光は体のリズムにさまざまな影響を与えます。朝日は私たちを目覚めさせ、日差しが強い昼間は、心身が活動的になり、日暮れとともに気分は鎮まって、体は眠りの準備へと向かいます。しかし、夜に強い光を浴びると、眠りへと導かれていた体は再び目覚めてしまいます。せっかく朝日を浴びて整った体のリズムが刺激の強い光によって乱されてしまい、うまく寝付けなくなるのです。
私たちの体には、毎日の活動を、自然のリズムに同調させるさまざまな仕組みが組み込まれています。そして、その中の重要な仕組みの一つが、目からの光の刺激によって発動/抑制されることがわかっています。何万年もの間、人類は日中は太陽からの白っぽい大量の光の下で生活し、夜には焚き火やロウソクの赤っぽい少量の光の下で生活してきました。
そのため、白っぽい大量の光は私たちを活性化し、赤っぽい光は眠りに誘う働きがあります。こうした光の反応が、人にはもともと備わっています。私たちの体のリズムを調整するためには、朝にはしっかり太陽光を浴び、夜はなるべく少量の赤っぽい光の下で生活する工夫が必要なのです(上図)。
夜少ない光で生活するというと、暗く貧しい生活を想像する方もいるかもしれません。しかし事実は逆で、まず、眼の順応の働きのため、大量の光でも少量の光でも同じ明るさを感じる環境をつくりだすことができます。また、少量の光なら、適度な陰影を空間に加えることができて、落ち着いた環境をつくりだすことができるのです。これまで、住宅の照明は光の量だけが議論されてきました。しかし、これからの住宅照明には、家族の健康をサポートし、体のリズムを調整する役目も求められると言っていいでしょう。
光源を壁面の造作に隠して、光を天井に反射させる間接照明の手法です。天井に広がり感を与えます。光が天井に反射して室内を空気のように満たすため、部屋全体が柔らかな雰囲気に包まれます。
手元に明るさが欲しい場合、卓上などに補助の照明器具を置くことで、必要な光を補うことができます。落ち着いた雰囲気の間接照明と手元のタスク照明の組み合わせは、タスク・アンド・アンビエント照明と呼ばれ、ホテルの客室などで使われる照明手法です。
眠りに就くためのフェードタイムを、照明の変化でどう演出するか。例えば、調光器を利用して、室内の光の量をコントロールすることで、生活シーンに合わせた環境や雰囲気をつくりだすことができます。