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借地の相続を考える-後編

借地

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2013年12月17日

借地の相続を考える-後編

前号に続いて、借地の相続について考えます。相続する借地に、老朽化した自宅やアパートが建っている場合、建て替えをすることはできるのでしょうか? 注意点などを見ていきます。

借地での建て替えは可能か?

借地権とは、建物の所有を目的として、土地を借りる権利です。前回解説したとおり、借地と言っても地価の高い地域では資産価値が非常に高く、当然、相続の際には相続税が発生する場合もあります。
しかし、いくら価値が高くても有効に活用されていなければ、負の資産となりかねません。これは、借地であろうがなかろうが土地活用の基本です。

前回、借地を相続した場合の選択肢として、「第三者に売却する」「自宅に住み続ける」「自宅を賃貸する」といった選択肢を紹介しました。そして、もう一つが「建て替え」です。借地に老朽化した自宅やアパートが建っている場合は、建て替えを検討することが必要となってきます。

借地であっても建物の建て替えは不可能ではありません。しかし、いくつかの手順を踏むことになります。借地は、基本的に土地の賃貸借契約が結ばれていて、そこには建物の構造や用途(住宅、店舗、アパート)などが決められている場合がほとんどです。
特に構造については、旧借地借家法では、建物の構造を堅固建物(鉄筋コンクリートなど)と非堅固建物(木造など)の2種類に分類しています。そして、借地権の存続期間は堅固建物で最低30年、非堅固建物で20年と決まっています。新法(平成4年8月施行)では、この区別は廃止され一律30年となっていますが、ほとんどはまだ旧法のままでしょう。旧法の場合、この建物の構造が、建て替え時に大きな要素となります。

賃貸借契約は、今建っている建物を前提とした土地の賃貸借契約です。つまり、地主の承諾なく、勝手に建て替えることはできません。それに伴い、承諾料も必要になってきます。これは、建物の価値を高める大規模修繕やリノベーションといったことについても同様です。

借地であっても建物の建て替えは可能だが、地主の承諾と承諾料が必要。

建て替える場合の承諾料の目安は?

承諾料には譲渡承諾料もあり、こちらは借地権価格の10%程度と言われています。建て替えの場合は、条件変更があるかないかで大きく違ってきます。
例えば木造から木造への建て替えで、従前の建物と用途や規模がほぼ同じ場合は更地の価格の2〜5%と言われています。これは、先に解説した非堅固建物(木造)から非堅固建物(木造)への建て替えで借地条件の変更がない場合です。
しかし、例えば木造から鉄筋コンクリートへの建て替えの場合は、非堅固建物から堅固建物へと条件を変更することになります。この場合の承諾料は更地の価格の10%から15%と言われています。自宅から賃貸住宅への建て替えなども条件の変更にあたります。いずれにしても、地主としっかりと話し合う必要があります。

■承諾料の目安

譲渡承諾料

借地権価格の10%程度

建て替え(条件変更なし・用途や規模がほぼ同じ)の承諾料

更地の価格の2%〜5%

建て替え(条件変更あり・非堅固建物から堅固建物への建て替えなど)の承諾料

更地の価格の10%〜15%


軽量鉄骨造や重量鉄骨造は堅固建物か否かについては、区別が難しいのですが、軽量鉄骨造は非堅固建物、重量鉄骨造は堅固建物との判例があります。中には、軽量鉄骨造か重量鉄骨造かわからず建ててしまうことも少なくなく、契約書で非堅固建物での賃貸借契約を締結したのに、重量鉄骨造を建ててしまい契約解除になった例もあります。ここは、しっかりチェックすることが必要です。

建て替えの承諾料は、条件変更があるかどうかで変わる。条件変更を伴う場合は更地の価格の10%〜15%程度。

借地の建て替えの際、気をつけるポイントは?

借地の建て替えには承諾料の他にも、気をつける点があります。
まず、地主に建て替えの承諾に加え、融資承諾をもらうことです。金融機関は、建て替え承諾と融資承諾の両方を求めてきます。地主にとっては、建て替えの承諾をすることと融資の承諾をすることは別の話です。融資に関しては「建築した建物には○○銀行が第1順位の抵当権を設定する」といった、地主にとっては不利な条件がつきます。これを嫌がる地主も少なくありません。
ローンを利用する際には、事前に融資の承諾書も含めた承諾書に署名捺印してもらい、承諾料とともに引き換えることが大事なポイントになります。

ローンを利用する際に、もう一つ注意したい点があります。例えば、高齢の親が息子夫婦を呼び寄せ自宅を二世帯住宅に建て替えるケースがあります。融資を子どもが受ければ、建物は子ども名義になってしまいますが、これを勝手にやってしまうと、地主から契約解除を求められることもあるのです。借地契約から見ると、建物の登記は相続でない限り、親でなければなりません。これは無断で子どもに借地権を転貸したことになります。
この場合は名義変更料も合わせて支払い、地主の承諾を得る必要があります。名義変更料は、建て替え承諾料の3分の1程度です。

さらに建て替え後は、地代の値上げ分を計算しておく必要があります。特に、アパートの建て替えに関しては、建て替えた方が収益性はアップするはずですから、地代もあがるのは当然のことです。

いろいろと地主の承諾が必要となってきますが、これも日頃の地主との信頼関係が大切なのは言うまでもありません。お互いが納得のいく形で、しっかりと話し合いをすることが大きなポイントです。

建て替えの際には融資承諾書、子どもに名義を書き換えるなら名義変更料が必要。また、地代の値上げ分も考慮すること。

建て替えの承諾が得られない場合はどうするか?

話し合いがうまくまとまればよいのですが、お互いの折り合いが付かず、結局、建て替えの承諾が得られないということも少なくありません。
その場合の解決方法の一つが「借地非訟」です。これは、裁判所が地主に代わり、借地人の申し立てを受け承諾を与えることです。申し立てができるのは、次の4つです。
1.借地権条件変更の申し立て
2.増改築許可の申し立て
3.賃借権譲渡・転貸許可申し立て
4.競売に伴う土地賃借権譲渡許可の申し立て

借地非訟には時間とお金がかかります。費用は、申立手数料の他に、弁護士費用、鑑定書作成費用などです。当然、地主との関係も悪化するでしょうから、これは最後の手段と考えた方が賢明です。なるべく、この手前で合意に達する努力をするべきでしょう。

建て替えの承諾が得られない場合は、借地非訟という方法がある。しかし、時間、費用、そして地主との関係悪化も考慮した上で活用する。

借地権と底地の交換という方法もある

借地の敷地が広い場合は、借地権と底地を交換して、お互いが所有権付きの土地を持つという方法があります。交換面積については、地主と借地人が話し合いをして決めます。
所有権のある土地ならば、相続に関しても借地よりスムーズに承継できますし、自由に活用できます。地主・借地人ともに資金の負担が少なく、地主にも土地活用のチャンスができますので、お互いにメリットがあるでしょう。
また、この場合は土地の売買ではなく「固定資産の交換特例」が適用されますので、譲渡税の対象とはなりません。

借地と底地の交換

今回、解説した借地に関するさまざまな問題点は、バックナンバーでも詳しく解説しています。そちらも合わせてご覧ください。

敷地が広い場合は、底地と借地を交換する方法もある。借地人、地主双方にメリットがある。

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