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学会セミナー記録集

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第70回日本産科婦人科学会学術講演会ランチョンセミナー26 2018年5月12日(土)

婦人科腫瘍における腹水濾過濃縮再静注法(CART)の UP TO DATE

加藤 一喜 先生

講演2

婦人科がん手術の最前線
~手技の実践とCARTの活用~

演者:加藤 一喜 先生
(がん研有明病院 婦人科)

はじめに

卵巣がんでは、術後の残存腫瘍が予後と相関することから、最大限の腫瘍減量術を行います。また、転移の頻度が高い骨盤リンパ節や傍大動脈リンパ節ではリンパ節郭清を行います。骨盤・傍大動脈リンパ節への転移率はそれぞれ7.3%、8.1%と高く、卵巣がんにおける骨盤リンパ節郭清および傍大動脈リンパ節郭清の重要性が認識されています。リンパ節郭清後の難治性リンパ漏はしばしば合併症として問題になります。今回は、当科における難治性リンパ漏に対するCARTの施行例とその臨床的活用についてご報告いたします。

当科における婦人科がん術後 難治性リンパ漏発生頻度

難治性リンパ漏の発生頻度

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  • 婦人科がん手術において、傍大動脈リンパ節と骨盤リンパ節の両方を同時に郭清した場合に難治性リンパ漏発症頻度が最も高く、4.1%でした。
    傍大動脈リンパ節または鼠径リンパ節のみのリンパ節郭清後では、難治性リンパ漏は認められませんでした。

婦人科がん症例に対するCART の施行例です。

CARTの比較試験を行う上での課題

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  • CART導入の目的は、約半数の患者が再発後の腹水貯留に対する緩和的療法、4分の1が抗がん剤の初回治療を目的としたCARTの併用、4分の1が術後難治性リンパ漏の治療でした。
  • 術後難治性リンパ漏では、リンパ管から乳糜が漏れることによる乳糜胸水や乳糜腹水の管理にCARTを使用します。
  • 副作用としては、発熱が10件、貧血が1件、SpO2低下が1件に認められました。
CART前後の血清アルブミン値CART後の主要栄養成分の回収率(平均値)

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  • CART前後の血清アルブミン値に有意差はありませんでした。(前:2.16±0.51g/dL、後:2.30±0.69g/dL、p=0.203)。
  • CART後の主要栄養成分のなかで、分子量の大きな蛋白質や脂質は濃縮して体内に戻せますが、分子量の小さなグルコースは回収率が低くなることが報告されています。
  • CARTの施行によりリンパ液を2~3L 抜いても、蛋白質や脂質の回収率は高いので栄養状態は保持されると考えます。

婦人科がん手術後の難治性リンパ漏症例に対するCARTの有用性が示されました。

難治性リンパ漏に対するCARTの実施例( がん研有明病院 婦人科)

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  • CARTの施行により、手術後に発症するすべての難治性リンパ漏を完治することはできませんが、リンパ液穿刺排液の回数を減らせる可能性があります。

術後リンパ漏7例中経過観察が終了している6例

症例1

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疾患名:卵巣がん 1C期
年齢:58歳、身長:155cm、体重:45kg
手術: 子宮全摘+両側付属器切除+大網部分切除+傍大動脈・骨盤リンパ節郭清術

  • 術後8日目に腹水(リンパ液)穿刺排液および腹水ドレナージを施行しましたが、その後、創部からのリンパ液漏出、腹部膨満感、血清アルブミン値の低下がみられました。
  • 術後29日目にCARTを施行したところ、有害事象は認められず、腹部膨満感軽減、腟からのリンパ漏は止まり、血清アルブミン値の上昇がみられ、61日目に退院されました。
症例2

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疾患名:子宮体がん 4B期
年齢:70歳、身長:157cm、体重:64kg
手術: 子宮全摘+両側付属器切除+大網部分切除+低位前方切除+傍大動脈・骨盤リンパ節郭清術

  • 術後19日目に退院されました。27日目から再入院・退院を繰り返しながら、腹水(リンパ液)穿刺排液を約3ヵ月間に14回施行し、血清アルブミン値は徐々に低下しました。
  • 術後132日目、145日目、および163日目にCARTを施行しました。1回目のCART 施行後に悪寒・発熱(38.4℃)がみられましたが、その後のCART施行後に有害事象は認められませんでした。血清アルブミン値の改善はみられませんでしたが、180日目に退院されました。
症例5

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疾患名:卵巣がん 1A期
年齢:70歳、身長:155cm、体重:43kg
手術: 子宮全摘+両側付属器切除+大網部分切除+傍大動脈・骨盤リンパ節郭清術

  • 術後乳糜胸水(右>左)が出現
  • 術後12日目に胸水(リンパ液)穿刺排液、14日目に胸腔ドレーンを留置し連日胸水(リンパ液)排出、18日目に胸水(リンパ液)排出に伴い、血清アルブミン値が低下しました。
  • 術後21日目にCARTを施行したところ、有害事象は認められず、血清アルブミン値が改善しました。その後、胸水ドレナージ量が減少したため胸腔ドレーンを抜去し、34日目に退院されました。

まとめ

  • 婦人科がん手術におけるリンパ節郭清後の難治性リンパ漏は、しばしば合併症として難渋します。
  • CARTは腹水や胸水貯留だけでなく、リンパ液貯留に対してもリンパ液穿刺・排液の頻度を軽減させる有用な治療法のひとつと考えられます。
  • 術後リンパ漏患者の蛋白質などの栄養状態の保持にCARTは有用です。

腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)

腹水濾過濃縮再静注法(Cell-free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy)

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CARTでは、まず、腹水を採取して腹水濾過器(最大孔径0.2µm)により、腹水中の細菌、がん細胞、血球成分などを除去します。次に、腹水濃縮器で除水し、アルブミンや免疫グロブリンなどの有用な物質を濃縮します。この濾過濃縮した自己腹水を再静注投与します。婦人科領域では、大量腹水貯留をきたしやすい卵巣がん症例等においてCARTの施行回数が増えています。

CARTの保険適用

CARTの保険適用

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【診療報酬算定方法に伴う実施上の留意事項について】
K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注法
一連の治療過程中、第1回目の実施日に、1回に限り算定する。なお、一連の治療期間は2週間を目安とし、治療上の必要があって初回実施後2週間を経過して実施した場合は改めて所定点数を算定する。 (平成30年3月5日 保医発0305第1号)


【包括評価制度(DPC)における診療報酬算定】
「K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注法」は、手術の部で算定されます。
手術の部で算定する特定保険医療材料及び手術料は出来高による算定が可能ですので、CARTにかかる材料価格、手術料は、出来高で算定が可能です。

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