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スムーズな相続のためには、節税よりも土地活用

相続

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2010年12月 1日

スムーズな相続のためには、節税よりも土地活用

景気回復の兆しが見えない今、地価の低迷は続いています。このことで相続税負担に苦しむ人も減ったといわれています。しかし、都市部に不動産を持つオーナーにとっては、相続問題は今もなお大きな悩みのタネ。加えて相続税を中心に資産課税強化が検討されている今、税金対策の必要性はますます高まっています。

今まで節税対策の目玉は、銀行からの借入れにより高額な資産を取得することでした。相続時の評価が購入金額より低ければ財産総額を減らすことになり、借入金の負債控除を受ければさらに課税財産を減らせました。けれどこの目玉策には一長一短があり、借入金が高額になればなるほど返済の負担も大きくなります。金利負担はもちろんのこと、取得した資産がうまく運用できなければ、元本の返済もままなりません。その後の返済が滞って破綻した資産家もいます。節税のために過大な借入れをし、事業収支が合わなくなるような資産活用は本末転倒です。

このような従来の相続税対策は、企業でいえばバランスシートの内容を悪くしようとするものです。財産の価値とは、換金できる金額と同じ。価値を減らすことは決して良いことではありません。不動産についていえば、収益を上げられるものは価値があり、収益が十分に上げられないものは価値がないのと同じです。相続税対策であっても不動産の価値をただ下げるだけでは意味がありません。最終回の今回は、相続対策の本来の意味をもう一度おさらいしてみましょう。

◆おさらい その1◆ 「借入金」-借金することは節税にはならない

まずは問題になりやすい借入金についてです。相続税対策といえば、銀行からの借入れがつきものと思い込んでいる人は今なお多くいます。中には高齢の資産家が借金してまで高額な買い物に走る話もあります。しかし、借金そのものはあくまでも資金繰りの手段。自己資本であれ他人資本であれ、お金そのものの相続税評価は変わりません。結局、手にした現金で何かを買わない限り、相続時点でそのまま残っていれば現金と負債が相殺されるだけで、何の効果も生みません。金利負担相当の現金の支出分だけの財産の目減りは期待できるでしょうが、効果は思っているほど大きくありません。

相続税対策となるのは、相続税評価が低く、時価(売却するときに売れる価格)が高いときの差が生じる場合に限られます。つまり現金で何を買えば、有利な差が生じるかということに尽きます。その意味からも、不動産への投資が主流になっているのです。不動産の相続税評価は、建物については固定資産税評価額、土地については路線価ということで、時価より著しく安いという意味でも効果的です。

なお、「評価が下がる」ことと、「実際に価値が下がる」ことの意味の違いにも注意すべきです。評価が低くて実際の価値も低い財産は持っている意味はありません。ただし不動産については、相続時の評価が低くても、実際の価値がどれだけあるのかを正確に把握することは難しいのです。このコラムで何度も触れてきたように、不動産の価値を見極めるためにも、専門的な技術を持つ不動産鑑定士などプロの眼で客観的に判断することが肝要です。

◆おさらい その2◆ 「土地活用」-土地は活用してこそ意味がある

土地活用とは不動産に価値をもたらすこと。遊休土地や低利用地を活用して、高収益の賃貸不動産に変えることができれば、時価を高めることにつながります。相続税の評価を下げるのは入り口であって、確実に収益の上がる土地活用を実現することこそが最終目的です。不動産の価値を高めることで、相続時の財産評価としてはむしろ対策前より高くなることもあります。不整形な土地や山林、市街地農地などは、道路や設備の基盤整備が進めば大きく価値が変わります。土地活用のための開発に投資すれば、当然、財産価値の上昇も期待できます。

まるで相続税対策に逆行するかのようですが、土地活用にはもう一つ大事な要素があることを忘れてはいけません。それは不動産の換金性の向上です。思い出してください。相続対策の王道は「一に納税、二に分割、三四が無くて五に節税」です。

不動産の利用価値が高まれば、自ずと換金性も高まり納税資金となります。たとえ評価が低くても、使えない土地を多く抱えているよりは、評価が高くなっても使える、つまり売れる土地、または収益の上がる土地を持っている方が、納税対策としては有利です。物納が困難になっている今、さらにその意味は増します。

不動産の活用を進めて収益が十分に上がる状態になり、換金性も確保されていれば、いざ相続が発生しても納税で困ることはありません。その後は不動産事業として収支が合っているか、つまり借入金が適正な水準にとどまっているかのチェックが必要になります。借入れをすると抵当権の設定などで、不動産の換金性を大きく制約してしまうことも忘れてはいけません。土地活用のためには資金調達の必要から銀行借入れは避けられないことが多いのですが、そのマイナス面やリスクも意識することが大切です。

◆おさらい その3◆ 「資産」-「土地持ち」ではなく「資産家」になる

世の中に地主と呼ばれる「土地持ち」の人々はたくさんいます。しかしその中で資産家と呼べる人は残念ながら多くはいません。相続や代替わりのたびに財産処分に追われ、生活レベルを落とさざるを得ないような「土地持ち」は、決して資産家とは呼べません。元手を増やす利殖となるものを「資産」と呼び、それを安定的に多く持っているからこそ資産家と呼べるのです。ある程度の財産を持っていれば、資産家を目指すべきであり、新しい相続対策とはそのための手段として考えるべきでしょう。

不動産についていえば、土地活用での問題点や時価など財産の現状をしっかり把握していることが、資産家になるための第一歩。不動産については不動産鑑定士なども加えた専門的な検討によって資産評価をすべきです。その上で維持すべきもの、収益を上げるべきもの、処分すべきものの区別を明確にします。処分については、古くからの地主であれば様々な軋轢が生じることも想定されます。ですから決定にあたっては、当事者が判断基準を確立していなければなりません。判断するにあたっては客観的な価値を知ることが第一歩でしょう。それをもとに維持か処分かを決めなければなりませんが、場合によっては家族間での話し合いも必要でしょう。

◆おさらい その4◆ 「賃貸経営」-安定した賃貸経営のために

賃貸不動産については、長期安定経営の実現こそが相続対策の最終目標。目先の不動産収入の多寡に惑わされず、できるだけ長く、いかに安定的に賃貸経営を推移させられるかがポイントです。そのためには、市場動向、対象テナントの変化、賃貸借契約管理など、賃貸経営に伴うリスクをいかにコントロールできるかが重要です。しかし、会社経営に比べれば、賃貸経営はそんなに難しいことではありません。当初の建設段階でほとんどの投資総額と借入金の返済負担が定まるため、経常的な支出の変化はわずかです。賃料収入も、他のサービス価格に比べて変動率は低く、大きなインフレやデフレにならない限り、賃料改定の面倒もあまり感じることはないでしょう。当初の資金繰りで不動産評価に対して借入れのバランスを崩さないこと、建物の維持管理、契約管理などの不備でテナントの質を落とさないように気を付けることぐらいです。つまり賃貸事業については、経営者の心構えさえあれば、十分に対応できます。

このシリーズでは、「デフレ時代に有効な新しい相続対策」として様々なケーススタディも紹介しながら、これからの時代のスムーズな相続について考えてきました。もはや相続の王道は節税対策だけでなく、いかに納税できるかという点。かつてのような物納ができる時代ではなくなったこと、土地の価値を客観的に知ることの重要性、スムーズな事業継承、さらには遺書の問題にまで踏み込んで新しい視点から相続に関する情報をお伝えしてきました。好景気に沸いた時代も、現在のようなデフレの時代も、子孫にスムーズに財産を相続したいと願うオーナーの気持ちに変わりはありません。子孫の繁栄のためにも土地を有効に活用したいものです。

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株式会社 旭リサーチセンター 住宅・不動産企画室室長
川口 満(かわぐち みつる)
旭化成のシンクタンク「旭リサーチセンター」で住宅・不動産に関わる専門的なアドバイスを提供している。著書「サラリーマン地主のための戦略的相続対策」(明日香出版社)。ファイナンシャルプランナー。

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