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アパート贈与による相続対策のメリット

相続

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2017年7月 4日

アパート贈与による相続対策のメリット

相続税対策としてよく行われる方法の一つが「財産の移転」。つまり、生前贈与です。相続税が増税になってから、生前贈与する人が急増しているのも、相続税対策の一環と見てよいでしょう。生前贈与には様々な方法がありますが、今回はアパートの贈与を中心にそのメリットを解説します。

贈与税の申告件数は高水準をキープ

平成26年に贈与税の申告納税額が急増し話題になりました。相続税が平成27年1月1日より増税され、その対応策として生前贈与を選択する人が増加したことが理由と思われます。その後2年が経ちましたが、贈与税の申告納税額は若干減少しつつも、依然高水準で推移しています。

■贈与税の申告納税の推移

贈与税については、税金自体が高いというイメージを持っている方も少なくないでしょう。例えば相続税と贈与税の税率を単純比較すると、課税価格が3,000万円の場合相続税率は15%ですが、贈与税率は45%(特例税率の場合)にもなります。仮に同じ金額に課税されるなら相続税の方が負担は少なくてすみます。しかし、贈与には様々な軽減措置や特例があり、タイミングを見て賢く贈与すれば、大きな節税効果が期待できるのです。

もう一つの大きなメリットは、相続させたい人に確実に資産を渡すことができることです。子を飛ばして孫に贈与するという世代飛ばしも、相続税を1回パスすることになりますので、節税効果が高くなります。
また、将来価値が上がりそうな資産や収益を生む資産は、所有していると保有資産がどんどん膨らみ将来の相続税が大きな負担となることが予想されます。タイミングを見て生前贈与することが望ましいでしょう。
例えば株式など有価証券は、何かを引き金に暴落することがあります。長いスパンで考えた場合、そういうときこそ生前贈与のタイミングだとみることもできます。リーマン・ショックや東日本大震災で低迷していた株価は、今は回復していることからも分かるでしょう。

相続税増税の対応策として、生前贈与による大きな節税メリットを期待して、平成26年から贈与税の申告納税額が急増している。

アパート贈与のメリットを考えるー資産の評価引き下げと移転効果

暦年贈与を使って毎年現金を生前贈与する方法はよく聞きますが、現金よりも不動産を生前贈与したほうが効果が高くなる場合もあります。特にアパート経営では家賃収入が毎月入り、その分の資産が膨らんでいく場合もあります。そうなると、将来の相続税負担が大きくなります。

そこで、家賃収入分の資産を移転する目的で、アパートを生前贈与する相続対策があります。アパートの評価額は固定資産税評価額で、さらに借家権割合による評価減もありますので、時価より大幅に評価が下がります。おおむね時価の40%で贈与することができ、これは大きなメリットの一つです。また、贈与を受けた方は、家賃収入を将来の相続税の納税資金として準備することもできるのです。
相続税対策には、「評価の引き下げ」と「資産の移転」がありますが、アパートの生前贈与はこの二つを兼ね備えているのです。

仮に、建築費6,000万円でアパートを建てた場合をシミュレーションしてみます。

■建築費6,000万円(固定資産税評価額:時価の60%、借家権割合:30%)のアパートを親から子へ贈与した場合

図にある通り、アパートの評価額は2,520万円になります。つまり、6,000万円の資産が58%も評価が下がったことになります。

さらに、相続時精算課税制度を活用することもできます。上のケースの場合は、非課税枠の2,500万円を超過する20万円に20%の贈与税がかかりますので税額は4万円で済みます。築年数の古いアパートの場合は、非課税枠の範囲で移転することもできるでしょう。
ただし、不動産の生前贈与には、登録免許税、不動産取得税が発生しますので、その経費のことも考慮する必要があります。

アパートを生前贈与する場合、評価が固定資産税評価額となり、さらに借家権割合による評価減がある。また、家賃収入も移転できるため、資産評価の引き下げ、資産移転の節税効果が望める。

アパート贈与の3つの注意点

アパートの生前贈与には、3つの注意点があります。
一つは、「負担付贈与」です。アパートをローンを使って建築し、その借入金も一緒に贈与すると「負担付贈与」とみなされます。そうすると、建物の評価が固定資産税評価ではなく、時価評価となり、時価からローン分を差し引いた金額に贈与税がかかるので注意が必要です。

もう一つは、将来、土地を相続するときに、貸家建付地の評価減を受けられなくなる可能性があるということです。貸家建付地の評価を受けるには、建物の借主が変わらないことが条件になっています。つまり、入居者が変わって新しい賃貸借契約が結ばれると評価が受けられなくなってしまいます。しかし長期で考えると、入居者が変わらないことは、考えられません。
これを回避する方法が一括借上げです。一括借上げ(サブリース)は借上げ業者との賃貸借契約になりますので、借上げ業者が変わらないかぎりは、貸家建付地としての評価減が適用されます。

最後に、他の相続人に配慮すること。できれば、全ての相続人に対して、了解を得ることです。これは、生前贈与全般に言えることですが、特に不動産の場合は、一人にしか贈与できません。不公平が生じて、後にトラブルにならないよう家族間でよく話し合うことが大切です。

アパート贈与の注意点は、借入金と一緒に贈与しないこと、建物の借主が変わらないこと、他の相続人の了解を得ることの3つ。

特例を使った生前贈与のメリット

その他、優遇措置や特例のある生前贈与を紹介します。資産状況や家族構成などを考慮し、いくつかを組み合わせたり、タイミングを見計らったりする必要があると思います。活用するには、煩雑な手続きが必要なケースもあります。効果も含めて、専門家に相談することをお勧めします。

■暦年贈与
最も活用されているのが年間の基礎控除110万円を活用した暦年贈与です。毎年110万円ずつ贈与すれば、無税で資産の移転ができます。しかし、贈与税を多少払ってでも、贈与した方が効果的な場合があります。納税したほうが、確実に贈与したという実績が残るのも良いと言われています。
つまり、暦年贈与の場合、名義預金など受取人に黙って贈与したことにしているケースが見られ、税務署はそこを厳しくチェックすると言われているからです。現金贈与は受ける側がしっかりと受け取り、通帳、印鑑は受取人が管理するというのが原則です。その都度、契約書を作成し事実を明確にすることをお勧めします。

■教育資金一括贈与制度
祖父母等(曾祖父母、両親も可)から、孫(または子)に教育資金を1,500万円まで非課税で一括贈与できる制度です。活用するには、信託銀行などを通すことになります。いささか煩雑なのですが、施行されて以来、人気だと言います。教育資金自体は、その都度贈与しても無税なのですが、自分の意志で贈与したい人にまとめて一括で贈与できることが、人気の理由のようです。

■結婚・子育て資金一括贈与制度
教育資金同様、直系尊属から、孫(または子)に結婚・子育て資金を1,000万円まで(結婚式資金は300万円まで)が非課税で一括贈与できる制度です。受贈者は20歳以上50歳未満です。こちらも人気だと言います。教育資金一括贈与制度も含め、手続きの簡素化や要件の拡充、例えば不妊治療も適用されるなど、税制改正で利便性は改善しています。
なお、この特例は平成31年3月31日までの贈与が対象です。

■ジュニアNISA
株や投資信託で得た売却益や配当金を一定額非課税にするNISA制度のジュニア版です。0〜19歳の子どもが活用でき、年間80万円まで非課税(投資期間は5年間)、制度を最大限活用すると、5年間で400万円を非課税で運用できることになります。
特長としては、口座は親権者が管理し、投資資金は原則18歳になるまで引き出すことができない点です。低年齢の子や孫への暦年贈与の活用に適しています。

■住宅取得資金の贈与税の非課税特例
父母・祖父母から住宅取得資金の贈与を受けた場合、一定の金額について贈与税が非課税となる特例です。こちらは、従来から続いている特例です。昨今、低金利とはいえ都心部では住宅価格が高騰していますので、一般的には手が届きにくくなっています。活用するには、最適なタイミングかもしれません。

様々な特例を活用して、効果的な生前贈与を。活用の際には専門家に相談し、ベストな活用法を探るのがよい。

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