化学装置材料の基礎講座

第26回 小径のノズルでは、腐食や破壊現象が顕在化するケースが多いと聞きました。その原因を教えてください。

   配管には、温度計や圧力計のためのノズル、ドレインを抜いたり、液をサンプリングするためのノズル、また、スタートアップやシャットダウンなど非定常運転時のみに使う小径の配管など、メインの配管以外に多数のノズルが設置されています。このようなノズルの方がメインの配管(本文中では、本管と称します)に比較して、腐食や機械的な破壊などの問題が顕在化する場合がよく経験されます。その原因と管理上の注意点について述べます。

  1. (1)
    肉厚
    本管に比較してノズルは、小径で内圧から決まる必要肉厚が小さく、本管と同じ速度で腐食減肉が進行するとノズルが先に漏れ等の損傷に至る可能性が高くなります。ノズルの先にねじ式の継手が用いられていることがありますが、ねじ式の継手ではねじ部の肉厚はさらに薄くなっています。
  2. (2)
    温度
    高温配管や低温配管では、本管は保温されていてもノズルが十分に保温されていない場合があります。また、行き止まりで流れの無いノズルでは、保温されたノズルの温度は本管と異なります。このように本管との温度の違いにより結露が発生したり、その部分が腐食発生温度となり、腐食が発生することがあります。
①外面
・本管は温度が100℃以上と高く、外面が乾燥した状態でも、ノズルは温度が100℃程度となり、外面からの腐食の発生する場合があります。
・本管は温度が0℃以下と低く外面が凍結状態でも、ノズルは温度が0℃を上回り、外面が結露状態となり外面からの腐食の発生する場合があります。
②内面
・蒸気を含むガス環境で本管は温度が高く乾燥状態でも、ノズルは温度が低く蒸気が凝縮し、湿潤状態となり腐食が発生する場合があります。
・行き止まり配管の場合流速が無いため、液が滞留したり堆積物が生じたりする場合があります。滞留による液の変化が腐食原因となったり、堆積物がすきま腐食などの原因となる場合があります。
  1. (3)
    外面腐食に対する構造要因
    ノズル部は保温材の形状が複雑となり、雨水の浸入が生じ易く外面からの腐食が進む場合があります。
  2. (4)
    腐食や劣化
    機器や本管は定期的に肉厚測定が行われ寿命が推定されている場合が多いのに対し、ノズルの寿命評価は不十分になりがちです。
  3. (5)
    曲げ等の荷重の負荷
    本管とノズルの接合部は、曲げやせん断の荷重負荷集中が生じ易い箇所です。例えば、ノズルにバルブが設置され、バルブ操作により本管とノズルとの接合部に高い荷重がかかる場合があります。

   蒸気の凝縮などにより発生するノズル部での腐食は、局部的に進行することがあります。局部的な腐食に関しては、一点の超音波肉厚測定では腐食を捕らえられません。放射線透過探傷(RT)や超音波肉厚計で多点測定を行い、面的な肉厚分布を測定するなどにより、腐食状況を面的に把握することが必要です。

   以上のとおり、ノズル部は、本管や機器に比較して環境的に腐食の発生し易い要因があることに加え、管理や構造の点でも損傷しやすい要因があります。さらに、発生する損傷が局在化しやすく検査上の注意も必要です。このため、環境や材料に応じた検査を行い、より適切に管理することが重要です。

付図 ノズルに発生した腐食損傷の例(内面で水蒸気が凝縮し、局部的に減肉が生じた事例)

付図 ノズルに発生した腐食損傷の例
(内面で水蒸気が凝縮し、局部的に減肉が生じた事例)

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