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超高齢社会の相続対策を考える

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2014年2月18日

超高齢社会の相続対策を考える

65歳以上の人が総人口に占める割合が、“高齢化率”です。この高齢化率が21%を超えると「超高齢社会」と言われますが、日本はすでに2007年から超高齢社会に突入し、2012年10月時点の日本の高齢化率は24.1%。今の高齢者は、元気な人が多くアクティブシニアなどと言われていますが、一方、高齢になればなるほど病気のリスクも高まってきます。特に最近では、認知症患者の増加が懸念され、相続対策を考える上でも大きな課題となります。何が問題になるのか、良い対策はあるのか、考えてみます。

認知症になると円滑な相続ができない!? 長寿社会のリスクとは?

超高齢社会は、相続においても大きな課題を生みます。長寿自体は大変喜ばしいことなのですが、高齢になればなるほど、病気や介護の発症リスクも高まってしまいます。
中でも近年、急増しているのが認知症です。認知症とは、アルツハイマー病や脳血管疾患などにより、記憶機能や認知機能が低下した状態を言います。厚生労働省研究班の調査では、65歳以上の高齢者の約439万人が認知症であると推計しました(平成22年)。これは、65歳以上人口約2,874万人の約15%にあたります。さらに、認知症になる可能性があると言われている軽度認知障害(MCI)が約380万人いると言われ、両方を足すと約819万人、全体の約28%にのぼります。つまり、65歳以上の4人に一人は、認知症またはその予備群ということになります。今や認知症は、誰でもなりうる身近な病気なのです。

ここで注意しなければいけないのは、被相続人が認知症などで、日常の判断能力ができない病気になった場合の財産管理です。親が他界した後、銀行で預金を下ろそうとしたら、引き出せなかったという話をよく聞きますが、認知症になった場合も同じことが起こります。
土地など全ての資産については一切、手をつけられなくなってしまいます。例えば、相続対策を目的とする賃貸住宅の建築中の場合でも、融資が受けられなくなることもあります。
超高齢社会では、このリスクを軽減するために、事前の対策が必要となってくるのです。

■認知症高齢者の現状(平成22年) 厚生労働省資料より作成
認知症高齢者の現状(平成22年)

認知症は、誰もがなりうる病気。日常の判断能力ができなくなると、本人の資産は事実上動かせなくなる。健康なときに事前の対策が必要。

遺言だけでは、認知症に対応できない

相続対策の一つに、遺言があります。最近では、エンディングノートを作る人も増えているようです。エンディングノートとは、自分が死亡したときや認知症などになった場合に希望することを、健康なときにまとめておくものです。万が一の場合に資産はどうなっているか、どうしたら良いかといったことがまとめられ、遺言書の有無を記載できるようになっています。
一般的なエンディングノートに法的な効力はありませんが、遺言づくりの第一歩として、ご自身の希望や財産について整理してみるのも良いかもしれません。

遺言は、一度書いてしまえば安心というものではありません。長寿を全うしている間に、家族の状況は変わりますし、相続に関する税制も変わります。そうなると、せっかくの節税対策も効果がなくなる可能性があります。そのため、遺言は定期的に見直すことがポイントとなります。特に、来年は相続税の増税という大きな改正がありますので、見直す必要があるでしょう。

遺言は万が一に備えてのことです。しかし、それだけでは長高齢社会では不十分です。先にお話しした認知症などには対応できないということです。
認知症などで、意思決定能力がなくなれば遺言を書くことはできません。相続をめぐる争いごとで、遺言を書いた時点ですでに認知症だったのでは? と争うケースがありますが、認知症だったことが証明されれば、その遺言は無効になってしまいます。

また、認知症になったからと言っても、それ自体は命にかかわる病気ではありませんので、その後十数年、長生きされる方も少なくありません。そうなると、その間資産は事実上凍結され、たとえ元気なときに遺言を書いていたとしても、家族の状況が変わったり、税制改正が行われれば、遺言の効果がなくなってくる可能性もあります。

遺言は、死亡や認知症等発症などのリスクに備え、定期的に見直す。また、遺言は認知症等発症のリスクには万全とは言えない。

任意後見制度を活用する

そこで、認知症等発症のリスクに備えるのが、成年後見制度の「任意後見制度」です。
成年後見制度は、認知症などにより、判断能力が不十分になった場合に、本人に代わって成年後見人が財産管理や介護サービスなどの契約を行うことができる制度です。成年後見制度ができて十数年経ちますが、内容が難しかったり、中には悪用するケースも出てきたりと普及が進みませんでしたが、最近では注目度も高く、利用するケースも増えているようです。

成年後見制度には、「法定後見制度」と「任意後見制度」の2つがあります。大きな違いは、それを活用する時期と後見人は誰がなるかということ、そして財産管理の方法です。
「法定後見制度」は、判断能力が不十分になった時点で、家庭裁判所に申し立てをし、家庭裁判所が後見人を選びます。そして、財産は保全型の管理となり、土地活用などの相続対策はできなくなってしまいます。
認知症になってからでも、法定後見制度を活用すれば、財産が自由に管理できるというイメージを持っている方が多いのですが、そうはできません。

「任意後見制度」は、元気なうちに本人が後見人を選び、財産の管理の意向をあらかじめ決めることができます。例えば、時期がきたら、こういうふうに土地活用をしてほしいとか相続対策についても決めることができるのです。
下記の表で違いを比べてみました。参考にしてください。

■法定後見制度と任意後見制度の違い

成年後見制度

法定後見制度

任意後見制度

活用時期

判断能力が低下した後

判断能力が低下する前

後見人は誰か

裁判所が選任

本人が選ぶ

財産管理方法

保全型の財産管理
土地活用などはできない

本人の意思で、活用型の財産管理が
できる。土地活用も可能

選挙権

喪失

継続

会社役員、医師・弁護士等

自動的に退任、資格喪失

継続

印鑑登録

抹消

継続

認知症等の発症リスクには任意後見制度を活用する。法定後見制度では、土地活用などの相続対策はできない。

課題は被相続人の意識。誰に相談すれば良いか?

超高齢社会では、さまざまなリスクに対応していかなければなりません。死亡リスクだけではなく、介護のリスク、病気・ケガのリスク、経済的なリスク、そして、今回紹介したような特定の病気へのリスクです。
しかし、被相続人に関心があれば良いのですが、普段から病気等のリスクに意識を向けることはなかなか難しいでしょう。本人よりも、むしろその子世代の方がやきもきしているかもしれません。どうやって、本人の意識を高めるかも大きな課題です。

親子で相続セミナーに参加したり、専門家など第三者を交えて家族会議をするなど、少しずつでも意識を向けていくしかありません。

成年後見制度の相談場所については、信託銀行など金融機関がサービスとして行っていたり、弁護士事務所、司法書士事務所で取り扱っていたり、さまざまです。やはり、遺言とセットで相談できるところが良いでしょう。

任意後見制度は、遺言とセットで相談する。金融機関や弁護士事務所、司法書士事務所などで相談すると良い。

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