HOME > アパート経営・土地活用の知恵袋 > マンスリーレポート > 市場動向 > 2024年「路線価」、コロナ前の水準を超える
アパート経営・土地活用の知恵袋
マンスリーレポート 最新情報をレポートします

2024年「路線価」、コロナ前の水準を超える

市場動向

タグ :

2024年7月18日

2024年「路線価」、コロナ前の水準を超える

7月1日、相続税・贈与税の土地評価の算定基準となる路線価が、国税庁より発表がありました。全国平均は前年比2.3%増で3年連続の上昇。上昇幅が2%を超えるのは16年ぶりのことです。インバウンドの回復、各地の再開発が地価を押し上げています。三大都市圏を中心に今年の路線価の傾向を見ていきたいと思います。

三大都市圏は上昇幅が大きく拡大

都道府県別の平均路線価では、昨年から4県増え29都道府県が上昇しています。三大都市圏の主要都府県でも上昇し、上昇幅が拡大しています。東京都の5.3%上昇を始め、いずれもコロナ前の水準を超える上昇率です。千葉県にいたってはコロナ禍でも下落せず11年連続の上昇です。

都道府県別の上昇率トップ3は、「天神ビッグバン」と呼ばれる大規模再開発が進む福岡県(5.8%上昇)、インバウンドが回復する沖縄県(5.6%上昇)、2023年新築分譲マンションの東京23区平均価格が1億円を超えた東京都(5.3%上昇)です。

税務署ごとの最高路線価の上昇率1位は長野県白馬村(32.1%上昇)で、インバウンド需要の高いスキーリゾート地です。2位は熊本県菊陽町(24.0%上昇)で、半導体メーカーの進出エリア。3位は大阪市西区(19.3%上昇)で、JR大阪駅北側の大規模開発が進むエリアです。この「インバウンド増加」、「半導体工場誘致」、「大規模再開発」が、今の地価上昇の要因としてあげられます。

■主要都府県別路線価の対前年変動率の推移(単位:%)

東京圏の動向-東京都は下落地点ゼロ、郊外人気も衰えず

東京国税局内での上昇率1位は、インバウンド回復の象徴でもある浅草「雷門通り」で16.7%上昇でした。浅草は平日でも外国人観光客で賑わい、ホテルの稼働率も上がり、開業も相次いでいます。
その他東京都内では、再開発でイメージが一新され、住みたい街としても人気の北千住駅西口駅前広場通りが15.1%上昇。中野サンプラザの建て替えを含む再開発中の中野駅北口駅前広場が13.2%上昇しています。23区内に限ると上昇率が10%を超えた地点が8地点(昨年はなし)あり、上げ幅の拡大が顕著になっています。

上昇率2位の横浜市旭区「二俣川駅南口駅前通り」(15.9%上昇)は、昨年「相鉄・東急直通線(新横浜線)」が開通し、都心へのアクセスが向上したことに加え、駅前の商業施設もオープンし、子育て世代などに人気が出ています。
その他神奈川県では、インバウンド回復で賑わう「鎌倉駅東口駅前通り」(14.3%上昇)、郊外人気の象徴となった「本厚木駅北口広場通り」は昨年の12.7%上昇に続き11.9%上昇しています。

上昇率3位の千葉県習志野市「ぶらり東通り」(15.4%上昇)は、23年に閉店した津田沼パルコの跡地前で今後、商業と住宅の複合開発が計画されています。5位の「千葉駅東口駅前広場」(14.9%上昇)も駅前の再開発が進んでいます。千葉県は公示地価でも住宅地の上昇率トップ10をすべて占めていましたが、再開発エリアや住宅需要の旺盛なエリアの地価が上昇しています。

また、全国最高路線価で話題の銀座中央通り「鳩居堂前は」3.6%の上昇し2年連続の上昇となっています。

■「鳩居堂前」路線価推移

■東京圏の最高路線価上昇率トップ5(1平米あたり)

名古屋圏の動向-インバウンド回復によるホテル開発や人気駅の再開発進む

名古屋国税局管内の全48税務署のうち、路線価最高値が上昇したのは33署と前年の26署から大幅に増えています。

上昇率1位の岐阜県高山市「上三之町下三之町線通り」(17.8%上昇)は、高山市中心部の観光地で古い街並みが人気。インバウンドも回復し、今春には市内最高級クラスのホテルが開業するなどホテル建設も進んでいます。
2位の愛知県刈谷市「刈谷駅北口駅前広場通り」(12.5%上昇)は、駅周辺で再開発が進み、不動産投資が活発になっています。

上昇率3位の名古屋市「新尾頭金山線通り」(12.2%上昇)は住みたい街として人気の金山駅周辺。駅周辺の再整備が進んでおり、JR線、名古屋鉄道、地下鉄と交通アクセスがよく、シングルからファミリーまで人気の高いエリアです。
同様にマンション建設が盛んな名古屋市昭和区「山王通り(御器所駅)」(11.6%上昇)、名古屋市千種区「広小路通り(今池駅)」(10.1%上昇)の上昇率が高く、今池では駅直結の高級マンションの建設が進んでいます。

■名古屋圏の最高路線価上昇率トップ5(1平米あたり)

大阪圏の動向-インバウンド回復、タワマン建設ラッシュに沸く

東京圏、名古屋圏と比べると回復がやや遅れていた大阪圏ですが、インバウンドの回復や高層マンション建設が進み路線価は上昇しています。全国の上昇率トップ10のうち、3地点が大阪市中心部です。

大阪で進んでいる大規模再開発の一つがJR大阪駅北側「グラングリーン大阪(うめきた2期)」。「阪急百貨店前」の路線価は1㎡あたり2,040万円で、2020年(2,160万円)に迫る水準に回復し、大阪国税局管内では最高価格41年連続でトップです。
「グラングリーン大阪」のタワーマンションの平均価格は2億3,200万円。隣接する福島区にも影響し、大阪市福島区「なにわ筋(JR福島駅)」(16.4%上昇)は全国の上昇率で見ても7位です。
全国上昇率3位の大阪市西区「四つ橋筋(肥後橋駅)」(19.3%上昇)もJR大阪駅に近く、住宅需要が旺盛なエリア。今年1月に肥後橋駅近くにタワーマンションができ平均価格は8,000万円です。JR大阪駅を中心とした再開発の影響が周辺エリアにも及んでいます。

ミナミの大阪市中央区心斎橋筋は、コロナ禍の2021~2022年に2年連続で全国最大の下落率となり、昨年も上昇率0%でしたが、今年は13.6%上昇と一気に上昇率を拡大させました。

また、大阪圏は来年4月に開幕予定の大阪・関西万博に期待が集まりますが、会場周辺でも、路線価が上昇しています。万博会場・夢洲(ゆめしま)への玄関口の一つ「大阪市港区(大阪メトロ弁天町駅)」近くでは、ホテルやマンションなどの建設が相次ぎ路線価は10.6%も上昇しています。万博の後は統合型リゾート(IR)の開業も予定されていますので、今後も上昇を続ける可能性は高いと見られています。

■大阪圏の最高路線価上昇率トップ5(1平米あたり)

今後の動向-懸念材料もあるが上昇トレンドは継続!!

地価が上がれば、合わせて路線価も上がります。土地オーナーにとっては資産価値の向上は喜ばしいことですが、同時に固定資産税、そして相続税の負担増につながる懸念もあります。

地価は依然上昇トレンドにあります。直近の地価データ「2024年第1四半期(1月1日~4月1日)地価LOOKレポート」(国土交通省発表)によると、「主要都市の高度利用地等における地価動向は、利便性や住環境に優れた地区におけるマンション需要が堅調であることに加え、店舗需要の回復傾向が継続したことなどにより、平成19年の調査開始以降、初めて住宅地及び商業地の全地区において上昇となった」とのことです。
特に住宅地では、8期連続で上昇。要因は「利便性や住環境に優れた地区におけるマンション需要に引き続き堅調さが認められたことから、上昇が継続した」としています。

今後も地価上昇トレンドは続くのか?懸念事項もあります。一つは利上げです。日銀が利上げに踏み切るのはいつになるのかが注目されていますが、業界の見方としては利上げがあったとしても不動産への影響は限定的だということです。なぜなら利上げがあったとしても大幅な利上げは考えづらく、小幅な利上げにとどまるとの見方からです。

もう一つが2025年問題です。団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となり、社会保障費の増大など様々な影響を社会に及ぼすといわれています。不動産市場への影響としては、その年から相続件数が増え始め、空き家となる不動産の売却数の増加が予想されます。しかし、それを購入する30代の人口は減少していくため不動産市場が冷え込むとの予測です。ただし、これは急激に進むことはないと思われます。
また不動産の場合、エリアの違いで大きな差がでます。都市部のブランド力のあるエリア、再開発が進むエリアでは人が集まり、地価も上昇の余地を残していると見られています。

路線価の上昇は、相続税への影響が大きいのは間違いありません。土地オーナーは、地価の上昇や相続税評価のルール改正など環境の変化にうまく対応して、資産管理をしていく必要があるでしょう。今後も地価動向、経済動向に注視していきたいと思います。

土地活用・アパート経営の資料プレゼント

セミナー・イベント情報を見る

窓口・WEB・電話で相談する

▲ページトップへ

マンスリーレポートトップへ