入居者のトレンドを探る上でも、知っておきたいのが入居者の「部屋探し」のノウハウです。入居者は、どこから、どのように情報を得て、部屋を探すのでしょうか? 「賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査」(株式会社リクルート住まいカンパニー調べ)と「賃貸不動産情報サイトランキング」(モーニングスター株式会社調べ)に見るポータルサイトの動向から、部屋探しの現状を把握し、入居者ニーズを探りたいと思います。
まずは部屋探しの情報源から見てみます。下のグラフ(「賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査」 株式会社リクルート住まいカンパニー調べ)をご覧ください。
ダントツで多いのはやはり「PCサイト」です。しかし、2011年には70.3%でしたが、2013年では57.1%と激減しています。その分、上昇したのが「スマートフォンサイト・アプリ」です。2011年の11.8%から22.7%と約2倍になっています。全体割合でいうとまだ少ないものの、今後も増えていくことが予想されています。近い将来の入居者となり得る10代は、スマートフォンを存分に使いこなしている世代です。スマホの機能が物件の情報検索などにさらに活かされるようになれば、やがてPCサイトを抜くかもしれません。
サイトで、あらかじめ希望物件を絞り込んだ入居者は、不動産会社での内見後の決定も早いようです。「部屋探しのために訪問した不動産会社店舗数」は、1店舗が50.2%と最も多く、2店舗訪れた人は22.3%と半減します。この1店舗のみの訪問回数は年々増加傾向にあります。サイトでは物件の写真や街の情報などが多く掲載され、内見するまでもなく、ネットで十分にその部屋のことが分かりますので、複数の不動産会社を回ってたくさん内見する必要もなくなったということです。ネットでの部屋探しが、スタンダードになって久しくなりますが、この傾向はさらに加速しています。
調査では「物件の情報を写真20点と共に見ることができる不動産検索サイトがあるとして、今後欲しい情報」について聞いています。
1位から5位までは以下の通りです。サイトでより多くの情報を確認しておきたいニーズが高く、動画も今後は増えてくると思われます。
1位「内見しているような内覧動画がある」
2位「周辺環境の写真が多い」
3位「気になった物件の同一建物内の他の募集中の部屋情報」
4位「写真の点数がさらに多い(30点以上)」
5位「物件のある駅周辺のエリア情報(カスタマーの口コミ)」
不動産会社にとっては、来店した入居希望者が成約にいたるかどうかは、営業マンの力量にかかっています。つまり、集客力と営業力が、不動産会社の客付け能力と言われていました。しかし、これからは集客力の決め手となるサイトの充実度が大きなポイントとなりそうです。不動産会社に依頼する時は、どのサイトで募集をしているのか、どう紹介されているかをチェックすることが重要になってきます。
入居者はサイトの情報で、ほぼ契約したいと思う物件を決めている。サイトでどのように物件を紹介するかが大きなポイント。
不動産のポータルサイトは、まさに群雄割拠。秋から春にかけては、テレビCMも多くなります。どんなサイトがあり、どんな機能があるのか見てみましょう。
中立的な第三者としての立場からサイト等の客観的な評価・比較を行うモーニングスター株式会社から「Gomez賃貸不動産情報サイトランキング」が紹介されました。これは、「サイトの使いやすさ」「情報量とコンテンツ」「安定性と信頼感」「便利な機能・サービス」の4つのユーザー視点から同社のアナリストが評価を行ったものです。
■「Gomez賃貸不動産情報サイトランキング」 2014年12月発表
順位 |
サイト名(運営会社名) |
1 |
HOME'S(ネクスト) |
2 |
SUUMO(リクルート住まいカンパニー) |
3 |
マイナビ賃貸(マイナビ) |
4 |
スマイティ(カカクコム) |
5 |
アットホーム(アットホーム) |
6 |
ホームアドパーク(アドパークコミュニケーションズ) |
7 |
Yahoo!不動産(ヤフー) |
8 |
goo不動産(エヌ・ティ・ティ レゾナント) |
9 |
アパマンショップ(アパマンショップネットワーク) |
10 |
CHINTAI(CHINTAI) |
ランキングを見ると、大手のポータルサイトから、最近頭角を現したサイトなどさまざまです。いくつか、特徴を見てみます。
1位の「HOME'S」は「情報量とコンテンツ」「便利な機能・サービス」のカテゴリーで1位と評価が高く、物件一覧では、同じ建物ごとに他の部屋の情報がまとめて表示されます。先の調査のニーズにかなった表示方法です。この他にも、不動産会社の口コミ・評価、駅や市町村の家賃相場など、オーナーにも役立つ豊富なコンテンツがあります。
2位は「SUUMO」。カテゴリー別では「サイトの使いやすさ」「安定性・信頼感」で1位です。何と言っても大手の安心感が入居者にはあるでしょう。駅での検索の他、通勤・通学時間から探す、家賃相場から探す、学生向け、新婚・カップル向けなど、検索のカテゴリーが豊富に用意されていて、検索のしやすさが特徴です。行政区情報や周辺環境など生活に必要な情報も掲載されています。スマートフォンサイトからも会員ログインでき、閲覧記録がチェックできます。「学生版SUUMO」「SUUMO引っ越しダンドリ」といった関連アプリも用意されています。また、低家賃のものでも動画で紹介されている物件もあります。
この他、価格.comのカカクコムが運営するスマイティや検索サイトのYahoo!不動産、goo不動産といった比較的新しいサイトもランキングされ、どこも検索しやすさの他、物件だけではない周辺情報が豊富に掲載されています。
よく見られるサイトは、物件情報はもちろん、検索のしやすさ、周辺環境の情報が充実している。また、他の物件との比較しやすさもポイントで、サイト上で比較することが定番となっている。
各サイトでは、駅やエリアで探せる他に、こだわりの条件から検索できるようになっています。つまり、それらの条件には一定のニーズがあるということです。
定番とも言える条件は「新築・築浅物件」「敷金・礼金ゼロ物件」の他に、「ペット可物件」「二人暮らし物件」「楽器演奏可物件」などです。
サイトランキングで3位だったマイナビでは、こだわりの条件が細かく分かれていて、それを特集として取り上げています。その特集数は40強もあります。いくつか気になったものを上げてみます。
「面積30平米以上の広々ワンルーム」「家賃無料期間付!フリーレント」「建物仕様・設備がハイグレード」「初期費用を抑える!家具付き」「たっぷり収納できるイチオシ物件」「自炊をする人に!複数ガスコンロ」「女性でも安心!セキュリティ充実」など。
また、それぞれの特集では、知っておきたいポイントも掲載されています。例えば、「女性でも安心!セキュリティ充実」の場合は、「オートロックでも油断はせず」、「周辺環境の重要」が紹介されていて、さらにエリアを選ぶようになっています。
つまり、入居者募集に際しては、これらの条件のどれかに当てはまる、あるいは複数の条件に当てはまれば、それだけ入居者の選択肢として候補になるということです。逆に、どこにも当てはまらない場合は、選択肢に入らない可能性もあり不利になります。
ご所有の自分の物件と同じ条件で検索をかけてみると、ライバル物件にどこが勝っているのか、また劣っているのかが分かります。今年の繁忙期もあとわずかです。空き室があるようでしたら、ライバル物件と比較して、劣っている部分で補える設備などがあれば検討する必要があるでしょう。
また、不動産会社によると、最近は4月になってからも学生需要が少しあると言います。それは、ぎりぎりになって行く大学を決めたり、自宅から通うつもりだったが、やはり遠すぎたりといった理由です。
最後に、「賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査」の中で、「入居時の設備・仕様について、設置されている物件に住んだことはないが、次回引っ越す時に欲しい設備・仕様」のランキングベスト10を紹介します。参考にしてください。
■入居物件決定の際の設備・仕様の必要度(当該設備の経験がない人ベースの必要度)
順位 |
設備・必要度(次に引っ越すときに欲しい) |
1 |
インターネット接続可(無料)(59.6%) |
2 |
TVモニター付きインターフォン(46.9%) |
3 |
追い焚き機能つきの風呂(45.4%) |
4 |
2口以上のガスコンロキッチン(44.9%) |
5 |
宅配ボックス(44.2%) |
6 |
エアコン(39.6%) |
7 |
オートロック(39.2%) |
8 |
LED照明(38.9%) |
9 |
シューズボックス(37.4%) |
10 |
洗浄機能付きのトイレ(37.3%) |
サイトのこだわり条件を参考に、ライバル物件と比較し、どんなプラスアルファをアピールし入居者に選ばれる物件にするかを検討する。