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火災に耐える賃貸住宅とは-都市の不燃化を考える

経営ノウハウ

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2017年9月 5日

火災に耐える賃貸住宅とは-都市の不燃化を考える

災害に対してどう対策をとるべきか、アパート経営にとっては万が一に備えることも大切です。また、他の事業と同様、災害後の事業継続についても考えておく必要があります。今回は、大地震の二次災害で懸念される火災について考えてみたいと思います。特に都市部では不燃化の促進が大きな課題となっています。火災に耐える賃貸住宅とは何なのか、事業継続も踏まえて考えてみたいと思います。

大震災時、東京の最大の弱点は木造住宅密集地域

2016年4月の熊本大地震では震度7の地震が、二日続けて2度も起こりました。しかも、熊本県を含む九州中部で今後30年以内にM6.8以上の地震が起きる確率は18〜27%と低かっただけに、あらためて日本は地震大国であることを思い知らされました。
首都圏では、今後30年以内にマグニチュード7クラスの大地震が70%の確率で発生すると予測されています。しかし、地震の予測は研究が進むほど、困難だと分かってきました。国の対策も予測前提を見直すようです。

首都直下地震による東京都の被害想定では、区部の木造住宅密集地域、いわゆる木密地域を中心に、建物倒壊や地震火災の被害が多く発生するとしています。意外な感じもしますが、東京には、山手線外周部から環状七号線にかけて、木密地域が広範囲に分布しています。
そこで東京都では、地域危険度測定調査を概ね5年ごとに行い、現在7回目の調査結果が発表されています。調査では、建物倒壊危険度や火災危険度などが測定されていますが、今回から災害時の避難や消火・救援活動の困難さを加味するため、「災害時活動困難度」(災害時の活動を支える道路等の基盤状況を評価する指標)を考慮した危険度の測定が行われています。

下の図は、災害時活動困難度を考慮した火災危険度のマップです。危険度が5つのランクに分けられています。危険度が高いエリアは、木密地域でかつ道路基盤装備が進んでいない地域で、環状七号線沿いの下町地域から山の手地域にかけてドーナツ状に分布しているのが分かります。
木密地域で大規模に火災が発生した場合の被害の大きさは、阪神・淡路大震災の経験からも明らかです。東京都の防災においても、この木密地域が最大の弱点として、不燃化の促進が急がれています。

東京都では「首都被災〜木密地域に潜む、災害のリスク〜」として延焼シミュレーションCGをYouTubeで配信しています。コチラをご覧ください。
「地震に関する地域危険度測定調査(第7回)」の詳細についてはコチラをご覧ください。

■災害時活動困難度を考慮した火災危険度ランク

都市の防災対策としては、建物倒壊と火災による被害の拡大が懸念される。東京都には、木造住宅密集地域が広がっている地域があり、不燃化の促進が最大の課題となっている。

木造アパートの建替えに助成金

東京都では、2012年度から、「木密地域不燃化10年プロジェクト」に取り組んでいて、2020年度までの目標として、整備地域において、
・市街地の不燃化により延焼による焼失ゼロ(不燃領域率 70%)を実現
・延焼遮断帯となる主要な都市計画道路を100%整備
を掲げています。

そして、整備地域の中で、特に重点的・集中的に改善を図るべき地区を「不燃化特区」として指定し、都と区が連携して不燃化を強力に推進しています。具体的には、次のような助成があります。
・老朽建築物の除去費用の助成
・準耐火・耐火建築物への建替えに際して、建築設計及び工事監理に要する費用の助成
・老朽建築物の所有者又は借家人の住替えについて、費用の一部を助成
これらの詳細は各区によって異なります。老朽アパートの建替えにも適用される場合がありますので、ご確認ください。
東京都「木密地域不燃化10年プロジェクト」の詳細はコチラをご覧ください。

また、大阪や名古屋など各エリアでも同様の助成制度があります。
・名古屋市 都市防災不燃化促進事業はコチラ
・大阪市 都市防災不燃化促進事業はコチラ

■東京都不燃化特区一覧表(図)

■東京都不燃化特区一覧表(表)

各都市の木造住宅密集地域などの指定区域では、老朽アパートの建替えに助成金が出る場合があるので、ぜひ確認を。

法的基準では分からない、耐火ラインの違い

では、火災に強い賃貸住宅とはどんな建物なのか。もちろん建築基準法や関連法令で耐火基準は定められていますが、耐火性能には単なる基準のクリアだけでは分からない性能があり、経営においては、そこに注意することが大切です。
例えば、壁から室内のどこで火をくい止めるかの基準である「耐火ライン」の違いがあります。
下図のとおり、一般的な耐火基準では、室内側の壁材で火をくい止めれば基準を達成できます。しかし、それでは火災の際はライフラインでもある壁内の配管や配線などが損傷する恐れがあります。
旭化成ヘーベルメゾンの場合は、判定ラインの条件が厳しい外壁単体で基準をクリアしています。つまり、火災後も軽微な補修で原状回復でき、修復にかかる時間とコストを軽減し、経営のダメージも少なくて済みます。
1995年の阪神・淡路大震災では、倒壊せずに残った「ヘーベルハウス」が防火壁としての役割を果たし、延焼による被害拡大を防ぎました。

■ヘーベルメゾンの安全基準と一般的な耐火基準

また、ヘーベルメゾンの場合、万一内部から失火した場合も、内装下地に採用している不燃性の石膏ボードが隣室への燃え移りを抑止します。さらに床の「ヘーベル」が燃え抜けを防ぎ、燃え落ちない壁「ヘーベル」が新たな酸素の流入を防ぐなど、さまざまな対策で被害の拡大を防止します。

賃貸住宅の耐火性能は、法的な基準クリアだけでなく、いかに早く修復できるかが重要。例えば耐火ラインの違いで、損傷の度合いが大きく異なる場合がある。

災害後の修復性は、その後の事業継続に大きな影響

特に賃貸住宅の防災対策としては、被災後の事業継続も考えなければなりません。耐火ラインの違いで分かるように、耐火性能が高ければ、修復も早く事業の再開もスムーズにいくと思いますが、修復に日時がかかるようであれば、事業の再開も不透明です。仮に修復している間、入居者が住めずどこかに避難している場合は、その間の家賃ももらえません。
このように、単に耐震・耐火基準をクリアしているというだけではなく、被災後の修復性がポイントとなるのです。

修復費用に関しては、保険で対応するケースもあると思いますが、震災時に必要なのは、火災保険ではなく、地震保険です。地震による火災の補償は、火災保険は適用できず地震保険が必要となりますので、注意してください。

もしマグニチュード7クラスの地震が起きた場合、所有の賃貸住宅が無事だとしても近隣から火災が発生したり、周辺の道路などが破損したり、何らかの影響があることは間違いありません。災害対策は防災だけではなく、いかに被害を小さくするかという減災という意識も大切になってきます
冒頭にあったように木密地域などが多い都市の防災・減災を考えた場合、延焼による地域全体の被害の拡大を防ぐことは地域全体で取り組むべき課題でもあります。賃貸住宅は多くの入居者が住む、大きな建物です。不燃化は、地域の防災・減災としても、大変大きな意義があり、一つの社会貢献と言えるでしょう。

毎年9月の防災月間では、このコーナーで防災をテーマに情報提供しています。バックナンバーもぜひご覧ください。「耐震・防災対策」のタグで一覧表示できます。

賃貸住宅の防災対策は被災後の事業継続も考慮した耐火性能が求められる。また、都市の防災・減災の観点からも延焼をくい止めることができる建物の不燃化は、社会貢献としての意義も大きい。

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