1.設立趣旨
共働き家族研究所が誕生したのは、1989年(平成元年)8月。有業主婦が専業主婦の数を上回り、「男女共同参画社会」の実現に向けてようやく社会の気運が兆しはじめた時です。
共働き家族が時代を先取りしている「先行層」だった当時、今思えば専業主婦が大半だったいわゆる「標準家族」というステレオタイプがなくなり、家族が多様化していく始まりだったのかもしれません。
自立した男女の協力によって営まれる共働き家族のライフスタイルを追うことで、それまで無意識に行われてきた「専業主婦を前提とした家づくり」から脱却し、これからの「新しい家族像と暮らし方」を反映した「新しい住まいのあり方」が見えくるのではないかと考え、その実態を長期的・継続的に調査研究していくため、私たちは「共働き家族研究所」を設立しました。
2006年国が改正男女雇用機会均等法を強化し、出産後も離職せずにフルタイムで働き続ける女性が増えました。
また夫婦が共に働き生計を立てて行かねば厳しい社会背景も重なり、今や共働き家族は少数派から多数派となっています。
2010年には厚生労働省に「イクメンプロジェクト」が発足、子育て・共働きをする男性の意識も大きく変わりました。
そのような時代変化の一方で、共働き主婦にとって仕事と家事の両立、育児・教育、家族コミュニケーション、地域社会との付き合いなど暮らしの課題はまだまだ山積み。共働き・子育て家族が暮らしやすい社会を実現するためには、働き方の変化だけでなく、その暮らしを応援するさまざまな工夫や手段を模索せねばならないと考えています。
住宅を設計する上で、建物(ハード)とともにそこに住む家族の意識を大切に考える私たちにとって、 共働き家族のあり方は今、改めて見逃すことのできない研究テーマです。