労働安全衛生および健康

方針

企業の活動がグローバルに展開されるようになる一方、社会の構造は大きく変化しています。高齢化の進展や雇用や働き方における大きな変化がそれです。こうした変化の中では、社員の一人ひとりが満足をもって能力や可能性の最大限を発揮するためには、安全で快適な職場環境をつくることで心身の健康が保たれるような取り組みが必要になると旭化成グループは考えます。
旭化成グループでは従業員をかけがえのない存在と考えており、職場や作業現場における安全の維持管理について、「環境保全、品質保証、保安防災、労働安全衛生および健康を、経営の最重要課題と認識し、開発から廃棄に至る製品ライフサイクルすべてにわたり、あらゆる事業活動においてこれらに配慮する」を方針として定めて、従業員との協働を通じて全社的な環境の整備に努めます。また、従業員の健康については、健康管理ガイドラインに基づき、生活習慣病対策、メンタルヘルス対策等、社員の心身の健康保持増進活動を推進していきます。

マネジメント体制

当社グループでは、従業員の安全・衛生を管轄する安全衛生委員会または衛生委員会を設置しています。安全衛生委員会または衛生委員会は月1回開催し、職場における労働衛生の水準の向上を図ることを目的としています。事業所ごとに方針や目標の設定を通じて、従業員等、働く人々の安全を優先した体制を構築しています。また、2013年度より、グループ共通のインフラにてストレスチェックの体制を構築し、心身の健康面に対する対応を行っています。

労働災害防止活動

当社グループでは、従来の安全活動※1にリスクアセスメント、PDCAのマネジメントを導入した労働安全衛生マネジメントシステム(OHSMS※2)の運用により、労働災害防止活動を推進しています。
労働安全マネジメントシステム(OHSMS)は、2002年からOHSAS18001規格をもとに導入を開始しました。2009年度以降は全体の90%をこえる部場が導入し、定着化への活動を推進しています。

従来の安全活動 リスクアセスメント PDCAマネジメント OHSMS 労働安全衛生マネジメントシステム
安全活動との関連

労働災害防止の進め方

1.潜在危険性の抽出

モノの不安全な状態 人の不安全な行動(強制発想トラブル想定) 従来の安全活動(3S、HHK、危険予知、パトロール、事例検討等) 潜在危険性の抽出(災害想定) リスク評価(重篤性・頻度によるリスク算出と優先付け) 重大リスク低減対策 本質安全化(安全防護) 管理の手法(安全作業基準遵守活動)
労働災害防止の全体像

有効な労働災害防止対策を実施するには、職場の潜在危険性を抜けなく挙げることが必要です。そのためには、安全活動に強制発想(トラブル想定)の視点を入れて、モノの不安全な状態(設備、有害物、騒音等物理的有害環境など)や人の不安全な行動、さらに、その組み合わせで発生する危険事象に対する災害想定を幅広く実施することが重要です。

2.リスク評価

抽出された職場の潜在危険性について、災害の重篤性と災害に遭遇する頻度との組み合わせから、リスク点数を算出し、優先順位を付けます。リスク点数の高い重大リスクから低減対策を実施します。

3.重大リスク低減対策

安全対策 1.本質安全化、安全性の達成度100% 安全対策 2.安全防護、安全性の達成度80% 安全対策 3.管理の手法 表示・警告等、安全性の達成度20% 安全対策 4.管理の手法マニュアル・許可制等、安全性の達成度20% 出典:中央労働災害防止協会(1999)「職場のリスクアセスメントの実際」p.26
安全対策構築の原則

重大リスク低減対策としては、モノの不安全な状態を安全化する本質安全化(危険作業排除、自動化、トラブルゼロ化、安全な物質への転換など)と安全防護が極めて有効です。当社グループでは重篤な災害に至りやすい、機械への挟まれ・巻き込まれ型災害の対策として、機械設備等の本質安全化と安全防護(隔離と停止)による対策を重点的に推進しています。

本質安全化・安全防護対策

安全対策構築の原則に則って、設備の新設・変更・既存設備見直し・事故発生時の対策等として本質安全化と安全防護による対策を推進しています。

安全作業基準遵守活動

当社グループでは、設備等の改善が難しい作業に関しては、特別管理作業と位置づけて管理するとともに、安全作業基準遵守活動にて安全の確保に努めています。具体的には、日々の業務での安全作業基準遵守状況をチェックするなど、工夫して実行しています。

労働災害情報の共有と活用

労働災害が発生した事業所では原因究明と再発防止対策を行います。当社グループ内では全労働災害情報を共有し、安全教育や事例検討、類似災害防止などに活用しています。

労働災害発生状況

2018年度は国内グループ社員では23件の休業災害が発生しました。国内グループ社員の重篤災害はありませんでしたが、協力会社で熱中症による重篤災害が1件発生しました。
休業23件を事故の型で分類すると、これまで重点的に取り組んできた「機械への挟まれ・巻き込まれ」について、1件の休業災害が発生しました。この事故も教訓に、本質安全化と安全防護によるリスクの低減活動をより一層推進します。
最近の傾向として、1、2年に1度しか行わないような、作業頻度の少ない非定常作業でケガの程度の大きい災害が発生しています。災害の重篤性と災害に遭遇する頻度との組み合わせから行うリスク評価において、頻度面からリスク点数が低いとしても、万一の災害時に重篤なケガとなる可能性がある作業においては、優先度を上げて対策を推進します。
また、国際規格ISO12100に基づく機械安全のための指針類を制定し、2014年度以降は設備の新設・改造時に設計者が機械リスクアセスメントを行い、設備審査時に関係者が審議を行っています。
一方、「転倒」が休業災害の事故の型の44%を占めています。非生産部場(営業・本社等)でも起きる、いわゆる生活災害も防止するため、生産部場とともに非生産部場でも安全基本行動遵守等の安全活動の活性化と安全文化の醸成を、引き続き推進していきます。

休業災害23件、転倒 43.5%、動作の反動・無理動作 17.4%、高温物との接触 17.4%、激突され 13.0%、機械への挟まれ・巻き込まれ 4.3%、墜落・転落 4.3%
休業災害事故の型(2018年度 国内)
休業災害130件、転倒 26.2%、 交通事故 23.1%、 動作の反動・無理動作 12.3%、 墜落・転落 10.0%、 機械への挟まれ・巻き込まれ 8.5%、 高温物との接触 6.2%、 その他の挟まれ 3.1%、 飛来・落下 2.3%、 激突され 1.5%、 有害物との接触 1.5%、 その他 5.4%
休業災害事故の型(2008~2017年度 国内)
2007年度 旭化成グループ0.21%、化学工業1.10%、製造業1.09% 2008年度 旭化成グループ0.16%、化学工業0.84%、製造業1.12% 2009年度 旭化成グループ0.21%、化学工業0.72%、製造業0.99% 2010年度旭化成グループ 0.21%、化学工業0.72%、製造業0.98% 2011年度 旭化成グループ0.36%、化学工業0.88%、製造業1.05% 2012年度旭化成グループ 0.16%、化学工業0.85%、製造業1.00% 2013年度 旭化成グループ0.40%、化学工業0.82%、製造業0.94% 2014年度 旭化成グループ0.20%、化学工業0.76%、製造業1.06% 2015年度 旭化成グループ0.30%、化学工業0.81%、製造業1.06% 2016年度 旭化成グループ0.38%、化学工業0.88%、製造業1.15% 2017年度 旭化成グループ0.30%、化学工業0.81%、製造業1.02% 2018年度 旭化成グループ0.41%、化学工業0.90%、製造業1.20% ※旭化成グループは年度、化学工業と製造業は暦年
グループ休業度数率※1
2007年度 旭化成グループ0.050%、化学工業0.04%、製造業0.10% 2008年度 旭化成グループ0.070%、化学工業0.07%、製造業0.10% 2009年度 旭化成グループ0.008%、化学工業0.13%、製造業0.08% 2010年度 旭化成グループ0.005%、化学工業0.04%、製造業0.09% 2011年度 旭化成グループ0.169%、化学工業0.04%、製造業0.08% 2012年度 旭化成グループ0.153%、化学工業0.12%、製造業0.10% 2013年度 旭化成グループ0.013%、化学工業0.12%、製造業0.10% 2014年度 旭化成グループ0.005%、化学工業0.17%、製造業0.09% 2015年度 旭化成グループ0.005%、化学工業0.04%、製造業0.06% 2016年度 旭化成グループ0.024%、化学工業0.03%、製造業0.07% 2017年度 旭化成グループ0.005%、化学工業0.09%、製造業0.08% 2018年度 旭化成グループ0.008%、化学工業0.06%、製造業0.10% ※旭化成グループは年度、化学工業と製造業は暦年 ※2011年度は機械挟まれによる死亡災害、2012年度は転倒による後遺症災害(障害等級2級)が各1件発生し、強度率が極めて高くなった
グループ強度率※2

快適職場形成の改善活動

化学物質などの管理として、有機溶剤中毒予防規則・特定化学物質障害予防規則・粉じん障害防止規則などが適用される単位作業場では、作業環境測定法に基づく測定を毎年実施しています。さらに、化学物質のリスクアセスメントも行い、化学物質に起因するリスクの低減にも取り組んでいます。
また、騒音ならびに暑熱に関しては、作業環境測定データをベースに作業管理を行い、個人への負荷を下げる管理を実施しています。引き続き、設備改善対策や作業見直しなどの改善を進めています。

旭化成メタルズ(株)友部工場の安全活動

  1. 1.活動の目標と思い

友部工場は、メタリック車のように金属光沢を持った塗料向けの原料である「アルミニウムペースト」を製造する工場として、自動車や家電用塗料ならびにインキ用途分野でビジネスに貢献しています。2019年度は、「日化協安全優秀特別賞」を受賞するとともに、30年間無災害の記録を樹立することができました。
一方で、長年にわたり休業災害ゼロは継続できていますが、その間も不休災害・応急災害は一定の頻度で発生し、設備面でも改善すべき案件を抱えています。
そこで、「全ての事故は防止できる」の信念のもと、本質安全職場を目指したハード・ソフトの更なる充実を図るべく以下に述べるような安全活動に取り組み、「本質安全」の実現を目指していきます。

  1. 2.活動のポイント

友部工場では、保安防災・労働安全の二つの視点を切り口に安全活動に取り組んでいます。
保安防災の視点では、アルミ粉などに起因する粉じん爆発・有機溶剤に起因する引火爆発や火災が起こるリスクを従来と異なるメンバーで見直し、新たに発見されたリスクに対策を講じるというサイクルを回し、保安事故防止やそれに付随する労災防止に取り組んでいます。

労働安全の視点では以下の3項目を柱に活動しています。

  1. 友部大幅改善活動(TOK活動)と命名した活動を通じ、小さなヒヤリ・ハットの抽出とフォロー・作業前危険予知の充実に取り組んでいます。
  2. 2002年より導入したOHSMS活動の中で労働安全リスクアセスメントを行い、課題を抽出し対策をとることでリスク低減化に取り組んでいます。
  3. 10年以上前から活発に行っている小集団活動を通じ、全員参加で現場の問題点抽出・改善策の検討・対策の実現を現場目線で行っています。

労働安全活動の3つの柱を一体的な活動として、現場の負担感をできるだけ少なくしながら効果ある活動にしていくことが管理者の使命との思いで日々取り組んでいます。

  1. 3.今後の取り組み

今後は、「全ての事故を防止する」という目標に向かい、現在の活動の深堀りに努めていきます。そして、「①設備の安全性強化:本質安全に向け、駆動部・高温部・危険性物質等と人を分離できる設備への更なる改善」「②危険予知の深化:作業前危険予知を確実にかつ適切に行うべく、リスクアセスメントなどを通じた危険予知のレベルアップ」、これら2つを行動目標に安全活動に取り組んでいきます。

日化協安全優秀特別賞表彰式
構内の安全標識

アスベスト問題への対応

旭化成ではアスベスト問題に対して、以下のように対応いたしました。

  具体的な対応
工場を含む旭化成グループ所有建物の対応 旭化成グループが所有する工場を含む旭化成グループ所有建物のアスベスト調査を実施し、「石綿障害予防規則」に基づいた除去、封じ込め、あるいは囲い込み等の対応を計画的に実施いたしました。
工場におけるジョイントシール類のアスベスト代替化促進 アスベスト代替化が難しいとして使用猶予(ポジティブリスト)された部材についても技術開発および実証試験で代替化することができました。
旭化成グループを退職された方の健康面への対応 当社グループでは石綿障害予防規則が適用される「アスベストを製造し、または取り扱う作業」はありませんが、当社グループの在職中に保全等で臨時的に石綿を取り扱った経験がある退職者の方から申し出があった場合は健康診断を受けていただくとともに、その後のフォローをさせていただいております。

旭化成グループ退職者の皆様へ

従業員の健康保持増進活動の推進

2014年有所見者率61.5%、平均年齢43.1%、喫煙率28.3%、BMI24.4% 2015年有所見者率61.9%、平均年齢43.3%、喫煙率28.2%、BMI24.8% 2016年有所見者率63.4%、平均年齢43.6%、喫煙率26.6%、BMI25.2% 2017年有所見者率62.5%、平均年齢43.8%、喫煙率26.9%、BMI26.0%、2018年有所見者率62.6%、平均年齢43.8%、喫煙率26.3%、BMI26.3% 
有所見者率等の推移

当社グループでは従業員の健康保持・増進のため、生活習慣病の予防および対策の推進、メンタルヘルスケアの充実を、各地区の健康管理スタッフとともに進めてきました。併せて「特定保健指導」を利用しやすいプログラムに見直した「Asahiヘルスアッププログラム」を、健康管理ツールの一つとして、特に産業保健スタッフの体制が十分でない独立工場、関係会社等で積極的に活用しています。
2018年度の定期健康診断における有所見者率は同レベル、肥満は微増、喫煙率は微減となっています。

メンタルヘルスケアの推進

当社グループでは「メンタルヘルスケア・ガイドライン」に基づき、メンタルヘルスの「4つのケア」を充実させることにより、職場環境の改善に取り組んでいます。
「セルフケア」および「産業保健スタッフなどによるケア」として、2013年度から、社内のイントラネット環境で利用する「e診断@心の健康:職業性ストレス簡易診断システム(株式会社富士通ソフトウェアテクノロジーズ)」を本格的に運用し、個人のストレス調査と併せて、職場のストレス分析「健康いきいき判定」も行い、「ラインによるケア」の一環として、健康いきいきシートの活用(延岡)、従業員参加型の職場活性化活動(水島)、MIRRORを活用した職場改善(富士)、等各地区で職場環境の改善につなげています。
また、当社グループでは、メンタル疾患およびそれ以外の傷病により休業した人が、その後円滑に職場復帰できるように「リハビリ勤務制度」を制定しています。さらに各地区・事業所では、外部講師による研修やカウンセリングの導入などの「専門機関によるケア」の活動も実施しています。

メンタルヘルス不調休業者の直接要因および背景事象の分析

休業原因分類票

メンタルヘルス不調により休業する従業員は、職場の問題のほかに自身の健康問題、仕事への向き合い方、プライベートの問題などさまざまな要因が複合していることが多く、また、それらの要因が起こる背景も業務内容の変更や人事異動、家庭の問題などさまざまです。メンタルヘルス不調休業者の要因分析を行い、傾向や特徴を知ることで効果的な対策を検討し、メンタルヘルス不調による休業者数を低減するため、「休業者ストレス分類ツール」を活用して、休業に至った原因を産業保健スタッフの視点で分析しました。面談結果から直接の要因や背景について寄与割合を入力することにより、その傾向を地区ごとの集計とグラフで可視化します。また、各地区の結果を全社で集計し、職種や職階など多様な視点で分析し、全社で共有しています。

海外勤務者への対応

当社グループではグローバル展開に伴う海外勤務者の増加に対し、健康管理を強化しています。
海外赴任中も年1回健康診断を受診していただくとともに、「健康調査票」を用いて自覚症状や現地での生活習慣、ストレスに関してアンケート調査を行い、必要に応じてWeb環境でskypeを用いた面談を実施しています。また、PCへのアクセス時間をもとに長時間労働が疑われる海外勤務者に対して産業医面談を実施しています。
2017年度まで海外担当産業医が、2年に1回の頻度でアジアの各拠点を回り、アジア全駐在員と「face to face」の面談を実施するとともに、現地の居住環境・医療機関の視察も実施してきました。2018年からは、欧米も含めたすべての地域の駐在員に対して、赴任後、半年から1年経過した時点でskypeを用いた産業医面談を行うとともに、必要に応じて現地医療機関の視察、現地での産業医面談を実施しています。

社員向け「大腸がんセミナー」開催(東京健康管理室)

2人に1人はがんに罹患する現代、産業衛生においても「がんと就労」は最近のトピックスです。2018年は、「大腸がんと検診事後フォローの重要性」と題して、松島クリニックの鈴木康元先生を講師にむかえ、社員向けセミナーを開催しました。鈴木先生の熱意のこもった本音ベースのお話に、参加した100名近くの参加者は熱心に聴講し、終了後も多くの質問が寄せられ、改めて大腸がんへの関心の高さが伺えました。
大腸がんは、便潜血検査という簡便で侵襲のない方法でスクリーニング検査が可能です。また、がん死亡率を減らす科学的根拠もありますが、東京健康管理室管轄における検診受診率は70%にとどまっています。本セミナーが、受診率向上の契機となることを期待しています。