9月は防災月間です。いつ起きてもおかしくないと言われている首都直下型地震、南海トラフ地震などでは、甚大な被害が想定されています。人々の防災に対する意識も高まりを見せ、その傾向はアパートの入居者にも表れているようです。あらためてアパートの防災について考えて見たいと思います。
これまでの震災などの教訓として、有事の際は地域のコミュニティが大きな力を発揮し、大事な役割を果たすことが分かっています。
しかし、賃貸住宅の住人が地元のコミュニティに入っていくのは、なかなか難しい話です。
先の東日本大震災では、仙台で賃貸住宅に住む単身者が孤立したという例も少なくなかったと聞きます。普段、地域との関わりがないため、ライフラインが止まってしまった場合、どこに救援物資をもらいに行けばよいのかが分からない、などの問題があったようです。
隣近所の人との関わりが薄いのが都市のライフスタイルと思われてきましたが、リクルートから大変興味深い調査結果が発表されました。
『賃貸住宅における住民交流の意向調査』によりますと、アパート内での交流を求める入居者が75.1%いると言うのです。これは「どのような入居者と交流したいか」という質問の中で、趣味が近い、同世代、生活レベルが近いといった14項目に対して一つでも「ぜひ交流したいと思う」or「交流できたらいいと思う」を選択した人の割合です。
条件があるとはいえ、かなりの割合で交流の意向があるということになります。これまでの都市のライフスタイルにおけるイメージとは少し異なる結果となりました。
そして、もう一つ注目すべき結果は、住民同士の交流のためにあったほうがいいイベントや催しのトップが、「防災訓練・避難訓練」だということです。割合は32.7%ほどですが、2位「趣味のサークル活動」18.4%、3位「習いごと・教室・ワークショップ」17.0%と比べると、倍近いポイントがあります。東日本大震災や毎年猛威を振るう集中豪雨などの影響で、防災の意識はアパートの入居者にも、高く浸透しはじめていることが伺えます。
東日本大震災以降、防災に対する入居者の意識が大きく変化している。防災訓練・避難訓練への意識も高まりつつある。
アパートの防災対策として、考えなければならないのは、まず建物の耐震性です。老朽化が進み耐震性に問題があると、震災で入居者がケガをした場合などにオーナー責任が問われる場合があります。これは、建物だけでなく、ブロック塀などの外構も同じです。建物などについては、自治体で無料の耐震診断が行われている場合もあるので、活用をお勧めします。
また、都市の住宅の密集地域では、耐火性が求められます。阪神・淡路大震災では、大地震の二次災害である火災で甚大な被害がありました。東京でも木造密集地域があり、大震災での火災が大きな被害をおよぼすと想定され、建て替えが進められています。これも自治体によっては補助金が出る場合がありますので、古い木造アパートの場合は建て替えを検討するとよいでしょう。
次に、アパートとしての防災用品などの備蓄です。アパートでも共用部などに防災用品を備蓄するケースは少なくありません。共用部分にスペースがないと難しいかもしれませんが、これがあると入居者に安心感を与えることができます。食糧などは各戸で用意してもらうとして、ライフラインが止まった時のことを考えて、発電機や簡易トイレを準備するとよいかもしれません。
また、オーナーによっては、入居の時に防災グッズのセットを配布しているケースもあり、入居者に喜ばれています。1万円程度のものでも、最低限の非常用グッズがリュックに入ってセットとして販売されています。
そして、入居者への防災意識への呼び掛けです。各戸にチラシをまいたり、掲示板で注意を呼び掛けたりするのがよいでしょう。この時期は、地震だけでなく、集中豪雨などへの注意も促したいところです。このあたりは、管理会社との連携が必要です。
また、防災訓練への参加意識があることも、先の調査で分かりました。とはいえ、アパートで防災訓練を実施するのは、少々難しいかもしれません。その場合は、地域の防災訓練への参加を呼び掛けてもよいでしょう。たとえ、参加しなくても、注意を向けさせることにはなります。合わせて、避難場所なども改めて、案内したいところです。特に単身者の場合、避難場所は、あまり把握していないだろうと思われます。
建物の耐震性の確認と維持管理、防災グッズなどの備蓄、そして入居者への注意の呼び掛けが大事。
東日本大震災は、津波による沿岸部の被害が甚大でした。ヘーベルメゾンのような、いわゆるプレバフ住宅が初めて経験した大都市での地震といえば、阪神・淡路大震災です。すでに、19年もの歳月が流れましたが、この震災についても風化させることがないよう、あらためて教訓を学びたいと思います。
まず、ヘーベルメゾン・ヘーベルハウスの被害状況については下記の通りです。
■阪神・淡路大震災 ヘーベルメゾン・ヘーベルハウス被害概要 ※ |
震災全体では、全半壊した住宅が約25万棟におよぶ中、ヘーベルメゾン・ヘーベルハウスの全壊・倒壊・半壊は0棟で、大規模火災が発生したエリアでは、ヘーベルメゾン・ヘーベルハウスが、防火壁として火の勢いを食い止める働きをしたケースも見られました。この震災では、図らずもヘーベルメゾンの耐震性・耐火性の高さが証明されることになりました。
このように大規模な震災の場合、オーナー自身も被災者であり、なかなか対応できることではありません。ヘーベルメゾンは大丈夫でも、ご自宅の木造家屋が大きな被害を受けているケースもありました。
それでも、ヘーベルメゾンのオーナーは家族のように入居者の安否を気遣い、被災した木造アパートの入居者を、これから入居者募集をかける予定だった新築のヘーベルメゾンに住まわせた方もいらっしゃいます。また、入居者の中には、実家が被災したのでヘーベルメゾンに家族を呼び寄せた方もいらっしゃいました。
被災したオーナーたちが口をそろえて言うのは「コミュニティと防災への意識」が大切ということです。オーナーの一人は、当時を振り返り「万が一の時、何をすべきか、またどういうことが起こりうるのか、シミュレーションしたり、心の準備をしたりしているだけでも随分違うと思う」と言います。それは、ご自身も入居者も同じ。そのためには、意識を高めるしかないと、入居者にも地域の防災訓練への参加を呼び掛けているそうです。
また、東日本大震災での教訓ですが、今回の震災では仮設住宅の建設が大幅に遅れ、民間の賃貸住宅を借上げるケースが多く見られました。今後はむしろ民間賃貸住宅を「みなし仮設住宅」として積極的に活用しようという方向で検討が進んでいます。首都直下型地震や南海トラフ地震が起きた場合、新たに仮設住宅を建設するには限界があるからです。この他、東京では木造住宅密集地域での建て替え促進が進むなど、行政も様々な都市の防災対策を打ち出してくるでしょう。
防災対策は「コミュニティと日頃からの防災への意識」が大切。
以前このコーナーでは、安心を見える化し共有することで防犯機能を強化した、賃貸住宅「ヘーベルメゾン New Safole」を紹介しました。直接的なコミュニティは避けたいが、入居者の顔は知っていた方が安心という「匿名コミュニティ」のニーズをカタチにすることで、防犯機能を高めたものです。もちろん、この機能は防犯だけでなく、防災の上でも十分に機能します。入居の時に署名する「マナー同意書」には、「わたしたちは、災害時には積極的に助け合います」という一文も入っています。
女性のためのあんしん共有賃貸住宅「ヘーベルメゾン New Safole」の詳しい内容はこちらをご覧ください。
また、1階に防災ステーションを設けた防災・防犯型の賃貸住宅の事例もあります。防災ステーションには、水・食料・携帯トイレを備蓄し、各戸には防災避難セットを配布しています。また、共用部には太陽光発電と蓄電池により、停電時には携帯電話等の充電ができる他、インターネット無線LAN、あるいはテレビなどから情報が得られるようになっています。普段のコミュニケーションは少ないかもしれませんが、万が一の時には、防災ステーションに集まって情報を共有できるというコミュニティの存在が、入居者に大きな安心感を与えます。集合住宅では難しかったコミュニティを、災害時に機能するように配慮した賃貸住宅です。さらに、ALSOKホームセキュリティが導入され、「火災監視」「非常通報」が基本プラン、オプションで「侵入監視」もできるようになっています。
入居者の防災意識も高まり、防災・防犯に配慮された賃貸住宅が人気。