HOME > アパート経営・土地活用の知恵袋 > マンスリーレポート > 相続 > 小規模宅地の特例が改正! 軽減対象が同居親族に限定される
アパート経営・土地活用の知恵袋
マンスリーレポート 最新情報をレポートします

小規模宅地の特例が改正! 軽減対象が同居親族に限定される

相続

タグ :

2010年9月 1日

小規模宅地の特例が改正! 軽減対象が同居親族に限定される

今まで地価の高い土地に住む方にとって相続税の負担で助け船となっていた「小規模宅地の評価減特例」。平成22年度この評価減特例が改正されました。小規模宅地の評価減特例とは、条件を満たす土地を引き継ぐ場合に、小規模宅地の評価を80%まで減額でき(特定居住用宅地では240平方メートルまで)、とても効果の大きい特例でした。ところが改正により、被相続人の居住用宅地を引き継いだ相続人であっても、実際に被相続人と同居していた上でその宅地に申告期限まで居住していなければいけません。この改正によって思わぬ増税が予想され、あわてて親との同居を考える人が増えています。しかし親側から見れば「形ばかりの同居を急に言われても」との戸惑いもあるはず。また資産継承については、税の軽減も大切ですが、遺産分割がいかに早くまとまるかの方がより大切です。 

では、どのような遺産分割がスムーズなのかを考えてみましょう。

◆事例◆  気が重くなる相続。どうすればスムーズに遺産分割できるの?

山の手の一軒家に一人暮らしをしているGさん。ご主人を亡くしてからかなりの時間が経ちましたが、マンションからの不動産収入もあり、生活には困っていません。子どもたちも皆自立。近くに住む母親の介護に尽力していましたが、昨年、母親をみとりました。亡き母の相続申告は、税理士に任せていたため事務的な煩わしさはありませんでしたが、困ったのは兄弟たちとの遺産分割。母親の介護をしていたのはGさんですが、ろくに顔を見せなかった兄弟たちが法定相続分を要求してきました。もめることは避けたかったので、生前にもらっていた自宅の土地建物と賃貸マンションはGさんが確保し、残りをほとんど兄弟に譲ることにしました。

そんな嫌な思いをしたからこそ、Gさんは自分たちの子どもには遺産分割をめぐっての争いの種を残したくありません。子どもは、長女・長男・次男の3人。最近、結婚して間もない長男がGさんとの同居を望み、自宅を建て替えようと言い始めました。敷地は100坪近くあり、二世帯住宅も十分建てられます。長男との同居はうれしい反面、長男の嫁とうまくやっていけるのか不安もあります。気ままな一人暮らしを楽しんでいたGさんには正直、孫の世話を頼まれるのもおっくう。さらに気がかりなのは、長女や次男への配慮をどうするか。長男だけに財産を譲るつもりはないことの説明など、考えれば考えるほど公平な遺産分割は難しく、気が重くなる毎日です。

◆課題◆ 「代償分割」でスムーズ&スピーディーな遺産分割に

遺産分割について親が頭を悩ますのは、子どもたちがもめないようにとの思いやりからです。とはいえ、もともとの遺産分割とは、親が亡くなってから子 どもたちが話し合って決めるもの。子どもの中には税金の負担や家業を継ぐのは嫌だと考える者も当然おり、相続放棄する可能性もあります。

一方、親の気持ちとしては自分たちが守り、築いてきた財産を、子どもたちにしっかり引き継いでほしい思いがあります。そのため思いやりの域を超え て、自分たちの死後の財産の差配まで指図したくなるのですが、これは行き過ぎといえるかもしれません。それぞれの子どもたちの相続についての気持ちや考え 方は違います。親の考えを無理に押し付けても仕方ありません。

では、どうすれば遺産分割で相続人同士がもめなくても済むのでしょうか? それには親も子も「割り切り」が必要です。特に不動産相続の場合、完全に 公平な分割手段はありません。共有にして形ばかりの公平を保っても、かえって利用や処分に制限が生じます。これまでもお話ししてきたように、引き継ぐべき 財産とそうでない財産を分けて考えるべきです。そして分けることを優先するなら、「財産を現金化すること」。これが一番簡単な分割方法です。これが「割り 切り」ということです。ある程度の割り切りを持って遺産分割にのぞむなら、「代償分割」が効果的です。

●代償分割とは

特定の相続人(例:長男)が特定の財産(例:親の自宅)を相続する代わりに、他の相続人が金銭などを代償として受け取ります。長男が親の自宅(1億円相当)を相続し、その代わりに長男が次男に代償金(2000万円)を支払います。この場合、長男の代償金は相続財産に加わりますが、これは被相続人への貸付と同じで、同額の債務が生じますので、相続財産が増えるわけではありません。したがって全体の相続税額も変わりません。代償金を受け取った次男は、取得財産が増えるだけ相続税の負担が増しますが、長男は債務を引き継げば負債控除で取得財産が減るだけ相続税負担が減ります。この債務は長男の持っている債権で相殺されます。

このケースで注目したいのは、分割が難しい不動産について、共有を避けられることです。さらに長男が親の自宅を取得することへの対価として、次男に代償金が支払われたわけですが、これは譲渡にならず、譲渡所得が発生しません。なにより対価を「任意に」決めることができるのです。こうした分割方法があることを、知っている場合と知らない場合では大きな違いがあります。

◆対策◆ 相続財産譲渡における取得費の特例も

この代償分割を利用することで円滑に遺産分割できればよいのですが、全てがこの方法で収まるわけではありません。相続人の話し合いがまとまらない場合には、最後の手段として家庭裁判所に調停を申し出ることになります。しかし、家裁に持ち込んだところで、多くの場合、分けられない不動産については換金し、結局、金額の配分で決着を付けるしかありません。遺産分割の「最後の出口」は、売却による換金だとあらためて知ることになるだけです。

結局換金するしかないのであれば、それを想定した遺産分割を早いうちに済まておくに越したことはありません。相続税の申告時までに遺産分割をまとめなければ、相続税軽減の各種特例は使えなくなってしまうからです。なお遺産分割後の売却を考える際、相続財産を譲渡した場合の譲渡所得税について、次の軽減特例があります。

●相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

相続により取得した土地、建物、株式などを、一定期間内(相続税申告期限後3年以内)に譲渡した場合には、相続税額のうち一定金額を譲渡資産の取得費に加算できます。譲渡する人は相続や遺贈により財産を取得した者であること、相続税が課税されていることが条件となります。土地を売った場合は、かかった相続税額のうち、その人が相続や遺贈で取得した全ての土地に対応する額が取得費に加算でき、それだけ譲渡所得を減らすことができます。

遺産分割をスムーズに進めるには、親なら財産の現状を把握し、保有すべきものと処分すべきものを仕分けしておくことが大切。子どもの立場なら、親の自宅へ同居すべきかどうかを含め、不動産の利用あるいは売却について、相続人同士での話し合いが必要になるでしょう。税金の負担を減らすことも検討しなければなりませんが、その前に不動産の現状、市場価値などついてしっかりした情報を得た上で、誰がどの不動産を引き継ぐのかなどの基本方針を立てるべきです。相続人が納得できる利用法あるいは売却方針が決まることが、何よりも重要といえます。

株式会社 旭リサーチセンター 住宅・不動産企画室室長
川口 満(かわぐち みつる)
旭化成のシンクタンク「旭リサーチセンター」で住宅・不動産に関わる専門的なアドバイスを提供している。著書「サラリーマン地主のための戦略的相続対策」(明日香出版社)。ファイナンシャルプランナー。

土地活用・アパート経営の資料プレゼント

セミナー・イベント情報を見る

窓口・WEB・電話で相談する

▲ページトップへ

マンスリーレポートトップへ