単身者の平均家賃はどのくらいか?何を重視して部屋を探すのか?妥協点は何か? 不動産情報サービスのアットホームが「“UNDER30”私たちの選び方 〜部屋探しのプロセス&マインド〜」と題した調査を発表しました。これは、18〜29歳の学生・社会人男女を対象に、現在住んでいる部屋を探した際のプロセスやマインドの変化について、アンケート調査を実施したものです。首都圏の結果を元に単身者のニーズを探っていきたいと思います。
まずは、現在の家賃について見ていきます。
学生の平均は5.9万円、社会人は平均6.33万円でした。これは、前年調査と比べると学生は0.3万円アップ、社会人は0.22万円アップと平均家賃が上昇しています。本調査は、学生が2007年から、社会人が2009年から始まっており、年々わずかながら下落を続けていましたが、今回は家賃が上昇に転じています。
学生、社会人ともに2010年の家賃水準にはまだ戻ってはいませんが、昨今の景気動向と同様の動きを示しています。3月に発表された公示地価は、三大都市圏では6年ぶりに上昇しています。分譲マンションの価格とは違い、地価上昇と家賃上昇は単純に比例するものではありませんが、このまま景気回復が続けば、住まいにかける費用も増えていくかもしれません。
また、男女差でいうと、学生、社会人ともに、男性より女性の方が高い家賃の部屋に住んでいることが分かりました。学生の場合、女性の方が男性より0.81万円高く、社会人は0.22万円高いという結果になっています。女性の方が、住環境へのこだわりが高いことの表れでしょう。
学生、社会人ともに平均家賃が前年調査より上昇。景気回復とともに、家賃上昇の兆しとなるか、今後の動向に注目!
部屋を探す際、家賃以外で最初から最後まで変わらずに重視したことを聞きました。
学生の1位は「通学時間」で53.7%と半数を占め、2位「最寄り駅から近い」43.1%、3位「間取り・広さ」と立地の利便性を重視しています。一方の社会人は、1位が「間取り・広さ」で50.7%です。学生と違い、住まいの快適性を重視しています。
意外だったのは、学生の4位が「セキュリティ」で33.0%なのに対し、社会人の「セキュリティ」は16.8%とさほど重視されていないことです。実は、次に説明する"妥協したポイント"でも社会人は4位に入っています。一人暮らしに慣れない学生の不安と自己管理に慣れた社会人の違いかもしれません。
もっとも、これは男性に限ったようで、女性に関しては、上位にランキングされています。女性はセキュリティ以外にも、1階より2階の「階数」「治安がよい」「最寄り駅から近い」といった項目が男性より重視されています。女性のセキュリティーの意識の高さは、次に説明する質問項目でも傾向が表れています。
学生は利便性、社会人は快適性を賃貸住宅に求める傾向にある。女子はセキュリティに関する項目にポイントが高い。また、男性は女性よりも初期費用の安さを重視している。
次は、家賃以外で妥協したポイントについてです。
学生、社会人ともに1位は「築年数」です。最近の賃貸住宅は、かつてとは違い、築年数が経ってもメンテナンスを怠っていなければ、入居者からは敬遠されないようです。
2位は学生・社会人ともに「間取り・広さ」です。これは、先ほどの質問の“重視したこと”でも上位の項目で、一見、矛盾しているようにも見えます。つまり、妥協した人、妥協しなかった人の二極化の表われだということです。ここが、入居者ニーズの捉え方の難しいところで、これもひとつのニーズの多様化といえるでしょう。家賃の二極化傾向がいわれて久しいですが、条件面からも、その傾向が見て取れます。
男女別で比較すると、男性の方が女性のポイントを上回っている項目が多く見られます。
これは、男性の方が何らかの条件を妥協し、女性は妥協せずに部屋を探す傾向を示しています。これは、もちろん家賃に反映されますので、平均家賃で女性の方が高いのもうなずけます。
男性のその他の妥協点については、「スーパーが近い」「コンビニが近い」などの周辺環境面、女性は「日当たり・風通しが良い」などの建物や部屋自体を妥協しています。
また、重視するポイントにあったように特に女子学生は「セキュリティ」「階数」「治安」といったセキュリティに関する項目には妥協しません。女性をターゲットとした賃貸住宅を考える場合は、セキュリティは必須の項目といえるでしょう。
築年数は、メンテナンスさえ行き届いていれば、さほど問題ない。「間取り・広さ」は妥協するか、しないかの二極化傾向があり、家賃の二極化と連動していることをうかがわせる。女性は、セキュリティには妥協しない。
設備の中で重視したものの質問では、学生、社会人ともに「独立したバス・トイレ」が1位となりました。次に「フローリング」で、この二つの設備は、今では定番といって良いでしょう。
注目すべきは、3位の「収納スペースが広い」です。最近は単身者も持ち物が多く、例えば単身者でもウォークイン・クローゼットがあると、大きなアピールポイントになるようです。また、簡単な棚を付けたり、シューズボックスを大きくしたりといった、プラスの収納も設備投資としては、効果があるようです。
もう一つ注目したいのが、学生でも「2口以上のコンロ」が5位に入っていることです。もちろん、女性の方がポイントは高いですが、男性のニーズが低いわけでもありません。自炊は、節約志向の表れでもあります。近年の若者の堅実さがライフスタイルに、そして住まいのニーズとなって表れているのです。
また、女性はほとんどの項目で男性より大きくポイントが上回っていて、環境面と同様に、設備にもこだわりが強く感じられます。男性は「特にない」の項目が女性よりも10ポイント上回っていて、設備に対するこだわりは女性ほどではないことが分かります。
「独立したバス・トイレ」「フローリング」は、もはや定番の設備。「収納スペースが広い」、「2口以上のコンロ」がニーズとして顕著になっている。