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迫られる実家の土地活用、「借地」はどう相続したらよいか?

相続

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2010年5月 1日

迫られる実家の土地活用、「借地」はどう相続したらよいか?

ますます加速する日本の少子高齢化。少子高齢化が進むことは経済成長の伸び悩みにつながるだけでなく、土地利用そのものにも大きな影響を与えます。国立社会保障・人口問題研究所の調べでは、2005年の単独世帯は1,446万世帯ですが、2030年には1,824万世帯にのぼると予測されています。さらに世帯主が65歳以上の世帯は2005年の1,355万世帯から、2030年には1,903万世帯に達するとみられています。

このように、核家族によって分散された世帯が高齢化することで生じる問題の一つに不動産の承継があります。親の居宅を引き継ぐとなれば、相続をめぐる税金の心配もありますが、より生活に密着した心配事もあります。例えば親の介護はどうするのか、跡取りは誰になるのか、そして財産の分割がスムーズに進むのか。このような生活に直結してくる問題は、日ごろから家族間でコミュニケーションが図られていれば、合意しやすいはずです。ところが不動産の承継ではそう簡単には運ばない事情もあるのです。とりわけ引き継ぐ土地が「借地」の場合は、前もって解決しておくべき問題がたくさんあります。

◆事例◆ 亡き父が借りていた借地。地主に返すべきか? 建て替えて活用すべきか?

サラリーマンのCさんは、妻の父親名義の土地で戸建て住まい。そんなCさんに離れて暮らす実の父親の急な訃報が届きました。実家の母親のもとに兄弟が集まり、親族への連絡、葬儀、菩提寺への手配など慌ただしい日々が続きます。そうこうするうちに、実家の後始末はCさんが取り仕切ることになりました。しかし、両親が暮らしていた土地は「借地」だったのです。母親は郊外に住む妹と暮らすことを選び、実家に住む家族はいなくなってしまいました。

そこでCさんは地主との話し合いを始めようと考えていますが、ただ地主に土地を返すのも知恵がないと思っています。地代を払い続けているので、できればそれなりに活用して収益を得たいと考えています。ただし、両親が住んでいた家はかなり古く、人に貸せる状態ではありません。建て替えをする場合には「承諾料」もかかります。この借地をどうするのがよいのでしょうか?

◆課題◆ 引き継いだ借地を活用する方法

借地権は相続財産の評価となります。大きな借地を持っているなら、当然、所有地と同様に相続税の心配もしなければなりません。もちろん、親から引き継いだ借地を活用する方法はあります。ただし注意点がいくつかあります。建物が古いからといって、さっさと取り壊してしまうのは本末転倒。借地権は建物の所有を目的とする土地の利用権なので、建物を壊してしまっては借地権も消滅してしまいます。それぞれのケースに応じて考えてみましょう。

(1)残った建物をそのまま利用する場合

借地契約の名義変更が必要です。親の借地を引き継ぐので、「承諾料」がかからないケースが多いのは魅力です。ちなみに第三者に借地を譲る場合などの、承諾料は「名義書換料」という呼び方もされています。この場合の目安は借地権価格の約10%といわれていますが、これも地主や土地の状況によって様々です。

(2)建物を建て替える場合

借地にある古い家を建て替えたいと考える人は多いでしょう。借地は建物の構造によって契約期間が変わります。仮に耐久性の高い家に建て替えるのであれば、期間が20年から30年となり、その分、高額の承諾料が要求されることになります。そのような場合、借地の一部を返却する、つまり地主に買い取ってもらうことで、承諾料に補塡できる場合もあります。

(3)借地権を売却する場合(地主との共同売却を含む)

自分たちがその土地に住む予定もなければ、貸す予定もないケースなどでは、いっそのこと売却すれば面倒はありません。まず不動産業者を介して、自ら借地購入者を探します。そして借地購入者が見つかれば、地主に名義の書き換えを依頼します。このような場合、当然、承諾料は高額になります。地主側には借地権の売却にあたって優先的に買い取りを申し出る「先買い権」があります。地主にも売りたい気持ちがあれば、共同で売却することで所有地と同等の条件で売れることになります。

(4)底地を買い取り、所有権にする場合

借地を利用する場合には、必ず地主との話し合いが必要になりますが、このような面倒な手続きを避けたいならば、底地(借地権付の土地の所有権)を買い、自らの所有権にする方法があります。地主としても代替わりを前に、底地を整理したいと考えている人は少なくありません。買い取り価格は、土地の時価から借地権価格を差し引いた金額が目安となり、買う側から見ればお得感があるかもしれません。なお、すでに地主が底地を物納している場合は、財務局の意向を受けた不動産業者などから買い取りの打診が来るはずです。

(5)土地の交換で所有権にする場合

地主の底地を借地と一定の割合で交換し、お互いが所有権を持つ方法です。この場合、知っておきたいポイントがあります。交換にあたって一定の条件を満たせば、譲渡はなかったものとして所得税がかからない特例があります。固定資産の交換の特例と言います。交換の割合は相続税評価の借地権割合に縛られるものではありませんが、交換を強く実現したいと望む方が、交渉の過程で、ある程度相手の希望をのむスタンスでなければ、まとまりにくいかもしれません。

「借地」についての詳しい記事はこちらをご覧ください。

株式会社 旭リサーチセンター 住宅・不動産企画室室長
川口 満(かわぐち みつる)
旭化成のシンクタンク「旭リサーチセンター」で住宅・不動産に関わる専門的なアドバイスを提供している。著書「サラリーマン地主のための戦略的相続対策」(明日香出版社)。ファイナンシャルプランナー。

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