賃貸物件探しで欠かせない不動産ポータルサイトやスマートフォンサイト・アプリ。近年、ますます使い勝手が向上しています。それに伴い、入居者の部屋探しのスタイルも少しずつ変化が見られます。株式会社リクルート住まいカンパニーの「2014年度 賃貸契約者に見る部屋探しの実態調査」から、今どきの部屋探しの実態を俯瞰し、賃貸オーナーとしてどう考えればよいか見ていきたいと思います。
この調査は毎年行われているものですが、今年は特に時代を象徴する結果が出ています。
“部屋探しに利用した情報源”については、「PCサイト(不動産ポータルサイト等)」を利用している人が最も多いものの、年々その割合は減少傾向にあり、一方で「スマートフォンサイト・アプリ」の利用が「不動産会社を直接訪問」を超えました。賃貸オーナーの中には、あんな小さな画面だけで部屋探しできるのかと疑問に思う方もいるでしょう。しかし、今の若者世代にとって、全ての情報源はまずスマートフォンからで、いずれは、パソコンの利用も抜くのでは、と予想されます。
「スマートフォンサイト・アプリ」利用者の世帯構成を見ると、ひとり暮らしの「女性社会人」の割合が高く43.2%、「男性社会人」は逆に低く12.9%となっています。意外にも、「ひとり暮らし」より「2人」「ファミリー」のほうが、「スマートフォンサイト・アプリ」の利用率が高いことに驚かされます。
ベスト3を世帯構成別で見ると、「PCサイト(不動産ポータルサイト等)」の利用はファミリーが全体値に比べて低く40.6%、「スマートフォンサイト・アプリ」は前述したように女性社会人が43.2%と高く、「不動産会社を直接訪問」は2人(暮らし)が34.8%と高くなっています。
いずれにせよ、依頼する不動産会社がスマートフォンでの物件紹介にどう対応しているのか、今後、注意していきたいものです。
部屋探し時の利用情報源は、「PCサイト(不動産ポータルサイト等)」が最も多いものの、「スマートフォンサイト・アプリ」の利用が「不動産会社を直接訪問」を超えた。
実際のスマートフォン・アプリを見てみましょう。
スマートフォンでアプリ検索をすると、リクルートグループの「SUUMO」が100万ダウンロード、不動産・住宅情報サイトの「HOME'S」が50万ダウンロード、「アットホーム」が50万ダウンロード(2015年10月9日現在)となっています。
そのなかで「SUUMO」を見ると、その大きな特徴は「なぞって探す」です。地図上を指でなぞって円を描けば、そのエリアに登録されている物件が出てくるもの。もちろん、家賃の上限や広さ、設備といった条件を絞り込むこともできます。物件情報では、間取りや部屋の写真の他に周辺の写真などが多数掲載されている物件も少なくありません。
この機能を使えば、例えば井の頭公園の近くに住みたい、というような場合に便利です。“なぞる”という行為で、住みたいエリアの物件を検索することができるのも、スマートフォン・アプリだけの機能です。地図上からゲーム感覚で探せるので、若者の利用が増えるのも納得です。
リクルートSUUMOサイトより
スマートフォン・アプリを使った部屋探しは、手軽さとわかりやすさで若者に人気
次に、入居者が実際に不動産会社を訪ね、内見するまでの行動を見てみましょう。
「部屋探しのために訪問した不動産会社店舗数」は平均で1.7店舗、訪問店舗数は2店舗が増えています。「見学した物件数」は平均3.4件です。中には、まったく内見せずに決めてしまう人も9.5%と、約10人に1人の割合です。実際、人気エリアで条件の良い新築物件が建つと、建物完成前に入居者が決まるというのはよく聞く話です。
しかし、インターネット特有の落とし穴もあると言います。
ある不動産会社によると「昔は、とにかく部屋の写真が載っていれば大丈夫でしたが、今は、いかにきれいに、魅力的に見せるかが勝負どころ。広角レンズを使えば、部屋を広く明るく撮影することできるため、実物件よりイメージ良く撮影することも可能です。そうした写真だけで判断して内見せずに契約したものの、実際に入居してからイメージと違っていたといってトラブルになるケースもあります」とのこと。そうしたトラブルを避けるためにも、必ず内見してもらってから契約するようにしている不動産会社もあるようです。
平均すると不動産会社の訪問は1.7店舗、内見数は3.4件。「0店舗(内見しない)」が10人に1人と、インターネット情報はますます重視される傾向に。
オーナーとしては、どんなところに気を付ければいいのでしょうか?
まず、部屋探しサイトの検索でヒットし、ライバル物件より魅力的に見えないと、昨今は内見にさえ来てもらえないことを意識してください。部屋探しサイトのこだわり条件にあるような設備は、昨今の入居者ニーズを反映したものですから、一つでも多くあった方が望ましいのは言うまでもありません。差別化のためにも物件の写真も、きれいなほうが良いのは当然です。
しかし、前述のように入居希望者が内見時に写真のイメージとちょっと違うなと感じたときに、成約に結び付けられるかどうかが、不動産会社の営業力です。インターネット情報は集客のための情報、お店に来た入居希望者を成約させるのは店舗スタッフにかかっているのです。オーナーとしては、このあたりをポイントに不動産会社選びに気を付けたいところです。その物件の良さ、周辺環境の良さ、どんなささいなことでもアピールして入居者を説得する営業力は、入り口がインターネットであろうとも変わらない重要な不動産会社の能力なのです。
また、最近ではさらに新しい不動産取引が始まろうとしています。まだ、実験段階ですが、契約そのものをインターネットで済ませることのできる「重要事項説明のIT化」です。現状では、契約の際に「宅地建物取引士」の資格を持った人が、必ず重要事項説明をすることが義務付けられています。そのため、契約の際には入居希望者は必ず不動産会社に足を運ぶ必要があります。この重要事項説明をインターネットのテレビ電話機能を使って済ませてしまおうというのが今回の実験です。まだ、クリアしなければならない問題は多々ありますが、業界では大変注目されています。
アパート経営をめぐる環境は、ITの進歩と共にどんどん変化していきます。オーナーとしも、様々な業界情報に注意しつつ、時には入居者になったつもりになって、パソコンやスマートフォンで物件検索してみるのも良いのではないでしょうか。
インターネットでいかに物件をアピールするか考える。そのために入居者のつもりで部屋探しサイトを検索してみると良い。