新型コロナウイルス感染拡大の影響で、郊外の人気が高まっています。このほど、不動産情報サイト「LIFULL HOME'S」より、2020年4月1日~8月18日の期間に、首都圏のLIFULL HOME'Sユーザーを対象とした「コロナ禍での借りて住みたい街ランキング」が発表されました。どんな街が注目されているのか、見ていきたいと思います。
では、さっそくベスト20を見てみましょう。ポイントは都心から距離があっても1本でダイレクトにアクセスが可能な街です。
ベスト10に入った、郊外の街のうち「本厚木」「大宮」「千葉」「八王子」の特徴を見てみましょう。
家賃はLIFULL HOME'Sの9月24日現在の家賃相場情報です。(駅徒歩10分以内賃貸物件の管理費・駐車場代などを除く平均賃料を軸に、LIFULL HOME'Sの過去データを基にして、LIFULL社が独自のロジックで算出したもの)
ベスト20中では最も都心までの距離(アクセス時間)が遠く、新宿まで約50分ですが、堂々の1位になりました。前回の調査でも4位で、3ポイント順位を上げています。アクセスは、東京メトロ千代田線に乗り入れる準急の始発駅なので、大手町方面までスムーズに行けます。駅周辺は商店街やショッピングモールもあり、買い物にも困りません。また、子育て支援が手厚く、ファミリーには人気です。
埼玉県内でも最大級の繁華街を有する街。駅前には、大型の商業施設が建ち並び、商店街も広範囲に広がっています。新幹線の駅だけに、駅はきれいに整備されています。特徴はアクセス。JRや私鉄、新幹線などを合わせると、12の路線が利用できます。新宿湘南ラインを使えば渋谷まで約37分、横浜にも1時間ほどで乗り換えずに行けます。
千葉県内では、船橋、柏といった人気エリアを抑え、前回調査から10ポイントアップの4位です。快速の始発駅で、成田空港へも1本で行けます。アクセス面ではバスも充実しています。大宮と同じで駅周辺は繁華街で大型商業施設や商店街があり買い物には困りません。近隣に大きな千葉公園もあり、住環境のバランスが良いところが人気です。
前回調査から2ポイントダウンしたものの9位にとどまりました。中央線、京王線、横浜線があり、都市部からは離れますが、街は賑やかで大型商業施設、家電量販店、ディスカウントストアなどが充実。また、高速が近く、中央道で富士五湖や山梨・松本方面に、圏央道は東名高速ともつながり、茅ヶ崎まで通じています。少し足を伸ばせば人気の高尾山もあり、レジャー環境は充実しています。
上位にランクインした郊外は、都心へのアクセスに時間はかかるものの、乗り換えなしでスムーズに行けるエリアです。駅周辺は大きな繁華街で、かつ自然も多く、充実した日常生活が送れます。
ちなみに、都心寄りの人気エリア・吉祥寺は12ポイントダウンの21位、川崎は9ポイントダウンの12位でした。
上位にランクインした郊外は、駅周辺は大きな繁華街で、自然も多く充実したライフスタイルが送れる場所。都心からの時間はかかるが、乗り換えなしでアクセスできる。
次に、前回調査より大幅に順位がアップした郊外に注目してみます。
順位は29位ですが、前回より33ポイントもの上昇です。アクセスは八王子と似ていて、京王相模原線の始発駅、JR横浜線・相模原線が乗り入れ、圏央道が近いので、車での遠出に便利。特筆すべきはポテンシャルです。2027年開業予定のリニア新幹線の停車駅が橋本駅の南口に設置予定。人気急上昇なのは、今後の発展を期待してのことでしょう。
前回から23ポイント上昇の23位です。今年、昭和記念公園の東側に隣接するエリアに約3.9万m2の広大な街区「GREEN SPRINGS」が誕生し話題に。立川はこの数年、再開発が進み、大型ショッピング施設や家電量販店などが相次いで進出、多摩地区では注目のエリアです。人気の理由は自然環境と利便性のバランスの良さ、特に子育てファミリーに人気です。郊外にしては家賃が高め。住環境の良さから相場が上がっています。
14ポイントアップの20位です。津田沼は、他の住みたい街ランキングでも急上昇している街です。アクセスは東京駅まで30分程度。始発の電車も多い。街は駅前に大型商業施設が乱立しているのが特徴です。大学もあり、学生が多いため街に活気があります。また、近くには、ラムサール条約に登録された湿地の「谷津干潟」、ロードで自転車の練習ができる「谷津奏の杜公園」などがあり、自然も豊かです。
再開発というと都心のイメージもありますが、郊外でも再開発されたり、これから再開発が期待されるエリアは、人気が急上昇しています。
この他、前回調査より大きく順位を上げた街は「西川口」「町田」「川口」「八潮」「平塚」でした。
再開発が進む郊外は、人気も急上昇している。今後の再開発エリアにも期待。
今回の調査は、コロナ禍の影響をうけ、順位に大きな変化が見られました。要因は、テレワークが進んだことで、通勤時間を考慮する必要が少なくなったこと。そこであらためて、ワークライフバランスの価値観を見直したことでしょう。
この調査で上位にランクされる街の共通点は、次の2点だとしています。
・多少都心方面へのアクセスに時間がかかっても、電車を乗り換えずにすむエリア。
・郊外のターミナル駅で駅勢圏が比較的広く、生活利便性がある程度担保できそうなエリア。
実は、郊外や下町の人気上昇は、コロナ前からその傾向が現れていました。都心に近い人気エリアについても、根強い人気はあると思いますが、コロナ禍を機に郊外の賃貸ニーズの幅がさらに広がったと見てよいでしょう。「通勤・通学に便利な街から、できるだけ安全で通勤・通学にも対応可能な街」といったニーズは今後も続きそうです。
また、設備やプランにもニーズの変化が出ています。テレワークを考慮すると、ワーキングスペースが確保できるスペースが必要ですし、広いリビングやアウトドアが楽しめるような広いベランダも求められるでしょう。「どこに住み、安心して楽しく生活をするか」のニーズが変化してきており、入居者ニーズの幅が広がっています。
※コロナ前の郊外ニーズについてはバックナンバー「これから期待の郊外の賃貸ニーズ」でも解説しています。ご覧ください。
※コロナ禍での設備やプランのニーズについてはバックナンバー「アフターコロナの賃貸住宅ニーズ」でも解説しています。ご覧ください。
コロナ禍で郊外に入居者ニーズが広がっている。設備やプランも合わせて「どこに住み、安心して楽しく生活をするか」を追求する時代に。