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デフレ時代に有効な新しい相続対策とは?

相続

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2010年2月 1日

デフレ時代に有効な新しい相続対策とは?

相続対策といえば、財産を守るものと考えている方がほとんどでしょう。先祖伝来の土地を自分の代で手放すことはできないと、心に決めている人も多いと思います。日本の景気が良く、経済成長率も著しい伸びを示して地価も上昇を続けた時代は、土地を保有しているだけでも相続税対策になっていました。

しかし時代は変わりました。土地は利用価値の高いものを除いて、地価の下落、デフレ傾向が顕著です。土地を保有するだけでは価値が生まれず、土地は利用してこそ価値が生まれる時代になったのです。当然ながら相続対策も以前とは変わってくるべきです。今までの常識からの脱却が求められる、「デフレ時代の賢い相続対策」とはどんなものか、じっくり考えていきましょう。

間違いだらけの相続対策

従来の相続対策を一言で表すなら、「いかに税金を抑えるか」がメインテーマでした。相続税として納める税金をできるだけ少なくするために、今までの常識では「資産の圧縮」「債務をつくる」「法定相続人の数を増やす」などの対策が主でした。気を付けなければいけないのは、相続税評価を下げるために財産そのものを目減りさせてしまうこと。これは「資産の圧縮」とは言えないのです。

デフレ時代の今であればなおさら、貴重な財産を減らすことはなるべく避けるべきでしょう。仮に節税目的のために、遊休地に借入金でアパートを建てたとします。しかし、安易な計画であったため、アパートの空室が多くて賃料収入が上がらなければ、収益性の観点からこの土地の時価は下がります。しかも、建物が建っているため、土地の売却は簡単にはできません。建築することで資産を減らしてしまい、そのことで肝心の税金を納められない事態になるとすれば本末転倒です。

スムーズな相続対策を行う上で、しっかりと頭に入れておきたい定石があります。それは「一に納税、二に分割、三四が無くて五に節税」。

何といっても、相続税がかかるときに納めるべきお金が手元になければ話になりません。相続税を減らすために多額の借金をして不動産を取得するのは、あくまでも一昔前の古い対策です。ここに執着していては、貴重な財産を守ることはできません。借入は、あくまでも事業のための資金繰りを考えて行うもので、節税を第一の目的にすべきではないのです。そもそも債務を引き継ぐ相続人のことを考えているでしょうか。相続税が安くなっても債務の返済に苦しむのでは意味がありません。デフレ時代に、債務を抱えているのは通常以上に大変だということを知る必要があります。相続が成功するか否かのポイントは、実は税金を抑えることや負債を増やすことよりも、貴重な資産をどれだけスムーズに次の家族へつないでいくかにあるのです。

変わりゆく家族のかたち。相続の現実を知る

相続対策における発想の転換が必要なのは、デフレ時代という要因以外に、もう一つ大きな理由があります。それは少子化・核家族化などの家族形態そのものの変容です。かつての日本の「家制度」では、家の財産は「家産」として代々、家の代表者である家長が受け継いでいくものでした。家長となる長男は財産を所有したというよりは、家産を守る責任者でした。

しかし戦後に新しい民法の時代となると、家長制度はなくなり兄弟姉妹は均等に所有権を主張し、財産を分ける時代になりました。昔ならば、「たわけ者」の語源とされる「田分け」と言って愚かしいこととされたものです。それが現代の相続対策では、複数の相続人(兄弟姉妹)の遺産分割でもめないようにすることが優先されています。つまり相続人に苦労をさせたくないという親の思いやりが基本にあるわけです。それをもめたくないからといって、取りあえず相続人全員の共有にするケースがみられますが、これは問題解決の先送りになるばかりです。共有にすると不動産の場合、その利用・処分について共有者の了解が必要、いつでも共有物の分割が請求できる(つまりは売却して換金するしかない)などの問題をはらんでいます。

一方で、少子化により、一人っ子のように分割でもめないケースも増えています。しかし当然のことながら相続税の負担が大きくなるのです。仮に遺産総額が2億円の場合、3人の子どもなら相続税負担は総額で1,800万円。しかし、1人の子どもなら3,900万円もの負担がかかります。また、こうした家族の場合、親の介護の問題が生じると深刻な事態になりがちです。一人っ子同士の結婚などでは、お互いの老いた親の生活の安定や、介護費・医療費の用立てなど、自分たちがリタイアする年齢を過ぎても抱えなければならない問題は尽きません。さらに、子どもがいない夫婦も増えており、財産の引き継ぎに頭を痛めることになります。少なくとも残される配偶者の生活に不安が無いようにしなければなりません。遺言を作成するなど対処をしておかなければ、財産の承継で親兄弟の思わぬ干渉を受けることもあるのです。

変わりゆく家族のかたちは相続にも大きく影響を与えます。「おひとりさま」と呼ばれる結婚しない男女が増えることは、財産を承継することに関心が無い層が増えることを意味しています。実際に都会では単身世帯が急増し、国立社会保障・人口問題研究所の予測では、今後2030年までには「単独世帯」が現在の1,446万世帯から1,824万世帯へ増加するとみています。これらの人々にとって、財産、特に不動産を保有することの意味は、自分たちの収入の安定、いざというときの換金性が中心になります。老後を豊かに安心して暮らせることが大きな関心事で、これは財産の運用に関する問題と言ってよいでしょう。

自分が死んだ後の承継の心配をするよりは、生前の財産、不動産の運用、管理に注力するべきでしょう。

デフレ時代のニッポン、相続も土地所有も今が「転換期」

第二次平成不況と呼ばれる今、デフレは第一次不況時よりも深刻だという説があります。今まで土地の価値は経済成長とともに上昇してきました。経済成長が低迷している間は、地価の上昇がみられないのも仕方ないかもしれません。2009年11月の失業率は5.2%と景気回復の兆しはなかなかみえず、同年3月に発表された公示地価は97%の地点で下落しています。少し前までミニバブルと騒がれた、東京都心のある商業地では前年が20.4%の大幅な上昇だったのに対し、翌年は8.8%も下落。結局、1990年にバブルがはじけてから20年経とうとしていますが、総じてみれば地価の低迷期なのです。このように長い資産デフレは、日本経済がかつて経験したことのないものです。

かつての日本には、不動産の価格は必ず値上がりするという「土地神話」があり、この神話が生き続ける限り、不況時でも土地を保有しておくこと自体に価値がありました。しかし今後の経済情勢を冷静に予測しても、大きな地価の上昇はもう期待できません。つまり、ただ土地を所有しておくだけでは地価が上がることはなくなったのです。

相続対策を考えるとき、今は相続財産の中の土地の価値を冷静に見直す時期ではないでしょうか。土地を所有しているだけではただの地主に過ぎません。先見の明を持って土地を利用し、収益を上げることができれば資産家といえます。家族のあり方や不動産の価値が大きく変容している今だからこそ、賢明で円満な資産承継のために、土地の活用(売却を含む)が大きな意味を持ちます。財産を引き継ぐにあたって、税金の多寡を心配するよりは、収益を生む価値ある財産なのかどうか、維持管理をする上で苦労しない不動産なのかどうかが問題なのです。次回からは、より具体的な事例を検証しながら、「デフレ時代の新相続対策」を考えていきます。

株式会社 旭リサーチセンター 住宅・不動産企画室室長
川口 満(かわぐち みつる)
旭化成のシンクタンク「旭リサーチセンター」で住宅・不動産に関わる専門的なアドバイスを提供している。著書「サラリーマン地主のための戦略的相続対策」(明日香出版社)。ファイナンシャルプランナー。

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