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空き家対策の「借主負担DIY型」賃貸借契約とは?

経営ノウハウ

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2014年10月21日

空き家対策の「借主負担DIY型」賃貸借契約とは?

空き家の急増が社会問題となり、その解決策として、国土交通省が空き家賃貸の流通を促進するために、賃貸借契約のガイドラインを作成し発表しています。ガイドラインのポイントは、入居者がリフォームを自由に行えるというものです。これは、空き家対策にとどまらず、アパート経営そのものにも普及の可能性があります。その動向を探ってみました。

空き家数が過去最高に!

総務省が7月19日に発表した「住宅・土地統計調査」(5年ごとに実施)によりますと、平成25年の空き家数は820万戸と、5年前に比べ63万戸(8.3%)増加。空き家率(総住宅数に占める割合)は、13.5%と上昇し、過去最高となりました。
空き家の中で最も多いのは「賃貸用の住宅」で約52%ありますが、今、特に問題となっているのが、賃貸用でない「一戸建」の空き家で、全体の約40%ほどあると見られています。

■空き家数及び空き家率の推移─全国(昭和33年〜平成25年)

特に人口減少の激しい地方で、空き家率は高いのですが、一戸建ての空き家が増える理由は、単に人口減少だけではありません。大きな理由の一つが固定資産税の減免措置で、住居が建っている土地の固定資産税は、更地に比べて6分の1になります。来年度の税制改正から、倒壊して近隣に被害を及ぼす恐れのある住宅については、この制度の見直しが議論されていますので、都市圏など地価の高いところに老朽化した空き家を所有している場合は、特に注意が必要です。

各自治体では空き家条例をつくり、対策に取り組んでいます。これまでは、危険な空き家があると、指導、勧告して、従わない場合は所有者名を公表するといった条例が多かったのですが、大田区のように持ち主の同意を得ずに荒廃した空き家を区が取り壊せるようにした条例も出てきました。

老朽化した空き家の問題点は、防犯、防災、衛生、景観などさまざまです。防犯については、空き家に犯罪者が出入りしたり、放火される恐れもあります。住宅密集地などでは、倒壊し近隣を巻き込んでしまう危険性もあります。また、倒壊に至らなくても、瓦や外壁が落下し危害を加える危険性もあります。

もちろん、老朽化した空き家は、相続財産としても不良資産です。相続の観点から見た空き家問題は、以前にもこのコーナーで取り上げました。(マンスリーレポート 空き家が抱える問題点を解消するには? 2013年6月)

空き家が増加し、過去最高に。強制撤去の条例を施行する自治体も出るなど、固定資産税の減免措置に関する税制改正も検討されている。

「借主負担DIY型」賃貸借契約とはどういうものか?

この“空き家問題”については、国土交通省も「個人住宅の賃貸流通の促進に関する検討会」を設置し議論していました。そして、今年の3月に、一つの解決策として「個人住宅の賃貸用ガイドライン」を公表しました。

これは、空き家を賃貸として流通させようというのが狙いです。しかし、老朽化した住宅はリフォームしなければ賃貸できません。持ち主も基本的には賃貸などしたこともない人がほとんどです。さらに最大の問題は、今の一般的な賃貸借契約では入居者に原状回復の義務があり、基本的にリフォームができません。また、オーナーも入居者が普通に住める状態にして貸す義務を負います。

そこで、このガイドラインでは、新しい賃貸借契約の形態となる「借主負担DIY型」を示しました。DIYとは、英語のdo it yourselfの略語です。これは、入居者が入居者負担で自由にリフォームでき、退去時も原状回復の義務を負わないというものです。オーナーも入居前や入居中の修繕義務を負いません。これなら、オーナーも老朽化した家をリフォームせずに、そのまますぐに貸し出すことができますし、入居者も自分の好みで設備などにリフォームできます。

■「借主負担DIY型」賃貸借契約

オーナーのメリット
・修繕にかかる費用や手間がかからず、現状のまま貸し出すことができる。
・入居者が自己負担でDIY等を行うことで、長期間の入居が見込め、安定経営につながる。
・退出後は、入居者が行ったDIY等がそのまま残るため、設備などグレードアップされている可能性があり、次に貸し出す際に、家賃を高く設定できる可能性がある。

入居者のメリット
・自分好みの内装や設備でDIYできるため、持ち家と同じような感覚で居住することができる。
・修繕やDIYの費用を自己負担する分、賃料を近隣相場よりも安くすることができる可能性がある。
・自分で修繕する場合、施工方法や材料、リフォーム業者の選択などにより、コストを引き下げることができる。
・DIYを実施した箇所については、原状回復義務が免除されるので、退出時も追加費用が発生せず、敷金返還などのトラブルを避けることができる。

 

オーナーにとっての一番のメリットは、修繕コストが実質かからない、ということかもしれません。ガイドラインでは、その分入居者が家賃を低く設定できるとしていますが、このあたりは相場との兼ね合いになるでしょう。
双方にとって、メリットのある「借主負担DIY型」賃貸借契約ですが、後のトラブルを避けるためにも専門性を有する不動産事業者や自治体の適切な助言、支援も必要としています。

「借主負担DIY型」賃貸借契約は貸主、借主双方にメリットがある。空き家の賃貸流通を促進する可能性がある。

アパートにも普及するか? 約5割が利用意向あり

「借主負担DIY型」賃貸借契約は、どこまで普及するのか。これまで、壁に釘一つ打てないというイメージがあった賃貸住宅が、その動向に注目しています。

リクルート住まいカンパニーが、賃貸住宅居住者を対象に実施した『賃貸住宅におけるDIY意向調査』によると、「リフォームやカスタマイズをしたことがある」が4.2%、「したいと思ったがあきらめた」が18.8%、合わせると23.0%にDIYの実施意向があることが分かります。

Q.現在お住まいの賃貸住宅において、入居前や入居後にカスタマイズ(壁紙や照明の交換など)やリフォーム(トイレやキッチンの交換など)をしたことはありますか。<単一回答>

DIYの意向があるのにあきらめた理由は、1位「許容範囲が分からない」50.4%、2位「契約上許されないから」45.4%(複数回答)でした。おそらく、許容範囲が明確になって、契約上許されれば、さらに多くの人がDIYに興味を示すのではないでしょうか。

国土交通省の「借主負担DIY型」賃貸借契約についての認知度は、僅か8.7%でしたが、あらためて、その内容を示し、利用して見たいかを聞いたところ、「とても利用してみたいと思う」6.8%、「やや利用してみたいと思う」40.1%、合わせて46.9%と半数近いニーズがあることが分かりました。

Q. あなたは、 「借主負担DIY型」賃貸借契約を利用してみたいと思いますか。<単一回答>

一般の賃貸住宅でも「借主負担DIY型」賃貸借契約のニーズがあることが分かった。

アパート経営の新しいトレンドとなるか?

今回のガイドラインは、一戸建て空き家の流通促進のために考えられたものですが、先の調査でニーズが確認されたことを考えると、一般賃貸住宅にも普及する可能性もあります。
実は、今までもカスタマイズ賃貸というカテゴリーで人気を博している物件もあり、カスタマイズ賃貸専用のWEBサイトもあります。

しかし、ほとんどは壁紙が自由に選べる、壁に棚を取り付けられるといった程度のものです。また、壁の原状回復などは一部免除しているケースもあります。それでも、自分好みにカスタマイズできるイメージがあり、人気です。この場合の費用は、基本的にはオーナーで、プラスアルファの内容によっては入居者負担です。
中には築年数が30年、40年といったものに関しては壁・床を含め大胆なリフォームができたり、インテリアショップとコラボレーションして照明などを選んだりできるサービもあります。

オーナーにとっても、壁紙などは入居者が入れ替わる時に張り替えるケースがほとんどですから、新しい入居者が選んで喜ぶならその方が良い、と考えることができます。また、特に二人以上のファミリー層など長期入居を考えている場合は、設備も5年、10年サイクルで変わりますので、自分で選べて、交換できるのは魅力かもしれません。リクルート住まいカンパニーでは、今後この「借主負担DIY型」賃貸借契約が一般賃貸にも普及していくとみています。また、「借主負担DIY型」賃貸借契約の認知度が高まれば、入居者のニーズももっと高まるかもしれません。
戸建てと集合住宅の違い、費用負担の問題などありますが、「借主負担DIY型」賃貸借契約がどこまで普及していくか、今後の動向に注目です。

一部、カスタマイズ賃貸が普及しはじめている。一般のアパートにも「借主負担DIY型」賃貸借契約が普及する可能性がある。

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