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アパート経営の節税対策-所得控除編-その1

税務・確定申告

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2016年1月19日

アパート経営の節税対策-所得控除編-その1

確定申告の時期が近づき、準備に追われる賃貸オーナーもいらっしゃると思います。節税対策の基本は、小さな必要経費も漏らさずきちんと計上することです。今回は、必要経費と同様に節税効果がある所得控除について解説します。

所得控除とは? 必要経費と同様の節税効果!

まず、収入と所得の違いですが、収入とはいわば売上のことです。アパート経営では家賃や礼金が収入で、そこから必要経費を差し引いたものが所得です。
「所得控除」とは、所得税や住民税の計算をする際に、所得から差し引くことができる金額のことです。医療費控除や生命保険料控除、配偶者控除など全部で14種類あり、これらを総じて所得控除と言います。
確定申告書でいうと、左側上から三番目のブロック「所得から差し引かれる金額」が所得控除です。

確定申告書

所得控除の節税効果は、必要経費とほぼ同じです。先ほど、収入から必要経費を差し引いたものが所得だと説明しましたが、その所得から所得控除を差し引いたものが課税所得になります。この課税所得に税率を掛けたものが納税する所得税です。課税所得は住民税や健康保険料などにも影響してきます。ですから、課税所得を低く抑えることが節税対策となるのです。

例えば所得控除が100万円あった場合を考えてみます。
所得税と住民税を合わせた概算の節税効果は次のようになります。
所得税率が最低ランクの5%だとすると、住民税(所得割)10%と合わせて15%になります。
100万円の所得控除がなければ、100万円×15%=15万円の納税が必要ですが、所得控除があれば、その分の節税効果があるということです。
所得税は累進課税ですので、税率のランクが上になればさらに大きな節税効果があります。例えば所得税率が10%の場合は、住民税と合わせて20万円になります。
所得控除の中には、所得税と住民税で控除額が違うものもありますが、節税効果は必要経費が増えるのと同じように考えて構いません。
計上漏れのないように、注意が必要です。

■所得100万円の所得税と住民税の概算
・所得税率5%の場合(復興税、住民税均等割は考慮せず)
100万円(所得)×(所得税5%+住民税10%)=15万円
つまり、100万円の所得控除で15万円の節税効果になります。
※所得は課税所得

所得控除も必要経費同様に所得を抑えられ、その分の節税効果が期待できる。

所得控除の税制改正に注意!税額控除との違いは?

所得控除は、様々な人の「課税の公平性」を保つために、税負担を軽くする配慮から設けられています。そのために時代時代の社会環境の変化や国の政策によって、しばしば税制が改正されるのです。

近年でいうと、平成19年分から地震保険控除が、平成24年分から介護医療保険料控除が創設されました。これらは節税対策が可能となる減税措置です。
一方、平成23年分からは年少扶養控除が廃止、確定申告書にはありませんが平成27年分から給与所得控除の上限額が引き下げられています。これらは増税です。
今年、平成28年度の税制改正でも一部にあります(後に解説)。税制の改正を知らずにいると節税対策を逃してしまうことにもなりかねませんので、注意が必要です。

■納税額の計算

また、所得控除と間違いやすいものに「税額控除」があります。税額控除は、控除額そのものが所得税から差し引かれます。所得控除は、所得税から差し引くのではなく、所得から差し引きます。確定申告書にそって、記入していけば間違いはないでしょう。税額控除の代表的なものが住宅ローン控除です。過去には、電子申告を始めると5,000円の税額控除がありました(2013年3月で終了)。

所得税のしくみについては、「知っておきたい基礎知識ー確定申告の基礎知識:初心者編」でも解説しています。ご参考にしてください。

所得控除は、税制改正で変わりやすいので注意が必要。税額控除との違いにも留意。

医療費控除は、治療と予防の違いに注意!

それでは、代表的な所得控除をいくつか解説します。まずは、医療費控除です。
年間で10万円を超えた分の医療費を控除できます(最大200万円まで)。ただし、その年の総所得金額が200万円未満の人は、総所得金額等の5%を超えた分が控除できます。つまり、総所得が100万円の場合は5万円を超えた分となります。
医療費は本人だけではなく、生計を一にしていれば同居していなくても家族全員の合計で判断します。
また、保険金などが支払われた場合は、その分を差し引きます。例えば、医療費が12万円あっても、保険金が3万円支払われた場合は、差し引き9万円になりますので、医療費控除の対象にはなりません。

10万円と聞くと、大病でもしないかぎり超えそうにありませんが、家族が多く、毎月誰かが通院していれば、意外と10万円を超えてしまうこともあります。病院までの交通費も対象です(付き添い含む、自家用車のガソリン代は不可)。コツコツと積み上げていくのがよいでしょう。

また、気をつけたいのが控除の対象となるかどうかの違いです。対象となるのは治療や療養に関するものだけで、検査、予防、美容のための費用は対象外です。例えば、人間ドックやインフルエンザの予防接種の費用は対象外です。
医療費控除対象かどうか、主なものを下記の表にまとめましたので、参考にしてください。

■医療費控除の対象となるもの

医療費控除は治療が対象、検査や予防のための費用は対象外。

医療費控除にスイッチOTC(市販薬)医薬品控除が新設

平成28年度の税制改正で、新たに「スイッチOTC医薬品控除」が新設される予定です。
治療のための市販薬はこれまでも医療費控除の対象でしたが、10万円を超えるケースは少ないでしょう。そこで、スイッチOTC医薬品を購入した場合、年間合計が1万2,000円を超えた分を控除できるようになります(最大8万8,000円まで)。
スイッチOTC医薬品とは、医療薬から市販薬(OTC)にスイッチした医薬品です。花粉症治療薬の「アレグラ」や、痛み止めの「ロキソニンS」などが、それにあたります。期間は平成29年1月1日から平成33年12月31日までとなっています。

注意したいのは、現行の医療費控除との併用ができないこと。どちらも対象となる場合は、控除額が多い方を選択するのが得策となります。

その他の所得控除については、次号で解説します。

スイッチOTC医薬品控除が新設される。現行の医療費控除との選択制に。


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