2014年1月1日時点の公示地価が発表になりました。昨年から、地価は上昇の兆しを見せ始めていましたが、今回の公示地価でその傾向が顕著になりました。3月に発表された公示地価を、大都市圏ごとに見ていきたいと思います。
いよいよ、地価上昇の波が訪れようとしています。東京、大阪、名古屋の三大都市圏平均は、住宅地0.5%、商業地1.6%と共に上昇、これはリーマン・ショック前の2008年1月以来6年ぶりのことです。また、上昇地点数の割合も全国的に大幅に増加しました。特に三大都市圏では、住宅地の約2分の1の地点が上昇、商業地の約3分の2の地点が上昇と都市圏での回復が鮮明となりました。
昨年の公示地価でも地価回復の傾向は見て取れましたが、昨年は安倍政権が発足して間もないころで、この1年の動向が注目されていました。しかし景気回復は減速することなく、緩やかに回復基調を見せています。三大都市圏では、2020年東京五輪開催、大阪都市部の再開発、名古屋のリニア中央新幹線(2027年開業予定)などの影響もあり、商業地で不動産投資信託を中心とした投資マネーが流入しているとのことです。住宅地も低金利、住宅ローン減税等の施策、消費税増税前の駆け込み需要でマンション販売が好調で、地価を押し上げているようです。
下記の表は公示地価の変動率ですが、昨年は名古屋の住宅地0%を除いて全てがマイナスでした。今年は、三大都市圏は大阪の住宅地を除いて全てプラスに転じています。
全国平均では、住宅地、商業地共にまだ下落ですが、下げ幅は縮小し、土地デフレはほぼ終息との見方が多くなっています。
■平成26年公示地価変動率(単位:%)
住宅地 |
商業地 |
全用途 |
|
全国平均 |
▲0.6(▲1.6) |
▲0.5(▲2.1) |
▲0.6(▲1.8) |
三大都市圏 |
0.5(▲0.6) |
1.6(▲0.5) |
0.7(▲0.6) |
東京圏 |
0.7(▲0.7) |
1.7(▲0.5) |
0.9(▲0.6) |
東京都 |
1.4(▲0.3) |
2.3(▲0.4) |
1.7(▲0.3) |
大阪圏 |
▲0.1(▲0.9) |
1.4(▲0.5) |
0.2(▲0.9) |
名古屋圏 |
1.1(0.0) |
1.8(▲0.3) |
1.2(▲0.1) |
地方圏 |
▲1.5(▲2.5) |
▲2.1(▲3.3) |
▲1.7(▲2.8) |
※▲はマイナス、カッコ内は前年
東京圏では、景気回復基調に加え、都心部の大規模再開発や東京五輪開催決定の影響が地価に大きな影響を与えているようです。商業地では、昨年の東京駅に続き、日本橋、大手町、虎ノ門と都心の再開発のニュースを度々耳にします。都心部では、すでに加熱気味との声も聞かれ、実勢価格はさらに上昇しているようです。
商業地の上昇率の上位は、昨年に続き神奈川の川崎、武蔵小杉が上位を占めています。川崎駅の上昇率は全国で2位、武蔵小杉駅が3位です。共に駅前の再開発が進み、周辺の地価も押し上げています。
住宅地も全体で見ると、上昇地点の割合は大幅に増加し、半数以上の地点が上昇しています。東京都、埼玉県、神奈川県では下落から上昇に転じました。これも6年ぶりです。
特に東京都心の中央区、江東区、臨海部では分譲マンションの販売が好調に推移。上昇率の上位を見ても中央区は10%台の上昇です。被災地を除いて、中央区の勝どき、佃が全国上昇率で1位、2位です。東京23区の住宅地は全ての地点で上昇しました。神奈川の武蔵小杉駅周辺の住宅地では、今回、神奈川県内住宅地の最高価格50万9000円(1平方メートルあたり)を記録しています。
■東京圏変動率上位─住宅地(単位:%) |
■東京圏変動率上位─商業地(単位:%) |
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名古屋と言えば自動車産業の一大エリア。日本経済のバローメータと言われています。景気回復の要因は、円安などにも支えられた自動車産業の好調さも一つです。
商業地では、リニア中央新幹線開通に向けた再開発の期待から、名古屋の駅前が12.0%も上昇しました。これは、商業地の上昇率全国トップです。
その他の商業地も、上昇地点の割合が大幅に増加し、6割弱の地点が上昇しました。特に名古屋市及びその周辺部である尾張地域、自動車関連産業が集積する西三河地域の多くで上昇基調となっています。
住宅地でも、堅調なマンション需要を背景に、上昇地点の割合が大幅に増加し、特に西三河地域、名古屋市の中心市街地が大きく上昇しています。
■名古屋圏変動率上位─住宅地(単位:%) |
■名古屋圏変動率上位─商業地(単位:%) |
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JR大阪駅の「グランフロント大阪」や日本一高い複合ビル「あべのハルカス」の開業など、大阪も再開発が話題になりました。商業地上昇率ベスト5は全て2ケタの伸びを示しています。しかし、地価上昇が顕著なのは中心部の再開発エリアで、平均で1.4%上昇したものの、東京、名古屋に比べると、回復ペースは鈍いようです。商業地の上昇地点は、東京圏が全体の75.5%、名古屋圏59.3%でしたが、大阪圏は50.3%にとどまりました。
住宅地の平均は三大都市圏の中でマイナス0.1%となり、唯一下落しましたが、昨年のマイナス0.9%よりは下げ幅が縮小し、地価上昇基調にあります。特に京都市、大阪市、北摂エリア及び阪神間を中心に地価上昇が鮮明になってきました。
■大阪圏変動率上位─住宅地(単位:%) |
■大阪圏変動率上位─商業地(単位:%) |
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三大都市圏では、地価上昇が鮮明となりました。一方地方では、まだ下落は続いているものの下げ幅は縮小傾向にあり、回復傾向は見られます。
一部の都心部では、過熱感もあるようですが、景気が本格回復すればさらに、地価の上昇傾向は明らかになるでしょう。問題は、今後の景気動向です。今は、安倍政権の成長戦略への期待感もあり、景気は回復に向かっている一方、東京都心では大規模再開発が一斉に完成する2016年問題が懸念され始めるなど、リスク要因もなくはありません。当面の大きな注目点は、この4月以降、消費税増税の影響です。
また、今や経済はグローバルな環境下で動いています。中国をはじめとする新興国の成長鈍化、ロシアによるクリミア編入といった地政学リスクなど、いろんなことが懸念材料として、度々クローズアップされます。
いずれにせよ、今回の公示地価の動向を見る限り、よほど大きな景気後退要因がない限りは、地価は上昇していくものと思われます。住宅地などは、住宅ローン減税、消費税アップなど国の政策がマンションの売り上げに影響し、結果それが地価に反映されますので、税制をはじめとする国の政策にも注意が必要です。
土地所有者にとっては、地価上昇により資産評価があがることは良いことですが、固定資産税や2015年1月に改正される相続税等の負担増を考え、大事な資産を活かして守る対策を検討されることをお勧めします。