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学会セミナー記録集

医療従事者向けサイト

第55回日本癌治療学会学術集会学術セミナー7 2017年10月20日(金)

がん治療への緩和ケア
~早期から終末期におけるCART(腹水濾過濃縮再静注法)を考える~

新倉 仁 先生

講演2

婦人科がんにおけるCARTの役割

新倉 仁 先生
(東北大学医学部 婦人科)

はじめに

婦人科がんの特徴は、早期から終末期まで腹水の管理が必要な場合が多いことです。今回、悪性腹水に対する管理とCARTの役割について当院におけるCARTの実際と成績よりご報告します。

悪性腹水の原因となるがんの原発部位と発生頻度

腹水の原因となるがんの原発部位は、消化器系(胃がん、結腸直腸がん)以外では婦人科系が多く、なかでも卵巣がんが最も多いことが示されています。

 

悪性腹水の原因となるがんの原発部位と発生頻度

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背景:2003年1月~2004年12月にNottingham City Hospita(UK)で診療を行ったがん性腹水患者209例

卵巣がんと腹水

  • 卵巣がんは、診断時の腹水貯留割合が高く、腹水貯留例では予後が悪い可能性の高い疾患です。
  • しかしながら、がん性腹水を伴った症例の中では卵巣がんの初回治療の奏効率は高く、他のがんよりも予後がよいことが報告されています。
  • 婦人科がんの特徴は、初期から終末期まで腹水管理が必要な場合が多いことです。

 

卵巣がんと腹水

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卵巣がん 治療ガイドライン 2015年版

卵巣がん 治療ガイドライン 2015年版卵巣がん治療ガイドライン2015年版CQ30に腹水貯留への対応として、CARTは利尿薬の投与、腹水ドレナージ、腹腔静脈シャントと並んで記載されています。

CQ30 腸閉塞、腹水貯留にどのように対応するか?

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当科におけるCARTの実際

当科における年次別CART件数

当科におけるCARTの件数です。2014年頃までは終末期を中心に行っていましたが、2015年頃からはAC前または手術前の治療導入期にも行う機会が増えてきました。

NAC:Neoadjuvant chemotherapy
術前化学療法のこと

 

当科における年次別CART件数

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終末期におけるCART 穿刺排液単独群との比較(n=20)

土岐 麻美, 新倉 仁, et al. 婦人科癌性腹水における腹水濾過濃縮再静注法と腹水穿刺排液法の比較.日本婦人科腫瘍学会雑誌 2015 ; 33 (3)より

患者背景とCART施行状況

2012年10月から2014年8月までに支持緩和療法としてCARTを施行した帰人科がんによるがん性腹水患者20症例を対象としました。
20症例に施行した腹水穿刺はのべ71回、うち穿刺排液単独36回、CART35回(両群いずれも平均1.8回)が行われました。穿刺排液単独群とCART群の2群に分けて後方視的に比較検討を行いました。

 

患者背景とCART施行状況

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約5~10倍に濃縮し、回収した蛋白量は約80g、アルブミン量は約50gでアルブミン製剤約4本分に相当する量でした。

各症例の穿刺内容

穿刺回が後半になるにつれCARTの割合が多く、穿刺排液単独群に比べCART群の全身状態が不良であった可能性が示唆されます。

 

各症例の穿刺内容

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血清アルブミン濃度の変化

1回の穿刺前後の血清アルブミン濃度はCART群で施行前2.4g/dL、施行後2.6g/dLと、有意に上昇が認められました(P=0.0079)。
施行前と次回施行前血清アルブミン濃度は、穿刺排液単独群で2.8g/dLから2.6g/dLで有意に低下していた(P=0.0197)のに対し、CART群は2.4g/dLから2.4g/dLと維持が認められました。
両群間の血清アルブミン濃度の差の平均には有意差は認められませんでした(P=0.2243)。

血清アルブミン濃度の変化

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PS変化と次回穿刺までの期間

PSについて両群ともに悪化した症例はなく、穿刺排液単独群で23回中5回(21.7%)、CART群で35回中12回(34.3%)の改善が認められました。
次回穿刺までの期間は、穿刺排液単独群が18.9日(1~77日)、CART群が21.3日(6~55日)でした。両群間に有意差は認められませんでした。

PS変化と次回穿刺までの期間

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治療導入期におけるCART 穿刺排液単独群との比較(n=23)

患者背景とCART施行状況

年齢は平均63歳、卵巣がんが約80%で最も多く、穿刺排液単独20回(平均0.9回)、CART30回(平均1.3回)行われました。

患者背景とCART施行状況

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血清アルブミン値の変化(1回の穿刺前後)

血清アルブミン濃度を穿刺排液単独群とCART群を比較した結果、穿刺排液単独群では2.7g/dLから2.3g/dLと低下し、CART群では2.1g/dLから2.4g/dLと上昇がみられました。両群間の血清アルブミン濃度の差の平均に有意差が認められました。(P<0.0001)

血清アルブミン値の変化(1回の穿刺前後)

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PS変化

PSは穿刺排液単独群で12回中5回(41.7%)、CART群で25回中19回(76.0%)の改善が認められました。

PS変化

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CART 施行後の予後

今回CARTを施行した卵巣がんⅢ・Ⅳ期の18例について、当院の成績(2001年-2010年)と比較してみました。CARTを施行した18例中7例が原病死、初回治療中死亡が1例、無病生存が6例、担がん合併生存が4例で、CARTは治療を妨げることなく安全に施行できる可能性があります。
CARTは全身状態が悪い進行卵巣がん患者に対して症状緩和、状態の改善を行い手術前や化学療法を行うための導入、または初回化学療法前に施行されることを検討してもいいのではと考えます。

CART 施行後の予後

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腹水濾過濃縮再静注法(CART)の安全性と有効性製造販売業者自主的な市販後調査

Hanafusa N, et al. Safety and efficacy of cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy (CART) in refractory ascites : Post-marketing surveillance results. PLOS ONE May 16, 2017より

目的と概要

目的 : 実態下における腹水ろ過器AHF-MOおよび腹水濃縮器AHF-UPを使用したCARTの施行状況、安全性及び有効性に関する情報、その他適正使用情報を把握する。

対象 : 難治性の腹水症(又は胸水症)のためCARTを施行した患者

調査施設数/調査症例数/施行回数 : 22施設 / 147例 / 356回

調査実施期間 : 2014年1月~2015年1月

CARTの安全性

CART による副作用発現率(症例数ベース)は22.6%(33例/146例)で、主な副作用は発熱 20.5%(30例)、悪寒 5.5%(8例)でした。いずれも非重篤で転帰は全て軽快または回復でした。

CARTの安全性

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CARTの有効性

CART施行により体重、腹囲、PS、食事摂取量、24時間尿量において有意な改善が認められました。
また、再静注終了1日後の血清総蛋白濃度、アルブミン濃度に有意な上昇が認められました。

CART前後の臨床症状と血清総蛋白・アルブミン値の変化

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濾過濃縮後腹水(胸水)中のアルブミン量は婦人系で高く、再静注した(体に戻した)アルブミン量はアルブミン製剤に換算すると約4本分に相当しました。(アルブミン 25%50mL(アルブミン量 12.5g))

濾過濃縮後腹水(胸水)中のアルブミン量

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腹水濾過濃縮再静注法 CART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)

CARTとは、まず、腹水を採取して腹水濾過器で腹水中の細菌・癌細胞・血球成分などを除去し、次に、腹水濃縮器で除水して、アルブミンや免疫グロブリンなどの有用な物質を濃縮した自己腹水を再静注する治療法です。

腹水濾過濃縮再静注法 CART(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)

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CART 保険適用

診療報酬算定方法に伴う実施上の留意事項について
K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注法

一連の治療過程中、 第1回目の実施日に、1回に限り算定する。なお、一連の治療期間は2週間を目安とし、治療上の必要があって初回実施後 2週間を経過して実施した場合は改めて所定の点数を算定する。
(平成30年3月5日 保医発0305第1号)

包括評価制度(DPC)における診療報酬算定
「K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注」は、手術の部で算定されます。手術の部で算定する特定保険医療材料及び手術料は出来高による算定が可能ですのでCARTにかかる材料価格、手術料は、出来高算定が可能です。

CART 保険適用

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卵巣がん患者の臨床経過とCARTの位置づけ

卵巣がん患者の臨床経過とCARTの位置づけ

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今後の課題

腹水中のサイトカインと予後の関連は以下の報告があります。

  • 卵巣がんの腹水中にはIL-6,IL-8,IL-10等のサイトカインが含まれています。IL-10やレプチンとの予後関連、初回手術時腹水中TNF-α(腫瘍壊死因子)やIL-6の発現と予後の関連等の報告があります。
  • 腹水中のVEGF(血管内皮細胞増殖因子)やHGF(肝細胞増殖因子)は、卵巣がん転移や予後に関連するという報告もあります。

腹水中のマイクロRNAを含むエクソソーム(細胞外小胞)が免疫と関連するという報告もあります。

終末期の悪性腹水管理のためのCARTは患者へのリスクとベネフィットを考えるとベネフィットの方が大きいと考えて います。今後早期に行うCARTの影響について症例の蓄積や臨床研究で検討することが必要と考えます。

まとめ

婦人科がんにおけるCARTの役割
卵巣がんは比較的早期から腹水が貯留するため、がん治療戦略のひとつにCARTを組み込むことが可能です。

  • 初回手術、化学療法前の症状緩和や全身状態改善(PS改善等)のためにCARTを行います。
  • 終末期の悪性腹水管理として、QOL改善のためにCARTを行います。

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