二世帯住宅
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玄関を別にする二世帯住宅建築のヒント

二世帯住宅を建てるとき、玄関を共有にするか、別にするかは多くの人が悩む点です。
年代の異なる2つの家族が二世帯住宅で共に暮らす中では、さまざまなストレスが生じる可能性があります。そのような悩みを解決するには、生活パターンの違いを考慮した二世帯住宅にする必要があるでしょう。

例えば、共有スペースを持ちながらも、玄関を別にすることで解決できる問題は数多くあります。完全に世帯を分離してしまうと二世帯住宅の良さが薄れてしまうかもしれませんが、玄関を別にして動線を変えることで、生活時間のズレなどが気にならなくなることが期待できるでしょう。

ここでは、玄関を別にすることで得られる二世帯住宅のメリットや設計する際のヒントとなるポイントについて解説していきます。

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玄関を分けるときの場所と間取りのポイント

二世帯住宅を検討している人の中には、玄関を分けることに対して戸惑う人もいるかもしれません。ここでは、玄関を別にする必要性を見ながら、実際に設計する場合の玄関の場所や間取りのポイントをご紹介します。

玄関を別にすることで同居満足度が上がる?

実際に二世帯住宅に住んでいる人は、どのように感じているのでしょうか。
ヘーベルハウス「二世帯住宅研究所」では、2016年12月に、キッチン・浴室・玄関を別々にして暮らす「独立二世帯住宅」と、LDK・浴室・玄関を共有して暮らす「一体同居住宅」について、同居満足度などの調査を行いました。

この調査によると、同居満足度は「独立二世帯住宅」が93.6%だったのに対し、「一体同居住宅」では66.3%でした。
また、「独立二世帯住宅」では、70.1%が「別々の家に住んでいる感覚」を持っていたものの、親・子世帯の関係は、「母・義母とよく話をする」が73.2%、「気軽に子どもの世話を頼める」が77.1%と、関係の良好さがうかがえる結果でした。

玄関を共有している場合、親世帯にとっては、自分たちの生活スタイルとは違う子世帯の帰宅時間や就寝時間の遅さなどが気になり、つい口出ししてしまうなど心配し過ぎてしまう可能性もあります。

子世帯にとっても、仕事などで夜遅く帰宅する際に、鍵を開ける音などで起こしてしまわないか、親世帯に気兼ねしてしまう可能性もあるでしょう。休日に友人が遊びに来る際も、遠慮が生じてしまうかもしれません。

二世帯住宅を建てる際には、事前にどこを共有し、どこを分離するかをよく考えることで、ストレスを回避することができます。毎日家族が出入りする玄関を設計段階から別々にしておけば、満足度を上げる効果が得られる可能性が高まります。
こうした必要性を踏まえながら、次では玄関を別に建築する際のポイントを見ていきましょう。

ヘーベルハウス二世帯住宅『子本』より。生活のスタイルや時間帯が異なりがちの二世帯同居。入口・自由(世帯専用)スペース・共有スペースをしっかり分けることで、例えば人を招くときなども気遣いの必要なく過ごせます。

2.玄関を1階に作るなら。場所やおすすめの作り方は?

二世帯住宅の間取りは、土地の大きさなどで変わってきますが、2つの玄関を1階に配置する場合について、建築のヒントとなる例を見ていきましょう。

二世帯がくつろげる住宅づくりの基本は、同居スタイルと、建物分離度のバランスです。ヘーベルハウスでは独立二世帯型・共用二世帯型・融合二世帯型の大きく3つのタイプに分け、理想の二世帯住宅づくりを考えます。

●生活リズムが違う場合は玄関アプローチの位置を離して完全分離

親世帯・子世帯の玄関アプローチを離れた場所に置くことで、遅い時間の帰宅や、鍵の開け閉めの音、友人の訪問など、お互いへの気兼ねを軽減することが期待できます。それぞれの玄関アプローチの間に、植栽スペースなどを配置することで、お互いの来客の様子も見えづらくなり、よりプライバシーが確保されます。

●程よい距離感を大切にする場合は玄関を並べて配置

双方の玄関を近くに配置することでコミュニケーションが取りやすくなります。また、親世帯・子世帯が内部で行き来できるようにしたい場合は、玄関を並べて配置する設計がおすすめです。

●上下分離型の間取りでも玄関を1階に作るケースが多数

子世帯のキッチンやリビング、寝室などを2階に置く上下分離型の二世帯住宅でも、玄関を1階に配置するケースがほとんどです。玄関から、内階段ですぐに2階に上がれる間取りにすることで、親世帯・子世帯の生活空間をきっちり分けることができます。

●玄関が別でも行き来できる鍵付きのドアでコミュニケーションを確保

玄関を1階に作る場合は、親世帯・子世帯を完全分離せずに、内部で行き来できる鍵付きのドアを付けておくという方法もおすすめです。災害時など、万が一の場合にもどちらからでも出られて安心な上、孫の行き来がしやすい、子育て協力がしやすいなど、コミュニケーションも取りやすくなるでしょう。

玄関を2階にして外階段を作るときに考えておきたいこと

「独立二世帯住宅」を設計する際に、上下分離型で考えた場合、外階段を検討することがあるかもしれません。外階段であれば、当然玄関は完全に別々となります。ここでは、外階段を設けるメリットとデメリットについて見ていきましょう。

外階段を付ける最も大きなメリットは、より独立性が増しプライバシーが確保されやすいということです。設計の一例としては、玄関は2階にあっても、1階部分に外階段へと続く専用の門を付けるなど、よりプライバシーに配慮した玄関アプローチにすることもできます。

一方で、外階段の場合には玄関に至るまでの間、雨などが吹き込んでくるため 、天気が悪いときの使い勝手や安全性などについては、デメリットに感じる人もいるでしょう。また、外階段の場合、お互いの行き来がしづらいため、体調の変化に気づきにくい、子育て協力がしづらいなど、親世帯・子世帯のコミュニケーション不足が生じる可能性もあります。

どちらかが用事がある場合でも、必ず一度外に出なければならないため、面倒になりがちです。
内階段と比較して、行き来する頻度が多くなく、二世帯住宅のメリットが生かしにくいというデメリットもあります。

玄関の数でかかる費用が違う?別々の玄関にするとコストがよりかかる

玄関を作る際に、その場所や形状によって費用はどのくらい違ってくるのでしょうか。注文内容や、依頼するメーカー、施工業者によっても価格は変わりますが、おおよその傾向について見ていきましょう。

まず、玄関を共用にする場合ですが、ドアや玄関ホールなどが一つで済むため、二世帯住宅としてはコストが抑えられる傾向です。玄関を増やすことにより単純にスペース(坪数)が増えて費用がかかるため、そうした面でも余分な費用の発生を軽減できるといえるでしょう。

一方、玄関を2つ作る場合は、キッチンや浴室など水廻りを分離するケースが多く、一部共用や全て共用するタイプの二世帯住宅よりも費用がかかる傾向があります。そのため、費用の軽減のために、「一つの玄関で内階段を作る」という選択肢もあるでしょう。

外階段を作る場合は、材質や形状、段数などによっても差はありますが、工事がプラスされる分、費用もかさみがちです。
親世帯・子世帯のプライバシーを確保するという面ではメリットも見られる外階段ですが、実際の施工件数は減少傾向にあり、あくまでも選択肢の一つと考えておくのがよいでしょう。