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二世帯住宅で同居するメリットとは?
4つの視点で解説

親世帯、子世帯がそれぞれ自立しながら一つの家に住む「二世帯同居」。それぞれの世帯は自立しながら、相互に交流・協力して暮らすことができます。そこから生まれるメリットは多々あるのですが、大きくは、次の4つに整理できます。


二世帯同居 4つのメリット

二世帯同居 4つのメリット

1

経済的有利さ

建設時:親の土地を使えば土地購入が不要
生活時:共用部分が増えれば光熱費や食費が減る
相続時:同居なら相続税上の土地評価が1/5になる

二世帯が1棟に住む経済的メリットは非常に大きいです。建設時、同居生活時、親世帯ご逝去後の3つのタイミングに分けて、整理してみましょう。


◇ 経済的な同居のメリット アンケート回答

経済的な同居のメリット アンケート回答

※同居・子世帯回答(n=731)親世帯(n=137)
「同居して感じていること」4段階選択の内、とてもそう思う、そう思うの計
「2023年 親子同居に関する調査」旭化成ホームズ株式会社 二世帯住宅研究所

土地と建物が1つで世帯別の空間が得られる

まず、土地の取得費と家の建設費についてです。親世帯、子世帯がそれぞれ別の家を持つ場合と比較して、一番のメリットは土地が一つでよい、ということです。例えば親世帯の土地があれば、そこに二世帯住宅を建てることで子世帯は土地を購入せずとも、家を建てることができます。親世帯の庭が広ければ、親の家はそのままで庭の一部に別棟で子世帯の住宅を建てる「隣居」も可能ですが、独立二世帯であれば、1棟でも別棟の場合と同じ世帯別の室内空間をつくることができます。親の家と合わせて一体で建てるメリットとして、1階が親世帯、2階が子世帯のように階で空間を分ける「重ね建て」にすれば高齢期メリットの項で述べたワンフロアの生活空間にできる、ということがあり、併せて外壁面積が少なくなる分、断熱性能、建設費の両面で有利になります。近年土地、建設費共に価格が上昇しており、土地建物両面でコストを節約しながら同じ空間が得られるのは二世帯住宅の基本的なメリットです。

土地と建物が1つで世帯別の空間が得られる

共同で生活することによるコストの削減

エネルギー消費の観点から二世帯で使う電力量について調査したところ、子世帯4人家族で使うエネルギーを1とすると、親世帯が別棟の場合は人数が少ない分わずかに減って0.9なので、二世帯合計で1.9、玄関・キッチン共に2つで独立した住戸の場合は1.5、キッチン1つの場合は1.3と、同居しただけで大きく削減し、さらにLDKが1つだったり浴室を共用にしたりすると減ることがわかりました。完全に世帯別の空間であるのに別棟より少ないのは、外壁面積が減るための断熱性能上の有利さの他、留守の子世帯の冷暖房を点けず、すでに冷暖房している親世帯に帰宅する孫など、暮らし方による部分が大きいと思われます。

生活費の観点からは、料理をまとめて作れば、それによる一人当たり食費の削減も期待できます。またネットの光回線は1系統で両世帯でWi-Fiを使うなど、共用してコストを削減できる設備もあります。

相続税計算時の土地評価額が同居者が相続する場合は特例で下がる

親子同居による税金の有利さで最も大きいのは相続税における「小規模宅地の評価減」の活用ではないかと思います。親子同居で子が相続する場合、相続税計算時の土地の評価が330㎡までは8割減となる特例で、例えば3,000万の土地価格評価が1/5の600万になるので相続財産の合計額が減らせます。現状では3,000万+600万×相続人数=子ども1人で相続なら総額3,600万円、という基礎控除額、つまり税金がかからない限度額を超える部分について相続税がかかることになります。バブル期に土地価格が上昇し、同居していた子が相続税が払えず追い出されるようなケースを救済するために評価減が拡大してきた経緯があり、利用価値が高い制度です。

同居と認められる要件として一体の登記である(区分登記ではない)ことなどの条件があるので、確実に使えるように配慮しておきましょう。但し土地の評価額は変動しますし、相続税は過去にも何度か改正されており、相続時点での制度が適用されるため将来、要件が変わってしまう可能性はあります。

2

高齢期協力

孫の同居:自立期~フレイル期の会話量活動量増加、孫を通じての社会参加で健康維持
断熱性向上:ヒートショック予防、高血圧や脳卒中のリスク低減による健康維持
要介護期:親世帯の負担を減らす家事協力、調理洗濯等の分担、病院送迎

伝統的同居では老いた親の面倒を見ることが当たり前でした。高齢の親の生活を支えるのが子の務め、という社会ではなくなった現在でも親の老後に備えての同居は同居理由の上位にランクインしています。しかし高齢期に親子が同居するメリットは生活支援や介護だけではなく、むしろその前段の健康なうちのメリットが注目されてきています。

孫との同居で健康に

健康の維持、特に認知症予防の観点からは活動量、会話量の多さが重要な要素です。孫と同居することで親は必然的に会話が増え、外出や社会参加の機会も増えると思われます。認知症予防の専門家にお話を伺うと、孫とトランプで遊ぶ際に昔覚えたルールを思い出すことは「エピソード記憶」を活性化させ、身体で覚えている「手続き記憶」を使ってトランプを配り、わざと負けてあげるための「計画力」が必要とされるなど、認知症リハビリの多くの要素が自然に含まれているそうです。孫と手をつなぐことだけでも恩恵があるそうで、孫は認知症ケアが上手で、自然な行動の中で高齢者を敬う気持ちを伝え、プライドを満たす、ということも言われています。生活面では家事などすべて子世帯がやってしまわず、可能な限り自立して生活をすることも重要です。同居ではできることはやり、できないことだけ頼む、というくらし方が出来ることが大きなメリットです。


◇ 高齢期の同居のメリット アンケート回答

高齢期の同居のメリット アンケート回答

※同居・子世帯回答(n=731)親世帯(n=137)
「同居して感じていること」4段階選択の内、とてもそう思う、そう思うの計
「2023年 親子同居に関する調査」旭化成ホームズ株式会社 二世帯住宅研究所

住宅の性能向上は健康寿命を延ばす

次に高齢期に向けて、新しい家に建て替えるメリットを考えてみましょう。ヒートショックと呼ばれる、寒いトイレや浴室に行くときの温度差のリスクは以前から知られていましたが、近年研究が進み室内の全ての部屋を18度以上に保つことが健康上重要、ということがわかってきました。日本の省エネルギー基準は1980年にスタートしましたが現在の水準から比べるとかなり低く、1999年の基準が普及するまでは窓ガラスもペアガラスではないなど、断熱性の低い家がほとんどです。室内の温度を高めても、窓の前では冷気が感じられ、暖房していないトイレや脱衣所はとても寒い、というのが親世帯の家の現状であることが多いのです。住んでいる本人たちは慣れてしまうと気づかないのですが、ヒートショックや室温の低さは知らず知らずのうちに身体にダメージを与えていき、高血圧や脳卒中、アレルギー疾患などの発症率を上げていきます。
建替えて最新の高断熱住宅になると、こうした健康上のリスクが大きく下がります。現在の高断熱住宅は計算上はエアコン1台でその階全体が暖房できてしまうほどの性能であり、全館空調が実用的なランニングコストで実現できます。またLDKのエアコンだけでも普段扉を開けておくワンルーム的な生活ができる範囲ではかなりに部分を温めることができます。

介護期に備えられる

建替えることのもう一つのメリットとして、生活がワンフロアで完結し、バリアフリーにできる、ということがあります。足腰が弱ってくると、杖、歩行器や車いすなどの補助具が必要になってきます。これらを使う際に段差はなくすことが望ましく、現在は入口は段差なしが当たり前ですが、30年以上前は浴室やトイレの入口に段差があることが普通でした。
都市ではLDKや寝室の各部屋が別の階に分かれてしまうことが多く、これが階段での事故につながったり、2階の部屋をほとんど使わない、などの高齢期の障害となります。バリアフリーの仕様と共に二世帯住宅でワンフロア1世帯、のような間取りにすれば土地を有効活用しながら平屋と同じワンフロアの生活空間が実現します。
病院通いで車が必要な場合、免許返納後は子世帯で送迎することが増えてきます。介護サービスはデイサービス等に通うことの他、配食や生活支援等の訪問サービスもあり、24時間介護が必要になる場合は夜間もヘルパーさんが訪ねてくることになります。家事、食事などのサポートも子世帯がする、介護保険のサービスを入れる等の選択肢があります。どういうサービスを使うかの選定にはケアマネージャーという専門職が付くのですが、普段の様子がわかる子世帯が参加して決めていくことでより的確なサービスを選んでいくことができます。

◇ 2階建てだと寝室とLDKのフロアが分かれ階段昇降が必要、
二世帯だとワンフロアにまとめられる

3

育児協力

幼児期:保育園のお迎え、病気の時のサポート
小中高:帰宅時在宅、お稽古事送迎、食事の世話
共通:子世帯の負担を減らす家事協力、調理洗濯等の分担

育児協力ができることも二世帯同居の大きなメリットです。長期の住宅ローンの金利が低い近年の状況では、賃貸住宅の家賃とほとんど変わらない毎月の返済金額で建てられるケースも多くあります。このため結婚直後や第一子出産前から家づくりを始めることが増えました。

幼児期は保育園が出来ない範囲をサポート

最近まで待機児童問題が話題になっていましたが、現在では産休育休の普及や保育所の増設などで、親子同居であっても保育所に入れないケースは少なくなってきました。それでも共働きの子世帯で、急な残業や飲み会など保育所のお迎えに行けない場合に親世帯に頼める、というのは大きなメリットです。子どもが急に体調を崩し、仕事との調整が難しいこともあります。同居で感じているメリットとして子世帯の86%が「困った時は子どもの世話をしてもらえる」を挙げています。一方で親世帯の回答では「孫世代の世話をする機会が適度にある」が93%、「孫世代の世話や教育に日常的に関われる」が78%と、孫が保育所に行っている間は自分たちだけの時間を楽しみながら、お迎え時間以降は孫と触れ合う機会があることのよさが表れた結果となっています。

◇ 育児期の同居のメリット アンケート回答

育児期の同居のメリット アンケート回答

※同居・子世帯回答(n=731)親世帯(n=137)
「同居して感じていること」4段階選択の内、とてもそう思う、そう思うの計
「2023年 親子同居に関する調査」旭化成ホームズ株式会社 二世帯住宅研究所

祖父母との交流は人生の財産

小さいころから同居している子ども(孫)は、親世帯子世帯両方を自由に行き来しています。そういう子どもは小学生以上になると、孫の帰宅時に誰もいない子世帯ではなく、親世帯に帰っていきます。その後は親世帯で過ごし、帰りが遅い子世帯夫妻の帰宅を待たず、親世帯と一緒に夕食を食べる子もいます。祖父母から見れば、食べ盛りの孫がいるのに自分たちだけでご飯を食べる、というわけにもいかないのでしょう。お稽古ごとの送迎も親世帯が良くサポートしている育児のひとつです。

孫にとって、祖父母は逃げ場であり、色々なことを教えてくれる存在です。大学で講義をする機会があった際に学生に祖父母との関りを聞くと、動物園や博物館に連れていってもらったことや、挨拶、食事のマナーなど、色々なことを教わっています。将来の進路が祖父母に影響されている学生もおり、多世代の触れ合いは教育面でも大きな効果を生んでいるようです。

家事の協力もできる

特にフルタイムでの共働きの子世帯にとって、親世帯の夕食の調理や洗濯などの協力は助かると思います。仕事から帰ってきて、すでに夕食が出来上がっていることの有難みは忙しい方ほど感じると思います。夕食を一緒にする二世帯では、どちらかがまとめて作る、当番制にするなどの方法で分担し、家事の負担を減らしている方もいます。訪問インタビューで、「今日は私はお皿を洗わなくいい日なの」と言われたことがありますが、1日おきの当番制にしている方でした。洗濯も干すことだけを親世帯にお願いしている子世帯もあり、出勤前に洗濯を開始できれば帰った時には取り込まれています。浴室を共用すれば、風呂掃除も一か所でよいので家事のトータルの量が減るのもこうしたシェア同居のメリットです。

4

防災・防犯・安心というメリット

災害:非常時に助けあえる
防犯:空き巣リスク減、訪問販売や詐欺の不安減
安心:近いので様子がわかる、いつでも協力できる

二世帯同居の方へのアンケートでは、同居で暮らして感じているメリットとして9割の方が「防災上安心」と回答し、空き巣等の犯罪不安減少、いざというときに頼る、回答も9割近くあります。ではそれぞれのメリットについて一つずつ解説していきましょう。

◇ 防災・防犯・安心のメリット アンケート回答

防災・防犯・安心のメリット  アンケート回答

※同居・子世帯回答(n=731)親世帯(n=137)
「同居して感じていること」4段階選択の内、とてもそう思う、そう思うの計
「2023年 親子同居に関する調査」旭化成ホームズ株式会社 二世帯住宅研究所

災害時こそ家族の絆が生きる

近年災害が多く、めったに起こらないはずの災害が頻発するようになりました。平常時は自立して暮らすことができるとしても、災害時はどうなのか、となると不安なことがたくさんあります。
非常時には動けなくなったり、閉じ込められたりということも起こります。その際、ここにいるはず、というのを知っている人がいるだけで助かる確率は高まります。
このメリットは避難やその後の被災生活でも発揮されます。どこに避難すべきか、そのタイミングはいつか、車と徒歩はどちらが安全か、そうした情報は多世代で暮らしていると各方面から集まります。電車が動き出したとか。お店が再開したとかという情報も同じです。お互い助け合える、というのが家族が集まって暮らす「集居」のメリットです。

少人数家族ほど空き巣のリスクは大きい

へーベルハウスではアフターサービス部門に集積された泥棒に侵入された被害の修理記録から、侵入された窓の位置や種類を分析し、防犯対策に活かしています。2006年から20年までの15年間の調査結果の報告書はくらしノベーション研究所のホームページに公開されています。この研究データからさらに分析を進め住まい方による侵入リスクの違いを分析してみると、二世帯住宅は普通の単世帯の住宅に比べ大きく侵入されるリスクが下がり、特にキッチン2つの住宅の場合は安全であることがわかってきました。

この研究では10万棟当りの年間被害件数を侵入リスクの指標としてします。核家族が住む家のリスクを1とすると、親子同居のリスクは0.44倍で、半分以下に下がっています。さらに親子同居の家がキッチン1つか、2つ(世帯別)かで分けてみるとキッチン2つのリスクは0.29倍、キッチン1つの親子同居の0.59と比べても半分、核家族と比べるとなんと7割もリスクが減っています。
オレオレ詐欺に代表される、子どもになりすまして行なう犯罪の心配も当然ながら減ります。これらの犯罪は、IT機器に疎いのだが何とか操作でき、周囲に気軽に聞ける人が居ない高齢者が増えたことが背景としてあり、自分の肉親を助けたいという気持ちを悪用して騙す「劇場型」と言われる手法です。冷静に判断できない状況をわざと劇中で作ることで、騙されるはずがないと思っている人を騙すことができてしまうのです。子世帯など劇の世界にはいりこんでいない人に気軽に相談できる状況であれば、ほとんどの被害は防げると思われます。

そばにいることの安心

基本となるのは「そばにいる」ことによる安心感です。わざわざ様子を見に行くのではなく、日常のコミュニケーションの中で何となく相手の様子が把握できる、ちょっとしたことを相談できる、ということが防災、防犯に限らず日常生活全般で大きなメリットになります。普段は自立していても、必要な時には協力できる、という安心感が二世帯同居の一番のメリットだと思います。

5

社会を反映するメリット追求のトレンド

上記のメリットは、社会を反映して比重が変わっていきます。1980年代のバブル期、土地が高騰した時代には経済メリットの比重が高まり、2000年代の保育所待機児童問題の時代は育児協力が注目されました。現在は2016年以降団塊の世代が75歳以上となっていくことによる後期高齢者の増加を反映して高齢期の協力が注目されるようになってきています。2023年の調査を基に同居の理由を年代別にみてみましょう。

同居理由は子世帯の年代別で異なる

30代では防災・防犯・安心や育児協力を含めてと考えられる「何かあった時に助け合える」が1位で6割近い人が回答しています。20項目近い選択肢の中から該当するものをいくつでも選ぶ、という回答方式の中では5割を超えるのはかなり高い水準です。以下「親の老後を考え」「育児の協力を考え」がTOP3で、以下経済的な項目が続きます。50代以上では親の高齢化関連3つがTOP3であり、親世帯が30歳上の80代以上と考えると親の高齢化が大きな同居の理由となっていることがうかがえます。40代もTOP5は50代と同じ理由であり、基本的には50代と同じです。

◇ 年代別の同居の理由(全年代で6位以下の項目は省略)

30代以下では、経済的理由が上昇

2019年の調査からの4年間の変化を年代別に比較してみましょう。
30代以下では、「親の老後を考えて」が2位に上がりました。親世代が60代以下でまだまだ元気と思われ、現在の価値ではない将来を見越した理由が上位を占めるのは特筆に値します。「育児の協力を考えたので」は順位は下がりましたが回答率は44→49%と増えています。2019年に4位だった「いずれは同居と思っていた」5位の「自分が長男・長女だから」という理由は順位を下げ、社会通念的な理由ではなく自分の意思での「親の老後を考えて」であるのかと思います。代わって「建設時の経済的負担が少ない」「親の土地の立地が良い」といった経済的理由が4-5位を占めたのは、土地価格の上昇、伸びない年収といった背景からの長期ローン金額の圧縮といったニーズが反映されているのかと思います。

◇ 30代以下の同居の理由の変化

50代以上では親高齢理由が大きく上昇

50代以上では、「親の老後を考えて」に加えより具体的な「老齢化・病弱化」「何かと心配」といった理由が上位を占め、回答率の数字は3項目とも大きく上がりました。防災面も含めた「何かあったときに助け合える」が4位でこれも大きく上昇、「自分が長男・長女だから」は順位、回答率共に大きく下がりました。高齢期の同居メリットを追求する流れがより鮮明になってきたと言えそうです。

◇ 50代以上の同居の理由の変化

二世帯同居の4つのメリットについて書いてきましたが、書ききれなかったメリットもたくさんあります。へーベルハウス二世帯にお住まいの方にインタビューしてみるとそれぞれの家族でそれぞれのメリットがあるんだなと感じられます。そうした声は今後の機会で書いていきたいと思います。

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