戸建住宅はもちろん、産業界にもアパートにも急速に普及している太陽光発電システム。その費用対効果から収益アップが見込まれること、クリーンエネルギーの供給という社会貢献意識が普及の理由です。費用対効果のポイントとなるのは電力の買取価格と補助金制度ですが、3月末に注目されていた平成25年度の買取価格が発表されました。太陽光発電システムの補助金制度と合わせて解説します。
太陽光発電システムの投資効率を考える上で、まずポイントとなるのが買取価格です。平成25年度の買取価格は、太陽光発電システムの容量が10kw未満で38円となりました。昨年度の42円から4円の減額です。
また買取価格は、設備の接続契約の申込み書類を電気事業者が受領した時点での価格が適用されますので、建築及びご検討のスケジュールには十分ご注意下さい。
■平成25年度 新規参入者向け固定買取価格
太陽光発電システム搭載容量 |
住宅用(10kw未満) |
非住宅用(10kw以上) |
買取価格 |
38円/kwh(税込) |
37.8円/kwh(36円+消費税) |
買取期間 |
10年間 |
20年間 |
買取方式 |
余剰 |
余剰または全量 |
仮に賃貸住宅に5.8kwの太陽光発電システムを真南に設置した場合で、シミュレーションしてみましょう。発電した電力は共用部分(エントランス・廊下・階段室)で使用することとします。
※年間予測発電量:5,870kwh(内 昼間消費量587kwh/年間)
※年間5,000kwh : 一般家庭1.4世帯分の電力(一般家庭の平均電力消費量を300kwh/月として)
※当社試算。天候・敷地条件・共用部の使用電力等によって異なります。
※19万円=5,000kwh×38円/kwh(平成25年売電価格)
年間19万円として、買取期間の10年間で190万円の利益となります(11年目以降の買取価格は未定)。太陽光発電システムの設置費用については一概には言えませんが、このシミュレーションを見ると投資効率は高いと言えるでしょう。
買取価格は減額となったが、まだまだ十分に投資効率は高い。
投資効率を考える上でもう一つ重要なのが、補助金です。太陽光発電システムの普及目的から、国と自治体の補助金がありますが、これも毎年、見直しがあります。国の補助金は、太陽光発電システムの設置費用に応じて2段階になっています。設置費用が1kwあたり50万円を超えると対象外になり、搭載容量が10kw未満のものに限られます。
期間は平成26年3月31日までとなっていますが、予算枠に達すると早期に終了する可能性がありますので、早目に検討した方がよいでしょう。
■太陽光発電システムへの国の補助金
太陽光発電システム 1kwあたりの価格 |
1kwあたりの補助金額 |
2万円〜41万円以下 |
2万円 例:5.8kw設置の場合11.6万円 |
41万円超〜50万円以下 |
1.5万円 例:5.8kw設置の場合8.7万円 |
50万円超 |
対象外 |
また、自治体の補助金額や期間に関しては各自治体によってさまざまです。特に戸建て住宅の場合は各自治体も積極的です。中にはアパートや自宅併用アパートでも利用できるものもあります。詳細は各自治体にお問い合わせください。
■自治体補助金の一般住宅の例
足立区 |
5万円/kw・上限20万円 |
杉並区 |
4万円/kw・上限12万円 |
荒川区 |
2万円/kw・上限30万円 |
千代田区 |
10万円/kw・上限40万円 |
補助金制度は国と自治体であるが、予算枠が限られているので予算に到達すると締め切られてしまう。
ここまで、賃貸住宅への太陽光発電システムの利用方法は、共用部への使用を前提に解説してきました。しかし、発電した電力を各住戸で使用する方法も、もちろん考えられます。つまり、発電した電力を入居者が使用するという方法です。余剰電力も入居者が売電して利益を得ることができます。この場合、オーナーは太陽光発電システムの設置を負担するのみで、売電収入もありませんので、直接メリットがありません。しかし、入居者の募集に関しては大きな差別化を図ることができ、賃料アップも期待できます。また、自宅併用の場合は自宅に使用することもできます。
共用部で使用する場合、賃貸住宅の昼間の消費電力は少なく、ほとんどを余剰電力として売電できます。買取価格は下がりましたが、シミュレーションで試算したように、十分な収益が期待できるでしょう。一般的な戸建ての場合で、設備費用は10〜15年で回収できると言われています。もちろん、リスクがないわけではありません。太陽光発電システムは、天候や設置条件によって発電量が変わります。アパート経営同様、長期の事業とも言えますが、検討の余地は十分にあるでしょう。
入居者利用型は、募集時の大きな差別化ポイントに、共用部利用型では収益力アップが期待できる。
太陽光発電システムによる売電で得た利益は収入となり、家賃同様に利益として計上しなければなりません。また、太陽光発電システムの設備にかかった費用は減価償却として、必要経費に算入できます。売電による収益の税法上の扱いと設備の減価償却について解説します。
発電した電力をアパートの共用部で使用し、余剰電力を売電している場合、その利益は不動産所得となります。自宅に設置している場合は雑所得です。
太陽光発電システムの設備に関しては耐用年数17年で、減価償却費を算出します。
また、個人でも10kw以上の太陽光発電システムを設置した場合、全量買取が可能となりました。それに伴いグリーン投資減税により、要件を満たせば設備費用を初年度に即時償却できる優遇措置があります。ただし、この特例は事業所得における特例です。不動産所得の場合は適用できません。賃貸住宅に太陽光発電システムを設置し、全量買取を行っている場合、事業所得となり税制の特例が適用できるかどうかは、事前に税務署に確認する必要があります。
売電収入は“不動産所得”。設備の減価償却費は“耐用年数17年”で算出。