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ヘーベルハウスLONGLIFE IS BEAUTIFUL 松山油脂のロゴマーク

ゆとりのある暮らし

手でつながれてきた
松山油脂のモノづくりのバトン【前編】

ヘーベルハウス大宮展示場のサニタリーで松山油脂Mマークの石鹸で手を洗う様子

リビング・ダイニングキッチン寝室・子ども部屋サニタリー

時代を経ても手仕事にこだわり、技術とモノづくりの精神を受け継いできた松山油脂株式会社。自社ブランドのスキンケア、ボディケアなど、デイリープロダクトを通じて、価格以上の価値を提供するという信念のもと、現代人の暮らしに寄り添う製品をつくり続けている。今回は、代表取締役社長の松山剛己氏に、多くの人の手をかけた製品づくりやブランド誕生の舞台裏、未来への展望を語ってもらった。

手間をかける、時間をかける、伝統を守る

ヘーベルハウスLONGLIFE IS BEAUTIFUL 松山油脂の工場で釜炊製法により作られる石鹸

東京都墨田区東墨田は、昔から革なめし産業が盛んな土地として知られ、なめしの工程でとれる油脂を原料にした石けん工場も多い。1908年創業の松山油脂株式会社もその一つだ。墨田工場では、70年以上にわたり、釜焚き製法や枠練り製法など、昔ながらの製法を守って石けんをつくっている。

釜焚き製法とは、天然油脂から石けんをつくり上げる方法で、原料の仕込みから仕上がりまでに要するのはなんと100時間。まず、天然油脂を釜に仕込み、加熱撹拌しながら苛性ソーダ水溶液を加えていく。すると、鹸化(けんか)という化学反応が起き、油脂が石けんになる。次に塩を加えると釜の中の液が分離し、塩は不純物とともに沈み、石けん分が浮上する。このような塩析(えんせき)の工程を繰り返しながら、純度を98%まで高めれば、さまざまな製品のベースとなる石けん素地の完成となる。時間も手間もかかるため、現在も続けている国内メーカーは数少ない。

純度を高めた石けん素地を、高温のまま枠に流し込み、一昼夜かけて冷やし固める。大きな塊になった石けんを枠から取り出したら、水平に、垂直にと2人がかりで使いやすい大きさになるまで小切りする。それを7~20日かけて乾燥・熟成させる。これが枠練り製法だ。その後の全ての工程にも人の手がかかわっている。

ヘーベルハウスLONGLIFE IS BEAUTIFUL 松山油脂の工場に並んだ石鹸

機械化が進む昨今、なぜ松山油脂はここまで手をかけ、時間がかかる製法にこだわるのだろうか。「まず、原料そのものが天然由来であることが挙げられます。天然油脂でつくった石けんは、人の肌を洗うのに適切な洗浄力と保湿成分をもっていて、人為的に再現するのが難しい絶妙なバランスで成り立っています。そのような繊細な原料だからこそ、季節や気温、湿度などの条件に応じた人の手による微調整が欠かせないのです」と語る松山氏。マニュアルでは対応できない瞬間的な判断を要することもあるため、手作業の方が効率が良い部分もあるという。

ヘーベルハウスLONGLIFE IS BEAUTIFUL 松山油脂の工場で完成した石鹸をチェックする様子

現在代表取締役社長を務める松山氏が、家業である松山油脂に入社したのは1994年のこと。

「家業に戻ってまず取り組んだのは、今後も引き継いで守るべきものは何かを考えることです。いちばん守り たいのは釜焚き製法や枠練り製法といった手仕事。そして、働く人の真面目さです。十数年ぶりに工場に入った時、ある思い出が頭をよぎりました。幼い頃、当時あった工場の風呂場で職人たちとよくお風呂に入っていたんです。仕事を終えた後の彼らの横顔はとても格好良かった。その雰囲気はずっと守り続けたい、受け継いでいきたいと強く思いました」。

松山油脂の実直なモノづくりは、今もすべての製品の主軸にあり、大切に守り継がれている部分だ。

“つくり手”から“つかい手”へとつながる仕事

松山油脂にとって、1995年の自社ブランドの設立は会社のゆくすえを左右する大きな決断だった。それまでは下請けとして企業のOEM製品をつくるのが事業の柱。「でもこれからは、自分たちがいいと思った製品をつくって全ての責任を負い、改善を重ねる製品づくりに取り組んでいこうと考えたのです」と松山氏。

そうして松山油脂がオリジナルブランドとして最初に手掛けたのがMマークシリーズだ。固形石けんからスタートし、ボディケア、ヘアケア、スキンケアとラインアップを広げてきた。余分なものは加えずに、必要な成分は過不足なく、がコンセプトだ。

ヘーベルハウスLONGLIFE IS BEAUTIFUL 松山油脂の代表作Mマークとリーフ&ボタニクス

その後、Mマークシリーズに続いて肌をうるおす保湿スキンケアシリーズや、リーフ&ボタニクスなどのブランドを展開。このようなブランドや製品はどのように生み出されているのだろうか。

「スタッフのみんなが生活の中で起こっている課題を提示し、上がってくる個別のアイデアを組み合わせて一つのブランドに仕立てるのが私の担当です。みんなが自分ごととして考えて生まれた、自分だったらこれがほしい、これを使ったら家族が喜ぶんじゃないかというアイデアが起点になっています」。

スタッフは製品のつくり手であるのと同時に、つかい手として評価者にもなれる。つかい手の立場になって考え、つくり手とつかい手の立場を往復しながら、一丸となってより良い製品へと高めていく。それが製品に対する責任と誇りへとつながっているのだろう。

現役で活躍する日本に一台しかない設備

石けんの枠練り工程で使われるクーリングプレスは、松山油脂の工場に現存する、日本で唯一の現役の設備だ。枠練り製法の石けんは、水による膨潤(溶け減り)やひび割れがしにくい一方で、ゆがみが生じやすい。しかし、クーリングプレスを用いることで、ゆがみにくい石けんに仕上げることができるという。

ヘーベルハウスLONGLIFE IS BEAUTIFUL 松山油脂の石けん作りの枠練り工程で使われるクーリングプレス

今もクーリングプレスをメンテナンスしながら使い続ける理由を松山氏はこう語る。

「1970年代前後に他社が合成洗剤製造に着手する一方で弊社は設備投資ができなかった。ところが、90年代のバブル崩壊以降世の中では実直さが重視されはじめました。時代遅れとも思われた製法が、私たちにとってのコアな技術となり、お客様にとって価値のあるものとなったのです。ただし、古いだけでは価値がありません。クーリングプレスを使うと、枠練り石けんを大量につくることができます。私たちの仕事の規模がもっと大きくなれば、クーリングプレスにも、もっと光を当てることができると思います」。

ヘーベルハウスLONGLIFE IS BEAUTIFUL 松山油脂の石けん作りの枠練り工程で使われるクーリングプレス

クーリングプレスは半世紀の年月を経た現在も、墨田工場のスタッフの手で大切に使い続けられている。

誇りによって継承されるモノづくりの技術

自社ブランドの展開により会社は成長し、それにともないスタッフの数も増えた。そこで課題となったのが、若い職人の育成だ。石けんの製造工程で特に経験や勘が必要とされるのは、釜焚き製法だという。

天然素材の油脂を使っている以上、原料には揺らぎがある。季節ごとの気温や湿度の変化によって、つくり方や仕上げ方は少しずつ変わる。定められた規格と目の前にある情報から、個人の判断による微調整を施していく。「やはり最後は、“やって見せて、させてみる”がいちばんです。そして、自分なりの気づきをノートに書いて残す。そうやって書き込まれたノートが、職人たちにとっては宝物なんですよ」。

インタビューに答える松山油脂代表取締役社長の松山剛己

毎回新たな発見と課題が生まれ、それらと向き合いながら製品をつくり続ける松山油脂。自社ブランドを展開するようになったことで、スタッフの心にも変化が生まれたという。

「スタッフたちが『これは私がつくった石けん(製品)です』と、胸を張って言えるようになりました。その誇りも、確かな技術の継承へつながっていると思います」。

工場内には、あらゆる工程に人の手と目がある。もちろん機械を使う部分もあるが、重視しているのは人の手と目によるきめ細やかな作業。そんな手仕事を一番に守りたいと思った松山氏の想いこそが LONGLIFE なモノづくりにつながっている。松山油脂の製品が長く愛され続けている理由はそこにあるの だろう。

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