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学会セミナー記録集

医療従事者向けサイト

第55回日本癌治療学会学術集会学術セミナー7 2017年10月20日(金)

がん治療への緩和ケア
~早期から終末期におけるCART(腹水濾過濃縮再静注法)を考える~

中村 陽一 先生

講演1

がんと診断された時からの緩和ケア

中村 陽一 先生
東邦大学医学部 臨床腫瘍学・医学教育センター

はじめに

緩和ケアの定義を「6W1H」の視点で考えてみました。

-WHOの定義-

生命を脅かす疾患による問題に直面している患者とその家族に対して、痛みやその他の身体的問題、心理社会的問題、スピリチュアルな問題を早期に発見し、的確なアセスメントと対処(治療・処置)を行うことによって、苦しみを予防し、和らげることで、クオリティ・オブ・ライフを改善するアプローチである。

日本ホスピス緩和ケア協会2017年5月改訂より

がん患者の消化器症状の緩和「悪性腹水」への対処法を考えてみました。

腹水による腹部膨満感

腹水による腹部膨満感ですが、治療法の選択肢は主に右の4つが上げられます。

腹部圧迫による疼痛の緩和のために鎮痛薬・鎮痛補助薬をうまく使うこと。次に原因にもよりますが、利尿剤を使うこと。

腹水貯留を繰り返す治療困難な難治性腹水の対処法として、腹水穿刺排液や腹水濾過濃縮再静注(CART)が使われています。アウトカムは、症状緩和やQOL(生活の質)改善を指標とします。

腹水による腹部膨満感

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CART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy:腹水濾過濃縮再静注法))

CARTとは、腹水症(又は胸水症)患者の腹水(又は胸水)を採取し、細菌やがん細胞を取り除きアルブミンなどの有用成分が濃縮された腹水を点滴でもどす治療法です。

CART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy:腹水濾過濃縮再静注法))

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保険適用

CARTは、右のとおり難治性腹水症の患者さんに保険適用されています。

保険適用

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緩和ケアの定義として「6W1H」の視点で緩和ケアを考えてみました。

Whom 緩和ケアはだれに?

患者さんと家族のために行います。

What 緩和ケアは何をするの?

緩和ケアとは全人的なケアを行うことです。
身体的な痛みに加え、精神的・心理的、社会的、スピリチュアルな問題を早期から正確にアセスメントし解決することにより、苦痛の予防と軽減を行います。

What 緩和ケアは何をするの?

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「死期が近い場合の不安や心配ごと」の意識調査を右に示しました。最も多い訴えは「病気が悪化するにつれ、痛みや苦しみがあるのではないか」という身体的、精神・心理的な苦痛、次いで「家族や親友と別れなければならない」というスピリチュアルな苦痛でした。また「残された家族が経済的に困るのではないか」「財産がどうなるのか」といった社会的な苦痛も挙げられました。
このように様々な「死期が近い場合の不安や心配ごと」の全人的な痛みに対してケアを行うことが緩和ケアでは大事です。

死期が近い場合の不安や心配ごと

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Why なぜ緩和ケアが必要?

QOLを向上させるために行います。
早期からの緩和ケアはがん患者の苦痛を緩和し、生存期間を延長するという有名な論文を改めて紹介します。
進行肺がんに対し、がんと診断された時から、抗がん治療と並行して、早期に緩和ケアを導入した群と緩和ケアを導入せず通常の治療を行った標準治療群の比較が行われました。その結果、早期に緩和ケアを導入した群でQOLが改善し、不安や抑うつが減少。更に、生存期間が明らかに延長したというインパクトがある結果が得られました。
これ以来、世界中で早期からの緩和ケアが必要ということになり、日本でもがんと診断した最初から緩和ケアを行っていこうという流れになっています。

Early Palliative Care for Patients with
Metastatic Non–Small-Cell Lung Cancer.
New England Journal of Medicine 2010; 363: 733-42より改変

Why なぜ緩和ケアが必要?

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病院環境における不安と抑うつ尺度(12週目におけるQOLの変化) 生存期間

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When いつ、緩和ケアが必要?

がんと診断された時から緩和ケアが開始されます。
ただし右図のように緩和ケアと治療の割合が時間と共に徐々に変化します。
死が近づいた時のケア(エンドオブライフ・ケア)と亡くなった後の遺族ケアをホスピスケアと位置付けており、亡くなった後の家族のケア(遺族ケア)まで行うことが重要です。

包括的がん医療のモデル

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Where どこで、緩和ケアを?

患者さんが希望する療養場所と希望する看取りの場所には相違があります。希望する療養場所として最後は自宅で、療養して具合が悪くなったら緩和ケア病棟又は今まで通った病院に行きたいという患者が多く、自宅でそのまま看取られたいというのは実は少数派です。
いつでも、どこでも、切れ目のない緩和ケアが提供出来る体制を整備する必要があります。

希望する療養場所は変化する

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■ 緩和ケアの理想的な構図

患者さんが状況に応じて、病院や在宅、ホスピス・緩和ケア病棟を自由に行き来できることが理想です。

緩和ケアの理想的な構図

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Who だれが、緩和ケアを提供?

1次緩和ケア: がん診療に携わるすべての医師やプライマリーケア医が実施
2次緩和ケア: コンサルテーションと専門的な治療とケアを提供できる医師(例:緩和ケアチーム)が実施
3次緩和ケア: 対処が困難な症状や複雑な心理社会的問題を抱える患者と家族に対する専門的知識や技術を持ち、更に教育や研究を実施する医師が実施
この1次緩和ケアを広めることは、全ての医療者が1次的に緩和ケアを提供する(広める)ことになり大変重要な課題です。

1次緩和ケアを広める

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How どのように、緩和ケアを提供?

すべての医者が取り組むべき緩和ケアの内容として、右の6項目(緩和ケア研修会で行う課題)が大切になります。
治療医ががん告知を行う時、相手の気持ちに配慮すること、これも緩和ケアのひとつではないでしょうか?

1次緩和ケア

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緩和ケアに求められていること

「どのように?」の中で大事なこととして、意思決定支援を行わなければいけないことが、緩和ケアには求められています。
下の図はillness trajectory(病の軌跡)です。縦軸は身体機能、横軸は時間経過を示します。医療者並びにがん医療に携わる人、患者さん・ご家族がこの図をきちんと認識することが大事です。がんにおいては、緩和ケアを行うことで急に下降する身体機能のカーブを少しでも緩やかにする作用があると考えています。

疾患群別の予後経過

画像をクリックすると大きく表示されま

まとめ

緩和ケアを最初に始めたシシリー・ソンダースの言葉に、緩和ケアとは、"Not doing, but being" という言葉があります。「何もできないとしても、そこに寄り添うことが大事だ」という緩和ケアの本質を表現した言葉です。現在、緩和ケアにはさまざまな医療手段があり、患者さんの病態、患者さんの大事にしていることなど、目的に合わせて治療法を選択することが可能です。消化器症状の悪性腹水への対処としてのCARTもその1つであり、"Doing the best" として、治療の選択肢のひとつとして考えていく必要があります。

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