アパート経営・土地活用の知恵袋
マンスリーレポート 最新情報をレポートします

不動産の遺産分割のポイント

相続

タグ :

2017年10月17日

不動産の遺産分割のポイント

相続財産には、現金の他に不動産、有価証券、宝石など様々なものがあります。相続が発生して相続財産を相続人で分割する場合、現金だけなら公平に分けることはできても、不動産などは簡単にはいきません。また、不動産には自宅の他に収益物件である賃貸住宅などがあります。どうすれば、公平な遺産分割ができるのか、分割方法と注意点を解説します。

遺産分割方法の基本は、現物分割か代償分割

誰がどの遺産を相続するかは、相続人同士で話し合わなければなりません。これを「遺産分割協議」といいます。「遺言」がある場合にはその内容が優先されますが、「遺留分」を侵害していたり、遺言にはない遺産がある場合などは、遺産分割協議で決めることになります。
遺留分とは、民法で定められている一定の相続人に最低限保証された財産の取り分のことです。偏った遺産分割であっても、相続人全員が納得すれば問題はありません。
遺産分割には、主に次のような方法があり、これらを組み合わせて分割していきます。

(1)「現物分割」
遺産一つひとつについて誰が相続するのかを決める方法です。土地は相続人Aに、預貯金は相続人Bに、といった方法です。土地そのものを分割する場合もありますが、事前に対策が必要です。また、分割した後にどのように活用していくかも視野に入れて、土地の整理をしておくことも大切です。

(2)「代償分割」
分割が困難な資産を特定の相続人が相続し、その相続人が他の相続人に相応の対価を払う方法です。例えば、価値の高い不動産と少額の現金の場合、現物分割では不公平が出てしまいます。そこで、不動産を相続した相続人が、代償金として金銭を他の相続人に支払うなどが考えられます。

■代償分割の例

(3)「換価分割」
分割が困難な不動産などの資産を売却して換金し、その換金された金額を相続人間で分割する方法です。

この他にも、分割しにくい不動産などを分割せず、相続人間で共有する方法もありますが、後々、トラブルになるケースが多いので避けたほうがよいでしょう。

自宅や賃貸住宅などの不動産がある場合は、「代償分割」をするケースが多いと思いますが、代償金の計算などは様々で、事前の準備など注意が必要です。

遺産分割には、現物分割、代償分割、換価分割などがあるが、不動産など分割しにくい遺産は代償分割をするケースが多い。

最初の相続(一次相続)だけではなく、二次相続を見据える

自宅の相続については、配偶者が相続するケースが多いでしょう。最初の相続(一次相続)の際には、そのことに異を唱える相続人はまずいないでしょうから、他に不動産がなければ遺産分割には困りません。ただし、その配偶者が亡くなった時に起こる二次相続を考えると注意が必要になってきます。

配偶者がいる場合は、配偶者税額軽減の特例という税制上のメリットがあります。この特例は、相続財産が1億6,000万円まで、またはそれを超えていても法定相続分の範囲であれば相続税はかからないというものです。
この特例を活用して、自宅を含め多くの遺産を配偶者に集中させることが考えられますが、二次相続を考えると、かえって相続税が多くなるケースがありますので注意が必要です。同居の子どもがいる場合は、先に自宅を子どもに相続させたほうが節税対策になる場合があります。

さらに、子どもが独立している場合(別に持ち家を所有している場合)、二次相続で自宅が空き家になる問題もあります。土地の相続評価を80%減額できる小規模宅地の特例も使えません。配偶者が生前の内に何らかの対策を立てたほうがよいでしょう。

また、自宅の相続に関しては「婚姻期間が20年以上の夫婦のどちらかが死亡した場合、配偶者に贈与された居住用の土地・建物は遺産分割の対象にしない」という民法改正案が浮上しています。そうなると、自宅は二次相続に持ち越されるケースが増え、ますます対策が必要になってきます。

二次相続については、バックナンバー「二次相続に備えた相続税対策とは?」でも詳しく解説しています。ぜひご覧ください。

自宅の相続については、二次相続を考慮して対策を立てないと、相続税の負担増や空き家問題に発展する可能性がある。

自宅の遺産分割には代償分割、資金の準備が必要

2015年の相続税の改正で、基礎控除が減額されたことにより、都市部では自宅の相続で相続税が発生するケースが増えたのではないかと思われます。相続税がかからないとしても、数千万円の価値があれば、遺留分の主張や均等分割の要求でトラブルとなるケースもあるでしょう。
二次相続で、複数の相続人が自宅を分ける方法には以下の方法があります。

(1) 土地を分割して相続ー現物分割
土地が広い場合は、敷地を分割してそれぞれを相続する方法があります。注意したいのは、地域の条例。建物を建てる場合の最低面積が120平米以上などと決まっていることもあるので、それよりも小さくなるようなら、止めたほうがいいでしょう。また、うまく分割できたとしても接道の状況等により、建ぺい率や容積率が異なる場合もありますので、注意が必要です。

(2) 自宅の一部に相当する金銭で分けるー代償分割
一人が自宅を相続し、他の相続人が自宅の価値に応じて相応の金銭を受け取る方法です。例えば相続人が二人(兄と弟)で、1億円の自宅を相続するとします。兄が自宅を相続し、弟は自宅の価値の半分である5,000万円を代償金として兄から受け取れば、代償分割は成立します。この場合、兄はあらかじめ多額の代償金を準備しておかなければなりません。

(3) 自宅を売却して売却金で分けるー換価分割
現物分割も代償分割もできない場合は、自宅を売却して現金化する方法があります。いくらで売却するかでもめるケースもありますが、公平な分割としてはシンプルで分かりやすいかもしれません。しかし、都市部の土地は利用価値が高く、何らかの形で引き継ぎ、活用するほうが得策でしょう。また、売却した場合、売却益が生じると譲渡所得税が発生するほか、不動産業者への売買手数料も発生しますので、手取額は減少します。

相続人の誰かが自宅を引き継ぎ住むのであれば、代償分割することになるでしょう。空き家になる場合でも、都市部の場合は収益性の高い土地が多いので、やはり代償分割で誰かが引き継ぎ、リフォームして貸し出すとか、賃貸住宅に建て替えるといった活用方法が考えられます。
思い出の詰まった自宅を整理するのは気が重い話ですが、自宅の相続は早めに対策を立てておかないと、手遅れになってしまいます。

自宅の遺産分割は、代償分割で誰かが引き継ぎ、活用するのが得策。そのためには、代償金の準備など早めの対策が必要。

賃貸住宅の代償分割は、評価方法に注意

賃貸住宅を相続する場合、分割が難しいので、つい共有にしてしまいがちですが、後々トラブルになるケースが多いのが実態です。バックナンバー「失敗事例に学ぶ!ー遺産分割での不動産の『共有』」で失敗例を示していますのでご覧ください。

賃貸住宅も特定の相続人が相続し、代償金を他の相続人に支払う代償分割が多いと思います。自宅同様、代々受け継いできた資産なら、次の世代にも承継したいものです。
この場合、問題になるのは、賃貸住宅の評価です。評価額によって、代償金が大きく違ってくるからです。
ちなみに、賃貸住宅の相続税評価額は、土地は貸家建付地評価で約2割減、建物は固定資産税評価に借地権割合を差し引いて3割減など、かなり評価を圧縮することができます。
しかし、代償分割のための評価は、実際に売却したらいくらで売れるかという売却価格ということになります。

収益不動産の場合の売却価格を査定するのに、よく使われているのが収益還元法です。これは、想定利回りを設定し年間の家賃収入から逆算して、売買価格を査定する方法です。
例えば、家賃7万円、10戸の賃貸住宅を利回り5%とした場合、以下の計算式になります。
 年間家賃収入=7万円×10戸×12カ月=840万円
 利回り5% 840万円÷5%=1億6,800万円
利回りは、築年数などでも変わってきますが、近隣の類似不動産などから想定することになります。

正確に売却価格を算定するには、不動産鑑定士などに依頼することになりますが、時間と費用がかかるため、信頼できるいくつかの不動産会社に頼んで査定してもらうなどでもよいでしょう。相続人全員が納得できる価格で合意できればよいのです。
また、賃貸住宅の場合は、その後の家賃収入がありますので、代償金を受け取るほうは賃貸住宅を高く査定しがちですが、賃貸事業としてのリスクも背負うことになりますので、その辺りの事情もよく理解してもらうことがポイントです。
複数の賃貸住宅がある場合は、誰にどの賃貸住宅を相続するのか、あらかじめ決めておき、遺言で残しておくのがよいと思います。

遺産に現金がない場合、代償金はかなりの金額に上ります。他の相続資産との分割も兼ねて、どの程度準備しておかなければならないか、事前に資産全体の査定をしておくことが必要となるでしょう。被相続人が生命保険に加入している場合は、それを活用することもできます。
相続対策というと、つい税金対策のことを考えてしまいますが、遺産分割が最もトラブルの原因になると言われています。相続については、定期的に家族と話し合っておくことも相続対策の一つです。

■賃貸住宅を含む遺産分割のイメージ

賃貸住宅のような収益不動産の代償分割は、査定価格次第で代償金額が大きく違ってくる。相続人全員が納得し合意することがポイント。

土地活用・アパート経営の資料プレゼント

セミナー・イベント情報を見る

窓口・WEB・電話で相談する

▲ページトップへ

マンスリーレポートトップへ