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腹水濾過濃縮再静注法(CART)

Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy

消化器癌のがん性腹膜炎治療と当施設でのCART療法の現状

第26回日本緩和医療学会学術大会 共催セミナー1
腹水症でお困りではないですか?
~悪性腹水患者のQOL改善へCARTが果たす役割~

座 長

庄 雅之 先生

奈良県立医科大学 消化器・総合外科学教室

演 者

菊池 由宣 先生

東邦大学医学部 臨床腫瘍学講座

東邦大学医療センター大森病院におけるCARTの現状

当施設でのCARTは、診療科が腎センターにCARTを依頼し、腎センターが透析室で腹水をCART専用の貯留バッグに採取後濾過濃縮を行います。これを病棟に戻してもらい患者の取り違えがないよう留意し患者に再静注を行っています(図1)。2012年以降のCART件数(同一症例を含む)は計251件で、65%は消化器系のがん、25%が婦人科系のがんとなっています(図2)。CART前後の結果を図3に示します。

化学療法とCARTを併用すると、腹水中の薬剤が濃縮されて血中に再静注されるのではないかという疑問が生まれてきます。アルブミンと結合した薬剤はCARTで濃縮されますが、アルブミンと結合した薬剤の抗腫瘍活性は低く、腹水中のアルブミン濃度は血中と比較して低いことなどから、抗がん剤投与直後にCARTを施行するのでなければ臨床的には問題がないと考えられます。逆にシスプラチン(CDDP)、オキサリプラチン(L-OHP)、ドセタキセル(DOC)、パクリタキセル(PTX)など、タンパク結合能の高い薬剤はCART後に腹腔内投与することで効果が期待できると思います。

Q&A

Q:セミナーの主題である「悪性腹水患者のQOL改善へCARTが果たす役割」について、先生のお考えをお聞かせください。

A:がん性腹水は、患者さんのQOLを低下させる大きな要因の1つとなっています。化学療法とCARTを併用することで、患者さんのQOLを損なわずに化学療法を継続できると考えています。CARTがどのようながん種に対して有効なのか、どのような薬剤と併用すべきかは今後の課題だと思います。

Q:化学療法とCARTの間隔について、具体的な施行間隔等は決めていますか?

A:特に何日間空けるなど決めていません。腹水中でアルブミンと結合した抗がん剤はCARTで濃縮されますが抗腫瘍活性はないので、抗がん剤投与直後にCARTを施行するのでなければ、臨床的には問題ないと考えます。逆に、タンパク結合能の高い抗がん剤はCART後に腹腔内投与することで効果が期待できるのではないかと考えられます。

Q:実臨床でCART後に腹水が溜まらないようにするための具体的な工夫がありましたら教えてください。

A:胃がんなどの消化器がんに対して全身化学療法とCARTを行っていると、どちらが効いているかというのは非常に悩ましいところだと思います。CART後の適切な全身化学療法の確立のためには、今後いろいろな臨床試験を行いエビデンスを積み上げていく必要があると思います。

消化器がんのがん性腹膜炎の治療法

原発固形がんが腹膜に浸潤・転移・接着してがん性腹膜炎になると、腫瘍分泌因子による腹膜・内臓の血管新生や毛細血管透過性の亢進による血漿流量の増加、リンパ管の閉塞による腹腔からの流出減少により悪性腹水が生じます1)。がん性腹水患者の原発がん種の割合で最も多いのが卵巣がん、次に乳がん、そして胃がんや大腸がんなどの消化器がんなどが続きます2)。腹水診断後からの生存期間は卵巣がんが最も長く、次に乳がんで、消化器がんでは非常に短いのが特徴です2)。がん性腹膜炎に対してはさまざまな治療法があります。

腹水穿刺排液

腹水穿刺排液の利点は腹部膨満感、身体活動、息切れなどの症状を速やかに改善することですが、欠点として穿刺手技による疼痛、タンパク質の漏出、水分の喪失や血圧低下、血管・内臓への損傷のリスク、腹膜炎などの感染症のリスクなどがあります。また、腹水穿刺排液によりタンパク質が漏出すると患者さんのQOLが低下するため、日本緩和医療学会編集の「がん患者の消化器症状の緩和に関するガイドライン 2017年版」では1回量1~3Lぐらいの排液量であれば安全に施行できるとしています。このような問題を改善する一つの手技としてCARTが注目されています。

利尿薬

悪性腹水に対する利尿薬の効果は約40%といわれています。悪性腹水のあるがん患者16名に対しスピロノラクトン単独あるいはフロセミドを併用した報告から、広範囲の肝転移の患者においてスピロノラクトンの効果が期待できることが示されました3)。したがってがん性腹膜炎に用いる利尿薬として、広範囲の肝転移による悪性腹水に対してはスピロノラクトンを第1選択とし、効果がなければフロセミドを追加するのがよいのではないかと思います。

オクトレオチド

オクトレオチドはVIP(vasoactive intestinal polypeptide)やガストリンなどの消化管ホルモンを抑制するといわれています。VIP産生腫瘍患者において、最初の腹水穿刺排液から次の腹水穿刺排液までの期間の中央値はオクトレオチド群(n=16)では28日、プラセボ群(n=17)では14日で有意差は認められませんでした4)。QOLに対するオクトレオチドの効果は、腹水量と腹囲の変化に関しては有意な改善は認められませんでしたが、腹部膨満感、腹部不快感、息切れなどの症状で有意な改善が認められました(それぞれp=0.01、p=0.02およびp=0.007)4)

ステロイド

がん性腹膜炎の腹水に対するステロイドの有効性を示すエビデンスはあまりないのが現状ですが、強力な抗炎症作用があることから、実臨床の現場ではがん性腹膜炎の患者さんに対してステロイドが有効に使われているのではないかと思われます。

温熱化学療法

温熱化学療法(HIPEC)は単独ではなく、完全腫瘍減量手術(CRS)と併用して使われています。胃がんのがん性腹膜炎の患者を対象に、OS(Overall Survival)をエンドポイントとしてCRS単独群(n=97)とCRS-HIPEC併用群(n=180)とを比較したCYTO-CHIP studyでは、CRS単独群に比べてCRS-HIPEC併用群においてOSが有意に延長しました(p=0.005)5)

全身化学療法

胃がん患者の肉眼的腹膜播種を対象としてbest available 5-FU(5-FU単独持続静注療法)とweekly PTXを比較したJCOG0407 trialでは、OSに有意差は認められませんでしたが、PFS(Progression-Free Survival)が有意に延長し(p=0.005)、有害事象が少なかったweekly PTX療法が推奨されました6)
weekly PTXとアルブミンにPTXを結合させたnab-PTXを比較したABSOLUTE trialでは、腹膜転移および腹水がある群でのPFSとOSにおいて、nab-PTX群のほうがweekly PTX群よりも有効な成績が得られました(それぞれp=0.019、p=0.044)7)。現在、胃がん患者さんを診ている一般的臨床医の先生の中には、腹膜転移および腹水がある場合にはnab-PTX、腹水がない場合にはweekly PTXを選択される先生もいるかと思われます。

腹腔内化学療法

卵巣がんにおける化学療法では、静注と比べて腹腔内投与のほうがPFSもOSも良好である8)ことから、卵巣がんにおいては腹腔内投与が比較的スタンダードな治療法として確立されています。腹腔内投与する薬剤としては、PTXやDOC、マイトマイシン(MMC)、CDDPなどがあります。疎水性高分子物質であるPTXやDOCはそれぞれCremophor ELやPolysorbate 80で可溶化されており、腹膜腔に直接開いているリンパ性気孔を通って徐々に排出されます。一方、親水性低重量分子物質であるMMCやCDDPは腹膜中皮層を通って毛細血管に急速に吸収されてしまいます。腹腔内投与後の腹腔内・血漿の薬物濃度のAUCはPTXが1,000、DOCが207-552、MMCが10-24、CDDPが12-21で、PTXの腹腔内投与による効果が期待されます9)。
胃がんのがん性腹膜炎患者を対象に、PTX20mg/m2の腹腔内投与と50mg/m2の静注およびS-1の内服の併用(IP群、n=38)と、CDDPの静注とS-1内服の併用(SP群、n=7)を比較したPHOENIX-GC Trial では、IP群において腹水の消失が39%、減少が47%、SP群においては消失はなく、減少が29%でした10)

カツマキソマブ

カツマキソマブは上皮がんの大部分で発現が認められる上皮細胞接着因子EpCAMとT細胞の表面抗原であるCD3の2つの抗原に対して結合可能なバイスペシフィック抗体です。カツマキソマブは、EpCAMを細胞表面に発現したがん細胞とT細胞を架橋し、CD3を介してT細胞を活性化させ、またFcγを介してADCC(抗体依存性細胞障害)やCDC(補体依存性細胞障害)といった細胞傷害性の抗腫瘍効果を発揮します。
腹水中EpCAM陽性患者のカツマキソマブ腹腔内投与群(n=46)ではコントロール群(n=20)と比べて無腹水穿刺生存期間(HR: 0.254、p<0.0001)および腹水穿刺期間(HR: 0.169、p<0.0001)が有意に延長し、さらに胃がんサブグループ(n=66)においては生存期間(HR: 0.469、p=0.0313)も有意に延長しました11)。ただし現在、カツマキソマブは欧州では承認されていますが本邦では未承認です。

総括

腹水治療の古典的な治療法から最近の話題まで一つ一つ解説していただきました。腹水穿刺排液は一時的に症状が改善しても、すぐに腹水が再貯留します。私たちはCARTを積極的に臨床の現場で使っていますが、著効してその後は腹水が溜まりにくくなることを実感することがあります。一方、まだわかっていないことも多くあり、今後ひとつずつ明らかにしCARTを組み合わせたがん治療が進むことを期待します。

庄 雅之 先生


参考文献
1)Journal of Cancer 2011; 2: 309-316.
2)Annals of Oncology 2007; 18: 945-949.
3)GASTROENTEROLOGY 1992; 103: 1302-1306.
4)Oncology 2012; 82: 315-320.
5)J Clin Oncol 2019; 37: 2028-2040.
6)Gastric Cancer 2016; 19: 902-910.
7)Gastric Cancer 2019; 22:155-163.
8)N Engl J Med 2006; 354: 34-43.
9)World J Gastrointest Oncol 2015; 7: 285-291.
10)J Clin Oncol 2018; 36:1922-1929.
11)Int J Cancer 2010; 127: 2209-2221.

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