コロナ禍もあり、この10年で入居者ニーズは大きく変化しました。アットホーム「ユーザー動向調査 UNDER30」は10年前から2年ごとに行われている調査です。一人暮らしをしている30歳未満の方の最新ニーズを、10年前との比較も交えてご紹介します。
30歳未満の一人暮らしの入居者が住む部屋の間取りは、10年前と比べ「ワンルーム」、「1K」の割合が75.4%から61.4%と14%も減少しました。その分、1DK以上が増加し、広い部屋のニーズが高まっていることがわかります。
特に1LDKは6.8%から15.2%と8.4%増加。これは、10年前から1LDKの物件供給が増え始めたことも要因の一つでしょう。1LDKは新婚層をターゲットとすることが多いのですが、コロナ禍以降は在宅ワークが増え、在宅時間が長くなったことから、社会人中堅の単身者でもニーズが高まっています。
同調査で、「家賃以外で最後まで重視したこと」は、学生、社会人ともに「間取り・広さ」がトップでした。
部屋が広くなれば家賃も上昇しますが、その妥協点の一つが最寄駅からの距離です。
最寄駅までの徒歩分数は「10分以内」が学生・社会人ともに半数を超えていますが、「15分以内」まで広げると学生72.1%、社会人78%にまで広がります。
駅から遠くても広い部屋を求める入居者ニーズも一定数あることがわかります。郊外人気は今も衰えていませんが、駅からの距離で見ても、賃貸市場のニーズが広がっているようです。
単身者でも、特に社会人は広い間取りを求める傾向にある。家賃との兼ね合いは駅からの距離で妥協。駅から遠い立地でも間取りによってニーズが高まる。
築浅物件の人気は今も健在です。10年前と比べ「新築」「3年以内」が増加しています。しかし、一方で「20年超」も増加しています。
最近のリフォーム技術のクオリティは高く、室内をフルリフォームすると新築とほぼ変わらないクオリティに仕上がります。築20年を超えるとフルリフォームする物件も増えていることから、家賃とのコストパフォーマンスを考えると、築年数そのものにはこだわらない傾向にあると思われます。築年数が古くても、設備も含めてメンテナンスが行き届いていればニーズを維持することができるのです。
築年数が古くてもメンテナンスが行き届いていればニーズは維持することができる。
築年数が古くなった場合、具体的にどこをメンテナンスすればよいのでしょうか。まず目立ってくるのが設備や仕様の古さです。
「部屋探しの際、重視した設備・条件」は、学生、社会人ともに1位が「バス・トイレ別」でした。現在でもバブル期に供給された3点ユニットの物件が多く、当時はあたり前だったのですが、今は敬遠されるようになっています。社会人の2位「洗面所独立」は最近の傾向です。
10年前との比較で大きく上昇した設備は「インターネットWi-Fi接続料込み」「温水洗浄便座」「浴室乾燥機」です。これらは、今の新築物件であれば、ほぼ完備している設備です。賃貸住宅自体も時代に合わせて進化し、かつてはなかった設備が、今はあたり前になっています。
特にインターネットは、いまやライフラインの一つといっても過言ではありません。在宅ワーク、ネットショッピング、動画配信サービスなどが普及した影響もあります。
設備投資の際は、これらの設備を優先して考えるとよいでしょう。
10年前と比べ「インターネットWi-Fi接続料込み」「温水洗浄便座」「浴室乾燥機」が大きく増加。設備投資の際は、これらの設備を優先して検討する。
賃貸住宅自体も進化していると言いましたが、リフォームの技術も進化しています。間取りや設備については、リフォーム・リノベーションで今のニーズに対応することが可能です。いくつかその例をご紹介します。
築年数の古い物件で2DKの間取りがあります。まだLDK自体が普及しておらず、一室は和室だった時代です。賃貸住宅では和室も敬遠されがちです。
しかし、このタイプの2DKは、1LDKにリフォームすることで、ニーズを保つことができます。
最近ニーズが高まっているのが「独立洗面台」です。特にZ世代(およそ25歳以下)に人気の設備で、不動産情報サービスのアットホームが行った「Z世代のライフスタイルに関する調査」の重視する設備の1位が「独立洗面台」です。
いわゆる3点ユニットをリフォームしてバス・トイレを別にするリフォームはよく聞きますが、さらに洗面台を独立させることがリフォームの費用対効果を高くすると考えられます。
写真は、1K、バス・トイレ別の物件でしたが、玄関脇の靴箱のスペースに洗面台を独立して設置したものです。
インターネットWi-Fiの設備に関しては、ケーブルテレビの設備を利用したタイプなど、さまざまな設置方法があります。
ヘーベルメゾンでは、電気コンセントにWi-Fi通信を行う無線ユニットを脱着式にしたWi-Fiアクセスポイントを設置するタイプを採用しています。設置の際は不動産会社に相談するとよいでしょう。
リフォーム技術の進化で、人気の間取りや設備を設置し、ニーズの変化に対応することが可能。