバと同じような形態をしていたと考えられていることから、コビトカバはカバの祖先系と考えられています。体毛は唇と尾の先端にまばらに生えていますが、他にはありません。体色は背中が灰黒色、両側はさらに灰色が強く、腹部は灰白色から黄緑色です。皮膚の特徴として、表皮の角質層が薄く毛細管の役割をしており、水分を外に逃がしてしまうことが挙げられます。乾燥した空気中ならば人間の3~5倍も水分の消失率が高いようです。表皮の毛孔から浸出する液体は透明でなめらかで皮膚に潤いを与えています。その色は明るい光の下で赤く反射します。この分泌物は、納豆の粘りと似ているが乾くと黒い岩のり状になる、との表現もあります。
  4肢の指は4本です。カバはそれぞれしっかりした指で体重を支え、中央の2本の指の間に被膜があり水かきの役割を果たしています。一方コビトカバの側指(人さし指と小指)は小さく、体重を支える役割を果たしていません。指の間の被膜もわずかにある程度でカバのようにはうまく泳ぐことができず、水辺のぬかるみでは足がめり込んでしまいます。そのため祖先はイノシシに似た動物と推測されています。歯式は、門歯2/1、犬歯1/1、前臼歯4/4、臼歯3/3で合計34本です。下顎の門歯は、カバは2対ありますがコビトカバは1対です。生後8時間経った時に口に手を入れてみたところ、上顎に2本、下顎に4本の歯が萌芽し始めているのが確認されています。外見上、コビトカバはカバより一層口を大きく開くことができるとの報告もあります。乳頭数は1対で、後肢の間にあります。

えさ
  野生での食性については詳しい報告がありませんが、木の芽、葉、水生植物、草、落ちた果実、茎や根などを食べていると推測されています。厚い唇は餌を引きさいたり、引き抜くときに使います。
  動物園では、牧乾草、草食獣用ペレット、ヘイキューブ、おから、キャベツ、他にもバナナなどをあたえています。

繁殖
  繁殖期は決まっていません。発情周期は27~30日間隔で発情は2~3日続きます。発情中、雌雄は一緒にいて交尾は水中と陸上の両方で確認されています。妊娠期間は184~204日です。1産1子で稀に双子が生まれます。オーストラリアのメルボルン動物園でオスの双子が生まれていますが、1頭はすぐに死亡し、1頭のみ母親が見ていたそうです。この記事は1982年のものですが、当時世界で4組目の双子だったそうです。出産直後の体重は3.4~6.4kgです。体重について、飼育下の測定記録では生後9日齢で11kg。12日齢で11.5kg、30日齢で20kg、100日齢で42kg、15ヶ月齢で132.5kgの報告があります。哺乳は1日4~5回で、カバの授乳は水中ですが、コビトカバは陸上で親が横臥して授乳します。子どものうちは母親の臀部で休憩していますが、そのうち頭部の方に移動します。生後100日齢で哺乳回数が減って、105日齢で哺乳が見られなくなりました。ふつうは生後6~8ヶ月齢で離乳をします。生後2日齢で母親の便を口に入れた報告もあり、生後早いころから固形物も少しずつ食べ始めているのかもしれません。ふつうは6~8ヶ月齢で完全に離乳をします。動物園では生後26日齢でオカラを食べ、100日齢ころ母親と同じ餌を食べるようになりました。生後6ヶ月齢で親と別居させました。ふつう子どもは出産後すぐに泳げるという記録もありますが、以前上野動物園で生まれた子どもは、生後1週間は親子共に水に入ろうとしないため、うしろから追って水に入れたところ、子どもはブクブク沈んでしまい、あわてて掬い上げました。この個体は生後10日齢ころから徐々にプールに入りはじめて、数日で泳げるようになりました。一方、近年繁殖した親子を観察していると、出産した日から、新生児は母親の後からプールに入り、おぼれそうになると母親が下から鼻で押し上げて慣らせたそうです。イルカもまた、生まれたばかりの子どもは泳げず母親が下から押し上げて泳ぐのを助けることがわかっています。雌雄共に3~5歳で性成熟します。
  コビトカバは2013年12月31日現在、133の施設で353頭飼育されていますが、その性別はオス136頭、メスが207頭、不明10頭となっていて、飼育下ではオスの方が少ない傾向は現在も続いていて、オスは貴重な存在となっています。
  野生での寿命は明らかになっていませんが、動物園で飼育しているコビトカバは30~40年と推測されます。飼育下の長寿記録では、オーストラリアのパース動物園で1937年12月7日から1980年4月10まで飼育された個体(メス)の飼育期間42年4ヶ月、アメリカのワシントン国立動物園で1947年3月5日に生まれ、1988年11月16日に死亡した個体(メス)の41歳8ヶ月という記録があります。
  現在、日本では4園館(上野動物園、東山動物園、石川動物園、アドベンチャーワールド)で9頭を飼育しています。

外敵
  人間以外の外敵としては、成獣はヒョウやナイルワニ、幼獣ではこれらの他にアフリカゴールデンキャット、アフリカジャコウネコ、アフリカニシキヘビがいます。

分類   偶蹄目(クジラ偶蹄目) カバ科 カバ属 コビトカバ(リベリアカバ)
分布   アフリカの西部 (リベリア、ギニア、シエラレオネ、ガーナ、コートジボワール)ナイジェリア(絶滅?)
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
体高(肩高)
尾長

150~175cm
160~270kg
75~100cm
約20cm

主な減少原因・絶滅危機の程度     アフリカに生息する他の動物と同様に、戦争の勃発で生息地が荒らされると共に、農地に転用するための大規模な森林伐採で、生息地が失われ、かつ分断されていることが大きな減少原因です。これは広範囲に生息していた個体同士の出会う機会を奪うことになるため近親交配の悪影響も懸念されています。その他、肉がイノシシに似て美味と言われ、食肉用に狩猟されています。
  コビトカバは現在国際自然保護連合(IUCN)の保存状況評価によって、絶滅の恐れが非常に高いとして、2014年版のレッドリストでは絶滅危惧種(EN)に指定されています。また、ワシントン条約では付属書Ⅱに掲載され、商業取引には輸出国の許可証が必要など一定の制限があります。1990年代はじめの生息数は3,000頭以下と報告されていますが、その後も生息数は減少しているものと推測されます。
コビトカバの発見に ついて     現地ではそれまでもコビトカバの存在は噂されていましたが、学会に認められたのは1849年のことでこの時に学名がつけられました。生きた個体が実際に動物園に入ったのは1873年でイギリスのアイルランド動物園が最初でしたが、搬入後わずか5分足らずで死亡しました。その後、ドイツの動物商カール・ハーゲンベックが動物コレクターのハンス・ションブルグの支援を受けながら1910年から捜索を行い、1912年に生きた個体5頭の捕獲に成功し、ドイツのシュテリンゲン動物園で飼育されました。この5頭のうち2頭がニューヨークのブロンクス動物園、1頭がロンドン動物園に移動し、そこで順調に飼育されたということです。1963年の公式記録によれば世界中の31園で80頭が飼育されていました。日本には1960年(昭和35年)にメス1頭、翌年オス1頭が搬入され、1962年(昭和37年)4月には繁殖に成功しています。

  コビトカバはジャイアントパンダ、オカピと共に世界三大珍獣と呼ばれ、動物関係者ならば一度は見たい動物でした。しかし、その姿はカバの子どものような姿で何とも地味な印象でした。

主な参考文献
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.
D.A.マクドナルド編 今泉吉典(監修)   動物大百科 4 大型草食獣 R.A.ペルー著 カバ 平凡社 1986.
今泉吉典 (監修)   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典   カバの分類 In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ ㈶東京動物園協会 1977.
藤本卓也   コビトカバの誕生 どうぶつと動物園 Vol.54 No.9, ㈶東京動物園協会 2002.
M.ジョーンズ   コビトカバの戸籍しらべ どうぶつと動物園 Vol. 18 No.3. ㈶東京動物園協会 1996.
中里竜二   コビトカバの双子誕生 どうぶつと動物園 Vol.34 No.8 (財)東京動物園協会 1982.
西山登志雄   コビトカバ(動物園教室) どうぶつと動物園 Vol. 22 No.8 ㈶東京動物園協会 1970.
西山登志雄   コビトカバの誕生 In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ ㈶東京動物園協会 1977.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.Ⅱ The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker,S.P.(ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World. 2. Hoofed Mammals, Lynx Edicions 2011.
高島春雄   動物発見記 どうぶつと動物園 Vol.14 No.7 (財)東京動物園協会 1962.

 
おもしろ哺乳動物大百科115 偶蹄目(クジラ偶蹄目)カバ科 2015.8.1

カバ科

  カバ科の特徴は吻(くちびる)が幅広く、鼻孔がその頂上に開いていることです。指はそれぞれ4本あって中央の1対は皮膚でつながっています。蹄の内側はサイやイノシシは平らですがカバの足裏は凹凸があり、肢の中手骨と中足骨は離れています。頚骨の数は7個で多くの哺乳類と同じです。
  カバ科はカバ属とコビトカバ属の2属に分類されます。

115)カバ

  アフリカのサハラ砂漠以南、西はセネガル、ギニアから東はケニア、エチオピア、南はアンゴラ、南アフリカ北東部まで広く分布しています。
  生息地は平地から標高2,400mまで広く分布していますが、ミオンボ森林地帯(アフリカ中央部、南部に広がる森林地帯で多くの大形哺乳類が生息する)や、草原の川や湖の周辺で生活しています。日中は、ほぼ水の中に入るか、水辺で寝転んでいます。夜間になると陸にあがり5~6時間を採食に費やします。餌場まで自分の排泄物の匂いを頼りに、平均で1~5km、中には30km歩いた個体もいました。足が短い割には短距離ならば時速約40km、ふつう30kmで走り、急こう配な坂も登りますが、ジャンプはできません。座るときは先に腰を落として座り、起きるときは前足から立ち上がります。
  カバは群れを作って生活しています。群れの個体数は乾季に多く、雨季には拡散し少なくなります。ふつうは10~15頭ですが、2~50頭くらいの幅があり、時には150頭くらい集まる場合もあります。
  生息密度は水辺沿い100mあたりにすると、湖では平均7頭、川の場合は平均33頭でした。かつて1987年にザンビアのルアングワ川で165kmの範囲に推定6,554頭が集まっていた記録があります。
  オスは縄張りを持ちますが、持てるのは通常20歳以上の成獣で、川ならば50~100m、湖沼では250~500mの浅瀬に交尾用の縄張りを持ち、中心には保育所があってメスが交代で子どもの面倒をみます。オス同士が縄張りの境界線で出会ったときは、糞を飛ばしながらしっぽを立てて見つめ合いますが、大抵はそのままお互いに向きを変えて自分の縄張りにもどります。オス同士で戦う時は、ブタのようにブーブー声を上げながら、巨大な牙を使ったり、ぶつかり合ったりする本格的な闘争もあれば、糞を飛ばし合って穏やかに決めることもあります。湖で8年、川で4年同じ縄張りを維持した記録があります。縄張りに侵入したワニを殺したりするほか、人身事故も多いと報告されています。
  水中に5分間は潜ることができますが、平均で104秒に1回水面に鼻を出して息継ぎをします。生後2ヶ月齢の子どもでは20~40秒と短くなります。成獣は体の比重が水より大きく体が沈むため、泳ぐのではなく後ろ足で水底を蹴って進みます。子どもは犬かきのようにして泳ぎますが、水底は歩きます。
  アマサギやウシツツキが皮膚の傷口につく虫をつついて食べてくれます。ワニやカメの子どもはカバの背中で日向ぼっこをすることもあります。

  カバのオスは最強の猛獣として有名です。オスが威嚇しているときは誰も近寄らないと言います。
カバのオスは最強の猛獣として有名です。
オスが威嚇しているときは誰も近寄らないと言います。
写真家 大高成元氏 撮影
   

体の特徴

  体長(頭胴長)オス 320~420cm メス 280~370cm、尾長30~40cm、肩高130~165cm、体重はオスで1,500~3,200kg, メスで1,350~2,500kgです。胴回り400~450cmです。オスはメスより一回り大きくなります。
  体色は灰褐色ないし青黒色で腹部と耳と目の周囲はピンクです。アルビノ(白化型)は全身が輝くようなピンクです。頭部は大きく足は短くて前後肢ともに4本の指と蹄があり、第3指と第4指(中指と薬指)の間には水かきがあって泳ぐと考える人もいます。しかし、実際には爪のそばまで皮膚でつながっているので広げることはできず、水かきの役割は果たせないようですが、柔らかい泥の上を歩くときに役立つでしょう。耳は長さが10cm程度で、水に潜るときは耳を倒して水が入らないようにしています。水から上がると耳をくるくると回して水を払い落とします。目は突き出て頭部の上に位置し、鼻の孔もまた上向きにつき自分の意志で開閉できます。これら耳、目、口の位置は、横一線に水面に出ますが、これは水中生活に適応したワニやカエルと同じです。このためうっかりすると川や湖の水中にカバが潜んでいるのを気付かない場合があります。口の幅は約50cmあって、顎は150度まで開くことができます。上唇には剛毛が生え、ネコのひげのように敏感で探知機のような働きをしています。大きな口いっぱいに貯めた水を一挙に吐き出したり、鼻から水を吹きだしたりして驚かすことがあります。尾は長三角形で長さが35~50cm、先端には針金のような毛が生えています。排便の時に左右にはげしく振って糞をまき散らす独特の行動があります。これは水陸共に行われ、縄張りや道しるべの役割を持っています。体には短い剛毛が生えていて、この根元から粘液が出ます。皮膚の厚さは上野動物園における解剖結果によれば、胸部がもっとも厚く4cm、腹部が最も薄く1.5cmでした。この皮膚の下には3~5cmの脂肪層があるので合わせると5~10cmになります。この厚い皮膚のお蔭で長い間水中にいても体が冷えることはありません。このように厚くて硬い皮膚をもつカバやゾウ、サイは厚皮動物とも呼ばれています。
  かつてカバは血の汗をかくと言われていましたが、実際には体の表面に分布する粘液腺から分泌されるアルカリ性で粘りのある赤い粘液で汗ではありません。この粘液は乾くと皮膚が赤く見えますが、これは赤い色素が沈着しているのです。粘液の分析結果によれば、赤い色素は紫外線を遮断する効果があって強い陽射しから皮膚を保護できます。さらに、群れで生活して水中で絶え間なく排便しますが、汚れた中で感染症に罹患しないのは細菌の感染防止効果もあると考えられています。このように半ば水中生活に適応した体は、乾燥に弱く水や泥などで絶えず湿らせないと表面がひび割れを起こすため粘液によって皮膚を保護するようになったのです。
  歯式は、門歯2/2、犬歯1/1、前臼歯3-4/3-4、臼歯3/3で合計36~40本です。下顎の門歯は前方に伸び続け、上顎犬歯の周囲は23cm、下顎の犬歯は上方に70cm位まで伸び、重量が3kgになった報告もあります。下顎の前方に突き出た門歯はスコップ代わりになって地面から草を引き抜くときに役立っています。
  胃は3室に分かれていますが、反芻動物のようにはっきりした区分がなく反芻もしません。盲腸はありません。睾丸は腹腔内にあり、排尿のときにはペニスは後方に曲がり飛ばすようにします。視力、聴力は優れています。乳頭数は1対で、鼠蹊部(そけいぶ)にあります。

えさ
  カバの特徴の1つは、頬の筋肉と舌で喉を塞ぎ、水中で採食できる点です。幅広の口は短い草を採食するのに適応しています。採食量は一般に草食獣が体重の2.5%採食するのに比べ1~1.5%、20~45kgと少なめです。これは夜間の採食後日中を休憩することで体力を消耗しないのでエネルギーをそれほど必要としないからと考えられています。
  本来は草食動物で草や水草、畑の作物も採食しますが、稀に肉食の報告もあります。
  1997年のナショナルジオグラフィックに、インパラの死体を食べるところが報道され話題になりましたが、他にシマウマやカバの死体を食べている例が報告されています。

繁殖
  繁殖期にははっきりとした季節性はありませんが、多くの地域で乾季に交尾し雨季に出産をします。ウガンダでは多くの場合2月と8月が交尾期、10月と4月が出産期です。南アフリカでは雨季(10-4月)がピークです。野生のカバは発情すると水中から鼻だけ出してブーブー声を出しあい、オスは排便をしながらメスの後を追いますがメスは尾を振りながら逃げまわり、やがて交尾します。動物園の場合、発情の兆候はメスの食欲減退や落ち着きがなくなった例や、変化が見当たらないとの報告もあります。交尾は水中で行われます。妊娠期間は227~240日です。飼育下では妊娠末期の5~6ヶ月目にはオスを嫌うようになるため、メスは単独で生活させます。1産1子ですが稀に双子がいます。野生ではふつう浅い水辺や水中で出産しますが、陸上での出産例も報告されています。生まれたばかりの赤ちゃんの体色はピンク色で、体重は25~55kgです。水中で産まれた赤ちゃんはまだ泳ぐことができず、母親が下に潜って鼻先で体重を支えます。赤ちゃんは潜って乳をのみますが、潜水時間は30秒以下なのでこまめに潜ったり浮いたりして飲みます。陸上でヨチヨチ歩く程度でも、水中では上手に泳いで母親の腹の下に潜り乳を飲むことができます。授乳は10~12ヶ月齢まで続きますが、1歳半や2歳まで続いた例もあります。また、飼育下では陸上で授乳する場合も観察されています。出産間隔はふつう2年です。性成熟は3~4歳ですが、野生のオスが交尾できるのは6~13歳、メスの初産は7~15歳です。子どもは母親の背に上り、子ども時代の外敵となるワニから身を守ります。
  保護された野生個体の平均寿命は41歳。飼育下の長寿記録としては、ドイツのライプチヒ動物園で1934年4月26日に生まれ、ドイツのミュンヘン動物園で1995年7月12日に死亡した個体(メス)の61歳2ヶ月という記録があります。

外敵
  人間以外の外敵としては、主に若い個体がライオン、ハイエナ、ヒョウに襲われます。

分類   偶蹄目(クジラ偶蹄目)カバ科 カバ属
分布   アフリカのサハラ砂漠以南
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
体高(肩高)
尾長

オス 320~420cm メス 280~370cm
オス 1,500~3,200kg   メス 1,350~2,500kg
130~165cm
30~40cm

主な減少原因・絶滅危機の程度     牧草地や農地への転用による生息地の分断や減少、食用や犬歯を目的とした密猟と乱獲により、急激に生息数が減少し、アフリカで第2の生息地であったコンゴ民主共和国で95%以上減ってしまいました。このため、IUCN(国際自然保護連合)発行の2014年版のレッドリストでは、絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定されています。またワシントン条約では付属書Ⅱに該当し商取引が制限されています。

主な参考文献
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.
今泉吉典 (監修)   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
D.A.マクドナルド編 今泉吉典(監修)   動物大百科 4 大型草食獣 R.A.ペルー著 カバ 平凡社 1986.
今泉吉典   カバの分類 In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ ㈶東京動物園協会 1977.
松崎勝   カバの出産と育児  In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ ㈶東京動物園協会 1977.
中川志郎(監修)   カバ 創育 1988
中川志郎   カバの皮ふ  In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ (財)東京動物園協会 1977.
西山登志雄   カバの飼育  In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ ㈶東京動物園協会 1977.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.Ⅱ The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker,S.P.(ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 2, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World. 2. Hoofed Mammals, Lynx Edicions 2011.

 
おもしろ哺乳動物大百科114 偶蹄目(クジラ偶蹄目)イノシシ科 2015.7.2

イノシシ科

  偶蹄目の中では原始的な仲間で、アメリカ大陸にすんでいる仲間はペッカリー科、アフリカ、ヨーロッパからアジアに生息する仲間をイノシシ科の2つに大別しています。ペッカリー科は2属3種、イノシシ科は5属9~13種に分類され、日本には(ユーラシア)イノシシの亜種が本州以南(ニホンイノシシ)と南西諸島(奄美大島、沖縄、石垣島、西表島―リュウキュウイノシシ)に生息しています。
  イノシシ科はイノシシ属、カワイノシシ属、イボイノシシ属、モリイノシシ属、バビルサ属の5属9~13種に分類されます。共通する特徴の1つは鼻端が円盤状になっている点です。また偶蹄類と称されるように蹄の数は前後肢ともに4本ですが、着地する蹄は前後肢共に第3指と第4指(中指と薬指)です。第2指と第5指は側蹄(または副蹄)といいふつうは地面につきませんが、坂道を登るとき滑り止めの役割を担い足跡がしっかり残ります。同じ側蹄でもシカの仲間は小さく坂道を登る時にも足跡は残りません。
  上顎の門歯はイノシシ属とカワイノシシ属では3対ですが、バビルサ属は2対、イボイノシシ属とモリイノシシ属では1対です。イノシシでは犬歯は上下共に牙となっています。頬歯(前臼歯と臼歯)の咬合面は円い隆起が数個あり丘歯といます。隆起の部位は硬いエナメル質で、硬い草を採食するのに適応しています。消化器は偶蹄目のウシ科、シカ科、キリン科など進化の進んだ種類では胃が4室に分かれ反芻しますが、イノシシ科では胃は1室で反芻をしません。
  なお、イボイノシシ属は1種に分類していましたが、最近の研究では歯式が違う点と生息域が違う点でサバクイノシシを別種として2種に分類する研究者がいます。

114)イボイノシシ

  アフリカのサハラ以南、西アフリカから東アフリカ、さらには南アフリカにかけて、熱帯降雨林を取り囲むように、サバンナ疎林とサバンナ草原に広く分布しています。
  森林と厚い下草のある場所は避けて開けた草原で生活し、昼行性で活動時間帯は早朝と夕方が多く、暗くなる前に巣穴に入り眠ります。母系集団で基本的な群れ構成は、1頭のメスと2歳までの子どもで通常5頭ほどです。これらの家族がいくつか集まりバンドを作り、さらにバンドが集まるときは血縁関係のない単独オスや群れから出た亜成獣も加わりクランと呼ばれる多数の集団をつくることがあります。亜成獣のグループから完全に成獣になった個体はふつう単独生活をします。行動圏は平均1.74km2(0.64~3.74 km2)、1日の平均移動距離は約7kmの報告があります。ハイエナやライオンに襲われて逃げる時、ふだんならば、だらりと下げている尾をピンとあげ、一列に並んで逃げます。尾をあげるのは仲間への警戒の合図とも考えられ、最高時速55kmで走るといわれています。シマウマやヌー等の大型の草食動物と一緒に過ごすことで外敵の接近を察知しています。群れをつくらず子育てを母親だけで行うイボイノシシは、あの手この手で弱い子どもたちを守ります。休憩するときは自分が掘った巣穴や、岩陰の隙間、他の動物、とくにツチブタが捨てた空の巣穴を利用して休みます。巣穴は草原に何ヶ所かあり出産時の隠れ場所としても使い、中に入るときは臀部から入り、もし外敵が狙ってきたら牙で対抗して身を守ります。子どもを持ったメスは気が荒く牙を向けて突進するときもあります。暑い日には水場で転げ回り、水浴や泥浴をしますが、寄生虫を落としたり体温を冷やしたりする効果があります。独特な行動として、ジサイチョウやシママングースの巣穴に行き、かれらにダニや寄生虫をとってもらうためにグルーミングをしてもらうのが観察されています。乾季の数ヶ月間は水分の多い地下茎や球根を食べて水を飲まずに過ごします。子どもの死亡率は生後1歳までに肉食獣による捕食や他の原因で50%以上の地域もあります。
  コミュニケーションは、泥浴び時の排尿以外とくにオスは額線を木にこすりつけて行います。この他押し合いや牙を使って闘争することもあります。

  泥浴びは至福のとき、子どもが背中でまどろんでいます。
泥浴びは至福のとき、子どもが背中でまどろんでいます。
写真家 大高成元氏 撮影
   

体の特徴

  頭胴長 オス 125~150cm、メス 105~140cm 体重 オス60~150kg メス50~75kg 尾長 35~40cm、肩高 55~85cm
  首は短く、頭部は大きくて、目の下側と牙の後ろには大きなこぶ状のイボがあるので他のイノシシの仲間と容易に識別できます。イボイノシシの名前の由来になっているこのイボは厚い皮膚と軟骨で出来ていて、特にオスで発達して約15 cmあります。体色は全体に灰褐色で、頭頂部から背にかけて黄色がかったたてがみあります。日本のイノシシと比べると、足が長く筋肉質で一回り小型です。オスの目の周囲はハーダー腺からの分泌液によって黒ずんでいます。鼻は頑丈で穴掘りの他にも本来の役割である嗅覚に優れています。オスの牙(犬歯)は長く先端がエナメル質で被われて上顎で25~30cm 、最長で67 cmの記録があり、闘争時に武器として使います。メスは短く15.2~25.5 cmです。上顎の犬歯ははじめ外側に向かって、続いて後上方に曲がって伸びます。歯式は、門歯1/3、犬歯1/1、前臼歯3/2、臼歯3/3で合計34本です。ただし、サバクイボイノシシは上顎の門歯を欠き、下顎の門歯も欠如するか2対しかないので合計26~30本になります。乳頭は腹部に2対あります。

えさ
  草食を主食とする雑食性で、草、根茎、茎の他に、果実、木の実、種子、葉、カヤの根、コケ、キノコ、ミミズ、カニ、タニシ、昆虫の幼虫、カエル、ヘビ、鳥の卵、時には腐肉を採食します。乾季には堅い地面も頑丈な鼻先と肢で掘り起こして地下の根も採食しますが牙は使いません。犬歯は草の茎を巻きつけて引き抜きぬくのに使われます。他のイノシシに比べ動物質の採食率は低いと見られています。採食姿勢は独特で、前肢が長いためひざまずいて採食します。着地する部位は皮膚が硬化しパッド状となり手首を保護しています。
  かつて上野動物園で飼育していたイボイノシシは折れた牙をコリコリと音を立てながら採食していた、との報告があります。

繁殖
  赤道周辺では1年中繁殖が可能ですが、他の地域では繁殖期は決まっていて、通常は乾季の初めに発情し、雨季の初めに出産のピークを迎えます。例えばジンバブエでは発情期は5月と6月で、出産は10月と11月にピークとなり、アフリカ南部では出産のピークは11月から12月にみられます。発情したメスは排尿回数が増加し陰部の腫脹が見られ、発情は3日間ぐらい続きます。オスは発情したメスの後をついてまわり、陰部の匂いを嗅いだりします。オスは発情したメスの間を歩き回り、複数のメスと交尾し、メスも1頭以上のオスと交尾します。繁殖のためにオスがメスを巡って争うこともあり、その場合は牙を使ったり、体当たりし合ったりして勝敗を決めます。妊娠期間は150~175日です。産子数は1~8頭でふつうは2~3頭で、子どもの体重は400~900gです。生まれたばかりの子どもはニホンイノシシのような「ウリ模様」がなく、親と同じような体色をしているのが独特と言えます。出産後1週間を母親は子どもと過ごし、3~6週齢では1日の哺乳回数は12~17回で、約40分おきに哺乳しました。子どもは巣穴を変えるときと遠出するとき以外、6~7週間は家族から離れて巣穴で過ごします。母親は、出産後1週間はめったに巣穴を出ず、数週間は採食量がふだんより少量となります。子どもは固形物を2~3週齢で採食し始めますが、哺乳は生後4~6ヶ月齢ころまで続きます。雌雄ともに1.5歳で性成熟しますが、オスが実際に交尾可能になるのは4歳ころになります。
  飼育下の長寿記録としては、南アフリカのプレトリア動物園で1931年9月8日に生まれ、1952年7月24日に死亡した個体(メス)の20歳10ヶ月という記録があります。・・・

外敵
  人間以外に、ライオン、ブチハイエナ、ヒョウ、リカオン、アフリカクマタカ、ナイルワニ等が挙げられますが、ハイエナが主な外敵となります。成獣より幼体が頻繁に狙われます。

4亜種に分類されています。

P.africanus. africanus africanus Gmelin,1788 サバンナ北部とサヘル地域(サハラ砂漠南縁部の半乾燥地帯);モーリタニアからエチオピアまで
P.a. aeliani Cretzschmar,1828 エリトリア、ジブチ、ソマリア北部
P.a.massaicus Lonnberg,1908 アフリカ東部からアフリカ中央部
P.a.sundevallii Lonnberg,1908 南アフリカ北部一帯
分類   偶蹄目(クジラ偶蹄目) イノシシ科 イボイノシシ属
分布   アフリカ サハラ以南:西はセネガル、モーリタニアから東はエチオピア、南は南アフリカ北部まで。
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
体高(肩高)
尾長

オス  125~150 cm  メス 105~140 cm
オス  60~150kg  メス  50~75 kg
55 ~ 85 cm
35 ~ 40 cm

絶滅危機の程度     かつては開発による生息地の減少、狩猟圧、牛疫の流行により生息数が減少した地域もありましたが、現在は保護区内でも生息数は安定しています。そのために、IUCN(国際自然保護連合)発行2014年版のレッドリストでは、現在は絶滅の危機は少ないとして、LC(低危急種)になっています。

主な参考文献
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.
今泉吉典 (監修)   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
D.A.マクドナルド編 今泉吉典 (監修) R.A.ペルー(著)   動物大百科 4 大型草食獣 平凡社 1986.
今泉吉典   偶蹄目総論 In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ(財)東京動物園協会 1977.
西山登志男   イボイノシシの飼育 In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ (財)東京動物園協会 1977.
中川志郎   キバを食べるイボイノシシIn世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ(財)東京動物園協会 1977
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.1, The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parker,S.P.(ed)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals, Volume 5, McGrow-Hill Publishing Company 1990.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World. 2. Hoofed Mammals, Lynx Edicions 2011.

 
おもしろ哺乳動物大百科113(偶蹄目(クジラ偶蹄目)キリン科) 2015.5.22

113)キリン

 かつてはアジア各国に生息しており、日本にも洪積世前期(約100万年前)の化石が出土しています。現在は、サハラ以南のアフリカで低地から標高2,000mに及ぶ高原で生活し、泥湿地帯や深い森林以外の乾燥した草原や半砂漠、アカシアがまばらに生えているような疎林地に群れで生活しています。群れは1頭の成獣オス、2~3頭の成獣メス、およびその子どもから構成され、10~15頭以上の群れはめったにいませんが、これらの群れが何組か集まって数十頭になることもあります。ふつう年取ったオスは単独か2~3頭で生活します。群のメンバーは一定していなくて、結びつきはゆるやかで、24時間群れの構成が変わらないのは極まれです。群れはシマウマやレイヨウの仲間と一緒にいて、外敵となる肉食獣の接近をいち早く察知します。昼行性で日中の暑さが厳しいときは木陰に入り暑さをしのぎ休息しています。採食は早朝と夕方にそれぞれ約3時間採り、夜間にも採食しその割合は月明かりに左右され、暗い夜では22.4%に対して、明るい夜では33.6%という報告があります。反芻は休息中に行っています。乾燥には強いですが、通常は3日に一度ぐらい定期的に水のみ場を訪れます。近くに水場がない場合は、水分は採食する植物から補えるので、数週間ぐらい飲まなくとも平気です。睡眠は起立した状態で微睡(まどろみ)、安全が確認されれば、2~3時間座って休息することもあります。飼育下では、外敵からの脅威がないため完全に横臥して休息する姿が、ごくまれに観察されています。泳ぐことはできないと考えられ、川や湖及び生活場所として利用しない深い森や湿地帯は生息域の境界線となり、亜種判定の要件にしています。行動圏はオス、メスともに重なり合い25~160km2と生息地により違います。オスはなわばりを持たず, 順位は背比べで背の高い個体が優位となります。メスにも順位制がみられますが、気に入った採食場で劣位のメスが場所をゆずるぐらいのことに限られています。

若いオスたちには、ふつう“ネッキング”と呼ばれる儀式的行動が見られます。2頭が平行に並び、首をゆっくりと振ってからませ体で押し合い優劣を決めるための儀式的なもので激しい争いになることはありません。しかし、発情中のメスを巡って成獣オスが交尾権を得ようとする場合、本格的な闘いになります。互いに相手の体に頭をぶつけあう激しいもので数時間に及び、時にはどちらか一方が死ぬこともあります。メスの頭骨は2.5~5 kgに比べ、オスの頭骨の重量は8~14kgもあり、頸を大きく振り回し遠心力を利用して相手の頸部に叩きつける攻撃は相当な威力となるでしょう。大きな骨化した頭部はオス同士の闘争のときに脳を保護するために発達したものと考えられています。

水を飲んだり地上の餌を食べる時は、首と前足が長いために頭を下げるだけでは口が地面に届かないので、前足を大きく広げたり、ときには前足を軽く曲げたりしなくてはなりません。このような姿勢はキリンにとっては外敵にたいして全く無防備になるので、周囲に細心の注意を払います。体の高さにくらべて胴の長さが短く、前足と後足の間が狭いため、歩く時は同じ側の前足と後足を一緒に出す側対歩(そくたいほ)という歩き方します。最高時速は56kmで走ったとの報告があります。キリンは鳴かないと言われていましたが、現在は親子や個体間で低いウシのような声やブウブウ声、笛を吹くような声を交わしている、と報告されています。

  ケニア、マサイキリンの親子。うしろでお母さんがしっかり見守っています。
ケニア、マサイキリンの親子。うしろでお母さんがしっかり見守っています。
写真家 大高成元氏 撮影
   

体の特徴

  オス メス
体長 380~470 cm 300~350 cm
体高 (肩高): 260~350 cm 200~300 cm
角の先端
までの高さ:
470~530 cm 390~450 cm
(最大のものでは、オスで588 cm, メスで517 cm )
耳長: 20~25 cm 20~22 cm
尾長: 80~100 cm 75~90 cm
体重: 970 ~ 1400kg 700~950 kg
(最も重い体重は、オス 1930kg、メス 1180kg)

 現存する動物中最も背が高く、後肢にくらべ前肢が長いため、首を伸ばすと頭頂から腰にかけて著しく傾斜した体形となります。前後肢共に第1指、2指、5指は退化し第3指(中指)と第4指(薬指)が蹄となっています。蹄の長さは25~30cm、幅は15~20cmあって敵に襲われた時に身を守る武器にもなります。

体にはオレンジ色がかった茶色から黒色まで様々な斑紋があり、大きさや形、色、あるいは前後肢の部位によって亜種検索をするときの指標のひとつになります。体色は年齢とともに変化しますが、斑紋の形は一生変わらないため個体識別に利用されています。木陰に入ると木の幹や枝、さらにそれらが作る明暗の中に溶け込んでしまい、外敵にたいするカモフラージュの役目を果たします。後頭部から肩にかけて濃い褐色のたてがみが生えています。毛の下の皮膚は灰色がかった色をしています。

角は雌雄共にあり、皮膚の下に骨のかたまりができ、それが伸びて頭の骨についてできたもので、毛の生えた皮膚で被われています。頭頂部にある1対の長めの角は主角と言い、全てのキリンにあり、先端には黒い房毛が生えています。オスの角は大きくて先端の房毛がなくなっている場合もあります。角の数は生息地により2本から5本まで違いがあります。
耳介は比較的小さく幅がせまくて尖り良く動き、聴覚がすぐれています。目は大きく顔の横に突出るようについているため周囲がよく見えます。視力もよく1 kmぐらい離れた仲間を見分けることができ、色も赤、橙、黄緑、緑、青、紫を区別できます。黒く長いまつ毛があり、目を保護しています。

頸の長さは2~2.5mあり、鼻孔は自由に閉じることができ、鼻鏡はなく上唇は垂れ下がりよく動きます。しなやかな舌は青紫色で長さが40~45cmあります。
反芻動物で4室に分かれた大きな胃をもち、第1胃内には無数の微生物がいて、その働きで消化しにくい植物の繊維を利用しています。外見から長い頸を胃から吐きもどしたかたまりがゆっくりと口へ移動するのが観察できます。

歯式は門歯(切歯)0/3、犬歯0/1、前臼歯3/3、臼歯3/3で合計32本です。上額の門歯と犬歯はなく、門歯の部分の歯肉が厚くて硬くなっています。下額の門歯は幅広で縁が鋭く犬歯も平たくて広い咬合面を持ち、中央に裂け目があって2葉または3葉に分かれ、木の枝から葉を切りとり、しごいて食べるのに役立っています。臼歯は四角く頑丈で、固い植物をすりつぶすのに適しています。乳頭は2対鼠径部(そけいぶ)にあります。前後肢共に蹄間腺はありません。

・えさ
主食は木の葉や若芽ですが、その他に草や木の実、花、果実、草なども食べます。最も好んで食べるのはマメ科のアカシア属、オジギソウ属、シクシン科のコンブレツム属などで蛋白質とカルシウムに富み骨の形成に役立っていると考えられています。季節により移動しながら100種以上の植物の中から最も栄養価の高いものを選び採食しています。1日のうち採食についやす割合はオスでは約43%、メス約55%で、採食量はオスで約70kg, メスでは約60kgと報告されています。

雌雄で背の高低差が大きくオスは頭と頸を真上にあげ約6mの高さの木の葉を採食するのに比べ、メスは水平に伸ばして届く高さの葉を食べます。このようにして、餌をめぐるオスとメスの競合が回避されています。

繁殖
キリンには決まった繁殖季節はなく、出産は一年中みられますが、乾季に多い傾向があります。発情は1~3日間続き、この時に妊娠しない場合は通常約1ヶ月ごとに発情を繰り返しますが、2週間ごとに発情がくるという報告もあります。オスは発情しているメスを見つけると寄り添い、メスの陰部や尿の臭いをかいで、上唇をめくり上げ歯をむきだしにしてフレーメンを呈します。妊娠期間は420~468日、平均457日です(多摩動物公園の記録では430~450日という報告があります)。妊娠8~10ヶ月で腹部のふくらみが顕著になり、陰部の腫れもはっきりしてきます。ふつう一産一子ですが、まれに双子の例もあります。野生では東トランスバールで双子の死産が観察されています。飼育下での双子の例は、これまでにカナダのアフリカ・サファリパーク(1975年)他数例あります。

野生では妊娠したメスは群を離れて、長い間使われてきた決まった場所で出産することが知られています。このような場所では子ども同士の群を見ることができます。セレンゲティ国立公園で生れた89頭の子どもうち、特定の出産場所以外で生れたのは、わずかに5頭であったといわれています。キリンは起立したままで出産するので、子どもは約2mの高さから、頭を下にして生み落とされますが、長い体が弓なりになって落ちてくることと、大切な頭部はこの時に地面近くにまでさがっているので、大きなショックはないようです。新生児は30分から1時間後に立ち上がり、初めて母乳を飲むのは生後約1時間30分、4肢がしっかりするのは生後1週間くらいかかります。生れた時の体重は50~70kg, 頭頂までの高さは約1.8mです。親にくらべると頭胴長に対して首の長さが短く、成長するにつれて変化してゆき、相対的に首の長さが増してゆきます。角はありますが、まだ頭骨にはついていず、前の方に倒れていて、生後1週間くらいでまっすぐ立ち上がります。体にはすでに斑紋があり、親にくらべるとやや薄い色をしていていますが、形は一生変わりません。生後1週間ぐらいの間、母親は子どものそばを離れず、外敵が近づくのを非常に警戒しています。生後1~2週間たつと、母親は朝ミルクを与えた後、子どもを安全な場所において採食に出かけます。この時に残された子どもは集まって小さな群れをつくり、その場所をほとんど動こうとしません。生後2~3週たつと木の葉を食べ始め、多摩動物公園の観察によれば生後1ヶ月齢で反芻をはじめる、と報告しています。生後6ヶ月齢で子どもだけの群から離れて、おとなのメスと行動を共にし、生後9ヶ月齢から10ヶ月齢で離乳します。その後、メスの子どもは母親の行動圏内で暮らし、オスは若いオスだけの群に入り、3~4歳で生まれた場所を離れます。性成熟はメスが3~4歳ですが、実際に妊娠可能になるのは5歳ぐらいです。オスの性成熟は4~5歳ですが、成長は8歳くらいまで続き、この頃になると交尾をするチャンスが巡ってきます。

外敵
最大の天敵はライオンで、オスのキリンさえも襲います。クルーガー国立公園で、25年以上にわたって調査したところによると、675頭の犠牲のうち、チーターとワニによるものがおよそ0.6%で、その他はすべてライオンであった、という報告があります。他にヒョウ、リカオン、ハイエナなどは子どもを襲います。セレンゲティ国立公園では生後6ヶ月以内に子どもの50%が死亡した、と報告しています。

長寿記録
野生では20年から25年といわれていますが、アメリカのマイアミにあるクランドンパーク動物園のアミメキリン(メス)は、1958年10月20日に来園、1981年1月15日にマイアミメトロ動物園へ移動し、1995年11月26日に死亡しました。飼育期間は37年1ヶ月になりますが、1956年5月頃に生れたと推測されるので、死亡時の年齢は推定39歳6ヶ月になります。

また、はっきり生まれた年がわかっている例では、オーストラリアのパース動物園で、1937年4月に生れたメスが、1973年6月26日に死亡しています。この時の年齢は36歳2ヶ月でした。

主な減少原因
人口増加に伴い生息地を農地とするため開発した結果生息地が減少したこと、及び密猟が主な原因とされています。

亜種
9~12亜種に分類されますが、日本で飼育されているのは次の2亜種です。
1)アミメキリン Reticulated Giraffe Giraffa camelopardalis reticulate
ケニア山の北斜面からエチオピアの東南部にかけて
2)マサイキリン Masai Giraffe Giraffa camelopardalis tippelskirchi
ケニア山の南斜面からキリマンジャロ山、タンガニーカ中央部まで

分類   偶蹄目(クジラ偶蹄目) キリン科 キリン属
分布   アフリカ サハラ砂漠以南のサバンナ
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
体高(肩高)
尾長

オス 380~470 cm  メス 300~350 cm
オス 970~1400kg メス 700~950 kg
オス 260~350 cm メス 200~300 cm
オス  80~100 cm  メス 75~90 cm

絶滅危機の程度     最近の調査によると約10万頭が生息し、地域によっては減少しているものの、分布域が広いことからさし迫って絶滅のおそれは少ないと判断され、IUCN(国際自然保護連合)は2014年版のレッドリストでLC(低危険種)に指定しています。しかし、ウガンダとナイジェリアの亜種は生息数の減少から絶滅のおそれが非常に高いとして、絶滅危惧種(EN)に指定されています。

主な参考文献
Dagg, A.I.   Mammalian Species No.5 Giraffa Camelopardalis
The American Society of Mammalogists 1971
D.A.マクドナルド編 今泉吉典 (監修)   動物大百科 4 大型草食獣 1986
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.
今泉吉典 (監修)   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
今泉吉典   偶蹄目総論 In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ(財)東京動物園協会 1977.
川口幸男・中里竜二   動物園 [真] 定番シリーズ⑤「キリン」 監修 エレファント・トーク In キリンの基礎知識 CCRE 2008.
近藤忠男著   多摩動物公園のキリン In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ(財)東京動物園協会 1977
前田由里香   キリン どうぶつと動物園 Vol.56 No.11 (財)東京動物園協会 2004
西木秀人著   アミメキリン どうぶつと動物園 Vol.41 No.7 (財)東京動物園協会1989
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.Ⅱ The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Weigl, R   Longevity of Mammals in Captivity; from the Living Collection of the World , Vertriebsverlag. 2005.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World.2. Hoofed Mammals,Lynx Edicion. 2011.

 
おもしろ哺乳動物大百科112(偶蹄目(クジラ偶蹄目)キリン科) 2015.5.1

偶蹄目(クジラ偶蹄目)
  偶蹄目の起源は約6,000万年前の始新世下部に北米に出現したディコブネ科でカバやイノシシと近い仲間と考えられています。現生の偶蹄目は3亜目:イノシシ亜目、ラクダ亜目、ウシ亜目(反芻亜目)に分類されキリンはウシ亜目(反芻亜目)に入っています。
  今泉吉典先生は偶蹄目の仲間を約81属に分類し、その中にはウシ、ヤギ、ラクダ、ブタなど家畜化され、私たちになじみの多い動物が含まれています。体格でみると熱帯林に暮らすマメジカの仲間は小型で、体長30cm、体重約2kgの種類から、大型動物ではキリンの体高が4~5m、カバは体長約4m、体重2,000~3,000kgになります。偶蹄目は南極大陸とオーストラリア、ニュージーランド以外の地域に広く生息しています。奇蹄目は蹄が奇数でしたが、偶蹄目は名前の示すとおり偶数の指を持ち、その先端は蹄で包まれています。例外的にペッカリーは後肢の指が3本ですが、他の科は2本か4本の指があります。4本の指のうち、第3指(中指)と第4指はほぼ同じくらいの大きさで、第2指(人差し指)と第5指(小指)は属ごとに異なった変化をしています。偶蹄目の仲間は反芻するラクダ科、キリン科、ウシ科、マメジカ科、シカ科、プロングホーン科と反芻しないイノシシ科、ペッカリー科、カバ科の二つに大別することもできます。
  最近はDNAの検査や、化石の解析結果からクジラ類が偶蹄目の中でも特にカバと近い関係にあることが判明したので、クジラ目と偶蹄目を統合してクジラ偶蹄目と呼ぶようになりました。そしてこのクジラ偶蹄目はクジラ亜目(類)、カバ亜目(類)、反芻亜目(類)、イノシシ亜目(類)、ラクダ亜目(類)に分類されます。クジラ類はおよそ5,500万年前に陸上から海に入り、当初はまだ4肢もありましたが、その後進化し前肢はヒレにかわっています。多くの哺乳類は息を吸う(呼気)と、気管支を通り左右の肺に入りますが、クジラ目も偶蹄目も右肺に入る気管支が余分にあります。また偶蹄目はくるぶしの骨の両端が滑車のような形(両滑車)をしていますが、初期のクジラの祖先もくるぶしの骨の両端は滑車のようになっていて間接が良く曲るようになっていました。

キリン科
  キリン科の特徴は長い首と4肢ですが、頚骨の数は7個で多くの哺乳類と同じです。角は短く大部分を毛の生えた皮膚でおおわれています。顔には分泌腺はありません。上顎の犬歯はありませんが、下顎の犬歯は幅が広く、2葉あるいは3葉以上に分かれています。胃はシカ科と同様に4室に分かれ反芻をします。胆嚢は成獣ではありません。最も古いキリンの仲間は中部中新世(約1600万年前)と上部中新世(約1000万年前)にユーラシアにいたパラエオトラグス(Palaeotragus )です。角はありましたが、頸は短くアカシカ程度でした。
  キリン科は原始的なオカピ亜科とキリン亜科の2つの亜科に分類されますが、共に1属1種です。

112)オカピ
  オカピはアフリカのコンゴ民主共和国(以下DRコンゴと表記)北東部の西はウバンギ川、北はウエレ川、東はウガンダの国境とセムリキ川の間に位置するイツリ森林、ウバンギ森林の周辺部に生息しています。生活場所は水辺に近く、餌となる若い木や低木の茂る二次林を好み、大木の下は林冠が閉じて低木が茂らないので避けています。DRコンゴ北東部では標高500~1,000m、また、1956年の報告によれば1,450mのホヨ山(Mt.Hoyo)で観察記録がありますが、標高500m以下やDRコンゴ西部の沼沢林には生息していません。主として夜行性で、単独で生活し、交尾期にだけメスは1頭のオスと一緒にいて、子どもを連れている、と報告されている一方で、2頭の成獣、1頭の亜成獣、1頭の子ども、及び単独で生活するワカモノが同じ場所で生活していた例や、1頭の成獣とワカモノ、1歳児が一緒に食事をしている所も観察されています。また、活動時間はラジオコレクターを装着して調査した結果から昼行性と報告していますが、他の報告では夕方と言う報告もあり、野生での調査報告が少ないためはっきりしません。交尾期が終わると、すぐに雌雄は別れます。
  行動圏は平均数km2 でオスは広く10.5 km2 以上、メスと亜成獣は狭いと報告があります。また、ラジオトラッキングの調査結果によれば、繁殖したメスが3.0~5.5 km2 、オスは15 km2 で重複していました。発達した嗅覚は排泄物や分泌腺の痕跡からメスの発情情報を嗅ぎ取り、フレーメンを呈します。声によるコミュニケーションは主に母子間で使われ、低周波音を聞くことができます。母親との距離が離れると、ウシの子どもが出すような声やホイッスルに似た鳴き声を頻繁に出し母親を呼びます。社会的なグルーミングも行われ、セルフグルーミングでは舌が届かない耳の裏や頸の一部をお互いに行います。
  オカピはその歩き方も変わっていて、普通の動物のように歩き出す時に前肢とは反対側の後肢を前に出す〈斜対歩〉ではなく、キリンやラクダと同じように右前肢と右後肢を同時に踏み出す側対歩という歩行方法で歩きます。

  さすが森の貴婦人と称されるたたずまいです。
さすが森の貴婦人と称されるたたずまいです。
写真家 大高成元氏 撮影
   

体の特徴
  体長(頭胴長)200~210cm、尾長30~40cm、肩高150~180cm、体重はオスで220~300kg, メスで280~350kgです。体重はメスの方が20~50kg重く、背も少し高いところが特徴の1つです。
  頸部と4肢はキリンほど長くありませんが、全体的にみると前駆が高くキリンの首を短くしたような体形です。オスは前頭部に約15cmの角が一対後ろ向きに生えていますが、メスにはなく、前額が少し盛り上がっています。角は軟骨性の角心が頭骨と一体化し表面は皮膚で覆われてますが、とがった先端部には皮ふがなく骨が出ていることもあります。また、若いうちは先端には角質の鞘があって抜け替わります。耳介は大きくて幅が広く、長さは約25cmあり縁には毛が生えています。目はキリンと比べると小さく、目と目の間が広く開いていません。尾は短めで先端にある房が小さく踵に届きません。鼻孔の間に溝があり、わずかに鼻鏡が残っています。円柱状の舌は濃い紫色で、多くの乳頭突起があってざらざらして、長さは約50cmあり、口の先端から約30cm伸ばすことができます。舌のつけ根から先端まで伸縮性に富んで餌を絡め取ることができます。この舌で目や耳の他肛門から前方の部位をセルフグルーミングでき、また採食の時小枝を選択します。未成熟の間は頸部の背面正中線に短いたてがみがありますが成長に伴いなくなります。被毛は短く艶があり、体色は頭頂と耳介、及び体は暗い栗色か濃い紫色で、メスは赤味みがかっています。腰の下と前足には黒と白の鮮やかな縞があり、シマウマの肢を連想させます。縞模様は熱帯雨林の森林でカモフラージュになり25m離れると見つけるのがむずかしいとされています。
  歯式は、キリンと同じで、門歯0/3、犬歯0/1、前臼歯3/3、臼歯3/3で合計32本です。下顎の犬歯は2葉に分かれ、枝から葉をしごきとるのに適応しています。乳頭数は2対で、鼠蹊部(そけいぶ)にあります。前後肢共に蹄間腺があり、前肢の方がややおおきいです。またオカピの毛皮はビロードに似ており、手 触りが良いそうです。

えさ
  野生のオカピは森林の上層部の高い木は避け、主に低木林の若葉を食べていますが、その他に苗、果物、シダ、キノコ類も食べます。便の中から落雷によって焼け焦げ木炭が見つかったこともあります。植物の種類は、トウダイグサ科(ユーフォルビア科)、マメ科、キョウチクトウ科、ノウゼンカツラ科、トウダイグサ科、イイギリ科など、野生では100種類以上を採食していると報告されています。塩分やミネラル補強のため硫黄を多く含んだ高濃度の泥を食べることもあります。オカピの餌となる植物にはドウダイグサのなかまが含まれていますが、これは毒性が強く、人間は食べることができません。
  動物園では、ブナ科(コナラ、アラカシ、クヌギ、シラカシ)モクセイ科(トウネズミモチ)、モチノキ科、スズカケノキ科(プラタナス)、ヤナギ科、などを与えています。排便場所が決まっており、便状は小さくコロコロしています。

繁殖
  飼育下の発情周期は年間を通じて約15日ですが、しばしば不規則となりさらに長くなる時もあります。発情期には前肢にある分泌腺や尿スプレイのよって木に匂いを付着させます。オカピは穏やかな性質でふだんは攻撃的な動物ではありませんが、発情期には荒くなって、攻撃するときには頭(角)で突いたり、肢で蹴ったりして、勝者は頸を伸ばし、敗者は頭を下げ服従のサインを示します。妊娠期間は414~493日、平均すると440日で、妊娠中も交尾が見られることもあります。出産時期は主に8~10月です。通常は1産1子ですが、1978年に1例、双子の報告があります。出産時の新生児の体重14~30kg、肩高は72~83cmです。生れたばかりの子どもは、小さな頭部、短い頸と細く長い4肢で、後頭部から臀部にかけて長さが約4cmある黒色のたてがみが目立ちますが、生後12~14ヶ月齢で消えてしまいます。オスの角の成長は1歳ごろから始まり、3歳ぐらいまでの間に10~15cmになります。新生児の体色はほぼ成獣と似ています。目の周りに偽まつ毛がありますが、生後2週齢頃に消えます。授乳は分娩して20分後にみられ、子どもは生まれて30分後には立ち上がった、との報告例があります。母乳は乳牛の3倍のタンパク質があり、低脂肪です。子どもは生後1~2日間は茂みに隠れていて、母親は子どもが呼んだときにはすぐに戻ります。新生児は生後3週齢で固形物を食べ始め、6週齢で反芻を始めます。生後2ヶ月齢迄は80%を母親と一緒にすごし、ふつうは生後1~2ヶ月齢に初めて排便をし、生後3ヶ月齢には毎日定期的に排便するようになります。新生児の体重は生後約1ヶ月齢の後半に倍になり、2ヶ月齢の終わりでは3倍になります。離乳は生後6ヶ月齢ごろに始まりますが、しばしば1年以上授乳が続くこともあります。母親だけでなく、近くにいる他のメスからも乳を飲みます。3歳ぐらいで成獣と同じ大きさになります。飼育下ではメスが1歳7ヶ月で繁殖し、オスは2歳2ヶ月で種オスとなったとの報告があります。

オカピの長寿記録
オランダのロッテルダム動物園で1976年5月31日に生まれ、2003年12月1日にイギリスのマーウェル動物園で死亡した個体(オス)の33歳6ヶ月という記録があります。

外敵
  外敵としては、主に若い個体が稀にヒョウ、サーバルキャット、ゴールデンキャットに襲われます。

主な減少原因
  オカピの生息地であるDRコンゴで続く内戦や過度の焼畑農業による生息地の環境破壊が主な原因です。そして、内戦による貧困からオカピの肉や毛皮を狙う密猟が横行していることも減少の原因の一つにあげられます。2012年には、オカピの保護施設が襲撃され14頭のオカピとレンジャーが殺害されたと報告しています。さらに、近年希少金属のレアメタルが発掘されたことで、開発が進んだ結果、森が分断され生息域が減少しています。

分類   偶蹄目(クジラ偶蹄目) キリン科 オカピ属
分布   アフリカ中央部 DRコンゴ北東部の熱帯雨林
大きさ  
体長(頭胴長)
体重
体高(肩高)
尾長
200~210cm
オス 220~300kg  メス 280~350kg
150~180cm
30~40cm 房毛を除く
絶滅危機の程度     個体数は減少傾向にあり、2013年には国際自然保護連合(IUCN)のレッドリストで近危急種(NT)から絶滅の危機が高い種として、絶滅危惧種(EN)に引き上げられました。生息地が深い森林のため正確な野生個体数ははっきりしませんが、10,000~20,000頭と推定されています。オカピはワシントン条約の付属書に含まれていませんが、DRコンゴ国内では国のシンボルとして完全に法律で保護はされています。
オカピは発見当初から珍獣として扱われ、世界中の動物園で飼育している個体を血統登録して合理的に繁殖を目指しています。日本には1998年に初めて横浜市金沢動物園に導入後繁殖に成功し、2014年12月1日現在、金沢動物園、横浜ズーラシア、上野動物園の3園で10頭を飼育しています。


主な参考文献
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.
Bodmer, R.E. and Rabb,G.B.   Mammalian Species. No.422, Okapia johnstoni. The American Society of Mammalogists. 1992.
今泉吉典 (監修)   世界哺乳類和名辞典 平凡社 1988.
D.A.マクドナルド編 今泉吉典 (監修)   動物大百科 4 大型草食獣 R.A.ペルー著 オカピ 平凡社 1986.
今泉吉典   偶蹄目総論 In世界の動物 分類と飼育 偶蹄目=Ⅰ㈶東京動物園協会 1977.
葛西宣宏・田島日出男   オカピを迎えるまで どうぶつと動物園 Vol.53.No.9 ㈶東京動物園協会 2001.
Nowak, R. M.   Walker’s Mammals of the World, Six Edition Vol.Ⅱ The Johns Hopkins University Press, Baltimore 1999.
Parkers, S. P. (ed.)   Grzimek’s Encyclopedia of Mammals volume 4 Mcgraw-hill publishing company 1990
竹内ひろし   オカピの検疫に付き添って どうぶつと動物園 Vol.53.No.9 ㈶東京動物園協会 2001.
Wilson, D. E. & Mittermeier, R. A.( ed)   Handbook of The Mammals of The World.2. Hoofed Mammals,Lynx Edicion. 2011.

 
おもしろ哺乳動物大百科111(奇蹄目 サイ科) 2015.4.1

111)クロサイ
  クロサイはコンゴ盆地を除くサハラ以南のアフリカ中南部、東アフリカの熱帯から亜熱帯に分布し、熱帯雨林には生息していません。深い藪、まばらな森林、開けた草原や山岳地で生活しており、ケニアでは山岳地帯の森林、ナミビアのクネネ州の半砂漠にも見られます。
  成獣のオスは繁殖期以外単独で、オスが2頭一緒にいるのは稀です。メスは子どもがいる場合は、母子が一緒に生活していますが、他の時期は単独で生活しているのが普通です。しかし、まれに複数のメスが一緒にいる場合もあります。ンゴロンゴロ地区において2頭のメスが13ヶ月一緒に過ごし、交尾後成獣オスとメス、彼女の子ども、そして亜成獣のオスで4ヶ月間一緒に過ごしました。ひとつのグループで13頭が一緒にいるのが観察されたことがあります。その他、水場や塩場では短期間一緒にいます。
  行動圏の報告は次のようにいくつかあります。①ところどころ林のある地域で約3㎢、半砂漠などの乾燥した場所では90 km2 ②南アフリカのナタール自然公園でラジオトラックを付けた調査で、オスのなわばりは3.9~4.7 km2、メスの行動圏が5.8~7.7 km2 ③ンゴロンゴロではオス、メス共に平均16km2(2.6~4.4 km2)④セレンゲティでは43~133 km2と幅があり、最も広い行動圏を持っているのは亜成獣。
  メスの行動圏は重複してなわばりはありませんが、成熟したオスは可能ならばなわばりをもって防衛し、母子以外は追い出します。排便は決まった場所で行うので糞塊になりますが、テリトリーの役割を果たしていないようです。ふつう時速3~4kmで移動し、睡眠は夜中、採食の多い時間帯は早朝か夕方です。性質はシロサイより荒いと言われ、危険が迫ったり、驚いたりすると時速45~50kmで走ります。水浴とで泥浴は好みますが、泳ぎはうまくありません。水浴で体を冷やし、泥浴びは乾燥すると吸血するサシバエから守る効果があります。クロサイの皮膚は厚いのですが、うすい表皮の下に血管が走行しているのです。皮膚に寄生する虫はサギやウシツツキが食べてくれます。
  視力は弱く、20~30m離れると、人と木の区別ができませんが、臭覚と聴覚はすぐれています。コミュニケーションは主に排便と尿スプレィ及び声で行います。オスは尿スプレィを藪に向かって2~4回噴射します。声は警戒音、脅し、交信に使われ、サイ同士が出会ったときにはプップッという声、交尾の時はキィ、キイ声、メス同志の闘いの時にはキンキン、ブウブウやうなり声、子どもを呼ぶときはニャーニャーと鳴きます。

  尾を上げて草原を軽やかに走るクロサイ親子。立派な角を持っていますね。
尾を上げて草原を軽やかに走るクロサイ親子。立派な角を持っていますね。
写真家 大高成元氏 撮影
   

体の特徴
  体長300~375cm、肩高は140~180cm、尾長60cm、体重800~1,400kg。角は骨質の角心がなく、ケラチン質の繊維(毛)の塊が頭骨の上に乗っています。前後に2本あり、前の方が長く約50cmで、最長記録では135.9cmの報告があります。角は防御と威嚇に用いられます。皮膚の厚さは後躯で13mmと厚く、生息地の棘のあるアカシアや低く密集した藪地を突っ走るのに適応しています。視力は弱く25~30mの範囲と推測され、周囲の状況判断は聴覚と嗅覚に頼っています。嗅覚は鼻腔の体積が広く情報分析に適応しています。4肢は太く短く頑丈で、蹄は3本で中指(第3指)が大きく、第2指と第4指は小さめです。足の裏は厚く層になっていて、足を保護しています。耳は大きくラッパ状で、音のする方向に自在に動かし音を拾うことができます。尾の尖端には房毛があり、腰回りにとまる害虫を追い払う時に使います。体色は暗黄褐色から暗褐色、灰色ですが、土浴びをした時の色が全体的に付着するので生息地の環境により異なります。
  歯式は門歯(切歯)0/0、犬歯0/0、前臼歯3/3、臼歯3/3の合計24本で、門歯と犬歯はありません。乳頭数は1対で、鼠蹊部(そけいぶ)にあります。
  オスの精巣は陰嚢内に降下しなく、ペニスは後ろ向いているのでメスと同様に尿は後方に飛ばします。単胃で消化は後腸(盲腸と結腸)にいる微生物の発酵による後腸発酵動物です。体温はストレスがない状況下では37.0~37.8度です。

えさ
  採食の時間帯は朝夕で、夜間に水を飲み、昼間は木陰や泥地で休息しています。餌は主に木の葉や小枝ですが、草、果実も採食します。200種以上の植物を採食し、タンザニアのンゴロンゴロでは191種、ツアボで102種の報告があります。好みの植物はEuphorbia(トウダイグサ科トウダイグサ属の一年草または多年草)、ビャクダン、高さが1m以内のアカシアなどがあげられます。角で塩の塊を掘り、木の皮をそいで採食もします。1日平均で成獣は23.6㎏の樹の葉を採食します。
  乾燥した地域では水がなくても4~5間多汁植物から水分を摂り生きることができます。ふつう水場に近い場所に生息し、毎日8~26㎞の距離を水場に通い、あるいは川底の砂場を掘って水を探り出し飲むこともあります。

繁殖
  発情周期は約3週間で発情は6~7日続きます。発情すると雌雄共に食欲が減退し、オスがメスの後を追いかけるようになります。一般に決まった交尾期はないと言われますが、ケニアにおける交尾のピークは9月から11月、及び3月から4月でした。また、南アフリカのズールランドでは10月から12月と4月から6月でした。出産は雨期に見られる傾向があります。妊娠期間は平均463日(438~480日)で1産1子です。出産直後の子の体重は27~45kgです。生後4ヶ月齢まで体重は1日平均で1.25㎏ずつ増量した報告があります。
  神戸市王子動物園で繁殖した3回の出産例では、いずれも生後約4時間後に授乳し、一回の授乳時間は4~9分間でした。生後3~4日齢になると動きがしっかりしはじめました。生後20~25日齢迄はもっぱら乳のみですが、その後柔らかい草や草の粉末を食べ始めました。生後30~40日齢で親と同じ餌を採食し始めますが、この間も乳は飲み続けたと、報告しています。
  完全に離乳するのは約2歳です。普通は2.5~3.5歳まで母親に依存していますが、メスの子どもは母親に次の子どもが生まれるまで一緒にいます。
  角は出産時に生えていず、前角の部位がわずかに膨らんでいます。生後2ヶ月齢で少し採食するようになると、1.5cmほどの角が生えました。後角は前角が10cm位に伸びた生後6~7ヶ月齢に萌芽してきました。
  出産は2~5年ごとに見られますが、最も長い間隔としてはアド国立公園の9年6ヶ月の記録があります。メスの性成熟は4~6歳、オスは7~9歳です。飼育下のオスは4.5歳~9歳で初めて交尾をしますが、繁殖に結びつく交尾は6~9歳と考えられています。野生の場合、最初の妊娠年齢は生息密度の差により3~9歳まで幅があり、生息密度が高いほど、また体調が悪いと遅くなる傾向があります。
  広島市安佐動物公園では、クロサイの繁殖が順調で、昭和46年(1971年)に来園したメスのハナとオスのクロの間に10頭が生まれたほか、ハナとクロの孫にあたる誕生もあり、合計17頭が生まれています。

長寿記録では次のような記録があります。
①東アフリカで1952年に生まれた個体(オス)が、ヘンリー・ヘリベルトフレドリックTrefflichから1954年7月にニューヨークのセントラルパーク動物園、そして1988年7月13日にデトロイト動物園に移動し、2001年12月5日に死亡しました。飼育期間は47年、推定年齢49歳でした。
②東アフリカで1951年に生まれ、1953年にバーゼル動物園で飼育、1954年にアメリカのコロンバス動物園に移動し、2000年12月18に死亡した個体(オス)は飼育期間は47年、推定年齢49歳でした。

外敵
  野生での外敵としては、成獣では病気の個体が、幼獣はまれにライオンやブチハイエナなどに襲われます。

主な減少原因
  生息地の破壊はアフリカの全ての動物にとって大きな減少要因ですが、クロサイも例外ではありません。加えて、成獣のクロサイの死亡原因の90%は角を得るための密猟によるものです。1970~1987年に計200,000kgの取引があり、1本の平均重量は2.88kgでした。これらの角はアジアでは薬用に中東では短剣の柄として高額で取引されるために乱獲や密猟が続いてきました。

亜種
  クロサイの亜種についてはいろいろな説がありますが、現在は次の4亜種に分類するのがふつうです。このうち④のニシクロサイは絶滅したと考えられています。
① ナンセイクロサイ(Diceros bicornis bicornis/ South-western Black Rhinoceros)
ナミビアから南アフリカ西部、南東部に分布しています。IUCN(国際自然連合)発行の2014年版レッドリストでは、亜種として絶滅の恐れが高い危急種(VU)に指定されています。
② ミナミクロサイ (D.b. minor / South-central Black Rhinoceros)
タンザニア中央部、南アフリカ北部、北西部、北東部に分布しています。ボツアナ、ザンビア、ジンバブエ、モザンビーク、マラウイに再導入されています。亜種としてIUCN(国際自然保護連合)のレッドリストで絶滅寸前種(CR)に指定されています。
③ ヒガシクロサイ (D.b. michaeli / Eastern Black Rhinoceros)
ケニア、タンザニアに分布しています。以前はスーダン南部、エチオピア、ウガンダ、ソマリアにも分布していました。亜種としてはIUCN(国際自然連合)のレッドリストで絶滅寸前種(CR)に指定されています。
④ ニシクロサイ(D. b. longipes/Western Black Rhinoceros)
かつてはアフリカ西部に広く分布していましたが、最後の分布域であったカメルーン北部でも2006年の調査で姿を発見できず、その後も目撃情報はなく絶滅したと考えられています。

分類   奇蹄目 サイ科 クロサイ属
分布   サハラ砂漠以南のアフリカ中南部
大きさ  
体長
体重
体高(肩高)
尾長
300~375cm
800~1,400kg
140~180cm
60cm
絶滅危機の程度     国際自然保護連合(IUCN)発行の2014年版レッドリストでは、絶滅寸前の状態にあるとして絶滅寸前種(CR)に指定されています。また、ワシントン条約では付属書Ⅰに掲載し、商業取引を禁止しています。
野生の生息数の推移をみると、1980年に15,000頭生息していましたが、1986年に3,800頭、1996年に2,400頭に激減しました。その後、保護政策が功を奏し、国際サイ基金によると徐々に回復しつつあり、2003年に3610頭、2007年に4180頭、2013年に5055頭と徐々に回復していますが依然として危機的な状況にあります。

  アフリカにはクロサイのほかにやはり2本の角を持つシロサイが生息しているので簡単に紹介します。

シロサイ
分類 奇蹄目 サイ科 シロサイ属
体長360~500cm、肩高は160~200cm、体重2,300~3,600kg。南アフリカ、スーダン南部、ウガンダ、コンゴ、中央アフリカに分布しています。現存するサイの中で最大の種類です。クロサイ同様に角は前後に2本あり、前の方が長く約60cmあり、最長記録では158cmの報告があります。
  5種のサイの中では最も社会性に富んでいます。3~4頭の家族で生活し、餌場では6~7頭が集まることもあります。クロサイの子どもは母親の後をついて歩きますが、シロサイの子どもは母親の前を歩くことが多く見られます。

シロサイとクロサイの見分け方
  クロサイは頭部が小さく、肩に筋肉の塊がないことや、上唇が尖っています。一方、シロサイは長く大きな頭部を支えるために肩にたくましい筋肉の隆起があります。また食性がシロサイは草が主食ですが、クロサイは樹葉が主食なため口の形が違います。クロサイの口は樹の葉を掴めるように上唇が尖っているのに比べ、シロサイは草を噛み切るのに幅広の口になっています。
  シロサイは種としては、国際自然保護連合(IUCN)発行の2014年版のレッドリストでは、現在は絶滅の恐れは少ないとしてNT(近危急種)に該当しています。また、ワシントン条約では付属書Ⅰに掲載し、商業取引を禁止しています。

亜種
  シロサイはキタシロサイとミナミシロサイの2亜種に分類されます。
  キタシロサイ(Ceratotherium simum cottoni)は、絶滅の危機に瀕していて、レッドリスでは亜種としてCR(絶滅寸前種)指定されています。アフリカ公園基金とAfRSG(アフリカサイ専門家グループ)の調査結果によれば、わずかに生存していたコンゴ共和国ガランバ国立公園の4頭も、2007年以来確かな生存の記録がなく、おそらく絶滅した可能性が高いとされています。現在はチェコのドゥブール・クラローベ動物園からケニアの保護施設へ移動された4頭が最後の個体と考えられています。激減の原因はサイの角を目当てとする密猟によるものです。保護策が行き届かないと瞬く間に減少してしまいます。
  ミナミシロサイ(Ceratotherium simum simum)は100年ほど前に約50頭でしたが、2010年には20,160頭まで増加しています。亜種としてレッドリストではNT(近危急種)に該当します。


主な参考文献
D.W. マクドナルド編 今泉吉典監修   動物大百科4 大型草食獣 サイ 平凡社 1986
Estes, R.D.   The Behavior Guide to African Mammals. The University of California Press. 1991.p.241
亀井一成   クロサイ誕生記  In世界の動物 分類と飼育 4 奇蹄目 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
Hillman-Smith, A.K.K. and Groves, C. P.   Mammalian Species. No.455, Diceros bicornis The American Society of Mammalogists. 1983.
今泉吉典・中里竜二   奇蹄目総論 In世界の動物 分類と飼育4 奇蹄目 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
中里竜二   2.世界のサイ In世界の動物 分類と飼育 4 奇蹄目 今泉吉典(監修) ㈶東京動物園協会 1984.
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