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アパート経営の節税対策-減価償却費編

税務・確定申告

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2020年1月21日

アパート経営の節税対策-減価償却費編

初心者が戸惑う勘定科目の一つが減価償却費です。一般的にはない概念ですので、その仕組みを理解するのに苦労している方も多いのではないでしょうか。特にアパート経営の場合は、建築費用が減価償却費となりますので、しっかり把握した上で、確定申告に臨みたいものです。今回は減価償却費について解説します。

そもそも減価償却費とは?

建物や設備など長期にわたって使用する固定資産については、その費用を一度に経費に計上することはできず、1年ごとに分割して費用を計上します。これを減価償却と言います。"減価"の文字が示すとおり、固定資産は年数とともに、その価値が減少していきます。その減少した分を減価償却費として計上するのです。

賃貸経営では、建物とその付帯設備が代表例です。アパートを建築した場合、建築費については、耐用年数に従って、1年ごとに計上していきます。耐用年数は、資産ごとに定められており、建物の場合は構造などによって違います。
建物は時の経過によって老朽化しますが、土地は値下がりするかもしれませんが、価値がなくなる「減価」することはないという考えに基づき、減価償却資産ではありません。

■減価償却のイメージ(定額法)

建物や設備にかかった費用は、一度に経費にするのではなく、耐用年数に従って1年ごとに分割して減価償却費として計上する。

減価償却費の計算方法

減価償却には、「定額法」と「定率法」がありますが、建物および建物付帯設備、構造物(アプローチ、植栽)については、定額法しか選択できません。
減価償却費(定額法)の計算は極めてシンプルです。取得価格に、法定耐用年数による償却率を掛けて算出します。

■減価償却費(定額法)の計算 1年間の減価償却費=取得価額×定額法の償却率

一度算出した同じ額の減価償却を、毎年計上することになります。計上する時期は、年末の決算処理の時に行います。また、初年度の場合は、実際に使用した月数で1年間の減価償却費を月割で算出します。例えば1年間の減価償却費が120万円で7月から賃貸経営を始めた場合、使用期間は6カ月なので初年度の減価償却費は60万円となります。
賃貸経営において、減価償却はローン利子と合わせて、最も大きい経費です。しっかりと算出して、経費計上しましょう。

【ケーススタディ】
■建物本体 取得価額5,000万円 耐用年数27年 償却率0.038
■付帯設備 取得価額2,000万円 耐用年数15年 償却率0.067
・1月1日から12月31日まで一年間使用。
・建物付帯設備は建物より耐用年数が短いので、建物と分けてまとめて減価償却。
 ※設備は設備ごとに分けて減価償却することも可能ですが、経理が煩雑になるのでまとめる場合が多いです。また、建物本体と合算して建物の耐用年数で減価償却することも可能。

建物本体の減価償却費=5,000万円×0.038=190万円 付帯設備の減価償却費=2,000万円×0.067=134万円

■主な資産の法定耐用年数と償却率

減価償却(定額法)の計算はシンプル。付帯設備の減価償却は耐用年数が短いので、分けて算出するか、建物と合わせて減価償却することもできる。

金額が少額の資産は一括で経費計上できる

固定資産の中でも、取得価額が少額の固定資産については、減価償却せずに一括で経費計上できる場合があります。
まず、取得価額が10万円未満の場合は、減価償却せずに一度に経費計上できます。
次に、10万円以上20万円未満の場合は、3年で均等償却することができます。例えば15万円のパソコンを購入した場合(法定耐用年数4年)、5万円ずつ3年間で経費に計上することができます。

さらに、青色申告の場合は、少額減価償却資産の特例があり、30万円未満の固定資産であれば、全額、一度に経費計上できます。この場合、一年間の取得価額の合計が300万円までという上限があります。例えば30万円の固定資産なら10個が限度ということです。

ただし、少額減価償却資産の特例を使用する場合は、減価償却資産として届け出が必要になり、償却資産税の対象になります。償却資産税とは、土地・建物以外の事業用の資産、賃貸住宅では付帯設備、外構、エアコンなどの償却資産について課せられる税金です(資産合計150万円未満は無税)。一方、3年間で均等償却した場合は、償却資産税の対象外です。
少額減価償却資産の特例を活用した場合は、償却資産税の負担が増すことになりますので、どちらが得策かはよく検討することが必要です。

■30万円未満の減価償却資産の償却方法

30万円未満の減価償却資産に関しては、減価償却以外は一度に経費計上できるなど、いくつかの方法がある。

一度に経費計上か?減価償却か? 減価償却費の節税効果

減価償却資産は一度に経費計上したほうがよいのか、減価償却したほうがよいのか迷うことがあります。かつては、できるだけ一度に経費計上し、早期に投資を回収するという考え方もありました。
しかし、必ずしもそれが得策とは言えません。賃貸経営は長期事業ですので、減価償却費を含む必要経費が長期にわたり一定していたほうが、キャッシュフローが安定し、経営計画が立てやすくなります。減価償却資産の計算例で、建物と付帯設備を別々に計算しましたが、付帯設備の償却期間の15年が過ぎると、急に税負担が増すということに留意しておく必要があります。建物と付帯設備を一緒にして、減価償却したほうが、収支が長期にわたり安定するという考え方もあり、そちらを選択する方もいます。
また、昨今は富裕層への増税傾向が見られます。今年から、高所得者の所得税の基礎控除が引き下げられることが決まっています。(バックナンバー「平成30年度税制改正のポイント」参照)
今後も何らかの増税策が打ち出されるかもしれません。それらの対策としても、長期の計画が必要でしょう。

減価償却資産は、購入時に代金を支払いますが、それ以降の支払いはありませんので、2年目以降は支出を伴わない経費となります。経理上の利益は、[売上-経費]ですが、経費の中には、支出を伴わない減価償却費が含まれています。つまり、実際の手元に残る現金(キャッシュフロー)は「利益+減価償却費」と考えることができます。特に賃貸経営の場合は経費の中で減価償却費が占める割合が多く、建物も借入金であれば実際の支出はないので、キャッシュフローの面ではかなり有利です。
たまたま、その年の収入が膨らんだなどの場合は、一度に経費計上してもよいと思いますが、長期の視点で考えるのであれば、減価償却の方が安定経営につながるでしょう。

一度に経費計上か減価償却かはケースバイケースだが、長期の視点で考えれば減価償却がよい場合もある。

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