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学会セミナー記録集

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2012年11月9日 第33回 日本アフェレシス学会学術大会 ランチョンセミナー2 腹水濾過濃縮再静注法(CART)の有用性

  • 日時: 2012年11月9日(金)12:00~13:00
  • 会場: 長崎・ハウステンボス(ユトレヒト会議室4)
  • 提供: 旭化成メディカル株式会社

はじめに

座長:山家 敏彦先生(社会保険中央総合病院 臨床工学部)

腹水濾過濃縮再静注法(CART)は、癌細胞・細菌などを除去した腹水を濃縮して再静注する治療法です。本セミナーでは、CARTの有効性と安全性について、東京大学・花房規男先生からは実際の施行経験より、東京女子医科大学・菅野仁先生からは血漿分画製剤としての視点より、それぞれご講演いただきます。

講演1

腹水濾過濃縮再静注~その有効性と安全性、当院における経験を踏まえ~

演者:花房 規男先生(東京大学医学部付属病院 血液浄化療法部)

当院におけるCARTの現状

図1 当院におけるCART適応判断フロー

 当院では、2009年5月にCARTを開始し、2012年10月末まで、71例に258回、週2回程度施行している。
 CARTは安全に施行することが重要であり、リスクマネージメントでは個人の識別を重視している。自己血輸血と同様、他人の腹水を静注することはあってはならないため、受持医・病棟側での対策として、腹水採取前に患者氏名を可能な限り患者本人に記載していただいている。また、血液浄化療法部では、可能な限り同時に腹水を処理しないことにしており、場所を分ける、午前・午後に分ける、日を分けるなどの対策を行っている。
 当院では、CARTの適応・禁忌を踏まえたフローに従い適応判断を行っている(図1)。なお、血性腹水の場合は少量の腹水を遠心し、肉眼的に上清にヘモグロビンを認めないことを確認後、CARTを施行している。
 当院におけるCART施行例の患者背景は、男性27例、女性44例で女性が多く、平均年齢は58.8歳であった。当院では腹腔内化学療法が行われていることより、原疾患は胃癌が51例(72%)で最も多く、次いで卵巣癌(7例、10%)、膵癌(4例、6%)であった。1例あたりの施行回数は平均3.6(範囲1-21)回であった。
 処理量等の平均は、原腹水量が3,092mL、濃縮後容量が310mLで、濃縮比は11.3倍となり、処理時間は111分であった。原腹水蛋白濃度は4.3g/dL、濃縮後蛋白濃度は27.2g/dLで、濃縮比は6.6倍であった。補充された蛋白量は83.3gで、回収率は62%であった。記録上の血性腹水は19回(7.3%)に、認められた。
 また、当院では腹水1Lあたり500単位のヘパリンを混注しており、平均ヘパリン使用量は1,430単位であった。ヘパリンの混注により、一次膜の目詰まり等のトラブルがほぼ回避できるようになった。

CARTの臨床効果

図2:CART前後の体重変化

 CARTの臨床効果には、他覚的効果と自覚的効果がある。他覚的効果としては、体重減少、腹水中の蛋白の補充、利尿剤抵抗性の改善が、自覚的効果では、腹満感の改善、臨床症状の改善などが認められる。
 まず初めに、CARTの他覚的効果について検討した。当院の32例での検討では、アルブミンが平均38.1g、グロブリンが平均27.2g補充されており、アルブミンのみならずグロブリンの補充効果も認められた。また、CART施行翌日に有意な体重減少がみられ、Day 5まで有意な減少が維持された(図2)。

図3:利尿剤抵抗性の改善:尿量の変化

 尿量は、施行翌日に有意に増加し、利尿剤抵抗性の改善効果が示された(図3)。再静注蛋白量と尿量との相関を検討したところ、弱い正の相関が認められた。
 CARTの自覚症状に対する効果は、腹満感に対するNRSとMDASI-J**を用いて検討した。対象患者は別の32例(男性8例、女性24例)、初回施行時年齢は平均60.7歳、原疾患は悪性腫瘍が30例(胃癌19例、卵巣癌5例、膵癌3例、その他3例)、その他疾患が2例であった。
 施行前後での腹満感(NRS値)の変化を検討したところ、施行前は平均7.1であったのが施行後には平均3.9となり、有意な低下が認められた。MDASI-J症状スコア(NRS値)への効果を検討したところ、消化器症状の嘔気、嘔吐と消化器症状平均値、さらに一般症状の疼痛、倦怠感、睡眠障害、ストレス、息切れ、悲しい気持ちと一般症状平均値、症状スコア平均値に有意な改善が認められた。支障スコアについても、全般的活動、気持ち、仕事、対人関係、歩行、生活を楽しむ、の6項目すべてで有意な改善が認められ、支障スコア平均値にも有意な改善が認められた。

*NRS :
Numerical Rating Scale(数値的評価スケール)。全くなかったを0、これ以上考えられないほど強かった(ひどかった)を10として0~10までの数値で評価するスケール。

**MDASI-J :
M. D. Anderson Symptom Inventory (日本語版)。癌患者を対象とした症状評価スケール。24時間の症状をそれぞれ10点法のNRSにより評価し、平均点で比較する。
症状スコアには消化器症状スコア(3項目)、一般症状スコア(10項目)があり、支障スコアには日常生活の障害6項目がある。

CARTに伴う副反応

 CARTに伴う副反応としては、血圧低下など腹水穿刺・排液に関連する副反応と、体温上昇、血小板減少など再静注に関連する副反応が懸念されている。
 当院の血圧に関する検討では、排液後に収縮期血圧で平均約4mmHg、拡張期血圧で平均約3mmHgの有意な低下が認められたが、臨床的意義は軽微で、再静注後には施行前と有意差がないレベルまで回復した。
 腹腔・静脈シャント(PVシャント)では播種性血管内凝固症候群(DIC)がみられることから、血小板数を検討したが、CART施行前後で有意な減少は認められなかった。
 発熱は、CART施行時に最も懸念される副反応であるが、当院では、再静注の速度を100~150mL/時に抑える、処理速度を3L/時以下にする、ヒドロコルチゾンリン酸エステルナトリウム100~200mgを前投与する、発熱時に非ステロイド性抗炎症薬(NSAIDs)を投与する、などの発熱対策を行っている。体温の平均値の変化を検討したところ、排液後の36.8℃から再静注後には37.0℃に有意に上昇したが、平均0.2℃の上昇にとどまった。再静注後の最高体温の分布を検討したところ、約半数は37℃未満の軽微な上昇にとどまっており、38℃以上の発熱回数はごく僅かであった(図4)。また、再静注後の体温上昇は概ね1℃以内にとどまっており、これらの成績から、体温上昇が統計的には有意であったものの、臨床的には大きな問題ではないと考えられた。

図4:再静注最高体温の分布

CARTの利点

表1:CARTの利点

 患者側からみたCARTの利点としては、QOLの改善、利尿剤抵抗性の改善、アルブミン製剤が不要、アルブミン・グロブリンなど血清蛋白の補充などがあげられる(表1)。一方、医療機関側からの利点としては、診断群分類別包括制度(DPC)施行施設でも保険請求が可能であることがあげられ、両者ともにメリットがあるWin-Winの関係と考えられる。
 以上、難治性腹水の治療法として近年、注目を集めているCARTは症状の改善効果に優れ、副反応が軽微であることから、有用性が高い治療法と考えられた。

講演2

腹水濾過濃縮再静注法の安全性と有効性血漿分画製剤としての視点から

演者:菅野 仁先生(東京女子医科大学 輸血・細胞プロセシング科)

輸血管理システムを使った腹水製剤の供給体制

図1:貯留バッグの準備

 当院の輸血・細胞プロセシング部では、2010年12月から腹水濾過濃縮再静注法(CART)を一括して実施している。濾過濃縮時の処理速度は50mL/分未満、濾過濃縮後の総蛋白濃度が5g/dL以下、容量が1,000mL以上の時に再濃縮を行っている。
 当院は、自己血輸血を年間800~900件、安全に実施しているが、自己血液由来製剤であるからと言って必ずしも安全ではない。製剤の取り違いや細菌感染などのリスクがあり、それらを防ぐための対策が行われている。当科では自己血や細胞製剤の管理供給に利用している輸血管理システムを使用し、安全な腹水製剤の供給体制を整えたのでご紹介したい。
 CART実施の際は、まず診療科から輸血・細胞プロセシング部に電話による依頼があり、発熱や高ビリルビン血症などの有無を聞いた後、予約を受付、電子カルテ端末から採取オーダーが出される。原腹水採取用の貯留バッグと、採取日・8桁の患者ID・患者名・製造番号を記入したラベルの両方をCART前日に病棟へ供給する(図1)。採取された腹水は当部に持ち込まれる際にクランプのゆるみやバッグの破損などが無いことを確認した上で受け取る。濾過濃縮処理を開始する前には、貯留バッグのラベル、濃縮バッグのラベルが同一氏名であることを2名で確認している。納品、製剤の払い出し、輸注前などにはバーコードによるシステム照合を行っており、安全性に配慮している。

アルブミン適正使用におけるCARTの位置づけ

表1:平成23年 血液・血漿分画製剤供給義務

 免疫グロブリン製剤は、ほぼ100%が国内自給なのに対し、アルブミン製剤は輸入製剤が40%以上を占めているのが現状である。アルブミン製剤による免疫学的副作用リスクとしては、血漿蛋白ハプトグロビン(Hp)欠損症患者における過敏反応が挙げられ、既に数例の副作用報告を受けて、アルブミン製剤の慎重投与の項目にHp欠損症患者が追加された。アルブミン製剤の使用量抑制や、稀ではあるが重症の免疫学的副作用のリスクを鑑みると、自己腹水によるCARTの有用性・安全性は高く評価される。
 「血液製剤の使用指針(2012年3月一部改正)」では、血漿膠質浸透圧の維持、循環血漿量の確保のためにアルブミン製剤の使用が認められている。さらにアルブミン製剤の使用指針では、治療抵抗性の腹水治療に短期的に用いることが認められているが、不適切な使用の1つとして末期患者への投与が挙げられており、今後緩和医療の現場では、より積極的なCARTの導入を考慮すべきと考えられる。
 当院では、年間100件のペースでCARTが行われており、1件平均26.5gのアルブミンが回収できることから、当院の平成23年アルブミン製剤供給量は181,438gの約1.5%はCARTで賄えた計算となる(表1)。

腹水濾過濃縮による血漿蛋白の回収状況と腹水製剤の安全基準

図2:腹水製剤輸注前の安全性検査

 53検体の平均値として、容量は処理前が2,716mL、処理後が410mLで、濃縮比は11.3倍であった。総蛋白は、処理前が76.1g、処理後が50.3gで、回収率は61.2%であった。アルブミンは、処理前が36.2g、処理後が26.5gで、回収率は66.8%であった。なお、処理前後のアルブミン量に強い相関があり(相関係数=0.97,n=53)、腹水中のアルブミン濃度が幅広い範囲で回収できていることがわかった。
 また、腹水製剤輸注前の安全性検査として、2012年9月以降、カイネティック比色法のエンドトキシン検査を行っている(図2)。エンドトキシン0.1EU/mL未満が安全基準であり、それを確認した後に製剤を供給している。

冷蔵、冷凍保存の可能性と運用案

図3:CARTの冷凍保存、分割投与(案)

 診療科からの意見として、採取した腹水の一晩冷蔵保存後の濾過濃縮や、濾過濃縮後の腹水製剤の一晩冷蔵保存後の供給を可能にすることが運用面で望まれるため、我々は原腹水および濾過濃縮直後の腹水製剤、一晩冷蔵保存後の原腹水および濾過濃縮後の腹水製剤、14日間凍結保存後の腹水製剤についてエンドトキシン検査を行なったが、すべての条件で検出されなかった。現在は腹水採取当日に再静注を行っているが、今後は冷蔵保存を加えて、よりフレキシブルにCARTが運用可能かどうかを検討するため、臨床研究の手続きを進めている。
 さらに、CARTの冷凍保存、分割投与の可能性も検討している(図3)。凍結腹水製剤が使用可能になれば、外来での輸注や次回腹水穿刺時の輸注も可能になると期待される。将来的にはサテライトの関連医療機関におけるCART運用の可能性も考えられる。
 今後の課題としては、原腹水の安全な冷蔵保存期間の検討、腹水製剤の凍結保存期間の設定などが挙げられる。また様々な原疾患の腹水製剤が安全且つ有効に臨床症状の改善をもたらすことを証明し、緩和ケアにおけるCARTの有用性を高めることも重要と考えられる。

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