賃貸市場の繁忙期でもある春(1月〜3月)の最新家賃動向(首都圏)が、不動産情報サービスのアットホームより発表されました。都市部では地価の上昇傾向が続いていますが、家賃相場の方は、どんな動きを見せているのでしょうか?
まず、2015年一年間の賃貸市場を見てみます。
昨年の春先は、成約状況も活況を呈していて、賃料も新築マンションの成約平均家賃が13カ月も連続して上昇しました。ただ、必ずしも上昇トレンドに入ったとは言えず、エリアによって差もありました (詳細は昨年のレポート参照)。
【成約数】
首都圏全体の成約数は上下を繰り返し、年間では前年比0.3%の増加でした。最も上昇したのは埼玉県で8.1%です。一方、唯一下落したのが神奈川県で、▲6.5%と地域差が出ました。
成約数のおよそ45%を占める東京23区は2.1%の上昇となりましたが、回復が鈍く、賃料が上昇していた新築マンションに限ると、その影響で都下、神奈川、千葉で成約数を大きく減らし、首都圏全体でも1.2%の上昇に留まっています。
【賃料】
1戸あたりの平均成約賃料は、わずかですがマンション・アパートともに3年連続の上昇となりました。新築、中古別に見るとマンションは新築が3年連続で上昇、中古も再び上昇しました。アパートは新築が2年連続の下落でしたが、中古は11年ぶりに上昇しています。
東京23区では、マンション・アパート、新築・中古を問わず上昇しており、都心志向の表れと見られています。
首都圏の2015年の居住用賃貸物件成約数は前年比で微増。年間平均成約賃料は、首都圏全体で3年連続の増加。東京23区はマンション・アパート、新築・中古を問わず上昇し、都心の人気ぶりを反映している。
次に今春、2016年1月〜3月の動向を見てみます。
最近では、景気動向に陰りが見え始めたとの報道もありますが、今年の公示地価は三大都市圏においては上昇トレンドが衰えませんでした(マンスリーレポート「全用途で8年ぶりの上昇!『平成28年公示地価』」参照)。
しかし、賃貸市場にはその影響は見られません。首都圏1月の成約数は前年同月比▲1.9%、2月の前年同月比はわずかに上昇したものの、3月で同▲7.8%となりました。新築物件は堅調だったものの、中古物件がマンション・アパートともに減少したとのことです。
一方、エリア別に見ると、千葉県がマンション・アパート、新築・中古を問わず増加し4カ月連続のプラスとなりました。昨年、堅調だった東京23区も2月はプラスでしたが、1月、3月はマイナスです。
成約数は、市場の活況を示すデータなだけに、ここが回復しないと賃料も上がっていきません。景気の先行き不透明感がここにも表れているのかもしれません。
2015年を通じて堅調だった賃貸市場は、今春に入って成約数が伸び悩んでいる。景気減速の表れと言えるかもしれない。
成約数の伸び悩みに対する賃料への影響が懸念されましたが、エリアやマンション・アパートの違いで、賃料はケースバイケースでした。今春の成約賃料動向を見ていきます。
【マンション】
マンションは、1戸あたり成約賃料の首都圏平均が3月の前年同月比▲0.8%、6カ月連続のマイナスです。エリア別に見ると、賃料水準が高い東京23区では、成約数が減少した影響でマンション1戸あたりの平均賃料は下落傾向にあります。
一方、マンションの東京都下を見ると、2月は3.3%、3月も1.6%上昇するなど、今春は上昇傾向にあります。公示地価とは反対の傾向にも見えますが、多摩エリアなども開発が進み、人気のエリアが広がっているのが要因かもしれません。
【アパート】
アパートの1戸あたりの成約賃料は前年同月比で0.2%増加し、こちらは4カ月連続の増加となりました。2月、3月はどのエリアもおおむね上昇しています。成約数はほとんど伸びていなかったのですが、賃料は堅調に推移しました。
今、居住地としての東京都区部で問題となっているのが、新築分譲マンション価格の高騰です。不動産経済研究所調べによると2016年3月の東京都区部の平均価格は6,834万円です。2014年の年間平均は5,994万円ですから、840万円ものアップです。簡単に手が出せる価格ではなくなってきました。ファミリー物件に関しては、分譲が買いづらくなった分、賃貸を選択する層も増えているかもしれません。2015年は、賃貸物件の賃料もそれにつられて上昇したような印象もあります。国土交通省からも、中古の賃貸マンション指数が発表されていますが、それを見ると今年3月は首都圏でも東京区部でも前月比でプラスとなっています。
都市部の地価上昇は、しばらく続くと見られています。また、分譲マンションの価格もまだ上昇を続けていきそうです。都市部に関していうと、不動産市場は活況を呈しているようですが、賃貸市場にとっては、景気動向が気になるところです。先頃、2016年3月期の企業決算が発表のピークを迎えましたが、今期の東証1部上場企業の売上高と営業利益の合計は、いずれも過去最高を更新する見込みとのことです。しかし、2017年3月期は円安の影響で減益が予想されています。賃貸市場もしばらくは、微増、微減を繰り返す展開となりそうです。
都市部の地価上昇や新築分譲マンション価格の高騰で、土地活用が活発化する傾向にある。そうなると賃貸住宅の新築物件が増え、平均家賃を押し上げることも考えられる。ただし、景気動向が芳しくないため、家賃相場は、横ばいで推移すると予想される。