確定申告の時期がやってきました。昨年末より、政権交代、そして平成25年度の税制改正と注目を集めてきましたが、今回の確定申告では平成24年度の税制改正等が適用されます。今回の確定申告に関して、変更のあった税制や制度についておさらいします。
相続税の増税など、先頃発表された「平成25年度税制改正大綱」が世間を賑わせていますが、今回の確定申告では「平成24年度の税制改正」に注意して、申告する必要があります。
とはいえ、平成24年度については大きな税制改正はありませんでした。ここでは、住宅・土地、またはアパート経営に関する改正点についておさらいします。主には、既存の特例の延長、または要件の変更などです。
項目 |
内容 |
期限 |
---|---|---|
少額減価償却資産の必要経費算入の特例 |
30万円未満の減価償却資産は、一括して必要経費(損金)に算入できる特例が2年延長 |
平成26年3月31日まで |
マイホームの買換えの特例の延長 |
マイホームの買換えや交換の場合の長期譲渡所得の課税特例に関して、譲渡価格の上限を1.5億円以下(改正前は2億円)に引き下げた上で、適用期限を2年延長 |
平成25年12月31日まで |
特定事業用資産の買換えの特例の延長 |
事業用資産の土地、建物の買換え特例(80%課税繰延べ)に関して、買取り資産の土地の面積が300m2以上とした上で、適用期限を3年延長 |
平成26年12月31日まで |
住宅取得資金の贈与の特例の延長 |
住宅取得資金の贈与を受けた場合の非課税措置が以下のように拡充・延長 |
平成24年1月1日〜 |
住宅取得資金に係わる相続時精算課税制度の特例の延長 |
住宅取得資金について、2,500万円の特別控除が適用できる相続時精算課税制度の要件、贈与者が65歳未満であっても適用できる特例が3年延長 |
平成26年12月31日まで |
また、これら以外にもすでに改正がなされていて、昨年から施行されているものもあります。さらには、住宅エコポイント、太陽光発電に関する税制上の取り扱いなどにも注意が必要です。以下の項でポイントを解説します。
30万円未満の減価償却資産の必要経費算入の特例が2年延長!ただし、青色申告に限る
減価償却制度については平成19年に大きな改正があり、100%償却が可能になりました。続いて、平成23年度の改正で、定率法の償却率の引き下げが平成24年4月1日より適用開始されています。
定率法の償却率は、定額法の償却率の2.5倍で「250%定率法」と呼ばれていました。これが、平成24年1月1日以降に取得した減価償却資産については、「200%定率法」へ引き下げられることになりました。これにより、償却のスピードが若干遅くなることになります。なお、建物は定額法しか選択できませんので、アパート経営の場合、設備等に適用することになります。
|
改正前 |
改正後 |
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定率法の償却率 |
定額法の償却率×2.5 |
定額法の償却率×2.0 |
取得時期 |
平成19年4月1日〜平成24年3月31日 |
平成24年4月1日以降に取得 |
ただし、平成24年3月31日以前に開業し、すでに定率法を選択している場合、平成24年12月31日までに取得した減価償却資産は250%定率を適用することができる等の経過措置があります。
定率法の償却率が引き下げられた。取得時期や経過措置にも注意!
賃貸住宅を建てて、住宅エコポイントを取得した場合、その住宅エコポイントは不動産所得となります。
さらに、その住宅エコポイントを追加工事費に即時交換したり、環境配慮商品などの設備と交換した場合は、それを必要経費として計上します。一方、アパート事業とは関係ない商品券などと交換した場合は必要経費にはなりませんので、注意が必要です。
また、住宅エコポイントを即時交換した場合、確定申告で賃貸住宅の取得価額は、ポイント分を賃貸住宅の取得価額から直接減額するのではなく、別々に計上します。
例えば、賃貸住宅の取得価額が1億円、住宅エコポイントの即時交換を利用して、実際の支払いは300万円差し引かれた場合でも、賃貸住宅の取得価額は1億円で必要経費(減価償却費)に計上し、住宅エコポイントは300万円を不動産所得として計上します。
■賃貸住宅のエコポイントの必要経費の取り扱い
ポイントの交換先 |
必要経費の取り扱い |
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即時交換 |
住宅エコポイントを差し引く前の金額を取得価額として必要経費(減価償却費)に計上。 |
アパート事業に関連する |
必要経費に計上 |
アパート事業とは関係ない |
必要経費にならない |
住宅エコポイントは不動産所得!アパート事業に関連するポイントに交換した分は必要経費!
昨年は太陽光発電に注目が集まり、賃貸住宅でも太陽光発電設備を設置して、賃貸住宅の共用部で使用、その余剰電力を売電しているケースが多くなりました。
余剰電力の売却益の所得区分や設備の減価償却については、自宅や事業者などで違いがあります。例えば、給与所得者が自宅に設置した場合の余剰電力の売却益は雑所得に該当し、賃貸住宅の場合は不動産所得になります。また、設備の減価償却に関しては「機械設備」に分類すると考えられますので、耐用年数は17年で計算することになります。
売電方式 |
所得区分 |
耐用年数 |
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自宅に設置 |
余剰買取 |
雑所得 |
17年 |
賃貸住宅に設置(共用部) |
余剰買取 |
不動産所得 |
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個人が全量売電をしている場合 |
全量買取 |
雑所得or事業所得 |
なお、平成24年7月から再生エネルギーの固定買取制度がスタートして、個人でも一定規模以上の太陽光発電により発電が行われる場合は、全量買取りが可能になりました。それに伴い、グリーン投資減税制度も改正され、10Kw以上の太陽光発電設備で平成24年5月29日から平成25年3月31日までに取得した場合は、要件を満たせば、設備に関しては初年時に一括償却が可能になります。ただし、この特例は事業所得における特例であり、不動産所得の場合は適用することができませんので、注意が必要です。個人の場合は、青色申告をしていることや事業所得であることが適用要件になっていますので、アパートに太陽光発電を設置し、全量売電を行っている場合に税制の適用が受けられるかどうかは、事前に税務署に確認することが必要です。
太陽光発電の耐用年数は17年