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2024年度税制改正のポイントと税制への対応

税務・確定申告

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2024年1月11日

2024年度税制改正のポイントと税制への対応

2024年度税制改正大綱では定額減税や子育て世帯への支援、そして賃上げ促進が争点となりました。土地住宅税制や資産課税に関する改正は、期限切れとなる優遇措置の延長が行われています。土地オーナーが注目すべき、いくつかの税制改正についてポイントを整理するとともに、今年から始まる相続税対策に関係する新税制についても復習していきます。

定額減税、個人事業主は2024年分の確定申告で実施

定額減税により一人あたり4万円(所得税から3万円・住民税から1万円)が控除されます。単純に手取りが4万円増えるということです。具体的には次の通りです。

【所得税】
本人3万円 + 同一生計配偶者と扶養親族の人数 × 3万円
【住民税】
本人1万円 + 控除対象配偶者と扶養親族の人数 × 1万円

主な要件は、次の通り
・2024年分の合計所得金額が1,805万円以下(給与所得の場合は2,000万円以下)。
・配偶者・扶養親族は、生計を一にし、合計所得金額が48万円以下、つまり、扶養から外れてないこと。例えば、配偶者が共働きやパートで扶養から外れている場合、配偶者はその会社で定額減税を受けることになります。

実施時期については、給与所得者・年金受給者か個人事業主かによって変わってきます。給与所得者・年金受給者の場合は会社や行政が処理してくれます。個人事業主の賃貸住宅オーナーの場合、自分で申告しなければなりませんので注意してください。概要は次の通りです。

【個人事業主】
2024年分の確定申告で、所得税の控除をします。つまり2025年3月15日期限までに提出する確定申告ですので、約1年後になります。適用する人数分の減税を忘れないように申告しなければなりませんので注意してください。住民税は2024年6月からで、こちらは行政が計算して通知書を送ってきます。
また、所得税を前年15万円以上納税している場合は予定納税をしていると思いますが、その場合は、所得税は2024年7月から控除されます。

【給与所得者・年金受給者】
所得税は2024年6月分から控除され、控除しきれなかった分は翌月から控除されます。住民税は給与所得者の場合2024年7月から11カ月分割して、年金受給者の場合は2024年10月から控除されます。詳細はまだ決まっていません。

子育て世帯の住宅ローン控除拡充

子育て世帯の住宅ローン控除が拡充されます。子育て世帯の要件は、夫婦のいずれかが40歳未満の者、または19歳未満の扶養親族を有する者で、2024年中の入居に限ります。

借入限度額

また、2023年末までに建築確認を受けた認定住宅等の新築等については、床面積要件の緩和措置(通常は50m2以上の床面積要件が、合計所得金額1,000万円以下に限り40 m2以上に緩和)については、2024年末まで延長されます。

子育て対応リフォームの所得控除を新設

子育て世帯が、子育てに対応したリフォームをした場合、その工事費用相当額(250万円を限度)の10%をその年分の所得税額から控除できる特例措置が新設されました。
例えば、転落防止の手すりの設置、対面式キッチンへの交換、防音性の高い床への交換などです。

30万円未満の少額減価償却資産の損金算入の特例は延長

30万円未満(年間合計300万円まで)の設備投資等(減価償却資産)であれば、一括して必要経費にできる特例は2年間延長され、2026年3月31日までとなりました。青色申告をしていることが要件になります。

その他土地・住宅税制に関する特例制度等の延長など

■耐震、バリアフリー、省エネ、三世代同居等のリフォームの特例を2年間延長

耐震、バリアフリー、省エネ、三世代同居等のリフォームをした場合、その工事費用相当額の10%をその年分の所得税額から控除できる特例措置について、対象者の合計所得金額を2,000万円以下(現行3,000万円以下)に引き下げた上で適用期限が2年間延長されます。2025年12月31日まで。

■マイホームの買換えに係る特例制度を2年間延長

自宅を買換えた際、売却した自宅と同じか、高い物件を買った場合は、譲渡益に対する課税を将来譲渡したときまで繰り延べられ、安い物件を買った場合は、その差額について通常の譲渡所得税より低い税額で課税される特例制度が2年間延長されます。2025年12月31日まで。

■マイホームの買換え等による譲渡損失の損益通算と繰越控除の特例制度を2年間延長

自宅の買換えや売却で譲渡損が生じた場合に、他の所得と損益通算・繰越控除ができる制度が、現行のまま2年間延長されます。2025年12月31日まで。

■住宅取得等資金贈与の非課税制度の延長

父母、祖父母等の直系尊属から、住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税が非課税となる適用期間が2年間延長されます。限度額は、省エネ住宅等の新築住宅は1,000万円まで、それ以外の新築住宅は500万円までです。2026年12月31日まで。

■新築住宅に係る固定資産税の減額措置を2年間延長

新築住宅のうち、一般の住宅は3年間(認定長期優良住宅は5年間)、3階建て以上の耐火構造・準耐火構造の住宅は5年間(認定長期優良住宅は7年間)、固定資産税が2分の1になる減額措置が、現行のまま2年間延長されます。2026年3月31日まで。

■リフォーム(耐震・バリアフリー・省エネ)した場合の固定資産税の減額措置延長

耐震改修した場合、固定資産税が1年間 2分の1になる特例措置が2年間延長されます。2026年3月31日まで。バリアフリー・省エネ改修した場合、固定資産税が1年間 3分の1になる特例措置が2年間延長されます。2026年3月31日まで。賃貸住宅は対象外です。

■住宅用家屋の登録免許税の軽減措置を3年間延長

住宅用家屋の売買では、以下の登録免許税の軽減措置が3年間延長されます。2027年3月31日まで。
・住宅用家屋の所有権の保存登記0.15%(本則0.4%)
・住宅用家屋の所有権の移転登記0.3%(本則2.0%)
・住宅ローン等に関わる抵当権の設定登記0.1%(本則0.4%)

■不動産取得税の軽減措置を2年間延長

住宅用土地を取得した場合に係る不動産取得税の減額措置について、土地取得後から住宅新築までの経過年数を2年以内から3年以内にする特例措置が、現行制度のまま2年間延長されます。2026年3月31日まで。

■土地の取得に係わる不動産取得税の特例を3年間延長

宅地評価の土地の取得に係る不動産取得税の課税標準を価格の2分の1とする特例措置と、住宅及び土地の取得に係る不動産取得税の標準税率(本則4%)を3%とする特例措置の適用期限が3年延長されます。2027年3月31日まで。

■認定長期優良住宅、認定低炭素住宅の特例制度を2年間延長

認定長期優良住宅を取得した場合の登録免許税、不動産取得税、固定資産税の優遇措置が、現行のまま2年間延長されます。2026年3月31日まで。

■印紙税の軽減措置を3年間延長

不動産の譲渡に係る契約書印紙税の軽減措置が、現行のまま3年間延長されます。2027年3月31日まで。

2024年1月1日から始まる税制改正にも注意

昨年度の税制改正では、相続税対策に関係する大きな改正がありました。今年から始まる新税制に注意が必要です。
まずは、贈与税に関する改正です。従来の「暦年課税制度」には、3年以内の贈与分は基礎控除の110万円も含めて相続財産に持ち戻す、いわゆる"3年縛り"がありましたが、持ち戻しの期間が3年以内から7年以内になりました。
もう一つの制度、2,500万円までは贈与時に非課税となり、相続時に精算する「相続時精算課税制度」に110万円の基礎控除が新設されました。この基礎控除分は相続時の精算に加算する必要はありません。この二つの制度は併用できず、相続時精算課税制度を選択すると暦年課税に戻れません。どちらを選択するのが良いかは、ケースバスケースです。専門家に相談してください。

■暦年課税 ■相続時精算課税制度

また、税制改正大綱には記載がなく、通達という形で改正されるのが区分所有マンションの相続税評価です。タワーマンションなどの行き過ぎた節税対策を是正するものです。
区分所有マンションの土地については、敷地全体の評価額から各住戸の専有面積に応じて計算します。これにより、同じ敷地面積でも戸数が多いほうが評価額は小さくなります。特にタワーマンションの場合、高層階と低層階では市場価格が大きく違うのに、相続税評価額には反映されません。物件によっては、評価額が市場価格の約4割にまで下がってしまうものもあります。そこで、戸建てと同水準の約6割に調整されることになりました。

今後は経理のデジタル対応が必須に!?

今年度は相続関係や賃貸経営に直接関わる税制改正としては、「30万円未満の少額減価償却資産の特例」の延長くらいで、その他はほとんどありませんでした。
ただし、検討事項として毎回税制改正大綱に掲載されているのが、「記帳水準の向上」です。会計ソフトの普及により、青色申告制度の見直しを含めた記帳水準向上に向けた検討を行うとあります。また、度々改正が行われている「電子帳簿保存法」で見られるように、帳簿等を含めた税務関係書類の電子化を推進するとあります。

改正電子帳簿保存法では、2024年1月1日から電子取引のデータ保存が義務化されていますので、注意してください。
電子帳簿保存法をおさらいすると、この制度は大きく3つに分かれます。帳簿等をデータ保存するかどうかの「電子帳簿等保存(任意)」、紙でもらった領収書等をスキャンしてデータ保存するかどうかの「スキャナ保存(任意)」、そして電子取引の「データ保存(義務化)」です。

電子帳簿等保存

電子取引とは請求書がメールにPDFで添付されていたり、インターネットで備品を購入したりした場合の領収書です。これまでは請求書や領収書は紙に出力して保存していたと思いますが、これからは原則データでの保存が義務づけられます。
ただし、2023年度の税制改正で、以下の場合は紙保存でもよいことになります。
・データ保存対応ができないことに相当の理由がある。
・データのダウンロードの求めにも応じられる。
つまり、紙保存でもよいのですが、データは保存しておかなければなりません。

電子帳簿保存法ができるまでは、帳簿も含めて紙での保存が義務づけられていましたので、紙での保存に慣れている方は、デジタル化の対応に戸惑っていることと思います。しかし、会計ソフトも使い慣れれば便利ですし、大手の会計ソフトであれば電子帳簿保存法にも対応しています。また、電子申告も毎年改良され使いやすくなっており、税制改正大綱には、電子納税も含めてさらに簡便化を図るとあります。
今後は記帳業務、申告業務のデジタル化は避けて通れないようです。最近では、青色申告会もスマートフォンのアプリで情報発信しています。利用してみてはいかがでしょうか。

※今回のマンスリーレポートは「令和6年度税制改正大綱」(2023年12月14日に発表)に基づいて作成しています。正式には今後の国会での審議を経て決定されます。場合によっては、内容が変更になる可能性もありますのでご注意ください。

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