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土地オーナー必見! 相続・不動産に関する民法改正

相続

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2023年6月22日

土地オーナー必見! 相続・不動産に関する民法改正

相続・不動産に関する民法が大きく変わります。目的は所有者不明土地の解消ですが、土地オーナーにとっては大きな影響があります。これまでできなかったことができるようになったり、相続登記が義務化されたり、様々なルールが民法改正によって変わります。主な改正の概要をお伝えします。

相続に関する期限は、10カ月、3年、10年

相続が発生した場合、申告・納税までの期間は被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月以内です。それを超えると相続税の節税効果の高い特例が使えなくなったり、無申告加算税や延滞税といったペナルティが課されます。
もちろん10カ月以内に終えることが理想ですが、遺産分割がこじれて期限に間に合わないことも少なくありません。その場合は、いったん法定相続分で分割し、期限内に申告と納税を済ませ、その後に遺産分割協議が終わってから、あらためて相続税の申告をやり直せば、特例も使えます。
この期限は3年です。相続税申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付し、申告期限後3年以内に遺産分割を終え、「更正の請求」の手続きをすることにより、納め過ぎていた相続税を還付してもらうことができます。また、相続開始後3年を過ぎると「小規模宅地の特例」や「配偶者の税額軽減の特例」等が使えなくなるので注意しましょう。

■相続に関する期限

それでも中には、何十年も遺産分割協議がまとまらないケースもあります。実は遺産分割協議に法的な期限はありませんでした。今回の民法改正で、10年という目安ができました。以下に詳しく解説します。

民法改正1 10年過ぎると生前贈与や介護のことが主張できない

遺産分割協議がこじれる理由は様々ですが、中でも多い理由の一つが、生前贈与に関することです。例えば兄弟間でも兄だけが大学進学や住宅購入資金などで多くの生前贈与を受けていたとなると他の兄弟は納得がいきません。これを考慮し相続財産と相殺することを「特別受益」と言います。2019年の相続法改正で特別受益の範囲は相続開始から10年以内になりましたが、実務レベルでいくら生前贈与があったのかを証明するのは大変だと言います。
もう一つが「寄与分」です。例えば長女が最期まで介護をしていたので、その分を多く相続したいというケース。また法定相続人以外、例えば長男のお嫁さんが介護をしていた場合も「寄与分」が認められます。しかし、これも実務レベルでいくら請求できるかを計算し、みんなが納得できるようにするのは大変な労力となります。

今回の民法改正では、相続開始時から10年経過した後は、法定相続分または遺言による指定相続分を分割の基準とし、個別の事情は考慮されないことになりました。つまり、「特別受益」や「寄与分」を主張することができないということです。(2023年4月1日施行)

■こじれた遺産分割協議は10年に制限

相続財産に不動産がある場合、遺産分割協議が終わらなければ不動産の所有者が確定しないので、その不動産は売却も活用もできず、いわば塩漬けになってしまいます。こじれている遺産分割協議を早く終わらせることで、不動産の所有者も明確になり、利活用の促進が期待できます。

民法改正2 3年以内の相続登記の義務化。施行日以前でも適用あり!

不動産を相続したら、3年以内に名義変更登記をしなければならなくなりました。
これまで不動産の相続登記に関しては任意だったため、現在も登記が行われないまま長期間放置されている不動産が多くあります。長期間にわたって不動産が登記されず代が変わると権利関係が複雑になってしまいます。いざ売却をしようとしても相続人と連絡がつかず、時間や費用もかかります。
相続登記の3年ルールは義務化です。施行日以前に相続が発生したケースも適用されるので注意しましょう。
違反した場合は10万円以下の過料が科せられます。(2024年4月1日施行)。

■不動産の相続登記の義務化

所有者不明でできなかった土地の利用が可能に!

遺産分割協議がまとまらず所有者が確定しない土地同様、所有者そのものが不明だったり、ゴミ屋敷などの管理不全の土地については、その土地だけではなく隣地の土地活用もできないケースがあります。そこで、いくつかのルールが改正されました。

民法改正3 ゴミ屋敷問題も解消!?土地・建物に特化した財産管理制度の創設

例えば自分の土地を売却する場合、隣地との境界確認をしますが、隣地が所有者不明土地の場合、膨大な手間と費用がかかることがあります。また、所有者は分かっているものの管理が行き届かない、いわゆるゴミ屋敷化した住宅や廃虚なども近隣に衛生面などの悪影響を及ぼす大きな問題です。

いずれの場合も公共事業や民間取引を阻害する要因にもなり、土地の利用促進が進みません。そこで、土地所有者が不明だったり、所有者による管理が適切にされていない土地・建物を対象に、個々の土地・建物の管理に特化した財産管理制度が新たに設けられました(2023年4月1日施行)。

【所有者不明 土地・建物の管理制度】

・所有者が不明の土地・建物については、利害関係人が地方裁判所に申し立てることで、その土地・建物の管理を行う管理人(弁護士・司法書士等)を選任してもらうことができる。
・管理人は管理のほか、裁判所の許可を得れば所有者不明土地の売却等もすることができる。

【管理不全状態にある土地・建物の管理制度】

・所有者による管理が適切に行われず、他者への権利侵害があるか、その恐れがある土地・建物については、利害関係人が地方裁判所に申し立てることで、その土地・建物の管理を行う管理人(弁護士・司法書士等)を選任してもらうことができる。
・管理人は、擁壁の補修工事やゴミの撤去・害虫の駆除など保存行為と土地等の性質を変えない範囲での利用・改良行為をすることができる。
・その範囲を超える行為をするには、裁判所の許可が必要。土地の売却は所有者の同意が必要。管理に関する費用や報酬は、管理不全土地などの所有者の負担となる。

■所有者不明・管理不全の土地・建物の管理制度

民法改正4 共有物件、全員の同意は必要なし!? 共有制度の見直し

不動産の相続で後々トラブルの要因となるのが共有です。例えば兄弟間の共有であったとしても、将来意見が食い違うと売却や活用は思うように進みません。さらに相続が繰り返され共有状態が長期間続くと共有者が増え、所在不明な共有者が出るなど共有者間の意思決定をすることができません。たとえ軽微な変更を加えたりする場合も共有者全員の同意が必要でした。

そこで、共有物の利用や共有関係の解消をしやすくする観点から、様々な見直しが行われました。これにより、所在不明の共有者がいても裁判所の許可を得て、不動産を管理・変更したり、売却したりできるようになります(2023年4月1日施行)。

【共有物を利用しやすくするための見直し】

・共有物の軽微な変更については、全員の同意は不要で持ち分の過半数で決定可。
・所在等が不明な共有者がいる場合は地方裁判所の決定を得て、次の行為ができる。
 ○残りの共有者の持分の過半数で、管理行為(例:共有者の中から使用者を1人に決めること)ができる。
 ○残りの共有者全員の同意で、変更行為(例:農地を宅地に造成すること等)ができる。

【共有関係の解消をしやすくするための新たな仕組みの導入】

・所在等が不明な共有者がいる場合は地方裁判所の決定を得て、所在等が不明な共有者の持分を取得したり、その持分を含めて不動産全体を第三者に譲渡することができる。

民法改正5 伸びてきた隣の木の枝が切れる! 相隣関係の見直し

隣り合った土地の使用、通行、排水、境界、竹林の切除など、権利の調整について、民法で規定されているのが相隣関係のルールです。"隣の木の枝が伸び、我が家の敷地に侵入してきても勝手に切ることはできない"などはよく聞く困りごとです。隣の家の人に一声かければ済む話もありますが、所有者が不明だったり、催促しても対応してくれない場合は民事調停等の裁判になることもあります。

そこで、隣地を円滑・適正に使用することができるようにする観点から、相隣関係に関するルールの様々な見直しが行われました。(2023年4月1日施行)。

【隣地使用権のルールの見直し】

・あらかじめ隣地所有者に通知すれば、境界の調査や越境してきている竹木の枝の切取り等のために隣地を一時的に使用することができる。
・隣地の所有者やその所在を調査しても分からない場合にも隣地を同様に使用することができる。

■隣地使用権のルール

【ライフラインの設備の設置・使用権のルールの整備】

・電気・ガス・水道などのライフラインを自分の土地に引き込むために、ライフライン設備を他人の土地に設置する権利を明確化。
・他人の所有する設備を使用する権利の明確化、設置・使用のためのルール(事前の通知や費用負担などに関するルール)を整備

【越境した竹木の枝を切除できる権利の創設】

・催促しても越境した枝が切除されない場合や、竹木の所有者やその所在を調査しても分からない場合等には、越境された土地の所有者が自らその枝を切り取ることができる。

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