ライフスタイルの多様化から賃貸住宅に求められる設備・仕様のニーズも多様化しています。最近では、入居者の潜在的なニーズに応えた高付加価値な設備を備えた賃貸住宅もあり、人気を呼んでいます。特に新築物件のクオリティは高く、さらに進化を続けています。今回は、入居者から注目の付加価値設備と、新築物件ではスタンダードとなっている必須設備をご紹介します。
これまでは「賃貸住宅だからなくても仕方がない」と諦めていたような設備・仕様。それを備えることで、高付加価値が生まれ、他の物件との差別化が図れるものを紹介します。
賃貸住宅でも自然災害に対する防災設備を望む声は高まっています。その一つが、起こりうる可能性が高い停電時の対応です。
太陽光発電と蓄電池を備え、共用部に非常用コンセントを設置すれば、停電時でも入居者は共用でそこから電気を使え、スマートフォンの充電や、電気ポットによるお湯の確保などができます。この他、防災備品倉庫や情報発信できる防災サイネージを設置した防災ステーションとして発展させることも可能です。
現在、災害時は在宅避難が推奨されていますので、特に乳児やペットがいる場合は、長期間停電が続いた場合でも電力の備えがあれば安心です。
賃貸住宅でも防災への意識が高まる中、太陽光発電や蓄電池による共用部の非常用コンセントは、高付加価値となるでしょう。
高断熱・省エネ・創エネの新しい基準を持ったZEH-M(ゼッチ・マンション)が話題となっています。今後、新築住宅については太陽光発電義務化の話もあり、一気に普及が進むかもしれません。
また、国土交通省ではZEH-Mの普及を推進するため、賃貸住宅探しの際にアクセスする住宅情報サイトで新築住宅を対象に、年間の「目安光熱費」の表示方法等を検討中です。さらに賃貸住宅探しの際にアクセスする住宅情報サイトの検索条件で、省エネ性能の高いZEH-Mに対応している物件が絞り込まれることも予想されます。
■目安光熱費表示のイメージ
後述する「家賃が高くても決まる」設備で、「ガレージ」が7位にランキングされています。特に郊外エリアではニーズがあるでしょう。さらに、クルマのガレージということではなく、趣味を楽しむアイデア空間のニーズが注目されています。
それが「土間のある賃貸住宅」です。特に敬遠されがちな1階に土間の空間を設置することで、高付加価値となり高い家賃設定が期待できます。
例えば、フェンスで囲った庭をプライベートな土間にしたり、住戸内のエントランスに土間を設けたり、いろいろなバリエーションが考えられます。土間で、アウトドアを楽しんだり、バイクや自転車、DIYなどの趣味を楽しんだり、これまでできなかった楽しみ方が賃貸住宅でもできるようになります。
■アイデア空間-土間のある賃貸住宅
防災設備、ZEH-M(ゼッチ・マンション)、土間のある賃貸住宅など高付加価値を持った賃貸住宅が登場。今後のスタンダードになる可能性もある。
次に新築物件では定番の人気の設備を紹介します。コロナ禍の影響もあり変化が見られます。リノベーションで既存の物件にも設置することが可能ですので参考してください。
数年前は、バス・トイレ別がニーズとしてあり、古い物件ではリノベーションする際の重点項目でした。今はさらに発展して独立した洗面台が必須になってきています。ファミリー向けは分かりますが、単身者でも必須になっています。これも手洗い・うがいが重要視されたコロナ禍の影響が少なからずあるでしょう。単身者向けでもうまくスペースを活用すれば、洗面台を独立させることは可能です。
■リノベーションで玄関横に独立した洗面台を設置した例
ファミリー向けでは水廻りのユニットバスの「追い焚き機能」、「システムキッチン」、「ガスコンロ(2口/3口)のクオリティが決め手になるとよく聞きます。特にキッチンは、設備とともにプランニング自体に付加価値が生まれます。
ヘーベルメゾン「光と風のLDK」では、LDKの中央にペニンシュラタイプのキッチンをレイアウト。開放感があり、リビングにいる家族と会話したり、一緒に料理したりと、コミュニケーションが広がります。
■キッチンをリビングの中央に配置したヘーベルメゾン「光と風のLDK」
ランキングにはありませんが、収納スペースも高い人気のアイテムです。「シューズクローク」「食器棚」、ファミリー向けには「2つのウォークインクローゼット」なども、新築物件では定番の設備となっています。
新築物件で定番となっている水廻りの設備。コロナ禍の影響もあり変化している。既存の物件でも、リノベーションで競争力を高めることも検討してみる。
今の部屋探しは、ポータルサイトで検索条件を絞り込んで部屋をピックアップします。つまり、希望の設備が条件としてなければ、物件検索でヒットせず、選択の対象からもはずれてしまうことになります。
次は「入居者に人気の設備ランキング2022」(全国賃貸住宅新聞調べ:全国の不動産会社355社が回答)を参考にしつつ、安定経営のための必須設備と付加価値のある設備を紹介します。
先ほど一部を紹介しましたが、最近の新築物件では、これらの設備はほとんど完備しています。賃貸市場の繁忙期に向けて、満室にするには必須の設備ともいえるでしょう。
コロナ禍で在宅時間が長くなったことによる影響が設備のニーズに現れています。特にファミリー層の「追い焚き機能」は前回4位から1位に急浮上しました。在宅時間が長くなり、好きな時間に入浴したいとの声があるようです。実際、家賃にも反映され、3,000円~5,000円の差があるとのことです。
この設備は、満室経営のためには必須の設備。設備がない場合は繁忙期に向けて、追加できるものを検討する。
次に「家賃が高くても決まる」設備です。前出の必須設備と比べて注目したいのが「高速インターネット(1Gbps以上)」、「24時間利用可能ゴミ置場」、「防犯カメラ」、「ホームセキュリティ」、「ガレージ」です。
「高速インターネット(1Gbps以上)」については、学生のオンライン授業、テレワークでのオンライン会議、動画配信やネットゲームなど、ネット環境の品質が問われることが増えた影響があるでしょう。「24時間利用可能ゴミ置場」は、分譲マンションでは一般的な設備で、賃貸住宅にあるとかなり印象が違います。これらは日々の生活に直接影響しますので、アピール度も高い設備です。
「防犯カメラ」、「ホームセキュリティ」といったセキュリティ設備は、まだ備えている賃貸物件は少ないと思います。必須設備ではないですが、費用対効果も考慮して検討したい設備です。
「高速インターネット」や「24時間利用可能ゴミ置場」は、日々の生活に影響する設備だけに、アピール度は高い。