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学会セミナー記録集

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第69回日本産科婦人科学会学術講演会 ランチョンセミナー10 2017年4月14日(金)

腹水濾過濃縮再静注法(CART)の婦人科領域での実際

溝上 友美 先生

講演1

当科における婦人科癌性腹水に対するCART施行状況と症例報告

溝上 友美 先生
関西医科大学 産婦人科学

背景

難治性癌性腹水は思者のQOL(Quality of Life) を著しく低下させることが知られています。腹水穿刺排液はその症状緩和には有効ですが、蛋白の消失による栄養状態や免疫能の低下、短期間での腹水の再貯留が確認されており、その効果は一過性と報告されています。これらの問題を改善するために、当科では、腹水濾過濃縮再静注法 (CART: cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy) を積極的に施行しています。今回は、当科におけるCARTと腹水穿刺排液単独の施行状況ならびにCARTの有効性を実感できた症例の一つをご紹介します。

腹水濾過濃縮再静注法(CART)とは

腹水濾過濃縮再静注法(CART)とは

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  • CARTとは、まず、腹水を採取して腹水濾過器(細菌およぴ癌細胞等の除去)で腹水中の細菌・癌細胞・血球成分などを除去します。次に、腹水濃縮器で除水し、アルブミンや免疫グロブリンなどの有用な物質を濃縮します。この濾過濃縮した自己腹水を再静注投与する治療法です。
  • 婦人科領域では、大量腹水貯留をきたしやすい卵巣がん症例においてCART施行機会が多いです。

卵巣がん治療ガイドライン2015年版より(日本婦人科腫瘍学会編)

卵巣がん治療ガイドライン2015年版より(日本婦人科腫瘍学会編)

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  • CARTは、有効性を示すエビデンスが複数あり、結果がおおむね一貫しているグレードClとして推奨されています。

※推奨の基準(グレード)
C1: 行うことを考慮してもよいが、未だ科学的根拠が十分ではない
(あるいは、十分な科学的根拠はないが、有効性を期待できる可能性がある)
有効性を示すレベルI11のエビデンスが複数あり、結果が概ね一貫している

当科のCARTと腹水穿刺排液単独の施行状況

対象患者と施行結果

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  • 当科では、2013年6月からCARTを施行しているため、腹水穿刺排液単独とは施行期間が異なります。
  • CARTと腹水穿刺排液単独では年齢は同様でしたが、1人あたりの施行回数(中央値)はCARTで1回、腹水穿刺排液単独で3回でした。
  • 腹水量は、CARTが3,500~4,790mL、腹水穿刺排液単独が2,110mLでした。 CARTにおける濾過濃縮後腹水量は、300~600mL、濃縮率は、7.5~8.7倍、濾過濃縮後腹水中のアルブミン量は、35.2~43.0gでした。
患者背景

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  • 原疾患別では、CART、腹水穿刺排液単独ともに卵巣がんの症例が多く、CARTでは 28例 (73.7%)、腹水穿刺排液単独では26例(55.3%) でした。
  • 回数別でも卵巣がんが多く、CARTでは78回(86.7%)、 腹水穿刺排液単独では140回(66.4%)でした。
  • 期別分類では、CART、腹水穿刺排液単独ともに、卵巣がんと子宮体がんの皿期とW期の症例 が多く、卵巣がんではCART26例(92.9%)、腹水穿刺排液単独23例(88.5%)。子宮体がんではCART2例(66.7%)、腹水穿刺排液単独 10例(83.3%)でした。
  • 施行時期においては、腹水穿刺排液単独は、半数以上がBSC(ベストサポーティブケア)として行っていましたが、CARTは、BSCの他、手術や化学療法(NAC:術前化学療法、NAC以外)といった積極的治療と併用しても多く行っています。

症例:治療方針に難渋した粘液性腺がん症例
(CARTを施行し、全身状態を良好に保ったまま手術・化学療法ができた1例)

症例:治療方針に難渋した粘液性腺がん症例
(CARTを施行し、全身状態を良好に保ったまま手術・化学療法ができた1例)

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CARTの診療報酬

CARTの診療報酬

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【診療報酬算定方法に伴う実施上の留意事項について】

  • K6 胸水・腹水濾過濃縮再静注法
    一連の治療過程中、第1回目の実施日に、1回に限り算定する。なお、一連の治療期間は2週間を目安とし、治療上の必要があって初回実施後2週間を経過して実施した場合は改めて所定点数を算定する。
    (保医発0304第3号・平成28年3月4日)

【包括評価制度 (DPC)における 診療報酬算定について】

  • 「K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注法」は、手術の部で算定されます。
    手術の部で算定する特定保険医療材料及び手術料は出来高による算定が可能ですので、CARTにかかる材料価格、手術料は、出来高で算定が可能です。

結果と考察

  • 婦人科がんの癌性腹水中には、総蛋白、アルブミンが多く含まれていました。
    <濾過濃縮後腹水中のアルブミン量>
    卵巣がん: 43.0±36.3g 子宮体がん: 39.2±14.3g 原発不明がん:35.2±18.9g
    →婦人科がんの濾過濃縮後腹水中のアルブミン量は、25%アルブミン製剤50mL(含有アルブミン量12.5g) の2.8-3.4倍相当でした。CARTにより補うことのできるアルブミン量はアルブミン製剤より多く、また、CARTは自己蛋白を使用するため感染症の危険がないことも利点と考えています。
  • 当科では、手術時の大量腹水消失に伴う低アルブミン血症の回避目的で、術前や周術期にもCARTを施行しており、化学療法との併用も積極的に取り入れています。腹水穿刺排液単独では、半数以上をBSCとして行っていましたが、 現在は、CARTを手術や化学療法といった積極的治療と併用して行っています。
  • 治療方針決定に難渋した粘液性腺がん症例では、CARTを行うことで、腹部膨満感の緩和と、血中アルブミン値の低下を緩徐にでき、全身状態を良好に保ったまま全身化学療法を開始することができたと考えています。

まとめ

腹水貯留が認められてからの生存期間が長い婦人科がんにとって、 CARTは全身状態を良好に保ちながら化学療法を開始・継続できる有効な治療法である。

Q&Aディスカッション

〈化学療法とCARTの併用について〉

Q1:
自験例で、かなり病態が進行した状態で血管内脱水の状態があり、CART後に化学療法を行い、血栓症を起こした症例を経験したのですが、 CART施行直後の化学療法の安全性についてどのようにお考えですか?
A
NAC症例を複数例経験していますが、 CART施行直後に化学療法を施行して、重症な事態が起きたことはありません。 実際にNAC翌日の血液データでは少なくとも脱水所見などは無く、PSの改善を実感しています。
Q2:
卵巣がん皿c期の患者でdose-dense TC (パクリタキセル+カルボプラチン)を行う場合、CARTはどのタイミングで施行したらよいか教えてください。
A
当科では、化学療法前にCARTを施行しています。CARTを施行して翌日に化学療法を行うことが多いです。
Q
毎週化学療法を行う場合は、化学療法前日にCARTを行うのがよいのですか?
A
CARTは、2週間に1回の保険算定が可能なので、 2週間に1回、化学療法の前日に行います。

〈腹水採取について〉

Q3:
腹水採取時に6,000mLの腹水を抜くと循環動態に顕著な変動があると思いますが実際に腹水採取時にどれくらいの時間がかかりますか?
A
採取は基本的に自然落下で行います。腹水量が6,000mLでは、落差圧で採取速度が速くなりますが、血圧など 状態を診ながら慎重に採取を行います。血圧が下降傾向になる場合は、その時点で全量採取できなくてもやめます。 また、 6,000mLの腹水採取は、約3時間で行いました。特にPSが悪い患者などはモニターをつけ、モニタリングの頻度をあげながら採取を行うこともあります。

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