1.二世帯同居家族と単世帯別居家族のエネルギー消費量比較 |
6人家族が一緒に二世帯住宅に暮らす場合と、2人家族(親世帯)と4人家族(子世帯)が別々に2軒の住宅に暮らす場合のエネルギー消費量を比較すると、二世帯住宅で2~3割少ないことがわかりました。 ここで注目すべきは、すべての生活空間を分け、各世帯が独立して暮らす二世帯住宅であっても、エネルギー削減に大きな効果があるということです。二世帯同居が、生活エネルギー消費量の削減に寄与する理由として、建物が1つになることでの壁面積の減少に伴う熱損失の減少や床面積の減少による照明や冷暖房・家電の減少が考えられます。しかし、1戸の家に2つの家族が暮らすことで自然と生活が近づき、家族で時間や空間を共にすることが増える(=「場」の重なりの増加)ということが、大きく影響していると考えられます。
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単世帯別居家族との年間エネルギー消費量比較
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2.二世帯同居における暮らしの「場」の重なりの実態 |
二世帯同居の暮らしを玄関・キッチン・浴室の数をパターン別に分類し、その暮らし方の実態を調査しました。その結果、玄関・キッチン・浴室の数が増えるほど、世帯別の場所で暮らす傾向が見られました。しかし一方では、玄関を共有している二世帯住宅では、メインキッチンが2つあっても、家族全員が同じ場所で夕食を食べたり、家族の一部が世帯混合で食べる割合が約2~3割存在することも明らかになりました。このように、建物形態の分離度と実際の暮らしの分離度は、必ずしも一致しないことがわかりました。
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3.二世帯同居家族の暮らしとエネルギー消費の関係 |
(1)建物形態とエネルギー消費量の関係 二世帯同居家族の建物形態と、エネルギー消費量の関係について調査したところ、エネルギー消費量は、玄関・キッチン・浴室の数と関係があることがわかりました。具体的には、浴室が2つから1つになることで8.3%少なくなり、キッチンが2つから1つになることでは13.0%小さくなることがわかりました。
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(2)暮らしの「場」の重なりとエネルギー消費の関係 実際に両世帯がどのように暮らしているのか、「夕食・入浴の場の重なり」とエネルギー消費量の関係についても調査しました。その結果、平日に家族が同じ場所で食事をする家族はエネルギー消費量が21.2%少ないことがわかりました。これは、食事行為そのものに付随する設備・家電の使用にとどまらず、食事後にLDで共にくつろぐなど、その後を含めた「場」の重なりが増えるためと考えられます。一般的に浴室を共用することがエネルギー消費量削減に繋がると想像されがちですが、それ以上にキッチンの共用が大きく影響することがわかりました。夕食後、家族が一緒に過ごす二世帯同居家族は、暮らしや家族関係に対する満足度が高くなることもわかっており、一緒に過ごすことが豊かさとエネルギー消費量削減を両立する1つの方法と言えそうです。
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(3)二世帯同居家族のエネルギー消費量に影響を及ぼす要因 二世帯同居におけるエネルギー削減の要因として、建物形態とくらしの「場」の重なり以外の要因も含めて影響の度合いを分析しました。その結果、今回検証した項目の中では、両世帯の夕食の「場」の重なりが最も大きく影響していることがわかりました。
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4.二世帯同居家族の「場」の重なりとライフステージ変化
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二世帯同居家族の暮らしは、両世帯の交流頻度や暮らし方がライフステージによって大きく変化していくものです。具体的には、子世帯の子が幼少のころは子育てサポートなど親世帯LDKを中心に暮らしの重なりが見られ、その年齢が上がるにつれ暮らしの場は各世帯に分散し、親世帯が高齢になったり片親になったりすれば再び両世帯が夕食を一緒に食べる、などのケースが想定されます。
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そのため、二世帯同居の住まいは、ライフステージに合わせていつでも自然に暮らしの「場」を重ね、家族を繋ぐことができる必要があると言えます。「二世帯住宅」ではこれまでも、同居家族が自然に交流して暮らすプランの工夫を提案して参りましたが、今回の調査データを参考に、暮らしの「場」とエネルギー消費量の関係についての研究をより一層深め、今後の提案に活かして参ります。
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