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相続税対策の第一歩は、土地の価値を見極めること

相続

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2010年4月 1日

相続税対策の第一歩は、土地の価値を見極めること

身近な財産である土地の価格を知ることは案外難しいことです。相続税での土地の評価は、実務的に地価公示価格を目安にし、相続税評価のもととなる路線価が決められています。しかし、実際の相続時の評価で考えると当然「時価」、つまり実際に売れる価格となってきます。

しかし問題なのが、この「相続税評価」と「時価」との乖離。財産分けはあくまでも時価を基準に考えたいのですが、土地の相続税評価がそれとかけ離れているのです。小規模宅地のような特例により相続税評価が大きく下げられた土地を引き継ぐ相続人は、それだけ相続税の負担も少なくなるので、他の相続人からすれば不公平感もあります。そもそも相続税評価額を下げて相続税を節税したとしても、その後の遺産分割でもめてしまっては意味がありません。そのために相続対策として事前に考えるべきは資産の現状を把握することです。特に土地については、その利用価値を見極めることが大切なのです。

◆事例◆ 相続のために菜園を残すべきか、土地活用すべきか?

東京近郊で菜園を営むBさん。Bさんの菜園はかなりの広さがありますが、以前のように農業で生計を立てることはなくなりました。しかし土に触れることが生きがいのBさんは、健康な限り菜園を続けたいと考えています。菜園の周辺は宅地化が進み、Bさんが心配しているのが相続税。すでに宅地並みの評価になることは承知しており、子どもたちのために相続税対策を考えています。周りの人からはアパート建設を勧められるものの、高齢での多額の借金には抵抗があります。また、楽しみで続けている農地を削って建物を建てるのも気が進みません。緑の菜園をなくすことへの周囲からの目も気になります。

そもそもBさんは、すでに宅地並みとなっている菜園の相続税評価がどれだけ大きくなるかよく分かっていません。予想以上に評価が高いと、納税資金を準備できないのではと不安に思っています。また土地を活用することで、いざというときに土地を売却できない心配もあります。いったい誰に相談したらよいのでしょうか?

◆課題◆ 使えそうで使えない「広大地評価の特例」

今回の事例を考える上で、ぜひ知っておきたい相続税評価の特例があります。それは「広大地評価」。この言葉を知っておくとBさんのようなケースでは、現状を知る糸口が見えてきます。

(1)「広大地」とは

広大地とは、その地域における標準的な宅地の地積に比べて、著しく地積が広大な宅地で、開発行為をするとした場合に公共公益的施設用地の負担が必要と認められるものを言います。ただし、大規模工場用地に該当するもの及び中高層の集合住宅等の敷地用地に適しているものは除きます。

(2)広大地に該当するもの・しないものの条件
1) 広大地に該当する条件の例示

普通住宅地区等に所在する土地で、各自治体が定める開発許可を要する面積基準以上のものです。
(イ) 市街化区域 三大都市圏 : 500平米、三大都市圏以外の地域: 1,000平米
(ロ) 用途地域が定められていない非線引き都市計画区域 : 3,000平米

2) 広大地に該当しない条件の例示

(イ) 既に開発を終了しているマンション・ビル等の敷地用地
(ロ) 現に宅地として有効利用されている建築物等の敷地
(例:大規模店舗やファミリーレストラン)
(ハ) 原則として容積率300%以上の地域に所在する土地
(ニ) 公共公益的施設用地の負担がほとんど生じないと認められる土地

(3)「広大地評価の改正」

平成16年の土地評価の改正によって、広大地の補正率が変わり、評価額も従来に比べてかなり安くなっています。広大地の価格は、以下のように計算されます。

・広大地の価額=広大地の面する路線価×広大地補正率×地積
・広大地補正率=0.6-0.05× 地積 / 1,000平米

Bさんの持つ菜園のように市街地農地などが宅地化された場合、実際にその土地を利用するには、建築のための道路が必要となります。また土盛りや整地を行うには、都市計画法に基づく開発行為の申請も必要です。ここまで大規模な話になってしまうと、土地所有者のBさん個人で対応することは困難です。加えて、工事費を捻出するために宅地を分譲しようと考えた場合、宅地建物取引業の免許を持つ業者でなければ宅地を売ることはできません。このような手間や面倒を考えると、結局、開発業者に依頼することになってしまいます。

結論から言うと、Bさんの菜園を利用可能な宅地にするには、利用面積を減らし、かなりのコストがかかってしまいます。これらのコストや手間などを、相続税評価の上に反映しようとするのが上記の特例なのです。

広大地評価は土地が大きいほど減額の割合が大きくなり、大きな菜園を持っているBさんには有利になります。ただし大きな注意点があります。土地の評価も含め、広大地評価について細かな点まで規定を正しく理解し、活用できる専門家はまだ多くはありません。「相続」と聞くとつい税理士ばかりを当てにしがちですが、「時価」「宅地化」など土地に関する問題については、本来「土地を見るプロ」に相談するべきです。

◆対策◆ 不動産のプロ「不動産鑑定士」を利用する方法

広大地評価の特例は効果が大きいものですが、適用できる場合は限られています。また広大地評価の特例によって相続税の負担予想額を把握し、その納税対策ができたとしても、遺産分割がスムーズにいくかどうかは別の問題です。評価が低いからといって現状の菜園のままで引き継がせることが相続人の負担にならないかどうかは難しい問題です。将来にわたっての土地の利用に支障がない状態で財産を引き継ぐことが、相続人にとっては、一番安心できることではないでしょうか。

その意味では「相続税対策ありきではなく、土地利用ありき」でなければなりません。いかに特例によって評価が下がろうとも、土地利用の制約となることは避けるべきです。こうした考えに従えば土地利用について、その可能性を含めて正しい客観的な現状の把握が必要です。不動産を評価することはとても難しい作業です。そこで頼りたいのが「不動産鑑定士」です。税理士はあくまでも税金のプロ。不動産のプロは不動産鑑定士です。土地利用を踏まえた不動産の時価をつかんでおくためにも、ある程度規模の大きい土地を持っているなら不動産鑑定士の力を借りることも必要ではないでしょうか。

また、不動産のプロのアドバイスがあれば、「維持すべき土地」「利用すべき土地」「換金すべき土地」といった、後悔しない相続のための基本的な考えとなる、3つの土地の分類も容易です。土地を活かし、収益を上げ、いつでも売却できる土地があるのであれば、相続税は怖いものではありません。

株式会社 旭リサーチセンター 住宅・不動産企画室室長
川口 満(かわぐち みつる)
旭化成のシンクタンク「旭リサーチセンター」で住宅・不動産に関わる専門的なアドバイスを提供している。著書「サラリーマン地主のための戦略的相続対策」(明日香出版社)。ファイナンシャルプランナー。

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