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学会セミナー記録集

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第23回日本緩和医療学会学術大会ランチョンセミナー3 2018年6月15日(金)

緩和ケアにおける腹水濾過濃縮再静注法(CART)の役割

伊藤 哲也 先生

講演1

緩和ケアにおける腹水濾過濃縮再静注法(CART)の役割

演者:伊藤 哲也 先生
(日本赤十字社医療センター 緩和ケア科)

はじめに

日常臨床の中で治療に難渋する1つががん患者の悪性腹水です。お腹に水が溜まって苦しくて仕方ない、何とかしてほしいという患者に対する治療として、本日は腹水濾過濃縮再静注法(CART)の現状得られているエビデンスについてご報告します。

悪性腹水とCART

悪性腹水とCART

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悪性腹水の定義は、悪性腫瘍の影響によって生じた腹腔内の異常な液体貯留です。腹水貯留により、腹腔内圧が上昇し腹部や下背部の疼痛、臓器機能障害――例えば呼吸困難や嚥下困難等が生じます。また、高度な腹部膨満感から、食思不振や経口摂取量の低下のため、低栄養を引き起こし、ADLの低下をもたらします。
CARTは日本婦人科腫瘍学会の「卵巣がん治療ガイドライン2015年版」、「腹水貯留にどのように対応するか?」のクリニカルクエスチョンに「腹水による苦痛の緩和目的に、病態を考慮した上で利尿薬の投与、腹水ドレナージ、腹腔静脈シャント、腹水濾過濃縮再静注法(CART)が考慮される」と記載されています。また、日本消化器病学会の「肝硬変診療ガイドライン2015年版」、「難治性腹水に対して腹水濾過濃縮再静注法(CART)は有効な治療法か?」のクリニカルクエスチョンに「腹水穿刺排液アルブミン静注と同程度に有効であり、治療選択肢のひとつとして試みることを提案する」と記載されています。

CARTの特徴

腹水除去による効果
→ 全身状態の改善によるQOLの向上
→ 食事摂取量の改善により
低栄養を来す悪循環を断ち切る

再静注による効果
→ 腹水中に含まれるアルブミンなどの成分を有効活用
→ アルブミン製剤など高価な血液製剤の節約
→ 未知の病原因子による感染のリスク軽減

特に腹腔穿刺ドレナージで問題となる倦怠感の出現が少ないと言われている。

CARTの特徴

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CARTの有効性と安全性

Ito T, et al. Single Center Experience of Cell-Free and Concentrated Ascites Reinfusion Therapy in Malignancy Related.
Therapeutic Apheresis and Dialysis 2014 : 18 (1) : 87–92s

有効性
  • 尿量の増加が認められた。尿量の増加は、補充された蛋白量と関連する可能性がある。
  • 利尿剤抵抗性を認める難治性腹水において、利尿剤抵抗性の改善効果が示唆された。
安全性
  • 体温上昇が主たる副作用であったが、軽微であった。
  • 腹腔静脈シャントで認められるようなDICを示唆する血小板の減少はみられなかった。

がん患者の全身機能、日常生活動作(ADL)評価の方法

がん患者の全身機能、日常生活動作(ADL)評価の方法

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腹水に伴う症状に対し、CARTの効果を示そうと構想を練っていた頃に、日本語版があり使用できた緩和ケアの症状評価指標の主なものを表に示します。この中でMDASI-Jは、比較的広範囲で包括的かつ簡便にがん患者の症状を評価でき、評価期間は24時間と急性期の変化を見ることができたため、CARTの評価に用いました。

CARTの身体症状に及ぼす効果

CARTの身体症状に及ぼす効果

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Int J Clin Oncol で報告した内容に症例を追加して示します。がん患者43例を対象としてCARTの身体症状の評価を行いました。対象患者は胃がんに次いで卵巣がんが多く、CARTの施行回数は平均2.9回でした。発熱は平均0.3度の体温上昇があったものの、血圧・脈拍等の循環動態、血小板数に臨床的な意義のある変化はありませんでした。評価方法は日本語版MDASI-Jの他に、10点法のNRS(Numerical rating scale)を用いた腹部膨満感を評価しました。

腹部膨満感の変化

腹部膨満感の変化

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治療前後で約6.7から約3.2まで有意な低下が認められました。

MDASI-J 症状スコアの変化

MDASI-J 症状スコアの変化

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症状スコアにおいて、CARTは全ての項目で有意な改善を示しました。腹腔穿刺ドレナージのみでは、倦怠感が懸念されていますが、今回のCARTの検討では、倦怠感も有意な改善を認めました。支障スコアにおいても全ての項目で有意な改善を認めました。

CARTの身体症状に及ぼす効果 まとめ

  • CART施行24時間後の症状は腹部膨満感、症状スコア(消化器症状、一般症状)、支障スコアいずれも有意な改善が認められました。
  • CARTの特徴の1つとして腹腔穿刺ドレナージで問題となる倦怠感も有意な改善が認められました。

難治性腹水における腹水濾過濃縮再静注法(CART)の安全性と有効性:製造販売業者自主的な市販後調査解析結果

Hanafusa N, et al. Safety and efficacy of cell-free and concentrated ascites reinfusion therapy (CART) in refractory ascites : Post-marketing surveillance results. PLOS ONE May16, 2017

臨床症状の変化

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2014年1月から2015年1月31日までに、147例・356回の調査票を回収し、142例350回分を有効性の評価対象症例としました。
患者背景は、がんが86%、肝硬変が11%でした。

PSは、CART前後で2.2から2.0、食事摂取量は、CART前後で48%から56%といずれも有意な改善が認められました。

EOCG PS : Eastern Cooperative Oncology Group Performance Status

診療報酬

診療報酬

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診療報酬算定方法に伴う実施上の留意事項について
一連の治療過程中、第1回目の実施日に、1回に限り算定する。なお、一連の治療期間は2週間を目安とし、治療上の必要があって初回実施後2週間を経過して実施した場合は改めて所定点数を算定する。
(平成30年3月5日 保医発0305第1号)

包括評価制度(DPC)における診療報酬算定
「K635 胸水・腹水濾過濃縮再静注法」は、手術の部で算定されます。手術の部で算定する特定保険医療材料及び手術料は出来高による算定が可能ですので、CARTにかかる材料価格、手術料は、出来高で算定が可能です。

まとめ

CARTは、腹水貯留に伴う症状、生活への支障を改善することが示された。
[課題]
質の高い研究は存在しない
[今後の蓄積すべきデータ]
・ 効果と安全性の確認
・ 他の治療法との比較
・ CARTはどんな患者にすべきか

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